機関紙「自治労府職」

 2002年11月1日号

退職手当見直し
法附則での対応、経過措置求める
連合官公部門連絡会が総務省に要求書提出


 本年9月、国家公務員の退職手当で官民の比較(平成11年支給分)を行った総務省が「官が5.6%高い」と公表し、その後の閣議でその支給水準を見直し関係法律の改正法案を次期通常国会に提出するとされた問題で、連合官公部門連絡会の退職手当見直し対策委員会は10月31日、24日に続き総務省人事・恩給局長と交渉した。同日は要求書も提出し「この問題の情勢は厳しく残された時間は少ない。今後、実務的交渉・協議を重ね合意できる改正法案とするよう努力してほしい」とし、総務省側も了解した。

 交渉では、官公部門側が「水準見直しでは、過去の経緯から退職手当法の附則(20年以上勤続の定年・勧奨退職者の特例で勤続期間全期間を100分の110の調整)で対応し、十分な経過措置を備えること」「国家公務員の在職期間延長との政府方針を踏まえ、早期退職者への特例措置の抜本的な改正」などを強調し、総務省側作業の進捗状況を質した。
 人事・恩給局長は、@前回(1981年)見直し時が附則の調整率改定でありこれを踏まえ検討、A早期退職特例措置では早期退職慣行是正のためそのあり方を検討中。なお公務員制度改革の給与・任用制度見直し検討の動向を踏まえ検討、B実施時期は、公表した官民調査の対象が平成11年度であり早期の較差解消が必要。われわれを取り巻く環境が厳しいことを強調したい、C支給水準見直しの基本ルール確立との指摘だが、従来から数年に1回の頻度で調査を実施。透明性・信頼性確保のため今後も定期的に実施、D制度見直しでは公務員制度改革大綱で現在検討中の給与・任用制度見直しを踏まえ検討したい、などとした。


国連軍縮週間大阪府民集会
米国はイラク攻撃やめろ
有事法案の廃案も求め5500人が訴え


 国連軍縮週間に入った10月24日夜、大阪市の剣先公園ではアメリカのイラク攻撃反対・戦争準備の有事法制の廃案を要求する10・24大阪府民集会が開かれた。
 主催者の大阪平和人権センターに結集する自治労など労働組合をはじめ各団体から5500人が参加、自治労府職からも仕事を終えた組合員300人が参加した。
 集会では、イラクをテロ支援国家と一方的に決めつけ、攻撃するため準備を進めるアメリカ政府に対し、直ちに中止するよう強く求める集会アピールを採択。有事法案を成立させようとする小泉政権に対しても、戦争支援の何ものでもない同法案の廃案を求めた。
 主催者あいさつのあと沖縄から駆けつけた、米軍基地の県内移設に反対する沖縄県民会議の山内徳信代表はあいさつで「沖縄戦の経験者として、断じて許せない有事法案を廃案に追いむため、ともにたたかおう。反戦・平和のために人権を守るために自信と勇気を持って取り組んでいこう」と訴え、会場は大きな連帯の拍手で包まれた。
 集会後、参加者は扇町と中央郵便局への二手に分かれて夜の市街をデモ行進し、シュプレヒコールで沿道の人々に戦争反対を力強く訴えた。


ユース部女性部
圧倒的信任で役員選出

 2003年度から、青年部員と若年女性を組織化したユース部と、女性部はともに10月10日に告示した役員選挙の投票を10月31日に行った。
 いずれの役職も、定数内立候補による信任投票となり即日開票の結果、圧倒的な信任で新三役が選出された。結果は次のとおり。
ユース部
■ユース部長
高橋淳一郎(総務)
  信任187・不信任1・無効12
■副部長
來山 直之(税務)
  信任188・不信任0・無効12
■書記長
松山 俊也(労働)
  信任187・不信任 1・無効12
女性部
■女性部長
上野万理子(総務)
  信任561・不信任 21・無効11
■副部長
渡辺 和美(中宮病院)
  信任565・不信任
 18・無効10
西村 明子(健康福祉)
  信任574・不信任 10・無効9
■書記長
阪田 淑子(税務)
  信任567・不信任 14・無効12


府労連
秋季年末闘争

(2面に関連記事)

11日(月)午後6時〜
  全職場代表者会議(多目的ホール)
14日(木)午後2時〜 第2回団体交渉
    午後6時〜 拡大闘争委員会(多目的ホール)
    ※闘争委員会後、職場決議手交
22日(金)午前11時〜 第3回団体交渉
    午後3時〜 決起集会・デモ(大手前遊歩道)


府労連
給与の公民較差是正など良き労使慣行の厳守求め
秋季年末闘争に全力で
5日の中央委員会、知事との団体交渉皮切りに

 府労連は11月5日の中央委員会、知事との第1回団体交渉を皮切りに、本年の秋季年末闘争をスタートさせる。
 今季闘争では、10月23日に府人事委員会が勧告した民間給与と府職員給与の公民較差0.34%(1524円)の是正、平成11年度以降の給与抑制措置(昇給24月延伸、特別昇給4年間停止)による給与配分の不均衡・不公平の是正などの取り扱いが、たたかいの大きな焦点になる。
 府労連はこの間、府人事委員会が公務員労働者の労働基本権制約の代償措置として設置された使命を十分認識し、府の「公民較差」を是正する勧告を行うよう強く求め、人事委員会に要望書を提出するなど取り組んでおり、今回の府人勧は、府労連の要求に応えたものとなった。
 知事・府議会議長に対して勧告されたことで、府労連は今後、府理事者との折衝・交渉を積み重ね、その取り扱いについて勧告の完全実施を求めて、取り組みを強める。
 また、今季の要求書では良き労使慣行の厳守をはじめとする32項目の要求を掲げ、その実現に向けても団体交渉、全職場代表者会議、決起集会・デモ行進などを背景に取り組みを進める。

単組からの意見反映で
    要求項目を補強


 今季要求のなかには、自治労府職からの意見を反映して、地公法による「自動失職」に関する特例条項を設けること、とくに公務中の事故などで無条件に自動失職が適用されることがないよう分限条例を改正することや、府立の試験研究機関・大学・病院などの『地方独立行政法人化』が審議会などで議論されている経過を踏まえ「職員の勤務条件等に大きく影響する地方独立行政法人化について、導入にあたっては、事前に府労連と十分協議すること」なども盛り込まれた。
 自治労府職は10月31日に開いた中央委員会で、秋季年末闘争の要求書を確認し、これら要求の実現に向け府労連に結集し職場からの積極的なたたかいを強めていく。

府労連闘争に職場から結集を


府人勧
給与の公民較差、配分の不均衡・不公平
是正すべきと勧告


これ以上、民間水準以下に抑制することは困難
公民較差は0.34%(1,524円)


