機関紙「自治労府職」

 2003年8月8日号外

人事院勧告特集号

声明

 1、人事院は本日、政府と国会に対して月例給を四、〇五四円、一・〇七%引き下げ、一時金を〇・二五月削減することを中心とする給与勧告や地域給与・給与制度見直し、公務員制度改革に関わる報告を行った。
 2、二〇〇三人事院勧告期の取り組みに当たってわれわれは、公務員給与をめぐる厳しい情勢のもとで、公務員労働者の生活防衛に向け、十分な交渉・協議と合意に基づく給与勧告や実質的な不利益遡及となる昨年方式の減額調整措置を行わせないことを最重点課題に設定し、ぎりぎりの段階までねばり強い取り組みを進めてきた。
 本年の給与勧告は、月例給の二年連続大幅なマイナスや一時金の大幅な月数削減で過去最大の年間給与の引き下げとなり、われわれの生活に大きな影響を与える内容となったことは極めて不満である。しかも、この勧告が民間に波及し、賃金のマイナススパイラルを加速させることに強い危惧を持つものである。しかしながら、われわれの賃金・労働条件が民間準拠の枠組みのもとで決定されるシステムである限り、われわれとしてもこの水準勧告については受け止めざるを得ないものと判断する。
 減額調整措置については、実質的に不利益遡及となる昨年方式ではなく、四月分の官民比較給与をベースに官民較差分を制度調整する方式となった。これは、われわれが昨年の給与法改正法案に関わる国会附帯決議に基づき、終始基本姿勢を堅持し強い決意で交渉・協議に臨んできた到達点であり、成果である。しかし、このことをもって、公務員の賃金・労働条件決定制度としての人事院勧告制度固有の制度的矛盾や歴史的限界が決して克服されたわけではないことを認識しておかねばならない。
 配分について、俸給表を一率的な引き下げとしたことや諸手当の改定内容をわれわれの要求を踏まえたものとしたこと、ワークシェアリングや短時間勤務制度についての研究会の設置に言及させたことなどは、ねばり強い交渉・協議の結果といえる。
 先行して人事院との間で交渉・協議を進めてきた調整手当の異動保障の見直し内容については、該当者にとっては厳しいものであるが、ぎりぎりわれわれの考え方が受け入れられたものといえる。自宅に関わる手当の見直し内容や通勤手当制度の改善についてもわれわれの要求が基本的に反映されたものといえる。しかし、賃金・労働条件の見直しが今回のように国会での議論の中で実質的に確定されたことについては、公務員の労使関係の軽視であり、それが勤務条件法定万能主義につながるとすれば、われわれとしても毅然として対応していかなければならない。
 地域給与や給与制度の見直し、寒冷地手当の調査等については、人事院はこの秋から本格的な作業を進める考えである。われわれとしても公務員連絡会全体で対応する体制を早急に確立し、「交渉・協議の場」の設置を含め、十分な交渉・協議と合意を求めていかなければならない。いずれにしても、あらゆる既存の公務員の人事・給与諸制度が本格的に見直される時代に入っていることを認識し、体系的かつ総合的な取り組みを進めていく必要がある。
 3、われわれの闘いは、人事院勧告期の取り組みから確定闘争期の段階に移行することとなる。その取り組みは、総人件費抑制政策が継続し、公務員給与バッシングがかつてなく強まっているもとでの予断を許さないものとなる。
 われわれは、政府が本年の給与改定の方針を検討するに当たって、勧告を無視した改定を行わないことなどを含め、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意することを強く求めていくこととする。また、これから本格化する地方自治体の確定闘争、独立行政法人や政府関係特殊法人等の闘いが困難なものとなることを踏まえ、公務員連絡会全体としての態勢を一層強化し、本年の秋季闘争を全力で進めていくこととする。
 同時にわれわれは、連合や連合官公部門連絡会に結集して「政労協議」を軸とした取り組みを強め、労働基本権確立を含む民主的公務員制度の実現に向けて全力で取り組みを進めていかなければならない。
二〇〇三年八月八日
公務員労働組合連絡会


