機関紙「自治労府職」
2002年12月1日号
連合・連合官公部門連絡会 ILO勧告受け、取り組み強化
公務員制度改革
「大綱」撤回へ国会対策
各県上京団 地元選出議員に直接要請
民主的な公務員制度改革を求めるため、各県上京団による議員要請行動が11月25日〜29日の日程で行われた。地元選出の与野党国会議員に直接会い、@ILO勧告を全面的に実施し「公務員制度改革大綱」を撤回して、ILO基準に沿った公務員制度に改革すること、Aキャリア官僚制度を廃止し、天下りを全面的な禁止すること、などで理解と協力を求めた。
初日の要請行動に先立ち、都道府県会館では意思統一集会が開かれた。
丸山対策本部本部長はあいさつの中で、日本政府に「労働基本権の制約維持」の再検討を求めたILO勧告を高く評価。そのうえで「上京団による議員要請行動をやり遂げて11・29中央行動につなげ、さらに来年の通常国会を最大の焦点におき、腹を据えて運動を進めたい」と述べ、強い決意で運動を進めるとした。
また、公務員の労働基本権の確立の必要性について、@現行制度が憲法と国際労働基準に反している、A「大綱」が人事院の機能を形骸化し内閣・各府省の権限のみを強めようとしている、B能力主義の新給与制度の前提としての評価制度の仕組みを交渉で決められない、C人事院のマイナス勧告のように代償措置が形骸化している、D公務の公平で効率的な運営には近代的な労使関係の確立が必要である、と指摘した。
このあと上京団は、それぞれ地元選出の与野党議員に会い、議員への要請書を提出して、ILO勧告内容をはじめ公務員制度改革の現状を説明し、要求実現への協力を要請した。
ILO勧告正式採択
政府 「承服しがたいもの」
連合/29日に1万人が行動
勧告実施を政府に申し入れ
現地時間21日午前11時(日本時間午後7時)から開かれたILO理事会は、20日に続いて結社の自由委員会報告の審議を行い、11時10分過ぎ(日本時間午後7時10分過ぎ)には、持ち越されていた日本案件を結社の自由委報告通り正式採択した。
採択に先立って日本政府側理事は、@ILO勧告は日本の実情の理解に欠け承服しがたいもの、A今回の報告は「中間報告」であり、今後さらに慎重な検討が行われることを期待する、B日本政府は今後わが国の見解などの正しい理解が得られるようILOにさらなる情報提供を行う、という趣旨の発言を行った。
これに対して労働側理事は、@日本の労働組合運動にたいへんな勇気を与える報告・勧告をまとめた結社の自由委員会に感謝する、A連合・連合官公部門連絡会として、直ちにこの勧告を受け入れた公務員制度改革を行い、そのための誠実な協議を実現するよう日本政府に申し入れたい、と政府は直ちにILO勧告を受け入れるべきだとの立場を表明した。
連合官公部門連絡会は連合とともに、この日本案件のILO理事会での正式採択を受け、29日には政府に対してILO勧告を受け入れた公務員制度改革を実現するよう申し入れた。
また、夜には日比谷大音楽堂で1万人規模の決起集会を開き、自治労府職からも10人が参加し国会請願デモなどを行い、あらためて「大綱」の撤回と民主的な公務員制度改革の実現を強く訴えた。
府労連
2002秋季年末闘争 妥結を決定
一定の到達点を確認
府労連は27日夜、22日をヤマ場に取り組んだ2002秋季年末闘争にかかる中央委員会を開き、給料表改定は国に準じて来年1月実施(減額調整なし)、一時金12月10日条例どおり支給(2・10月・再任用職員1・20月)、宿日直手当の引き上げ(6700円に改定・来年4月1日実施)、介護欠勤制度の改善(現行15回を20回に改定・来年1月1日実施)など一定の到達点などを確認し、今季闘争の妥結を全会一致で決めた。