給料表、一時金は国に準じて改定
一時金 0・05月削減/年2回支給へ


 10月23日夕刻、府人事委員会は知事と府議会議長に、本年4月の公民較差は0・34%(1524円)とする「平成14年職員の給与等に関する報告及び勧告」を行った。国や他の多くの府県の逆較差、マイナス2・00%前後(8000円前後)と比べて大きく異なったが、これは、府の財政危機による昇給延伸などの給与抑制措置の影響(3%強程度)と、民間給与の低迷によるとした。給料の改定では「本府の財政事情を理由にこれ以上、職員給与を民間水準以下に抑制することを認める勧告を続けることは本委員会の役割からして困難」とし、給与配分の不均衡・不公平を是正するための国人勧に準じた給料表への改定と、その適用では民間給与との較差を是正するよう考慮することも求めた。一方、実施時期は4月に遡ることなく条例公布の翌月から、期末手当は国に準じて0・05月削減(4・70月↓4・65月)、年間支給回数を3回から2回にするとした。さらに意見や報告では、成績主義による給与制度の再構築、地方公務員制度改革による能力実績主義の確立など厳しい内容も盛り込まれた。

大 人委 第 284 号
平成14年10月23日

大阪府議会議長  釜中与四一 様
大阪府知事  齋藤 房江 様

 大阪府人事委員会委員長 今堀 富三

職員の給与等に関する報告及び勧告について

  地方公務員法第8条及び第26条の規定に基づき、別紙のとおり、職員の給与等について報告し、併せて給与の改定について勧告します。

 第1 職員の給与等

 本年4月における本府の一般職の職員及び市町村立学校の府費負担教職員(以下これらを合わせて「職員」という。)の給与等の状況は、次のとおりである。
1 職員の構成
(1)職員数
 職員の総数は、8万9543人で、昨年より562人、率で0.6%減少している。
 これを職種別にみると、行政職1万7494人(事務職・技術職など)、研究職455人(研究所等に勤務する研究員)、医療職3624人(医師、薬剤師、看護師など)、教育職4万8250人(小・中・高等学校等の教員)、公安職1万9701人(警察官)、指定職19人(大学の学長、病院の総長・院長及び本庁の部長など)となっている。
(2)年齢構成
 職員の平均年齢は、44・5歳で、昨年に比べて0.3歳高くなっている。
 職員の年齢階層別構成は、「50歳〜54歳」を頂点とした構成となっており、40歳〜54歳の職員が占める割合は61.7%となっている。
 行政職給料表の適用を受ける職員の平均年齢は、43.9歳で、昨年に比べて0.4歳高くなっている。年齢階層別構成は、「50歳〜54歳」を頂点とした構成となっており、40歳〜54歳の職員が占める割合は53.6%となっている。
(3)性別構成
 職員の性別構成は、男62.1%、女37.9%となっている。
 行政職給料表の適用を受ける職員の性別構成は、男72・7%、女27・3%となっている。
(4)学歴別構成
 職員の学歴別構成は、大学卒58.9%、短大卒13.1%、高校卒26.8%、中学卒1.2%となっている。
 行政職給料表の適用を受ける職員の学歴別構成は、大学卒26.6%、短大卒5.8%、高校卒61.8%、中学卒5.8%となっている。

2 職員の給与の状況
(1)平均給与
 職員の平均給与月額(管理職手当及び時間外勤務手当等を除く。)は47万5660円で、その内訳は、給料39万6023円、扶養手当1万2646円、調整手当4万1290円、住居手当4861円、通勤手当1万2495円、その他手当8345円となっている。
(2)給料
 職員に対しては、その職種に応じて、11の給料表に規定する給料を支給している。
 給料表別に平均給料月額をみると、行政職36万3731円(平均年齢43.9歳)、研究職39万6036円(平均年齢44.8歳)、医療職(一)49万3839円(平均年齢43.8歳)、医療職(二)35万4547円(平均年齢43.1歳)、医療職(三)31万5382円(平均年齢36.8歳)、教育職(一)48万1541円(平均年齢46.7歳)、教育職(二)42万9908円(平均年齢46.3歳)、教育職(三)41万9527円(平均年齢46・3歳)、教育職(四)46万4057円(平均年齢45・8歳)、公安職36万5730円(平均年齢41.4歳)、指定職91万7526円(平均年齢57.3歳)となっている。
(3)扶養手当
 扶養親族を有する職員に対しては、その扶養親族1人当たり3000円〜1万6000円の扶養手当を支給している。
 扶養手当を支給される職員は、全職員の59.6%で、その平均支給月額は2万1205円、受給者1人当たりの平均扶養親族数は、2.1人となっている。
(4)調整手当
 在勤地における民間の賃金、物価及び生計費の状況に応じて、給料、管理職手当及び扶養手当の月額の合計額の10%に相当する調整手当を支給している。
(5)住居手当
 借家・借間に居住する職員(職員宅舎居住者等を除く。)で月額1万2000円を超える家賃を負担する者に対しては、その負担する家賃の額に応じて2万7000円以内、また、自己所有の住宅に居住する者に対しては、4600円の住居手当を支給している。
 住居手当を支給される職員は、全職員の60.3%で、その平均支給月額は8066円となっている。このうち、借家・借間居住者に対する平均支給月額は2万5442円、その負担する家賃の平均月額は7万1124円となっている。
(6)通勤手当
 交通機関又は交通用具を利用して通勤することを常例とする職員に対しては、最も経済的かつ合理的と認められる通常の経路及び方法による交通費に応じて通勤手当を支給している。
 通勤手当を支給される職員は、全職員の93.3%で、その平均支給月額は1万3392円となっている。

 第2 民間給与等の調査

1 調査の概要
 本委員会は、職員の給与と民間給与との精確な比較を行うため、人事院及び大阪市人事委員会と共同して、常勤従業員数でみた企業規模が100人以上で、かつ、事業所規模が50人以上の府内の民間事業所のうちから、層化無作為抽出法によって抽出した456の事業所を対象に「平成14年職種別民間給与実態調査」を実施し、うち調査が完了できた405の事業所(調査完了率88・8%)において、公務と類似すると認められる94職種の2万3609人について、給与改定の有無にかかわりなく、本年4月分として個々の従業員に実際に支払われた給与月額等を実地に調査した。
 また、各事業所の春季給与改定の状況を調査し、調査時点では支払が終わっておらず、前記給与月額等の調査結果には反映されないが、4月に遡って実施されることが決まっている給与改定(4月溯及改定)について把握するとともに、各事業所の家族手当、賞与等特別給の支給状況及び雇用調整等の実施状況などについても調査した。

