大阪府における独立行政法人化の動きと反対の取り組み

               自治労大阪府職員関係労働組合

 

 昨年9月に決定された大阪府行財政計画(案)において、府立大学、研究機関などについて「独立行政法人化の検討を進める」とされているが、独立行政法人とは何か、目的と問題点を明らかにするとともに、組合員の身分、労働条件等に大きく関わるものであり、今後の討論提起としたい。

 

1 はじめに

1)国の独立行政法人とは

国が実施する仕事は、法律や基本的計画を策定する「企画」の部分と、法律を適用しての検査、計画を実現するための研究開発、計画に従ってサービスを提供するなどの「実施」部分に分けられる。独立行政法人は、「実施」の仕事を行うものとして設けられた。

 独立行政法人(エージェンシー)は英国サッチャー政権において、国の現業部門(郵便、印刷、

鉄道等)に対し民間と競合させて行政費用を低くさせることを目的として導入された。

2)国への独立行政法人化の導入経過

  日本では、国鉄や電電公社の民営化が図られたが、郵政事業においては公社化となった経過があり身分は国家公務員のままとなった。日本は国家戦略として21世紀は科学技術立国でないと世界で

 生き残れないとして、科学技術基本法が制定され,科学技術基本計画が1997年に閣議決定され、研究活動、研究機関の活性化を図るため、単年度会計でなく企業会計の導入と予算執行の弾力化による研究機関、研究活動の活性化と、第一期計画17兆円、第二期計画24兆円の予算化がされ、研究員の賃金・労働条件の改善と研究職、研究助手の増員が図られている。

国では、科学技術振興に関する以下のような動きを受けて、試験研究機関の活性化方策が実施されてきており、研究機関の活性化の柱として、独立行政法人化(資料参照)、任期付任用制度の導入、フレックスタイム・裁量労働制などの研究職員の労働条件・兼業規制の緩和、研究予算の増額、研究機器の更新、研究職員の増員とあわせて、研究内容の公平性、透明性、国民への情報開示を目的とした研究評価システムの導入についても図られてきた。

 

科学技術振興に関する国及び大阪府の経過

1995年   科学技術基本法制定(超党派による議員立法)

1996年   第1次科学技術基本計画策定(1996年-2000年の5カ年計画、17兆円投資)

1998年3月 大阪府産業科学技術振興指針策定

2001年  第2次科学技術基本計画 2001年−2005年の5カ年計画、24兆円投資)

 

3)国での独立行政法人の制度化の状況

 国においては、89の事業・事務の独立行政法人化の方針を定めた「中央省庁等改革の推進に関する方針」が1999年に決定され、独立行政法人の運営の基本と共通的な事項を規定した「独立行政法人通則法」と、これまでに計60の独立行政法人を設置する法律(いわゆる個別法)が成立し、2001年4月現在57の独立行政法人が発足している。また、統計センターが2003年度から、国立病院・療養所が2004年度からなど、今後もいくつか予定されている。

 

4)国における制度導入のねらいとメリット

 @事前のチェックを重視する官庁会計では弾力性のある財務運営は困難です。このため、独立行政法人制度では、国から交付される運営費交付金が、使途を特定しない「渡し切りの交付金」として弾力的・効果的に使用できます。また、独立行政法人の経営努力により生じた剰余金については、府省の独立行政法人評価委員会の意見を聴いて主務大臣が承認した額を、中期計画であらかじめ定めた使途に独立行政法人が使用できるようにされています。

 A国の行政機関の組織、定員及び人事については、法令等による統制のもとに行われており、機動的・弾力的に運営することが困難です。このため、独立行政法人制度では、法令で定める基本的枠組みの範囲内で、独立行政法人が内部組織を決めることができ、また、その職員数は定員管理の対象外とされています。

 B国の行政機関では、これまで、明確な目標設定、業務実績の評価を行う仕組みは導入されていませんでした。このため、独立行政法人制度では、中期的な達成目標である中期目標を主務大臣が定め、この目標を達成するための中期計画及び年度計画を独立行政法人が作成する仕組みが導入されています。また、独立行政法人の業務実績について、各府省の独立行政法人評価委員会が評価し、その評価結果について、当委員会が意見を述べることとなっています。

 C国の行政機関については、業務の内容や運営の状況がわかりにくいといわれることもあります。このため、独立行政法人制度では、透明性を高める観点から、財務諸表、中期計画・年度計画、評価委員会の評価結果、監査結果、給与の支給基準などを公表することとされています。