2年連続のマイナス勧告に
給与・一時金合わせ削減幅は過去最大

 人事院は八月八日、平均一・〇七%、四、〇五四円のマイナス給与改定勧告を行った。マイナス勧告は二年連続。その内容は、@俸給について平均一・一%、三、四五九円引き下げる、A配偶者に関わる扶養手当を五〇〇円引き下げる、B自宅の住居手当のうち六年目以降の一、〇〇〇円を廃止する、C一時金の支給月数を〇・二五月分削減し年間四・四〇月分とする、などであり改定の実施時期は法施行日からとする一方、官民の給与を均衡させる方法については、昨年方式ではなく四月分の官民比較給与をベースに較差分を制度調整する方式とした。このように今回の勧告はマイナスの給与改定に加えて一時金も大幅に削減し、両者を合せると過去最大の削減幅となる.自治労・公務員連絡会は、減額調整問題について四月からのすべての給与を月ごとに再計算するという実質的な遡及方式ではなく、年間の官民給与を均衡させる観点から四月分の比較給与を基礎に較差分を制度調整する方式に改めさせたことについて「職員団体の意見を十分聴取し、納得を得られるよう最大限努力すること」との春闘回答を足掛かりに粘り強く交渉・協議を積み重ねてきたたたかいの到達点として確認。引き続き、確定期の課題の解決と要求の実現に向け、取り組み態勢を確立して強力に推進するとした。以下は報告と勧告の全文。

月例給1.07%引き下げ
官民比較分を制度調整

平成15年8月8日

衆議院議長   綿貫 民輔殿
参議院議長   倉田 寛之殿
内閣総理大臣  小泉純一郎殿

人事院総裁 中島忠能

 人事院は、国家公務員法、一般職の職員の給与に関する法律等の規定に基づき、一般職の職員の給与について別紙第一のとおり報告し、併せて給与の改定について別紙第二のとおり勧告するとともに、公務員制度改革について別紙第三のとおり報告する。
 この勧告に対し、国会及び内閣が、その実現のため、速やかに所要の措置をとられるよう切望する。