2 調査結果
(1)平均給与等
 調査対象従業員の平均給与月額(「きまって支給する給与」から時間外手当を除いた額)は、事務部長74万6441円(平均年齢51.7歳)、事務課長61万315円(平均年齢46.5歳)、事務係長43万9357円(平均年齢43.4歳)、事務主任38万9423円(平均年齢39.9歳)、事務係員29万5100円(平均年齢32.9歳)などとなっている。また、初任給は、新卒事務員・技術者の平均で、大学卒20万5116円、短大卒17万1479円、高校卒16万711円となっており、本年4月に新規学卒者の採用を行った事業所のうち初任給を据え置いた事業所の割合は、大学卒で87.3%、高校卒で94.3%である。
(2)家族手当
 家族手当(扶養手当)の平均支給月額は、配偶者のみ1万8801円、配偶者と子1人2万5354円、配偶者と子2人3万1133円、配偶者と子3人3万4165円となっている。
(3)特別給
 民間の賞与の年間支給回数は、ほとんどの事業所が2回(86.5%)であり、支給月については、上半期は7月(58.5%)、6月(39.5%)が多く、下半期では12月(98.6%)が多くなっている。
 昨年5月から本年4月までの1年間に支払われた賞与等の特別給の1人当たり平均支給額は、平均給与月額の4.63月分に相当している。また、民間における賞与の配分状況は、一定率(額)分と考課査定分の比率が、課長級ではおよそ6対4、係員級ではおよそ7対3の割合となっている。
(4)本年の給与改定の状況
 一般従業員について、ベースアップと定期昇給を両方とも実施した事業所が11.4%(昨年33.0%)、ベースアップは実施したが定期昇給と区分できない事業所や定期昇給を中止した事業所、定期昇給は実施したがベースアップを中止した事業所は68.1%となっている。
 また、ベースダウンを実施した事業所は1.4%(同0.7%)と少ないものの、ベースアップも定期昇給も行わない事業所が19.1%(同5.2%)に上っており、昨年に比べてより厳しい状況となっている。
(5)賃金カットの状況
 賃金カットを実施した事業所は、一般従業員でみると7.8%、管理職では14.4%となっている。企業規模別にみると、一般従業員ではそれほど大きな差はみられないが、管理職では企業規模500人以上で17.4%となっている。
(6)雇用調整等の状況
 平成14年1月以降に雇用調整等を実施した事業所の割合は71.7%となっている。
 雇用調整の措置内容としては、採用の停止・抑制(49.6%)、部門の整理・部門間の配転(33.6%)、業務の外部委託・一部職種の派遣社員等への転換(23.0%)、残業の規制(22.9%)などが多く、一時帰休・休業(1.9%)、正社員の解雇(1.9%)といった厳しい措置も、割合は少ないが実施されている。

 第3 職員の給与と民間給与との比較

 本委員会が行った職員給与実態調査及び職種別民間給与実態調査の結果に基づき、職員にあっては行政職給料表の適用を受ける職員(技能労務系職員を除く。)、民間にあってはこれに相当する職種の職務に従事する者について、責任の度合、年齢等の条件が同等と認められる者相互の給与をラスパイレス方式により比較し、その較差を算定したところ、民間給与が職員の給与を1524円(0.34%)上回っている。

 第4 物価及び生計費

 本年4月の消費者物価指数(総務省統計局)は、昨年4月に比べ、全国で1.1%、大阪市で1.0%の下落となっている。
 本委員会が総務省の家計調査の結果を基に人事院方式により算定した本年4月の大阪市における標準生計費は、2人世帯15万6890円、3人世帯19万1350円、4人世帯22万5810円、5人世帯26万250円となっている。

第5 人事院勧告の概要 (省略)

成績反映給与等の運用改善、成績主義による人事給与制度の再構築にも言及

 第6 勧告及び意見

 1 勧 告

 職員の給与の決定条件に関する調査の結果は以上のとおりであり、職員の給与と民間給与との較差、職員の給与抑制の状況、物価・生計費及び国家公務員の給与改定に関する人事院勧告の内容等を総合的に勘案すると、下記により、職員の給与を改定する必要があると認められるので、所要の措置をとられるよう勧告する。
   記
(1)給料表等
 現行の給料表を人事院勧告に準じて改定し、その適用に当たって、職員の給与と民間給与との較差を是正するよう考慮すること。
(2)期末手当、勤勉手当及び期末特別手当
ア 平成14年度の期末手当及び期末特別手当について、それぞれの支給割合の合計が3.50月分(特定幹部職員に支給される期末手当にあっては、3.10月分)となるように改定すること。
イ 平成15年度以降の期末手当及び期末特別手当について、3月に支給しないこととすること。
ウ 平成15年度以降の期末手当、勤勉手当及び期末特別手当の支給割合を人事院勧告に準じて改定すること。
エ 再任用職員の平成14年度の期末手当及び期末特別手当について、それぞれの支給割合の合計が1.85月分(特定幹部職員に支給される期末手当にあっては、1.65月分)となるように改定すること。
オ 再任用職員の平成15年度以降の期末手当、勤勉手当及び期末特別手当の支給割合を人事院勧告に準じて改定すること。
カ 任期付研究員の期末手当については、支給割合の合計が3.50月分となるように改定すること。
(3)実施時期
 (1)並びに(2)のア、エ及びカの改定は、この改定を実施するための条例の公布の日の属する月の翌月の初日(公布の日が月の初日であるときは、その日)から実施すること。
 (2)のイ、ウ及びオの改定は、平成15年4月1日から実施すること。

