放射性廃棄物を産業廃棄物・一般廃棄物として処分させないために

自治労大阪府職環境農林水産支部

 

チタン廃棄物の問題

チタン廃棄物は、原鉱石にウラン等の放射能が含まれているため放射性の廃棄物であるにもかかわらず、放射能に関する規制が一切行われないまま普通の産廃処分場で埋め立てされていた。

 1990年に問題が発覚した当時、大阪府下では、大阪市西淀川区に所在する古河機械金属株から排出された放射性のチタン廃棄物が、堺市内の(財)大阪産業廃棄物処理公社の堺第7─3区処分場に埋め立てされていた。自治労府職総務支部(当時)では、従事者の安全確保や環境保全のための放射能の監視強化などを求めて、交渉や現場確認を実施し、その結果、トラック1台ごとのガンマ線測定や年2回の核種分析が行われることになった。また、暫定保管後の恒久対策についても組合と協議することを約束させた。

 199210月にチタン廃棄物をフェニックス計画の泉大津沖処分場に埋め立てしたい旨、当局より新たな提案が行われた。提案によれば、堺第7─3区ではシートをかけたトラックで運んで指定した陸地化した場所に埋め立てしていたのに対し、フェニックスでは大阪基地で運搬船に積み替え海面に埋め立て処分する計画であった。

 組合で交渉を行った結果、当局は放射能の監視体制などの組合の主張を受け入れ、現在フェニックスでの処分が行われてきた。

泉大津処分場の監視体制については、次のとおりであった。

 ・揚陸施設周辺については、チタン廃棄物搬入時、粉塵の飛散状況を監視する。

 ・チタン廃棄物の埋め立て場所直近及び処分場内海水については、年2回核種分析を行う。

 ・処分場からの放流水については、年2回核種分析を行う。

 ・測定内容及び大阪湾臨海環境整備センタ−への指導内容について、年2回、自治労に報告、説明する。

 

チタン廃棄物の放射能について、運動体が継続的に監視している事例は全国的にも他にない。報告されているデータの一部をグラフにしてみた結果をグラフに示す。

埋め立て開始時よりも濃度が下がっており、原鉱石輸入時に不純物含有量の少ないものを選ぶことが徹底した結果かと考えてきた。しかし、埋め立て開始前の値よりも下がっており、埋め立ての進行により護岸内面にあった海水が排除され淡水に置き換わってきた結果と考えるほうが適当かもしれない。いずれにしても、広大な処分場であることもあり影響は現れていない。泉大津沖処分場は、埋立を本年3月末で終了したが、放射能測定は影響がないことを確認するため、しばらく継続される予定である。


 


スソ切り処分制度化の問題

ところで、廃棄物処理法や建設リサイクル法の廃棄物の定義では「放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く」とされている。従来、放射能を扱う区域は放射線管理区域に指定され、この区域中で発生する廃棄物については放射能汚染のおそれがあることから廃棄物処理法の対象とせず、原子炉等規制法や放射線障害防止法で規制を行ってきた。その意味で、放射性のチタン廃棄物を産業廃棄物として扱えという旧厚生省他の通達は問題が大きい。

ところが、今後老朽化した原発の解体で多量に発生する廃棄物をこれまで同様に処分していたのでは、処理費用が高くついてたまらないと考えた原子力推進派は、一定レベル以下のものを「一般廃棄物」や「産業廃棄物」として処分できるように法改悪を予定している。廃炉・解体の第一号となった茨城県の東海原発では、200112月から解体工事が始まっている。本格解体が始まるまでに、法改悪を行うものと考えられる。

原子力安全委員会が、1999年3月に報告書をまとめてスソ切り値を設定し、引き続き、安全基準専門部会クリアランス分科会で核燃料使用施設のスソ切り値を検討中で、さらに、RI使用施設等、超ウラン核種を含む放射性廃棄物、ウラン廃棄物についても今後検討を予定している。

放射能のスソ切り処分が制度化されれば、原発解体だけでなく病院など放射性同位元素利用施設からのスソ切り処分により、廃棄物処理にあたる労働者や市民の被曝事故の可能性が高まると考えられる。

法改悪のスケジュールを問われた政府は「安全委員会の検討結果を踏まえた上で検討」すると回答している。現在の国会状況等を考えると、法案が提出されるとスソ切りの阻止は困難と思われる。法案を提出させない世論づくりを結成された3月に結成された「スソキリ問題連絡会」など市民運動などとも連携して進めていく必要である。