自治労府職は26日夜、単組の中央委員会を開いて、全会一致で府労連中央委員会に賛成の立場で臨むことを確認した。この場では各支部から今季闘争への職場・組合員の率直な意見も寄せられ、給与改定での府人勧無視の当局への怒り、人勧が形骸化することへの不安や不満、多大な損失を受け続ける若年層への配慮を求める声や、残された公民較差の解消に向けた取り組み強化など、今後の闘争強化を強く求める意見が出された。
厳しい府の財政状況、他府県の確定闘争、また府議会やマスコミの情勢など、非常に厳しい今季闘争をとりまく情勢のなか、不満の多い妥結という苦渋の選択を強いられたが、宿日直手当の引き上げなど一定の到達点も確認しながら、次年度の人勧期・確定闘争への決意を固め合った。
自治労府職学習会
規制緩和の行方と課題
公共サービスのあり方を考える
12月3日午後6時45分〜
エルおおさか606号室
経済・財政の活性化を名目にさまざまな規制緩和が進む中、公共サービスの質やあり方が問われています。府では財政危機への対応として組織・機構の見直し、縮小が進められています。市町村との、機能・役割分担と府に求められるサービスの内容・提供のあり方について、自治労府職も積極的な議論を行いサービスの向上、職場の活性化を図り職場を守るたたかいを進める必要があります。さらに、地方独立行政法人化の問題でも、総務省による法制度化への作業が進み、府でも組織改編の検討項目に取り上げており、サービスと組織のあり方についての議論が必要です。参加をお願いします。
◆日時 12月3日(火) 午後6時45分〜
◆場所 エルおおさか606号室
◆内容 講演「規制緩和の行方と課題
―公共サービスのあり方を考える(仮題)」
講師 植本 眞砂子さん(自治労本部副委員長)
12月12日(木)
自治労府職第84回定期大会
助け合い、支え合い、それが
自治労府職の元気の源
・午前9時40分開場・10時開会
・新別館北館4F多目的ホール
当日、本部書記局は閉局します。
2004年4月実施予定
出勤管理の電子化で当局が説明
IDカード・パソコンを活用
自治労府職 詳細の協議申し入れ
28日、自治労府職に対して当局から「出勤簿管理の電子化について」の説明があった。説明では現在、策定中の「総務サービスセンター」構想の一環として、すでに設計契約済の業者と府当局との協議の結果、BPRの一手法であるとのこと。
内容は、病院・大学など一部の出先機関を除き、府庁本館・別館や各出先機関など、ほぼ全職場の庁舎出入り口などに約200台(学校を除く)のIDカードリーダーを設置する。職員にはIDカードが配布され、従前の押印方式から出勤時にカードを通すことや、パソコンからの入力などに変更しようとするもの。
今後、「総務サービスセンター構想」の他の業務処理変更とあわせ、1月頃に基本設計を公表し2004年(平成16年)4月から運用開始したいとしている。なお、病院・大学では出勤簿に替わり、簡易な出勤管理表にサインなどを行い監督責任者(担当者)が欠勤入力処理を行う。また、パソコン配備が無いなど10人程度の小規模所属では、職員は出勤管理表にサインなどを行い、所管元所属で出勤簿の手入れや入力を行うとしている。
以上の改革で、所属長からグループ長への権限委譲が可能となることや、勤怠報告事務の廃止、データの二次活用が可能となるなどとしている。
このほか出勤時の対応として、時間年休などの権利行使後の出勤についても、カード入力が原則必要(退勤時は不要)となるなどの説明があったが、詳細や具体的なケースについては今後、自治労府職との協議を行うよう強く申し入れた。
【BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)】これまでのルールを見直して、業務プロセスを抜本的に再構築すること
出勤簿管理の電子化について(案)
従来、出勤簿への押印、各種休暇の届出とこれらに係る出勤簿の手入、休暇の取得状況等の集計など、紙により、かつ、手作業で行ってきたこれらの処理をIDカードとパソコンを活用し出勤簿管理の電子化を実現する。