 2 意 見

(1)今後の給与制度とその運用
 国家公務員給与については、昨年12月に閣議決定された公務員制度改革大綱で新たに「能力等級制度」を基礎として任用、給与、評価等の諸制度の導入を図ることとされ、その具体化の検討が進められている。この新しい給与制度について、人事院は、本年の勧告で、厳しい経営環境の下における民間企業の近年における賃金制度見直しの取組等を十分に踏まえつつ、各府省において年次・年功にとらわれた運用に陥ることがないよう、職員の職務・職責を基本とし、その能力・業績が十分反映される給与制度を構築していく必要があるとし、公務員給与制度の見直しに当たっては、年功的運用により硬直的になっているといわれる俸給について、俸給表の級構成や昇給のあり方などを見直すとともに、仕事や役割に応じた給与の新設、在職期間の長期化に対応する給与上の措置の導入、勤勉手当のあり方の見直し、地域間の給与配分などの諸課題について、早急に検討していく必要があるとしている。
 グローバル化や市場原理の導入、IT化といった社会経済システムの変化が現実のものとなり、本府の民間企業の6割以上において、ベースアップが停止又は廃止される中、定期昇給等これまでの年功に傾斜した昇給システムを見直し、従業員の能力や業務実績がより的確に反映される給与体系を構築しようとする動きが急速に進んでいる。すなわち、府下の民間企業では、出向や中途採用、契約社員の増加に加え、管理職年俸制や業績給割合の増加など能力実績主義の徹底が顕著になりつつある。
 本府職員の給与が府民の負担により賄われるものであることからすれば、その水準と仕組みについて、公民の均衡を確保することで府民の理解と納得を得る必要がある。こうした民間企業の動向を考慮すれば、本委員会としても、当面、現行の給与制度の運用における以下の諸課題について、人事院勧告を踏まえ、早急に検討を行うべきであると考える。
@ 昇給延伸措置等による不均衡・不公平の是正
 昨年の本委員会の勧告でも言及したように、昇給延伸措置等による給与配分の不均衡・不公平について、給与制度の運用において、速やかに是正措置を講じる必要がある。
A 成績反映給与等の運用改善
 勤勉手当や特別昇給等の成績反映給与について、これまでの運用を見直し、制度本来の趣旨に沿ったものとする必要がある。
B 諸手当等の見直し
 扶養手当や宿日直手当のあり方、給料の調整額の経過措置の見直し等について、本年の人事院勧告を踏まえ検討を進める必要がある。
ア 昇給延伸措置等による不均衡・不公平の是正について
 近年の景気低迷を背景に、本府を含むいくつかの地方公共団体では、財政破綻を回避するための緊急避難措置として給与削減や昇給延伸等の給与抑制措置が講じられている。本府が実施している24月の昇給延伸と特別昇給の停止を内容とする昇給延伸措置等については、昨年の本委員会勧告で言及したように、新規採用職員が、採用時から最初の昇給までに2年以上を要し、また、昇給率の高い若手・中堅職員に専ら負担を強いるという給与配分の不均衡・不公平を生じさせてきた。財政破綻回避のための緊急避難的な給与抑制措置であっても、そのことによって、給与制度本来の仕組みや運用が損なわれることはできる限り回避すべきであり、こうした昇給延伸措置等が継続してきたことにより、一層職員の士気が低下し、閉塞感が高まることなどが懸念される。
 この昇給延伸措置等による不均衡・不公平については、速やかに是正措置が講じられるべきである。人事院は、本年の勧告において初任給付近の引き下げ率を若干緩和するとともに、管理職層について平均をやや超える引き下げ率とする俸給表に改定することとしている。本府においても、まず、こうした考え方に基づく人事院勧告に準じた給料表に改定し、その給料表の適用に当たって民間給与との較差の是正を図ることにより、不均衡・不公平を緩和することが重要である。さらに、こうした措置に加えて、昇給期間の短縮等により若年・中堅層に重点的に給与配分するとともに、新規採用職員の最初の昇給期間を改善すべきである。
イ 成績反映給与等の運用改善について
 本年の人事院勧告は、「公務の活力を維持するためには、実績を上げた職員に対して各府省においてそれに応じた処遇をすることが重要」であり、「現行制度においても、成績反映の仕組みとして、特別昇給や勤勉手当の制度があり、各府省において成績主義に基づく運用が求められているが、実績を上げた職員に報いるためには、これらの制度をその本旨に則して一層活用する必要」があることから、「3月期の期末手当の廃止に合わせて勤勉手当の増加を図る」ほか、「特別昇給や勤勉手当についてよりめりはりのある運用の推進をはかるための指針を示す」としている。
 また、本府においては、平成10年に勤勉手当支給割合である成績率を本委員会通知で定めており、また、定数内特別昇給については、来年度以降、新人事評価制度を活用し、制度本来の趣旨に沿った内容で再開すべく、現在職員団体等との協議や検討が進められている。
 勤勉手当や特別昇給などの成績反映給与については、これまで制度の趣旨に沿った勤務成績の反映が十分されてこなかったとの批判がある。その原因は、主として制度運用の基盤となる人事評価制度が確立されていなかったことにあるが、本府では、平成12年度から一般行政部門の職員を中心に新人事評価制度が試行されており、成績反映給与の適正運用に必要な条件をほぼ満たしつつある。本委員会としては、職員にインセンティブを付与し公務の活性化を図るため、地方公務員制度改革の実施を持つことなく、条例で定められた勤勉手当や特別昇給などの成績反映給与について、制度の趣旨に沿った運用改善を実施すべきであると考える。したがって、定数内特別昇給は、勤務成績を適正に反映するものとして速やかに再開されるべきであり、勤勉手当についても、早急に成績率の適正な運用に向けた検討を進めるべきである。加えて、昇格についても、適正な能力成績評価に基づく昇任等によるべきであり、これによることなく、職務に対応しない高いランク(級)の給与が支払われることのないよう、職員の職務に対応する職等を見直す必要がある。本委員会としては、こうした見地から、国や他府県の動向等も考慮し、必要な基準、指針の策定等成績反映給与の運用改善に向けた検討を進めて行くこととする。
 なお、今後こうした成績反映給与等が適切に運用されるためには、職員の十分な理解と納得を得ることが重要であり、改善の効果が職員の理解の程度に比例することを十分認識すべきである。
ウ 諸手当等の見直しについて
@ 給料の調整額の見直し
 人事院勧告は、俸給の調整額の平成8年改正に係る経過措置について、俸給の引下げ改定を踏まえ、当該措置を廃止し、新たな措置を講じるとしており、本府職員の給料の調整額についても、人事院勧告に準じ、所要の改定を行う必要がある。また、現行条例では、給料の調整額は、人事委員会の昇任を得て任命権者が定めるものとされている。しかし、この調整額は、期末・勤勉手当、調整手当、退職手当等の算定基礎に含まれる職員の給料額の一部であり、給与条例主義の見地からして、給料表と同じく条例においてその根拠が定められ、細目的事項については、条例の委任に基づき人事委員会規則で定める必要がある。したがって、速やかに所要の条例改正の検討を進めるべきである。
A 扶養手当の見直し
 人事院は、本年の勧告で官民のマイナス較差等を踏まえ、職員の家計負担の実情、女性の社会進出などに伴う家族の就業形態の変化及びこれらに伴う民間における配偶者手当見直しの動き等を考慮し、配偶者に係る支給月額を縮小するとともに、子等に係る支給月額を重視する方向で改定を行うとされている。本府の場合、民間における扶養手当の平均額が、全ての場合において現行の支給額を上回っていること等から、本委員会としては、国に準じた改定の勧告は見合せることとした。しかしながら、本府でも、民間において扶養手当を含む家族手当の見直しが進んでおり、人事院勧告が言及する視点も含め、今後、扶養手当のあり方の見直しについて早急に検討を進めるべきである。
B 宿日直手当等の見直し
 宿日直手当の額については、労働基準監督機関の許可基準として、宿日直勤務につくことが予定されている同種の労働者に対して支払われる賃金日額の3分の1を下らないこととされている。本府の通常の宿日直手当額は、この基準額を大きく下回っていることから、国及び他府県の動向も考慮しながら、速やかにその改善に向けた取組みを進める必要がある。
 なお、宿日直勤務を命じながら実質的に通常業務に従事させるようなことのないよう留意する必要がある。
C その他諸手当の運用について
 本年の人事院勧告は、俸給の特別調整額の支給のあり方について関係者の意見を聴取しつつ整備するとしているが、本府の管理職手当についても、人事院の見直しの動向に留意しながら、国及び他府県との均衡を考慮し、支給水準の適正化と基準の明確化を図る必要があり、そのための指針策定等について検討していくこととしたい。また、通勤手当については、本年度から交通機関利用に係る支給限度額を撤廃するとともに6カ月定期券を基準とする等の改定がなされているが、今後とも、民間の支給状況や事務の合理性等を考慮し、回数券の基準化や支給方法の改善等について、必要な検討が進められるべきである。
エ 人事委員会業務の見直し
 人事院は、本年6月、人事制度全般についての基準化・事務簡素化等の一環として、給与制度についての大幅な基準化を図り、初任給(中途採用を含む。)、昇格、昇給等の際の給与決定に当たり、あらかじめ人事院が定めた基準に合致する場合には、人事院の事前の協議・承認を不要とし、各府省限りで行うことができるようにした。
 本委員会としては、権限と責任の統合・明確化による事務の簡素効率化は、行政システムの改革において避けて通ることのできない課題であり、基本的な方向としては、行政需要の変化に即応できる機動的、弾力的な人事管理を容易にする見地から、明確に基準を示し得る協議・承認等については、できるだけこれを不要とし、各任命権者限りで責任をもって処理できるよう措置することが重要であると考える。しかしながら、都道府県の人事委員会の場合は、国の人事院のように中央人事行政機関としての位置づけが明確でなく、また、昨今の給与抑制等地方公務員法上の権限規定が十分に機能していないなどの事情も考慮する必要があり、協議・承認等を廃止することについては、公務の中立公正性の確保と労働基本権制約の代償機能維持の見地から慎重に検討していくことが適当である。具体には、旅費のように基本的に実費支給が定着しているものについては、施行規則を任命権者に移管し、本委員会の協議・承認を不要とする等の措置が講じられるべきであるが、他の給与等勤務条件に関する協議・承認等については、地方公務員制度改革における今後の人事委員会の役割を踏まえた業務の再構築を進める中で、見直していくことが適切である。こうした見直しに当たっては、個々の協議・承認等の意義や必要性、基準化の妥当性、代替措置としての事後監理の容易さ等を実務に即して個別具体的に検討し、本府全体の事務の簡素合理化に役立つものから、順次、段階的に廃止を進めていくこととする。