別紙第1
職員の給与に関する報告
 内外の厳しい社会経済情勢の下、民間企業では、グローバル化の流れの中で、これまで以上に競争力を強化するとともに高い付加価値を創造するよう戦略的な取組が進められており、その一環として、それを実現するため様々な人事・機構改革が行われている。特に最近では、人員の削減など人件費面での経営効率化により企業収益の改善が進んだ企業もみられるようになっており、そうした企業を含め人事評価システムの確立、成果・実績をより重視した人事・賃金体系への転換、雇用形態の多様化等の人事システムの見直しが浸透してきている。
 国家公務員については、労働基本権が制約されていることの代償措置として、人事院の給与勧告制度が設けられている。この勧告は、国家公務員法に定める情勢適応の原則に基づき、毎年、公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に行ってきている。近年における民間企業の給与水準は、厳しい経営環境を反映して、平成十一年以来連続して特別給(ボーナス)の年間支給月数が対前年比でマイナスになるという状況が続き、これに応じて公務員についても特別給(期末手当・勤勉手当)が連年引き下げられてきた。特に、昨年は、民間企業における給与抑制措置が一段と進み、公務員の月例給が民間の月例給を上回ったため、人事院勧告制度創設以来、初めての俸給及び扶養手当の引下げならびに四年連続の特別給の引下げを内容とする勧告を行い、この勧告は、情勢適応の原則に基づいて公務員給与を適正な水準に設定するものとして完全実施されたところである。
 昨春以来、民間企業の月例給は対前年同月比でマイナスの状況が続いていたが、本年の春季賃金改定後の民間企業の給与実態について本院において例年同様の調査を行ったところ、昨年に引き続く厳しい経済・雇用情勢から、多くの企業においてベースアップの中止が行われているほか、一部の企業においては昇給停止、賃金カットのような厳しい給与抑制措置が講じられており、本年四月分に支払われた給与について行った官民の比較の結果では、昨年より緩やかになっているものの本年も公務員の月例給が民間を上回っていることが明らかとなった。
 本院は、このような厳しい諸情勢の下で、全国各地で有識者、企業経営者などから広く意見を聴取するとともに、職員団体や実際の人事管理に当たる各府省の人事当局から、俸給や諸手当の改定、年間給与の調整方法等について従来にも増してきめ細かく意見聴取を行った上で、本年の給与改定について様々な角度から検討を行った。
 公務員給与は、毎年四月時点で官民給与の比較を行い、民間給与との均衡を図るものとしてきたところであり、本年においても、官民較差の大きさ、仲裁裁定の状況等給与を取り巻く諸事情を考慮すれば、民間準拠の考え方に則り、公務員の月例給を民間の水準まで引き下げ、いわゆる「逆較差」を解消することが適当であると判断した。
 さらに、月例給の配分については、本年の較差が△四、〇五四円であり、これまでの例からみて、まず月例給の中心である俸給の改定を基本とすることが適当と考え、昨年に引き続き、全俸給表の全俸給月額を級ごとに同率で引き下げることを基本とし、併せて配偶者に係る扶養手当を引き下げ、自宅にかかる住居手当について新築・購入から五年間支給するものに限ることとした。なお、民間の初任給が昨年以来ほぼ横ばいであることを踏まえ、労働市場における競争性の高い初任給及びその周辺の俸給月額の引下げは緩和することとした。さらに、特別給についても、民間準拠により〇・二五月分引き下げることとした。
 これにより、職員の年間給与は、平均一六万三〇〇〇円程度減少することとなる。これは、五年連続の引下げであるとともに、過去最大の引下げ額となった。
 月例給の改定については、四月には遡及させないこととする一方で、四月からこの改定の実施の日の前日までの期間に係る官民較差相当分については、十二月期の期末手当でその額を制度的に調整するよう所要の措置を行うこととした。具体的には、職員が本年四月に受けた官民比較の基礎となる給与種目の給与額の合計額(管理職等については、俸給の特別調整額を含めた額)に較差の率(△一・〇七%)を乗じて得た額に、本年四月からこの改定の実施の日の属する月の前月までの月数を乗じて得た額と、本年六月期の特別給に較差の率を乗じて得た額を合算した額を基にして調整を行うこととした。
 なお、この調整方法をとるに当たっては、昨年の給与法(「一般職の職員の給与に関する法律」)改正法案に対する国会の附帯決議、本年の国営企業等の仲裁裁定の内容も踏まえ、職員団体と十分な意見交換を行うとともに、各府省の人事当局からの意見を聴取した。
 調整手当の異動保障については、調整手当支給地域に六カ月を超えて在勤した職員に限ることを法律上の要件とする(いわゆる「ワンタッチ受給」(業務等の面で特段の必要性がないにもかかわらず、調整手当支給地域に職員を短期間異動させることによって、調整手当の異動保障を支給する運用)の防止)とともに、激変緩和という制度の趣旨を徹底させるため、支給期間を二年間(現行三年間)に短縮し、二年目の支給割合を現行の割合の一〇〇分の八〇に逓減させることとした。また、交通機関等利用者に対する通勤手当の支給については、給与原資の効率的配分という観点から、現行の一カ月定期券の価額を基礎とする支給を六カ月定期券等の割安な定期券の価額を基礎に一括支給するとともに、従来の最高支給限度額に対応する運賃等相当額(五五、〇〇〇円)まで全額支給するなどの改定を行うこととした。
 先に述べたとおり、民間企業においては、経営戦略の一環として、人事・賃金体系の改革が急速に進められている。公務員制度についても、公務員制度改革大綱に基づいて、平成十八年度から改革を実施する方向で検討されているが、人事院としても、給与制度を含めた公務員制度全般の抜本的改革に向けて制度改革の基本的方向を提示し、職員団体、各府省の人事当局との十分な意見交換を行いながら、今秋以降、更に積極的な取組を進めていくこととしたい。