■各種休暇の届出
○手続
●職員は年次休暇等を取得する場合、パソコンにより届出を行う。
●また、現行処理と同様に連絡を受けた他の職員が代行入力処理を行うことも想定している。
●承認権限はグループ長に委譲し、グループ長の承認処理後に、電子出勤簿にデータを反映させる。
○大学及び病院における処理
大学及び病院においては、
@従来どおり紙様式による届出を提出する。
A事務局においては、出勤簿の手入を行うのと同様に、パソコン画面上で、電子出勤簿の入力手入を行う。
■IDカードの活用
出勤時の出勤簿への押印処理を廃止し、IDカードをカードリーダーにスリットさせる方式による出勤管理に変更する。
○IDカードの配布
IDカードは、非常勤職員を除くすべての職員に配布する。
※IDカードと職員証の一体化についても検討を行っているところ。
○カードリーダの設置
●カードリーダーは、府庁本館・別館等の府の独自施設(出先機関含む)については、庁舎の出入口又はエレベーターホール等職員が出勤時に利用しやすい場所に設置する。
●設置台数については、当該公署に勤務する職員数を配慮して設置することとする。
●民間等のビルに公署を置く所属については、各フロア毎にカードリーダーを設置する方向でビル所有者等との調整を行う。
○IDカードを忘れた場合の処理
●出勤の際のIDカード不携帯の場合に備え、パソコンによる出勤入力も可能。この場合、本人による入力又はグループ長による代行入力処理の両方を想定。
■処理パターン
○基本的な手続・処理パターン⇒別紙「出勤管理の事務パターン」のパターン1参照
○カードリーダーを設置しない所属における処理
●病院、大学、その他小規模(職員が10人前後)の所属についてはカードリーダーを設置しない。
(病院・大学の出勤簿処理)⇒別紙「出勤管理の事務パターン」のパターン2参照
@簡易な出勤管理表を各所属(グループ等)ごとに配置し、職員がサインあるいはチェックする形で出勤時の押印に替わる処理を行う。
A直接監督責任者(又は担当者)は、欠勤者があった場合は、パソコンによる欠勤入力の処理を行う。
(その他小規模所属)⇒別紙「出勤管理の事務パターン」のパターン3又はパターン4参照
パソコンが配置されている場合は、パソコンによる出勤入力を行うこととする。
パソコンが配置されていない又は庁内LANが整備されていない所属については、
@簡易な出勤管理表を各所属(グループ等)ごとに配置し、職員がサインあるいはチェックする形で出勤時の押印に替わる処理を行う。
A出勤状況を本課(本所)等の所管元に連絡し、所管元において、出勤簿の手入を行うのと同様に、パソコン画面上で、電子出勤簿の入力手入を行う。
◎期待される効果
○オンラインでの出勤状況の把握が容易⇒このため、所属長からグループ長に権限委譲が可能。また、所属内における出勤状況の共有化が図られ、電話の取次ぎ等も能率向上。
○出勤簿データは日々蓄積され、給与支給等の処理へ自動的に連動⇒勤態報告等の事務は廃止。
○出勤簿データの検索や閲覧、集計作業等、データの二次活用が可能⇒様々な調査事務を廃止。必要に応じ、必要な資料の作成が可能。
親睦深めよう
泉州地区評泉南ブロック 総会で方針確立
【泉州地区評・泉南ブロック発】11月20日、泉南府民センターで2003年度の総会を開いた。 昼休み中の開催にもかかわらず各支部から18人の代議員の参加があり、ブロックエリア内の組合員の親睦を深めることを中心とした今年度の活動方針について確認した。
昨年度開いた行事は、春闘期学習会とビアパーティーで、今年度はより多くの行事を行うため、総会を早期に開くこととした。主な活動として、ボウリング大会やいちご狩り、学習会などを予定している。
なお、総会で確認した新年度の役員体制は次のとおり。
【議長】
木村 伸一(健康福祉・岸和田府民保健プラザ)
【副議長】