(2)成績主義による人事給与制度の再構築
ア 新人事評価制度について
 民間では、6割近い企業でベースアップなしという厳しい経済情勢の下、人事給与システムにおける能力実績主義の徹底に向けた動きが顕著である。未曾有の財政危機が続く本府としては、国や他府県に先行し、必要な改革を実行に移すことで、大阪の活力を再生していく努力が求められており、人事給与制度の改革についても、他の都道府県の模範となるようなシステムの構築が必要とされている。本府では、平成12年度から職員の意識改革、勤務意欲の向上、職員の資質能力の向上を目的とする新人事評価制度を国に先駆けてスタートさせており、本年度からは、評価結果の本人開示や苦情相談制度などが整備され、来年度には、評価結果を特別昇給制度に反映させる方向で、職員団体との協議など具体的な検討が進められている。
 本委員会は、この新人事評価制度の成否が当面の人事給与制度改革の鍵となると考えられることから、民間の動向や国の人事院勧告の内容などを参考に、現行制度で検討されるべき課題について、以下の通り、一般行政部門の職員を中心とする人事評価の今後の企画実施における留意事項として提示することとした。
@ 業務目標の明確化
 実績評価を的確に行うことで職員の勤務意欲を向上させるためには、個々の職員の目標(役割)と組織の業務目標の一致が不可欠である。そのためには、各部局から各室課へ、各室課から各グループへ、そして、各グループから個々の職員へという業務目標のブレイクダウンを、各職員間での十分な話し合いの下に、できるだけ明確な形で実施することが重要である。
 なお、こうした業務目標(役割)による評価については、民間企業においても適切な業務目標の設定等様々な課題が残されており、今後とも、検討を深めていく必要があると考える。
A 緊密な協働の確保
 人事評価制度の効果の一つは、業績と能力の向上を目指して各職員が切磋琢磨することで、府民福祉のより一層の向上を図ることにあるが、個人の成果や能力のみが強調されることがあれば、職員間の協働が損なわれるおそれも否定できない。業務目標の明確化と合わせて職務における貢献度をより適切に評価することなどにより、職員間の緊密な協働を確保すべきである。
B 評価基準の統一
 人事評価制度が適正に機能するためには、評価の基準が、抽象的な概念でなく客観的に統一されている必要があり、評価結果にブレが生じないよう、制度の職員への周知、評価結果のフィードバック、評価者研修の充実、苦情相談制度の適切な運用等による理解の徹底が図られるべきである。真に公平・公正な評価とすることで、優秀な人材を発掘するとともに、適材適所の人事配置に役立てていく努力が求められる。
C 職員の理解と納得
 人事評価を実効あるものとするには、評価者と被評価者双方の理解と納得の上に実施されることが肝要であり、当初から双方で十分な話し合いがなされるべきである。
 また、多面的評価や第三者評価など評価の公正さをより高める工夫が求められる。
 なお、本府には、学校、警察等多種多様な職場や職域・職種が存在することから、人事評価の仕組みや基準等を、それぞれにより見合うものとするよう、更に検討していく必要がある。
イ 評価結果の給与への反映について
 本府では、来年度から新人事評価制度による評価結果を特別昇給に反映させる方向で検討が進められているが、民間企業においては勤務実績の積み重ねや能力向上等への評価に基づいて昇給を実施し、その時々の勤務実績の評価は賞与に反映している場合が多くなっており、昇給については毎年1回昇給するという意味での定期昇給の考え方さえ揺らいでいる。
 本委員会としては、昇給等の基盤となる人事評価は、先に述べた留意点も踏まえ今後さらにより良いものとしていく努力が求められるが、現在停止されている定数内特別昇給については、本来の趣旨に則り、勤務成績が特に良好である職員について、速やかに再開されるべきであると考える。
 加えて、民間や国等の動向を考慮すれば、同じように、勤勉手当についても、職員の勤務成績に応じた支給がなされるべきである。勤勉手当については、本委員会が平成10年に成績率の定めを通知したところであるが、懲戒処分を受けた者等極めて少数の者を除いてほぼ同じ率で支給されており、国や民間企業等の事例も参考に、速やかに新人事評価制度を活用して是正する方向での検討に着手することを求めるものである。
 なお、普通昇給についても、民間などにおいて、経験年数を基本とした昇給のあり方が見直されている状況を踏まえ、降給制度などと併せて人事評価の活用方法を検討していくべきである。
 努力して業績を挙げ、能力を向上させた職員が、給与や賞与等で公正に報われる仕組みを造り上げていくことは、任命権者や職員のみならず、その給与を負担している府民からしても当然の要請であると考える。