1 給与勧告の基本的考え方
(給与勧告の意義と役割)
 給与勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものである。公務員給与については納税者である国民の理解と納得を得る必要があることから、本院が労使当事者以外の第三者の立場に立ち、官民給与の精確な比較を基に給与勧告を行うことにより、適正な公務員給与が確保されている。勧告が実施され、適正な処遇を確保することは、労使関係の安定を図り、能率的な行政運営を維持する上での基盤となっている。
(民間準拠の考え方)
 本院は、国家公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行っている。比較対象となる民間企業の規模については、会社組織で働く民間従業員の約六割をカバーしている企業規模一〇〇人以上とするとともに、比較方法についても、単純な官民給与の平均値によるのではなく、主な給与決定要素である職種、役職段階、年齢、勤務地域などを同じくする者同士を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行った上で、仮に公務員に労働基本権があればどのような結果となるのか等を念頭に置きつつ、社会経済情勢全般の動向等を踏まえながら勧告を行ってきている。
 この比較の結果、公務員給与が民間給与を下回った場合だけでなく、公務員給与が民間給与を上回った場合においても、民間準拠を基本として算出した較差を解消して官民の均衡を図ることが、公務員給与を社会一般の情勢に適応させるという国家公務員法第二八条の定めに合致するところである。
 民間準拠を基本に勧告を行う理由は、@国は民間企業と異なり、市場原理による給与決定が困難であること、A職員も勤労者であり、社会一般の情勢に適応した適正な給与の確保が必要であること、B職員の給与は国民の負担で賄われていることなどから、労使交渉等によってその時々の経済・雇用情勢等を反映して決定される民間企業従業員の給与に公務員給与を合わせていくことが最も合理的であり、職員をはじめ広く国民の理解と納得を得られる方法であると考えられることによる。
(雇用情勢と公務員給与)
 近年の厳しい経済状況による民間企業の倒産や人員削減等の影響を受けて、雇用情勢がこれまでになく悪化する中で、失職リスクの低い公務員の給与については、失業率を考慮して民間水準より低く定めるべきとの意見もある。
 民間企業の給与の動向をみると、厳しい経済・雇用情勢の下で現実に給与水準の引下げが行われている事業所も見られるなど、その水準は時々の雇用情勢等の動向を反映したものとなっている。したがって、公務員給与を民間企業従業員の給与に合わせていくことにより、結果として公務員給与にも雇用情勢の動向が反映されるものと考えられる。

2 官民の給与の比較
(1) 職員の給与の状況
 本院は、「平成十五年国家公務員給与等実態調査」を実施し、給与法適用の常勤職員の給与の支給状況等について全数調査を行った。その結果、民間給与との比較を行っている行政職の職員(行政職俸給表(一)・(二)の適用者二二〇、八二九人、平均年齢四一・〇歳)の本年四月における平均給与月額は三七七、五三五円となっており、大学教授、医師等を含めた職員全体(四五七、九二〇人、平均年齢四一・六歳)では四一四、〇二二円となっている。
 また、行政職俸給表(一)適用者の平均給与月額(三八〇、八一五円、平均年齢四〇・五歳)を組織区分別にみると、本府省四二一、六一四円(平均年齢三八・九歳)、管区機関四〇二、八五一円(同四〇・九歳)、府県単位機関三八五、五六九円(同四一・八歳)、その他の地方支分部局三六一、九九二円(同三九・三歳)、施設等機関等三六六、四一八円(同四二・五歳)となっている。
(2) 民間給与の調査
ア 職種別民間給与実態調査
 本院は、企業規模一〇〇人以上で、かつ、事業所規模五〇人以上の全国の民間事業所約三八、〇〇〇(母集団事業所)のうちから、層化無作為抽出法によって抽出した八、〇五四の事業所を対象に、「平成十五年職種別民間給与実態調査」を実施した。調査では、公務の行政職と類似すると認められる事務・技術及び技能・労務関係四十四職種の約三十一万人ならびに研究員、医師等五十職種の約五万人について、本年四月分として個々の従業員に実際に支払われた給与月額等を実地に詳細に調査した。また、引き続く厳しい経済・雇用情勢等を踏まえ、給与の抑制措置の状況や、各企業における雇用調整の実施状況等について、本年も引き続き調査を実施した。
 なお、この職種別民間給与実態調査の対象となる事業所については、給与改定の状況等にかかわらず無作為に抽出しており、ベースアップの中止・ベースダウン、定期昇給の停止、賃金カットなどの給与抑制措置を行った事業所の給与の実態も的確に把握するよう設計されている。
 職種別民間給与実態調査の調査完了率は、民間の経営環境が厳しい中においても、各民間事業所の協力を得て、本年も九三・五%ときわめて高く、調査結果は広く民間事業所の給与の状況を反映したものとなっている。

