フェニックス事業の現状と課題

自治労大阪府職員労働組合

 大阪湾圏域から生じた廃棄物の海面埋立による処理及びこれによる港湾の整備を目的としてはじめられたフェニックス計画。1992年から廃棄物受入れを開始した泉大津沖処分場は、管理型区画では2002年3月に受入れを終了している。あらためて経過を整理し、フェニックス事業の課題を検証した。

フェニックス事業の主な経過

 フェニックス計画が最初に大きな議論となったのは、1981年であり、20年以上遡らなければならない。旧厚生省と運輸省の共管の法案として「広域臨海環境整備センター法」が国会に提出され、「ごみ国会」と言われるほどの議論が行われた。閉鎖性水域である大阪湾や東京湾を埋立てて処分場を造ることに対する反対の声も大きかったが、環境保全に万全を期することなどを中心とした付帯決議をつけて法案は成立した。

 大阪湾での実施主体となる大阪湾広域臨海環境整備センターは1982年3月に設立され、事業が開始された。ちなみに東京湾での事業は調整がつかないまま現在に至っている。
 第1期の大阪湾での事業は、近畿2府4県の159市町村が参加して泉大津沖と尼崎沖の2処分場を設置し、6年間で4500万m3の廃棄物を受け入れるという計画であった。

 このうち泉大津沖処分場については、漁業補償の合意が遅れたことなどから1989年6月まで着工がずれこみ、廃棄物受入を開始したのは1992年1月となった。一方、尼崎沖処分場は、1987年11月着工、1990年1月受入開始となっている。
その後、両処分場は管理型区画を中心に埋立が進んだことから、第2期処分場が計画され、神戸沖処分場が2001年に供用を開始し、大阪沖処分場が建設中である。
 大阪湾フェニックス事業の4処分場の概況は、表1のとおりである。

表1 処分場の概要

 

面積ha

容量(万m3

受入開始

一般廃棄物

産業廃棄物災害廃棄物

陸上残土 浚渫土砂
泉大津沖 203 410 940 1,270 480 3,100 1992. 1
尼崎沖 113 220 390 580 410 1,600 1990. 1
神戸沖 88 470 730 300 0 1,500 2001.12
大阪沖 95 490 630 280 0 1,400 工事中


泉大津沖処分場の現状

 大阪府域の廃棄物を受け入れてきた泉大津沖処分場は、泉大津市汐見町の地先の海面に護岸を設けて建設された。管理型区画67haと安定型区画136haが中仕切堤で区分けされている。これまでの年度ごとの廃棄物の受入状況を図1に、また2003年3月末の埋立状況を図2に示す。管理型区画は計画容量の89.5%を受け入れ、既に述べたように搬入を終了している。一部残ったポンド部分は浸出水の一次沈殿池として利用されている。一方、安定型区画は計画容量の61.2%の進捗率で現在も埋立が続けられている。

clip_image001.jpg (24566 バイト)

 

 

 

需要予測の問題

当初計画では1989年から6年間で埋立が行われることになっていたが、実際には管理型区画は1992年の受入開始から埋立終了まで約10年間となった。安定型区画はさらに今後数年を要すると予想される。(図3)

(注)管理型受入率が2000年度末に、安定型受入率が2001年度末に減少しているのは受け入れた廃棄物の圧密を考慮し補正を行ったため


計画どおりに行かなかった理由は、バブル経済の崩壊やリサイクルの進展などもあるが、当初計画が需要を課題に見積もっていたことも大きな要因である。
 自治労府職は、1985年に自治労大阪府本部発行のパンフレット上で過大な計画受入量の設定について批判を行った。その要旨は、@人口増加を過大に見積もっていること A一般廃棄物の発生原単位が減量化努力を反映しない過大なものであること B産業廃棄物や陸上残土の発生量についても経済成長率を毎年3%と見込む過大なものであること C発生後の減量化努力を見込まず処分率を過大に評価していること などであった。

 処分対象物ごとの計画量と受入済み量を表2に示す。
一般廃棄物と公共産廃である上下水道汚泥、工事量に応じて発生量が決まる浚渫土砂については、結果的に計画量に沿った量が埋立てられたが、民間産廃と陸上残土が計画量に達していないこと分かる。
安定型品目の廃棄物が計画量を下回り、埋立の残余容量にも余裕がある状況は尼崎沖処分場も同様で、こうした状況を受けて第2期計画の神戸沖、大阪沖はいずれも管理型区画のみの計画となっている。

表2 廃棄物の種類ごとの受入量      2002年3月末現在(単位:千t)   