(3)多様な人材の採用と育成
 本府においては、これまでから採用試験における人物試験の拡充、民間実務研修の充実、民間人校長や任期付研究員の採用、また、一般職の任期付職員の制度化への取組などにより、社会環境の変化に対応し得る多様な人材の確保・育成を図ってきたところである。
 現在の危機的な財政状況を踏まえると、本府の場合は、社会情勢の激変に対応できるよう行政の専門性を高めていくだけでは十分でなく、大阪再生をめざす改革の一環として、異なった能力や価値観を有する人材を数多く受け入れ、交流することによって、組織全体を活性化し、また、職員の意識改革を推進して、その意欲や能力を最大限に引き出していくことが求められている。加えて、数年後からは、団魂の世代が大量に退職していくものと見込まれており、こうした状況にも十分対応した新たな人材の採用・育成策について、さらに検討を進めていく必要がある。具体的には、民間からの人材登用や中途採用、再任用職員等の活用、国の法制化の状況を踏まえた短時間勤務職員の導入、専門性の高い職域等での一般職任期付職員制度の活用、インターンシップ制度の充実、府政の課題に対応したスキルの習得・向上に向けた民間実務研修の充実、政策研究を行う大学院等との連携強化など、様々な採用(受入れ)・育成策について、社会経済情勢の変化を踏まえ、本府固有の事情も考慮しながら、適宜研究・検討を進めるべきである。
(4)男女共同参画社会の形成に向けた取組
ア 男女共同参画社会の形成
 男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野の活動に参画する機会が確保され、男女が均等に利益を享受でき、かつ、共に責任を担う男女共同参画社会を形成していくためには、政策立案・決定過程への共同参画や家庭生活等と職業生活を両立しやすい環境整備などにおいて、まず本府自らが民間のモデル(模範)となり取り組んでいくことが重要である。
イ 政策・方針決定過程への女性の参画の促進
 本府においては、昨年策定された「おおさか男女共同参画プラン」に基づき、女性職員の職域拡大及び政策決定に関与する職(管理職)への登用を図るため、職員採用試験に意欲あるより多くの女性がチャレンジするよう職員採用セミナーを開催するとともに、女性の登用・職域拡大に関する意識調査や女性職員キャリアアップ研修を実施するなどの取組を行ってきたところである。今後は、男性に比べ極端に低くなっている女性の主査級昇任考査の受験率や管理職員の占有率の向上などを目安として、昇任に向けた女性職員の意欲と能力の向上や不安の解消に積極的に取り組む必要があり、そのための研修の充実や管理職員を中心とする意識啓発により、個人の能力を性別に捉われることなく発揮できる職場風土への改革等がより一層進められるべきである。
ウ 総合的な子育て環境等の整備
 本府では、これまで男女が共に家庭生活における責任を担いつつ、共に働くことができる職場環境を整備していくため、育児休業制度や介護休暇制度の改善、育児・介護に従事する職員の超過勤務や深夜勤務の制限、子どもの看護休暇の創設等に積極的に取り組んできたところであり、男性職員へも「男性職員の育児休業取得促進に関する指針」に基づき、男性の子育て参画の促進を図っている。しかしながら、男性職員の育児休業の取得はごくわずかであり、また、職員意識調査では、女性の登用・職域拡大に必要な取組として、「育児、介護などに関する既存制度の充実、制度が利用しやすい職場環境の整備」、「職員の仕事と家庭を両立させることが男女にかかわらず大切であるという意識への改革」をあげているものが多いことなどからして、まず、子育てや介護は男性も女性もともに行うべきものであるという、職員意識や職場風土の改革から始める必要がある。加えて、男女共同参画のモデルとして、子どもの看護休暇の取得など育児や介護に従事する職員の勤務条件に十分配慮するとともに、必要な場合に男性職員が育児休業や育児時間、介護休暇等を取得しやすい職場環境づくりをより一層推進していく必要があり、管理監督の立場にある職員は、自らの職務として取り組むべきである。また、今後は、育児・介護などによりフルタイムや固定的な勤務時間帯では勤務できないといった職員の求めに応じるため、フレックスタイム制や短時間勤務職員など新しい勤務制度の導入についても、国の動向等を踏まえつつ研究を深めていく必要があると考える。
(5)労働時間の短縮等
 人事院は、今年の勧告で、コスト意識の徹底等による業務の効率化と実効ある超過勤務の縮減を提案している。本府においては、これまでから任命権者、職員団体等が一体となって、超過勤務の縮減を含む労働時間の短縮に取り組んできたところであり、現在、超過勤務時間の10%削減を目標に、超過勤務の上限時間の設定やBPR、IT化、ペーパーレス化等による事務改善や業務運営の効率化などが進められている。こうした努力を受けて、本府職員の超過勤務時間は、全体的には横ばい又は減少傾向にあるが、午後10時以降の深夜勤務や年間360時間以上の時間外勤務の割合は、本庁を中心にむしろ増加傾向にある。
 慢性的な超過勤務や深夜勤務は、職員の心身の健康や生活に深刻な影響を及ぼすものであり、職員の活力を低下させ、業務の遂行に支障となるおそれもあることから、その解消に向けた全庁的な取り組みが求められる。具体的には、超過勤務の上限時間の管理を徹底するとともに、こうした勤務時間管理を管理職員の業務として明確に位置付け、超過勤務の縮減に向けた取組の成果を当該職員の評価の際に考慮するよう措置することが重要である。
 また、厚生労働省は、本年2月の通達で、過重労働による健康障害防止のための総合対策の一環として、月45時間以上の超過勤務が発生した場合に産業医による助言・指導を受けることなどを事業者に義務付けていることから、超過勤務の縮減を図る一方で、一定の超過勤務者の健康診断や事業場に対する産業医の助言指導等健康管理面の徹底が可能な体制を、速やかに整備していく必要がある。
 さらに、勤務中における軽度の疲労を回復し、公務能率のより一層の増進を図るため、容易に休息を取得できる環境が求められており、こうした見地から、教職員の休息時間については、全国的な均衡も考慮し、速やかに制度化に向けた検討が進められるべきである。
(6)個人を重視した快適な職場環境の創造
 府政の活性化を図るためには、今後の少子高齢化社会の到来、女性の社会進出の増大等を視野に入れながら、多様な人材を活用するとともに、職員一人一人の価値観や生き方等を十分尊重して、その能力を最大限に発揮できる職場環境の創造が求められている。
 今後は、本府においても、管理監督の立場にある職員が中心となって自ら意識改革を図り、平素から個々の職員の価値観や考え方、個性を尊重した人事管理を行うことで、より開かれた柔軟な職場風土を醸成していくことが重要である。本年の人事院勧告では、フレックスタイム制や裁量勤務制、さらには短時間勤務制など多様な勤務形態の導入について検討していく必要があるとされているが、本府においても、こうした新しい勤務形態について、個々の職員の積極的な就業志向に応えていく観点から、国における法制化の動向等を踏まえ、本府固有の事情も考慮しつつ、所要の研究がなされる必要がある。
 なお、若年層の就労意識の変化に対応する見地から、自己啓発や社会貢献等のための総合的な休業制度等についても、研究を深めていくこととしたい。