イ 調査の実施結果等
 本年の職種別民間給与実態調査の主な調査結果は次のとおりである。
(ア) 本年の給与改定の状況
(初任給の状況)
 新規学卒者の採用を行った事業所は、大学卒で四七・八%(昨年四五・四%)、高校卒で二〇・〇%(同一八・三%)と昨年に比べてやや増加しているが、そのうち大学卒で八四・四%、高校卒で八四・八%の事業所で、初任給は据置きとなっている。
(給与改定の状況)
 別表第一に示すとおり、一般の従業員について、ベア慣行のある事業所のうちベースアップを実施した事業所の割合は三六・六%(昨年三八・〇%)にとどまっている。一方、ベースアップを中止した事業所の割合は五九・八%(同五九・五%)、ベースダウンを実施した事業所の割合は三・六%(同二・五%)となっており、昨年とほぼ同様の傾向となっている。
 また、別表第二に示すとおり、一般の従業員について、定期昇給制度のある事業所のうち定期昇給を実施した事業所の割合は八八・八%(昨年八五・四%)となっている。一方、定期昇給を停止した事業所の割合は一一・二%(同一四・六%)となっており、昨年に比べてやや減少している。
(賃金カットの状況)
 別表第三に示すとおり、賃金カットを実施した事業所は、一般の従業員でみると四・一%(昨年四・二%)、管理職(非組合員)では六・三%(同八・四%)となっており、昨年に比べてやや減少している。
 一方、賃金カットを実施した事業所における平均カット率は、一般の従業員でみると六・八%(昨年六・三%)、管理職では七・八%(同六・九%)となっており、昨年に比べてやや高くなっている。
(イ) 雇用調整等の実施状況
 別表第四に示すとおり、民間事業所における雇用調整等の実施状況をみると、経営環境は引き続き厳しいが、平成十五年一月以降に雇用調整等を実施した事業所の割合は五一・七%となっており、昨年(六〇・四%)より減少している。雇用調整の措置内容としては、採用の停止・抑制(二八・八%)、部門の整理・部門間の配転(二〇・一%)、業務の外部委託・一部職種の派遣社員等への転換(一八・二%)、残業の規制(一五・一%)などの割合が高く、希望退職者の募集(四・九%)、正社員の解雇(一・八%)、一時帰休・休業(一・二%)などの厳しい措置も引き続き実施されているが、措置内容すべてにおいて昨年より割合が減少している。
 このように、民間企業においては、依然として、人員の縮小、経費の縮減、残業の抑制等の様々な取組を行いつつ、給与についても、多数の事業所において、ベースアップの中止やベースダウン、定期昇給の停止、賃金カットなどの抑制措置を行っていることが明らかとなった。
(3) 官民給与の比較
ア 月例給
(ア) 官民給与の較差
 本院は、国家公務員給与等実態調査及び職種別民間給与実態調査の結果に基づき、公務においては行政職、民間においては公務の行政職と類似すると認められる職種の者について、給与決定要素を同じくすると認められる者同士の四月分の給与額を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行った。その結果、別表第五に示すとおり、公務員給与が民間給与を四、〇五四円(一・〇七%)上回った。
(イ) 家族手当
 民間における家族手当の支給状況を調査した結果は別表第六に示すとおりであり、職員の扶養手当の現行支給額と比較すれば、職員の扶養手当の支給額が民間の家族手当の支給額を上回っている。
(ウ) 住宅手当
 民間における住宅手当の支給状況を調査した結果は別表第七に示すとおりであり、自宅居住者に住宅手当を支給している理由は、「世帯主や有扶養者への補助」とする事業所が多くなっている。
(エ) 通勤手当
 民間における通勤手当の支給状況を調査した結果は別表第八に示すとおりであり、交通機関利用者に通勤手当を支給する場合の算定の基礎となる定期券代は最長期間の定期券としている事業所が過半となっている。
 また、民間の自動車等使用者に対する支給額は、職員の現行支給額と比較すると、長距離の距離区分においておおむね上回っている。

イ 特別給
 本院は、職種別民間給与実態調査により民間の特別給(ボーナス)の過去一年間の支給実績を精確に把握し、これに職員の特別給(期末手当・勤勉手当)の年間支給月数を合わせることを基本に勧告を行っている。
 本年の職種別民間給与実態調査の結果、昨年五月から本年四月までの一年間において、民間事業所で支払われた特別給は、別表第九に示すとおり、所定内給与月額の四・三八月分に相当しており、職員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(四・六五月)が民間事業所の特別給を〇・二七月分上回っている。

3 公務員給与を取り巻く諸情勢
(1) 最近の賃金・雇用情勢等
ア 民間賃金指標の動向
 「毎月勤労統計調査」(厚生労働省、事業所規模三〇人以上)によると、本年四月の所定内給与は、昨年四月に比べ〇・四%減少している。また、所定外給与は三・四%増加しており、これらを合わせた「きまって支給する給与」は〇・二%の減少となっている。なお、パートタイム労働者を除く一般労働者では、所定内給与は〇・五%の減少、きまって支給する給与は〇・二%の減少となっている。