薮内 千秋(建設・岸和田土木)
澤 光秋(社保労組・貝塚)
【事務局長】
中谷 淳二(税務・泉南)【幹事】
山本 秀美(環境農水・泉州農と緑の総合事務所)
岩本 直子(健康福祉・砂川センター)
あっせん
締切12月12日
配達12月19日
ユース部
ウマいさいぼしはいかが
本年からはユース部があっせんする『さいぼし』は、いかが。年末・年始の宴席などのあてに最適。ご家族・友人の集いの場に、ぜひご購入下さい。
【申込方法】
各単組・支部・職場に配布済の注文書に必要事項を記入のうえ、各単組・支部の役員を通じて、FAX・てい送・直接持参などで本部ユース部まで(FAX06―6945―1315)。
【あっせん価格】
1キログラム 4200円
500グラム 2200円
100グラム 450円
※1キロ、500グラムはブロック、100グラムはスライス
【代金支払】
注文書持参の場合は代金を添えて。振り込みの場合は次の口座に振り込んでください(大和銀行大手支店普通2405082、または近畿労働金庫本店営業部普通6658032,どちらも名義は自治労大阪府職員労働組合)。
【申込締切】12月12日(木)
【配達日】12月19日(木)
【問い合せ先】
自治労府職ユース部(06―6945―4056)
「さいぼし」とは
馬肉を桜のチップなどでくん製にしたもので、柔らかい仕上がりと豊かな香りで美味。工場から直接、職場に配達するので新鮮。
食べ方はいろいろ
生のまま、薄くスライスしてショウガ醤油で食べるのが定番。マヨネーズやカラシ醤油でもOK。表面をあぶれば、香ばしさが増し、生とは違った味が楽しめる。
レクリエーションで親睦交流
(建設支部・大阪東部地区評南河内ブロック)
建設支部
イワシなど大漁で大満足
りんくうタウンで釣り大会
【建設支部発】イワシ・メバル・ハゼなど、晩ご飯の食卓をにぎわす大漁の釣果に大満足の参加者。11月23日の土曜日、支部は岸和田(土木事務所)・企業局・港湾局の3分会との共催で、釣り大会を開き組合員とその家族17人が参加した。
場所はりんくうタウン北側のフェリー乗り場周辺。ほぼ無風、晴天の心地よい日和に恵まれた参加者は思い思いに竿を振るった。
錆びた釣竿
某組合員氏は、しまい込んでいた釣竿を3年ぶりに引っ張り出し気合十分だったが、竿は3年間ほったらかしの状況に耐えられず、サビサビの状態。他の参加者の失笑を買っていたが、その竿で粘り強く釣りに没頭していた。
半袖Tシャツ
鳳(土木事務所)分会から参加の安井さん親子3人は、大会閉会3時以降も夕方を狙って現場に残ったほど、熱中していた。なかでも、息子さんはなんとTシャツ姿での釣り。いくら晴天でも、もう11月も下旬、海風が吹けば冷たいなか元気ぶりを発揮していた。
◆ ◆
支部では、執行委員持参の七輪でお湯を沸かして、カップラーメンを提供するなど、釣りのサポートも万全の体制で臨み参加者の人気を博した。 釣果の結果には大会らしく特別賞も設定し、見事、受賞したのは大会第1号となるハゼを釣り上げた岸和田土木分会の薮内さんと、播岡副支部長に連れられてやってきた甥の勝也くん。参加者全員にも、豪華な参加賞が授与された。
大阪東部地区評
南河内ブロック
千早でみかん狩り
おいしい「おでん」「焼き肉」も
袋いっぱい甘酸っぱいお土産
【東部大阪地区評・南河内ブロック発】11月23日の土曜日、恒例になったみかん狩りを千早赤阪村で開き、組合員とその家族が参加して交流を深め合った。
毎年お世話になっている矢田農園は、温習ミカンのほか紅ミカン・スダチなど約6000本の木には鮮明なオレンジ色の実がなり、葉っぱの緑に映えて山の斜面を彩り豊かにしている。
参加者は、はさみを使って一つ一つもぎ取りながら、新鮮でジューシーな実をほおばった。もちろん、袋いっぱいに詰めたミカンはお土産に。
昼食には、羽曳野病院支部・大鳥支部長特製のおでんのほか焼肉・豚汁が用意され、参加者の空腹を満たした。