廃棄物の種類 受入量 計画量 受入/計画(%)
一般廃棄物 5,896 5,657 104
産業廃棄物 @上水汚泥 978    
A下水汚泥 352    

@A計

1,330 1,393 95
Bもえがら 156    
C汚泥(@A除く) 2,021    
D鉱さい 2,435    
Eばいじん 58    
F廃プラ・ゴムくず 15    
G金属くず 0.4    
Hガラス陶磁器くず 200    
Iがれき類 2904    
Jその他 285    

B〜J計

8,075 11,619 69

産業廃棄物計

9,405 13,012 72
陸上残土 14,421 20,353 72
浚渫土砂 6,632 6,813 97
合計 36,353 45,835

79

土地利用の遅れと財政への影響

泉大津沖処分場の埋め立て終了後の土地利用計画は、表3及び図4のとおり。

表3 泉大津沖処分場土地利用計画

用途 規模
港湾関連用地 45ha
都市再開発用地 74ha
都市機能用地 ha
緑地 63ha
マリーナ用地 ha
道路用地 11ha

203ha

wpe1.gif (7069 バイト)

フェニックス事業のスキームは、繰り返しになるが、港湾管理者の委託を受けて廃棄物埋立護岸の建設、廃棄物による海面埋立により行う土地の造成を行い、地方公共団体の委託を受けて一般廃棄物等に係る最終処分場の受入施設等の建設、海面埋立業務を、さらに「大阪湾センター」単独の業務として産業廃棄物に係る最終処分場の建設と海面埋立業務を行うというものだ。土地の造成という観点からみると早期に埋立を終了することが望まれるが、廃棄物処理の観点からは貴重な海面を埋立ていることも考慮すると長期的に受入可能な状態が維持されることの方が望ましい。当初から問題として指摘されたこの矛盾が、結果的に埋立竣工の遅れにより、土地売却をあてにした財政に悪影響を与えている。

このことは「大阪湾センター」自体が雑誌記事(注)で次のように認めている。「近年、臨海部において港湾空間の需要が低下する中で、今後も必要とされる廃棄物最終処分場の整備をどう進めるべきか。特に施設建設費、維持管理費に対する収支見込み、処分場の跡地利用等の課題があり、将来のあるべき姿を模索しているところです。」

(注 財団法人沿岸開発技術研究センター機関紙「CDIT」2002年6月号収録「『大阪湾フェニックス計画』廃棄物の最終処分場から港湾施設整備へ」大阪湾広域臨海環境整備センター)

環境保全に果たした組合の役割

 とはいえ、内陸部に処分場が確保できない大阪府域においてはフェニックス処分場が発生する廃棄物の大半を受け入れている現状にあり、その貢献度合いは大きい。環境保全の面でも、受け入れる廃棄物の審査、受入時のチェック、積み出し基地や処分場周辺の環境監視など、自治労府本部等の交渉成果もあって、万全の体制で運営されてきたと言うことが出来る。

 自治労府職も当該の環境農林水産支部が、「フェニックス計画及び第2フェニックス計画については、これまでの自治労府本部等との協議を踏まえ、廃棄物の適正処理、環境保全に万全を期すこと」という施策要求を毎年提出してチェックを続けてきた。ちなみに2003年度の当局回答は次のとおりである。「フェニックス計画については、かねてから自治労府本部等との協議を踏まえ、廃棄物の適正処理の円滑な推進等を図っております。事業実施にあたっては、環境保全に万全を期すため、府、大阪市、堺市及び泉大津市で構成する「大阪湾圏域広域処理場整備事業に係る大阪府環境保全協議会」を設置し、大阪湾広域臨海環境整備センターの実施した環境監視結果の評価などを行っており、今後とも、本協議会を通じて同センターに対して指導してまいります。また、大阪沖埋立処分場等における廃棄物の受け入れについても、環境の保全等に万全を期すよう同センターに強く働きかけてまいりたい。」

 組合が行った異色の取り組みとしては、前回府本部自治研でもレポート報告したが、放射性物質を微量に含むチタン廃棄物を受け入れたために、空間放射線量や放流水などの放射能核種分析を実施させ、年2回自治労府本部と自治労府職に測定結果を報告させ続けたこともあげられる。現在、国は原子炉等規制法改悪案を来年の通常国会に提出し、低レベルの放射性廃棄物を一般廃棄物や産業廃棄物として処分できる「スソ切り制度」導入をもくろんでいる。廃棄物処理法の特別管理廃棄物の概念に「放射性」がない現状で、「放射性廃棄物」への対処に迫られた経験を「スソ切り制度」化阻止に生かしていくことが求められる。