イ 物価・生計費
 本年四月の消費者物価指数(総務省、全国)は、昨年四月に比べ〇・一%下落しており、勤労者世帯の消費支出(同省「家計調査」、全国)は、昨年四月に比べ名目一・〇%の減となっている。
 本院が家計調査を基礎に算定した本年四月における全国の二人世帯、三人世帯及び四人世帯の標準生計費は、それぞれ一六七、四五〇円、二〇一、五〇〇円及び二三五、五四〇円となっている。また、「全国消費実態調査」(同省)を基礎に算定した同月における一人世帯の標準生計費は、一二二、一二〇円となっている。

ウ 雇用情勢
 本年四月の完全失業率(総務省「労働力調査」)は、昨年四月の水準を〇・一ポイント上回り、五・四%(季節調整値)となっている。
 また、本年四月の有効求人倍率及び新規求人倍率(厚生労働省「一般職業紹介状況」)は、昨年四月に比べると、それぞれ〇・〇八ポイント、〇・一三ポイント上昇して〇・六〇倍(季節調整値)、一・〇三倍(同)となっている。

エ 国営企業等の賃金改定
 一般職の国家公務員約八〇万人の約四割を占め、本年三月まで国営企業(四現業)であった国有林野事業、郵政事業、造幣事業及び印刷事業については、本年四月に郵政事業が日本郵政公社に移行し、造幣事業及び印刷事業が独立行政法人に移行したことにより、別々の組織形態となった。
 しかしながら、本年の賃金改定においては、昨年までと同様、統一的な歩調により調停、仲裁手続きが進められ、中央労働委員会は、本年六月十七日に一斉に、基準内賃金を平成十五年四月一日現在の額から一人当たり組織ごとにそれぞれ二・四八%〜二・五八%相当額の原資をもって引き下げることを内容とする仲裁裁定を行った。その後、本年六月二十七日の閣議において仲裁裁定どおりの実施が了解された国営企業(林野)を含め、配分交渉に移行している。
 なお、昨年度の国営企業に対する仲裁裁定では、平成十四年度賃金を基準内賃金の一・九〇%(加重平均)の十二月分に相当する額の原資をもって引き下げることとされ、具体的な処理方法については労使交渉に委ねられたが、国営企業においては昨年は基準内賃金の引下げは行われずに、昨年十二月期、本年三月期の期末手当において減額調整のみが行われた。このため、本年の仲裁裁定の引下げは、昨年の基準内賃金の引下げ分を含んだものとなっている。
(2) 各方面の意見等
 本院は、公務員給与の改定を検討するに当たって、東京のほか全国三九都市において有識者、中小企業経営者等広く各界との意見交換を行う等により、広く国民の意見の聴取に努めた。
 各界との意見交換において、官民比較による給与水準の決定方法については、妥当であるとの評価が多かった。また、給与水準については、地方においては公務員の給与水準は高いとの意見がある一方、実績等に見合ったものであれば給与水準が高くてもよいとの意見もあった。このほか、公務員給与においても実績主義を進めるべきとの意見があったほか、能力主義といっても公務の仕事にどのような能力が必要であるかを見極められるか疑問視する意見もあった。
 また、「国家公務員に関するモニター」(五〇〇人)においては、公務員の給与を決定するに当たって重視すべき要素として、「職員本人の実績や成果」(八七・二%)、「仕事の種類や内容」(七八・一%)とする意見が高い割合となっている。