緑と甘酸っぱいにおいに囲まれた心地よい時間を過ごした参加者は、お土産を手に満足げに帰路に。このあと、千早のマス釣り場にも移動して休日を楽しんだ。ここには建設支部の釣り組も合流してにぎわった。
日本海の本場の味
かにすきセット
香住から直送
福利厚生部はおいしいと大好評のかにすきセットをあっせん中。本場の味をご家庭でどうぞめしあがれ。
大好評
2月21日随時受付中
■申込方法 専用の申込書に必要事項を記入のうえ、福利厚生部まで届けて下さい(FAX可。06―6945―1315)。
■代金振込 商品代金は申し込みと同時に次の口座に振り込んで下さい。
【近畿労働金庫本店(普)5863934】または【大和銀行大手支店(普)8847973】まで。口座名義はどちらも自治労大阪府職員労働組合。
■申込締切 2003年2月21日(金)。
その間、申し込みは随時受付中。
■配送可能日 2003年2月28日(金)まで(ただし、1月1日、2日を除く)。
■配達希望日 申込日から必ず5日以後を記入して下さい。また、申込書には必ず「配達希望日」欄への記入を忘れずに。
本
「闇の子供たち」
梁 石日 著
解放出版社、本体1,800円
日本人を痛打する人身売買の実態
梁石日(ヤン・ソギル)の「闇の子供たち」(解放出版社)は、タイ北部の子どもたちの人身売買をテーマに取りあげたフィクションであるが、そのテーマは重くノンフィクション的色彩が極めて強い。極限的な貧困が平然と人間をゆがめてしまう恐怖。人間の不幸に群がる人間のおぞましさ。タイ北部の少数民族や山岳民族は、その貧しさ故に子どもを商品として人買いに売り、生活の糧とする。人身売買組織が、5〜6歳の少女・少年をターゲットにわずかな金を餌に買いあさる。バンコクでは、幼児売春に飢えた男や女たちが、アメリカやドイツ、日本からやってくる。
この子どもたちは、性奴として調教されていく。地下室に閉じ込められ、犯され、煙草の火を押しつけられ、従順な性奴隷として奉仕することを運命付けられる。背くことは死を意味する。恐怖と飢えが彼らを縛る。調教が終われば「幼児性愛者」が待ち構えている。年端もいかない幼児との性愛を「新しい愛」と自賛する破廉恥な性行為が延々と続けられる。気に入った子がいれば、性の玩具として養子にするため、多額の金が手渡される。人身売買は、タイ北部の少数民族や山岳民族だけではない。バンコクのスラムの子どもたちも同じような運命にある。子どもたちは、エイズにかかれば地方の売春組織に転売され、「使いものにならなくなったら」生きたままゴミ袋に入れられ、広大なゴミ捨場にゴミとして処理される。
梁石日の筆力は、人身売買の実態に迫り、「幼児性愛者」の底知れぬ闇に光をあてる。しかし、多分闇から闇に消えていく子どもたちの実態は、もっと凄惨なのだろう。子どもの臓器を買いにくる日本人の話、麻薬の密輸がからんでくる。平和ボケした日本人を痛打するには、あまりにも凄まじい現実だ。
圧倒的な人身売買が「闇の子供たち」のテーマであるが、その子どもたちの絶望に、少しでも希望を与えるために闘っているタイのボランティア組織(社会福祉センター)で働く日本人の音羽恵子がヒロイン。彼女が、タイの人身売買の実態に目覚めていく様子。組織に介入してくる人身売買組織とスパイ。日本人記者とのほのかな恋と別れがサブテーマとしてある。その背景にあるタイの政治情勢。地獄の釜でかきまぜたような「闇の子供たち」には未来はない。
読み終わって10日ほどたって、通勤電車の中でタイの子どもたちのことが心をよぎった。泣けた。
「この国の子どもたちのことは、この国の人間が解決するしかない。君はしょせん、この国では外国人なんだ」と言う恋人の本音に対し、つい納得してしまいそうになるが、音羽恵子は毅然(きぜん)と答える。「わたしは子どもたちと一緒にわたし自身を生きる」と。
ヒロインにエールを送りたい。