職員給与を民間の給与水準と均衡させること
府民の理解と納得を求めつつ、職員の勤務意欲の維持・向上を図ること重要

昇給延伸措置等の影響で生じた給与配分の不均衡・不公平
昇給期間短縮などで是正すべき

 3 結 語

 職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与水準を確保することは、職員の公正・中立かつ能率的な職務遂行を維持していく上での基本であり、労働基本権の代償措置として設けられた給与勧告制度を担任する人事委員会としての大きな責務である。そのため、本委員会では、毎年度、「職種別民間給与実態調査」を実施し、本府職員と民間企業従業員の給与を対比させ、精確な比較を行った上で、毎年4月現在における職員の給与を民間の給与水準に均衡させることを基本に、国や他の都道府県の動向をも参照しつつ、給与改定の勧告を行ってきた。
 一方、本府においては、昨年9月に行財政計画(案)を示し、財政再建に向けた改革に全庁を挙げて懸命に取り組んでおり、給与等職員に関する制度についても、来年度以降、他の自治体に先駆け、新しい人事評価制度を活用して勤務成績を反映した特別昇給の再開に取り組むなど、能力実績主義に基づく人事・給与制度の再構築に向けた検討が進められている。
 本府における本年4月の職員の給与水準は、平成11年度からの昇給延伸措置等の影響により、昨年に引き続き国を下回り、依然として全国都道府県で最低の水準にあるものと見込まれ、加えて、これによる若年層の給与抑制は極めて厳しいものとなっており、組織内部において大きな給与配分の不均衡・不公平を生じさせている。一方、本委員会は、本府が財政再建の正念場という非常事態にあることを考慮し、平成11年から3年続けて公民の給与較差のうち昇給延伸措置等による影響分についての勧告を見合わせたところであるが、本年においても、民間において、ベースアップの停止(廃止)や定期昇給の見直し等人事・給与制度の改革が一般化するなど、公務員給与をめぐる情勢は、依然として非常に厳しい状況にある。
 本委員会は、本年、職員間の給与配分の不均衡・不公平に加え、非常に厳しい民間給与の低迷と全国最低レベルの職員給与という三重の大きな課題を抱えて、勧告に臨むこととなった。
 給与勧告に当たっては、職員給与を民間の給与水準と均衡させることについて府民の理解と納得を求めつつ、職員の勤務意欲の維持・向上を図ることが最も重要であり、そのためには、人事院勧告に準じて給料表を改定し、その適用に当たっては民間給与との較差を是正することと併せて、昇給期間を短縮することなどにより、昇給延伸措置等の影響により生じた給与配分の不均衡・不公平を是正すべきであるというのが、本委員会の基本的な考え方である。給料表の改定等の実施時期については、昇給延伸措置との関係から条例公布の翌月からとし、期末手当の支給割合については、人事院勧告に準じ引き下げることとした。また、本年4月に溯って公民の給与較差(1524円)分を支給することについては、これまでになく厳しい民間給与の低迷という現実を考慮して、これを求めないこととした。この結果、本年度の職員給与は実質的にマイナスとなり、職員にとっては4年続けての減収となる。
 本委員会は、昨年の勧告において、職員のみならず府民福祉に大きなマイナスとなる準用再建団体への転落は何としても回避すべきであり、そのための給与抑制措置については、緊急避難的な暫定措置にとどまる限りにおいて、誠に遺憾なことではあるがやむを得ないとしたところである。しかしながら、給与水準の公民均衡の維持と人事・給与制度の公平・公正な運用は、職員の勤務意欲の源泉となるものであり、本府の財政事情を理由に、これ以上職員給与を民間水準以下に抑制することを認める勧告を続けることは、本委員会の役割からして困難である。
 本府の財政状況は、より一層深刻さを増しており、本委員会としても、財政再建に向けたあらゆる取組が求められていることや本府職員が厳しい給与抑制の下にあってもそれぞれの職務に真摯に取り組んでいることは、十分に承知しているところである。議会及び知事におかれては、今回、このような勧告を行うに至った経緯と趣旨に深いご理解をいただき、本委員会の勧告及び意見を尊重され速やかに実施されるとともに、今後とも全庁一丸となって大阪再生に向けた改革に邁進されることを期待する。

第7 今後の地方公務員制度改革について

1 新しい地方公務員制度のあり方
 国では、行政改革の一環として、真に国民本位の行政の実現を図ることを基本理念に、国民の立場から公務員制度を抜本的に改革することにより行政のあり方自体を改革することを目的として、昨年12月「公務員制度改革大綱」を策定し、現在平成15年中の国家公務員法改正案の国会上程をめざした作業が進められている。この大綱では、地方公務員制度についても、地方公共団体の実情を十分勘案しながら、国家公務員制度の改革に準じ、改革の取組を進めることとされている。一方、本府においても、グローバル化、IT化、市場原理の導入という社会の変化を背景として、民間の経営環境はより厳しさを増しており、景気の変動に大きく左右される税収入などの構造的要因も加わり、危機的な財政状況の打開と大阪再生に向けた改革の実行が焦眉の急となっている。
 本委員会は、今回の地方公務員制度改革により、職員の意識を変革し、勤務意欲をより一層高めることで、大阪再生の原動力とする必要があると考えており、そうした観点から、本府における改革の基本理念や目標とすべき基本的な方針等についての考えを示すこととした。新しい本府の人事給与制度が、真に府民本位のものとなり、より公正で民主的な府政の推進に寄与することを期待するものである。
 また、今回の公務員制度改革では、憲法上の基本的人権である労働基本権の代償機能をより適切に発揮するとともに、地方自治の本旨に則った人事給与制度の設置、運用を可能とする必要があると考える。よって、新しい人事給与制度においては、人事委員会の役割・権限の一層の強化を図るとともに、地域の実情や各自治体の創意工夫をより反映できる仕組みとし、地域の独自性を生かした運用が原則となるよう措置されることを期待している。
2 改革の基本理念及び目標
 長期低迷を続ける経済情勢の下、多くの民間企業では、厳しい競争に打ち勝ち、生き残りを図るため、給与や昇進・昇格における能力実績主義を徹底し、終身雇用も崩れつつあるのに対し、公務員は、破綻寸前の財政状況にあっても、本来公務の中立性を確保するための身分保障に安住し、漫然と年功主義の人事運用を継続しているとの批判が高まっている。特に、大阪府では、全国的にも非常に高い失業率など民間の経営環境はより厳しさを増しており、法による身分保障を受ける公務員に対する不公平感や批判は、これまでにない高まりを見せている。こうした状況下において、本府職員の処遇について府民の理解と納得を得るには、組織の合理化や業務の効率化等において他の都道府県の模範となるような改革を、府民の目に見える形で具体化していく努力が求められる。こうした見地から、本委員会は、真に府民本位の府政の推進を図るため、府民全体の奉仕者として中立公正な職務遂行を確保し、民間のより厳しい人事給与制度を取り入れた改革を推進することで、より幅広い府民の理解と共感を得ることを基本理念に、新しい人事給与制度のめざす目標(基本方針)を次のとおり示すこととする。
(1)公務意識の徹底
 真に府民本位の府政を推進することが改革の原点であるべきであり、全ての職員に対し、府民全体の奉仕者として、公正で民主的な府政を実現するという公務意識の徹底を図る。
(2)絶え間なく合理性と効率性を追求する組織(改革志向の組織)
 社会経済情勢の変化に的確に対応し、地域間競争に打ち勝つため、常に徹底した合理性と効率性(公務能率)を追求する組織とする。
(3)高度な専門性の涵養と職務遂行能力の向上の重視
 ますます複雑化、高度化する行政需要に的確に対応するため、職員一人一人について、より高度な専門性を養うとともに、職務遂行能力をより一層高めていく。
(4)働きがいのある快適な勤務環境
 より有能な人材を採用し、その能力が最大限に発揮されるようにするには、一人一人の職員にとって働きがいのある快適な勤務環境とする必要がある。そのためには、適切な組織目標の設定と公正な人事評価・昇進管理による職員間の開かれた競争と緊密な協働の共存、勤務環境の快適性の向上を図る。
(5)個人を重視した多様な人材の育成と活用
 府政の活性化を図るには、多様な価値観の共存する開放的な組織とする必要がある。そのためには、個々の職員の生き方や価値観を尊重し、その能力を最大限に引き出すことが重要であり、そうした観点から、勤務形態の多様化や活発な人事交流等により、多様な人材の育成と活用を進める。