 

5)大阪府での状況

地方独立行政法人に関して、2001年5月議会で総務部長は、「現在の厳しい財政状況を踏まえつつ、施設や事業経営の自主性、自立性を発揮し、府民サービスの維持向上を図るためには、従来の方法の延長でない、行政の思い切った効率化を図る必要があると考えておりますので、地方公共団体において、その実情に即して活用できる地方独立行政法人制度の創設に向けて、早期に法整備が行われるよう、国に対し働きかけてまいりたいと存じます。」と答弁している。

また、昨年10月に発足した総務省が設置した「地方独立行政法人制度の導入に関する研究会」へ大阪府から佐野総務部長が委員として参加しており、遅くとも本年9月には報告が出され、12月の通常国会へ法案提出が予定されています。

 

2.「大阪府行財政計画(案)」における独立行政法人化の問題点

 このように、国の独立行政法人は研究機関の活性化を目的として導入されたものである。大阪府においても、大阪府産業科学技術振興指針に基づき、同様の目的から独立行政法人化が提起されるべきである。

 しかしながら、大阪府行財政計画(案)においては、独立行政法人の理念が提示されないままに、その導入が捉えられている。そのことによって、次のような問題点が生じてくると考えられる。

@ 会計

企業会計を導入することのメリットが言われていますが、国、特に試験研究機関においては独立採算性を前提としておらず、財源面も国からの支出金を充てるとされているのに、本府の対象と考えられている機関で公的機関としての役割を果たしながら、とりわけフォローアップ型のサービス的な業務が中心の機関については、独立採算性が成り立つか疑問である。

A 組織、定員

職員数は定員管理の対象外となるため、知事が議会に約束した「3000人削減」達成の手っ取り早い方策として考えられている面がある。府の組織のスリム化、シェイプアップを図るものとしてしか独立行政法人化を捉えておらず、単なる数合わせに過ぎない。また、組織、定員、人事について機動的・弾力的に運営するとしており、能力給が前提とされているが、労働条件の改悪を認めることはできない。 

B 業績評価

評価委員会の評価結果、監査結果等が公表されることがメリットとして挙げられているが、大阪府においては施策評価が導入されており、独立行政法人にしなければできないことではない。

国や他の都道府県では研究評価制度が導入され、県民に対し研究予算、研究機関の業務内容等公開されており、研究評価についても開示されており、透明性が高められているが、大阪府では検討すらされておらず、研究機関や研究内容に対して評価の基準も示されていない。

C 組合所属

独立行政法人に所属する組合員は、自治労府職のエリアから外れ、別組合になってしまう。

身分の保証について、何らの見解も出されておらず、国と同様に身分は地方公務員のまま法人化するのか、明らかにすべきである。

 また、同計画(案)では、将来の府政再構築の視点として「3つの原則」をあげており、その第3番目に、「公正・透明で簡素・効率的な府政」をうたっている。試験研究機関において、その視点を実現していくためには研究評価システムの導入が不可欠であり、その部分を抜きにした形で独立行政法人化はあり得ない。

 国において、昨年12月閣議決定された、地方独立行政法人化への検討は、総務省で検討されているが,その基本骨子も示されておらず、アウトソーシング、第三セクターへの事業移管と何処が違うのか、民間との競合が出きるのか明確になっていない。

 

3.今後の方向性

 国では上記のように様々な条件の改善を前提に、独立行政法人化が進められてきたものであり、骨子案で提起されているような、単なるスリム化を図る手法としての独立行政法人化とは趣旨を異にするものである。また、国と地方の研究機関の業務、役割の相違を考慮すると、国で導入された独立行政法人をそのまま導入することは地方にはなじまないものである。

 したがって、まず、透明性を確保し、府民への情報開示を進めるため研究評価システムを導入し、柔軟で競争的かつ開かれた研究環境の実現を図る方策を検討することが先決である。その上で、大阪府の試験研究機関全体のあり方について、独立行政法人化の導入等について議論すべきであると考える。

 自治労は、5月24日〜25日鹿児島において第7回全国研究職集会が開催され、独立行政法人化

反対の取り組み方針が討議決定されます。独立行政法人化は、現業、非現業を問わず、また地方公営企業(水道、病院)、大学等にも波及するもので、組織を挙げての取り組みが必要となっています。

 自治労府職は自治労方針を踏まえ、反対の取り組みを進めると共に、当面する府労連夏季闘争において、労連要求に基づき闘いを進めます。