任期付研究員制度導入に対する取り組み
自治労大阪府職員労働組合
研究職協議会
1.はじめに
大幅な赤字財政に苦しむ大阪府当局は、このままでは財政再建団体に転落するとして、2002年度以降の行財政計画案を2001年8月に発表した。この案では「全国一、スリムな組織づくり」として、3000人の削減や、アウトソーシング、試験研究機関の独立行政法人化などなりふりかまわず人、物の削減を計画している。この計画を踏まえて発表後すぐの9月府議会に多くの条例案が提案された。その中に、試験研究機関への「任期付研究員制度の導入」があり、最終的には条例化された。
ここでは、その間の取り組みについて報告する。
2.大阪府行財財政計画
大阪府は2001年2月に2002年度以降の行財政運営の基本となる大阪府行財政計画骨子(案)を発表し、試算では2006年度以降の赤字額が、準用再建団体転落の水準に達するとして、これを回避するため、2001年7月末を目途に計画案を取りまとめるとしてきた。この間、府労連は種々の申し入れを行ってきた。8月に大阪府行財政計画(素案)が、発表され、8月末までパブリックコメントを募集し、それを踏まえて行財政計画(案)を作成し、9月府議会の議論を踏まえて14年度予算に反映するとしていた。素案の内容は、3000人の削減、アウトソーシング、独立行政法人化など、多くの問題を含んでいる。今回の主題である「任期付任用制度」については、「多様な採用方策の検討:年度当初の新規学卒者一括採用にこだわらず、内部での育成・登用が困難な専門性の高い分野において民間人材の登用など多様な採用方策を検討する。」として、その検討項目例に、採用職種の統合や、民間経験者採用とならんで、任期付任用制度が挙げられている。
3.任期付研究員制度の導入の提案
行財政計画(素案)の発表と同時に、9月議会に条例案を提案するため、8月末までの協議期間事項にとして人事室から提案された項目内に「任期付研究員制度の導入」があった。その内容は「地方公共団体の一般職の任期付研究員の採用等に関する法律」とほぼ同じである。
1 提案理由
平成12年7月、地方公共団体の一般職の任期付研究員の採用等に関する法律が施行され、本府の試験研究機関でも民間研究者との相互交流を推進し、研究活動の活性化を図る。
2 制度概要
(1)対象機関は公設研究機関(試験所、研究所その他の機関(公立学校を除く))。府の対象は、公衆衛生研究所・成人病C・母子保健総合医療C・産業技術総合研究所・産業開発研究所・農林技術C など
(2)対象職員は一般職の職員(機関の長・支所長等職員と非常勤職員を除く)。
(3)採用 任命権者は次の場合、職員を選考により任期を定めて採用できる。
@ 招聘研究員型
高度の専門的な知識経験を必要とする業務に従事させるため招聘する。採用は人事委員会の承認を得る(個別承認)。
A 若手研究員型
先導的役割を担う有為な研究者となるために必要な能力のかん養に資する業務に従事させる。採用は、人事委員会と協議して作成した採用計画に基づき行う(公募方式)。
(4)任期
○ 招聘研究員型 5年(特に必要な場合7年まで可(特別の計画に基づく業務の場合10年))。任期の更新は5年未満の任期を定めた場合に、採用日から5年を限度に可能。
○ 若手研究員型 3年(特に必要な場合5年まで可)。任期の更新は、3年(5年)未満の任期を定めた場合、採用日から3年(5年)を限度に可能。
(5)勤務条件
○ 他の一般職の職員と同様の諸規定を適用。給与及び勤務時間は国に準じて特例を設ける。
(6)その他
@ 任期付研究員は、定数内職員
A 服務、福利厚生は他の一般職と同様の諸規定を適用
3 施行時期 公布の日
4.研究職協議会としての取り組み
上記提案を受けて、我々は研究職協議会としての「任期付研究員制度」導入阻止に向けて、活動を開始した。まず、自治労全国研究職連絡会事務局による、「任期付研究員制度導入に対する基本的見解」、「任期付任用制度導入に対する取り組み基本方針」を基本として再度確認し、職場討議を繰り返した。協議期間が短く十分に討議できなかったが、単組本部に対して「任期付研究員制度導入に対する基本的見解と本部要請」を提出した。基本的見解は、全国連絡会の見解を踏まえて、国の制度が科学技術基本計画に基づき、それ相応の予算処置をしての任期付任用制度であるのに対し、大阪府における科学技術振興指針に基づく振興策の一環としての導入が位置づけされておらず、目的があまりにも貧弱であることを指摘した。また、民間研究員との相互交流という目的については、現在でも種々の制度により交流は促進されていること。また研究活動の活性化という目的については、常勤研究者への労働条件緩和すら未実施であり、現在の大阪府の財源不足により研究予算は恒常的に不足していること、任期付研究員の採用には研究予算の裏づけが必要であるが、それだけを予算化することは考えにくいことなどから、制度を導入しても成果が上がるとは考えられないことを見解としてまとめた。さらに要請事項として、導入を受け入れざるを得ない場合、全国連絡会の要請事項に加えて、2003年度からの研究予算の確保と併せての導入とすること、議会での委員会質問等に対策を講じることを要請した。
しかしながら、府労連からの提案に対する回答では、勤務条件などにかかわる事項について十分な協議を行うことを条件に了承ということになった。
府議会の総務委員会において任期付任用制度についての質疑もあったが、条例案どおり可決された。
5.おわりに
提案からその回答まであまり時間がなかったこともあり、任期付研究員制度の導入な阻止できなかった。今後は、採用にあたり公平性、透明性の確保とともに、欠員補充としての採用は認めない事。採用の前提条件として、あくまで研究所が充分な予算が確保出来、研究内容が短期間で成果が得られる研究テーマに限り採用させるとともに、研究終了後の研究員の再就職問題と賃金、労働条件を常に把握しながら、充分採用された職員と協議しつつ、自治労への組合員化について組織内討議と全体合意を見いだす取り組みが急務となっている。そのため、当局と事前協議を確立することと、当面採用に当たって府労連との合意事項を遵守させる取り組みが必用となっている。
5月末で募集を開始しており、産業技術総合研究所、食と緑の総合センター、母子健康センターにおいて、各1名が7月1日付けでの採用が予定されている。