3 改革推進の視点
 本府における人事給与制度の改革については、2で述べた基本理念・目標に基づき進められるべきであるが、より幅広い府民の理解と共感を得る観点から、今後の改革推進に当たっては、次のような視点に留意することを望むものである。
(1)地方分権の推進
 先に述べたように、地方公共団体における人事給与制度とその水準はほとんど国に準拠している状況にあり、自治体独自の施策や措置は極めて限られたものとなっている。憲法の地方自治の本旨からすれば、本来各自治体職員の勤務条件は、各地域の実情を踏まえた人事委員会の勧告を尊重し、各自治体独自で主体的に決定されるべきである。たとえば、各地域に勤務する公務員の給与水準については、その地域の民間給与をより反映していく配慮が必要であり、本委員会としては、地本分権を推進する観点から、各都道府県で独自の制度的対応が容易となるよう、国・他府県等との均衡の緩和を強く望むものである。
(2)透明性の向上とわかりやすい制度
 本府職員の勤務条件は、その給与を負担している府民の理解と納得を得なければならない。そのためには、勤務条件に関する制度や給与水準が条例制定等を通じてオープンにされているだけでは十分でなく、その決定過程をできる限りガラス張りにすることで、府民の的確な批判に耐えるものとしていく努力が求められる。また、現行の給与制度は、極めて専門的で複雑な仕組みとなっており、これを正確に理解することは容易でない。そもそも府民に理解され難い制度や仕組みというのは改善されるべきであり、職員の勤務条件として広く何人にも説明できる簡明なものとすべきである。本委員会としては、今回の制度改革では、職員の給与、勤務時間等勤務条件に関する議論も含め可能な限り公開するとともに幅広く意見を求め、できるだけわかりやすい制度とすることで、積極的に府民の理解と共感を深めていく必要があると考える。
(3)多様な人的交流の推進
 本年の人事院勧告では、「同質性の高い閉鎖的組織においては、組織の価値観、慣行が優先されており、それらが国民の常識との乖離を生じさせている」ことが指摘されている。本府においても、職員の意識を改革し、組織の活性化を図る観点から、公務部外の様々な分野との交流を促進し、価値観や能力の異なる多様な人材をできる限り幅広く受け入れていく努力が求められている。
(4)能力実績主義の確立
 社会経済情勢の激変を背景に、多くの民間企業では、年功的運用に流れやすい職能給制度の見直し、新たな仕事給や役割給への転換など、人事給与制度改革の取組が進められている。本府においても、こうした民間企業の取組等を十分参考にしつつ、職員の意識改革、勤務意欲と能力の一層の向上を図るため、職員の仕事・役割を基本とし、年功にとらわれることなくその能力や業績等が十分反映される人事給与制度を構築していく必要がある。

4 人事委員会が果たすべき役割
 今回の地方公務員制度改革においては、現行の労働基本権の制約が維持される限り、人事委員会が代償機能を適切に発揮することが求められており、人事委員会機能の現状を踏まえれば、地方公務員法において、独立性を備えた中立公正な人事行政機関として、より明確な位置づけがなされるべきである。
 都道府県における人事委員会の現状と役割を考慮すると、勤務条件等に関する今回の改革については、人事委員会勧告等のプロセスを経て実施される必要がある。さらに、新しい人事給与制度では、給与等に関する基本的事項については、人事委員会の勧告を尊重して条例で定め、また、能力等級ごとの人員枠等の重要事項についても、人事委員会の意見の申出に基づいて議会で決定される仕組みとすることなどを求めるものである。
 職員の中立公正な職務遂行と適正な勤務条件を確保し、安定的かつ効率的な府政運営を維持・増進していくためには、人事委員会が、地方公務員法で付与された権限を、本来の法の趣旨に沿って適正に行使し、その機能を十分に発揮していくことにより、労働基本権の代償機能の維持と公務の中立公正性の確保という人事行政機関としての責務を全うしていくことが極めて重要である。本委員会としては、こうした観点から、今後とも、議会や知事の権限・役割等を十分に尊重しつつ、主体的な調査研究成果の報告や意見の申出、企画立案等を可能な限り積極的に行っていくことはもとより、今回の地方公務員制度改革においては、都道府県の人事委員会が果たすべき役割の維持と機能の強化について、十分に配慮されることを期待する。また、議会及び知事におかれては、人事委員会が担っているこうした役割と機能の重要性について、改めて御理解いただくことを望むものである。


大盛況の収穫祭
来年も参加したい/「梅ビーフ」も大人気
能勢みくさ山棚田府民農園


 10月27日の日曜日、能勢みくさ山棚田府民農園での収穫祭は、寒気の影響で冷え込むかと思われたが風さえ吹かなければ心地よい天気に。指導員の石倉さんの棚田には、50人を超える組合員とその家族が集まった。
 すぐさま、子どもたちはイモ掘り会場へ。その間、大人はバーベキューの準備や昔ながらのお釜で3升の米をどう炊くかなど大忙し。時折吹く強い風で、ビニールシートが飛ぶなどあわただしい時間が過ぎた。子どもたちはイモ掘りのあと、焼きイモを食べたり、餅つきを楽しんだりと収穫祭を満喫した。
 バーベキューの準備も整い、炊きたての新米おにぎりをほおばる参加者は、メインの肉が焼けるのを待つのみ。その肉は食と緑の総合技術センターで開発された「梅ビーフ」。店頭では、なかなか買えない肉が参加者の食欲をかき立てた。食後、元気な子どもたちはサワガニ捕りに励んだ。あるお父さんは食べ過ぎで「おなかが苦しい」と言いながらも一生懸命、子どもたちのためにサワガニを捕り続けた。
 来年も参加しますかとの問いに参加者からは「必ず来ます」「来年は田植えから来たい」と期待の声があがった。


JFTCツーリング
10月17日・若狭湾河野海岸道路/27日は能勢棚田へも参加
長距離の疲れ潮風が癒す


 自治労府職ツーリングクラブ(JFTC)は10月5日に17回目となるツアーを行った。これ以上ないという快晴の中、大型バイクを中心に5台が大手前遊歩道に集まった。今回の行き先は福井県の若狭湾河野海岸道路。目的地まで約250キロの高速ツーリングとなった。
 中国道・名神・北陸道と高速を順調に飛ばし、
敦賀インターへ。そこからは国道8号線を北上し若狭湾に到着。潮風をほほに感じながら、海岸線をゆったりとバイクを走らせた。
 新メンバーとして、前本部執行委員の吉留さん(建設)も初参加し、クラブの雰囲気に大満足。久しぶりの長距離500キロツーリングにメンバーも肩と腰に、走り応えを感じるものとなった。
 また、10月27日には能勢みくさ山棚田の収穫祭にも18回ツーリングとして、10台のバイクで参加することができた。こちらには、ハーレーダビットソンで参加の藤森さん(中宮病院)が新メンバーとして加わった。
 次々と新メンバーも増えて、これからも活発に活動を進めたいと思います。皆さんの参加をお待ちしています。
【ツーリングクラブ会長 小田晃之(健康福祉支部・岸和田保健所)】