4 本年の給与の改定
(1) 改定の基本方針
 前記のとおり、本年四月時点で、公務員の月例給与が民間給与を四、〇五四円(一・〇七%)上回っていることが判明した。これは、引き続く厳しい経営環境の下、昨年の賃金改定後における民間給与の水準上昇がみられなかったこと、本年も多数の民間事業所でベースアップの中止、定期昇給の停止、賃金カットなどの給与抑制措置がとられたことなどによるものと考えられる。
 給与勧告を通じて官民給与の精確な比較により適正な公務員給与水準を維持・確保することは、労働基本権制約の代償措置として、これまで各方面から強く求められているものであり、このような機能は民間の給与水準が上がる場合だけでなく、下がる場合も同様に働くべきものである。
 本年においては、昨年に引き続き公務員給与が民間給与を上回ることとなったが、本院としては、官民較差の大きさや仲裁裁定の内容等を考慮し、これに見合うよう月例給の引下げ改定を行うことが適切であると判断した。
 月例給の改定については、官民較差の大きさ等を考慮し、基本的な給与である俸給月額の引下げ改定を行うとともに、民間における手当の支給実態等にかんがみ、扶養手当を引き下げ、自宅に係る住居手当について新築・購入から五年間支給するものに限ることとした。
 特別給については、職種別民間給与実態調査の結果に基づき、昨年一年間の民間の特別給の支給割合に見合うよう、〇・二五月分引き下げる必要があると判断した。

(2) 改定すべき事項
ア 俸給表
(行政職俸給表)
 官民の給与比較を行っている行政職の職員の俸給表(行政職俸給表(一)・(二))については、官民格差の大きさ等を考慮し、すべての級のすべての俸給月額について引下げ改定を行うこととする。
 改定に当たっては、世代間の給与配分の適正化の必要性に留意しつつ、労使双方の意見等を十分に踏まえ、各俸給月額について級ごとに同率の引下げとすることを基本とする。具体的には、民間の初任給や管理職給与の動向等を考慮して、労働市場における競争性の高い初任給付近については引下げ率を緩和するとともに、管理職層については平均をやや超える引下げ率とする。
 この改定により、俸給表の俸給月額(本年四月現在平均三二四、一八七円)は、平均三、四四六円(一・一%)の減となる。
 なお、再任用職員の俸給月額についても、再任用職員以外の職員の俸給月額の改定に準じた改定を行う。
(行政職以外の俸給表)
 行政職以外の俸給表についても、行政職俸給表との均衡を基本に、所要の改定を行うこととする。
 指定職俸給表については、従来から参考としている民間企業の役員報酬との間に差が認められるものの、諸般の事情を勘案し、行政職俸給表の管理職層と同程度の引下げ改定を行う。

イ 扶養手当
 民間における家族手当の支給状況をみると、配偶者及び子に対する手当額がそれぞれ減少しているが、子を扶養する職員の家計負担の実情を考慮して、配偶者に係る支給月額を五〇〇円引き下げることとする。
 この改定により、行政職の職員の扶養手当の平均受給額一二、一七五円は、二〇九円(一・七%)の減となる。

ウ 住居手当
 自宅に係る住居手当は、主に住居の維持管理の費用を補てんする趣旨で自宅所有者に支給されているが、制定以来支給額の改定が行われておらず、公務部内でその趣旨が必ずしも定着してこなかったこと、民間の住宅手当の支給理由をみても公務と同様の趣旨で住宅手当を支給する事業所は少数であることからみると、本手当は基本的には廃止の方向で対処することが適当である。
 しかしながら、本手当のうち住宅を新築・購入した職員に対して、その住宅の取得後五年に限り支給される月額二、五〇〇円の手当については、住宅取得時の財形持家個人融資の融資要件とされており、毎年の同融資の利用者が相当数存在することから、当面存置することとする。
 月額一、〇〇〇円の手当の廃止により、行政職の職員の住居手当の平均受給額三、六七〇円は、一七三円(四・七%)の減となる。

エ 通勤手当
 国家公務員は転勤が多く、異動の時期も様々であることから、交通機関等を利用する職員の通勤手当は、従来、一カ月定期券の価額を基礎として手当額を決めてきた。
 しかしながら、民間においては、過半の事業所が六カ月定期券等の最も割安な定期券の価額を基礎として通勤手当を支給しており、公務においても、給与原資の効率的配分のため、交通機関等利用者に係る通勤手当は、低廉な定期券の価額により一括支給するよう改めることとする。また、実費負担の推進及び事務簡素化の観点から、従来の最高支給限度額に対応する運賃等相当額(五五、〇〇〇円)まで全額支給とするものとし、二分の一加算措置を廃止することとする。なお、六カ月定期券等の価額による一括支給へ円滑に切り替えるため、制度の導入に当たっては、実情に応じ所要の調整措置を講ずることとする。
 また、交通用具使用者に係る通勤手当は、民間の支給状況等を勘案して、長距離通勤者に対する手当額を改定することとする。

オ 調整手当の異動保障
 調整手当の異動保障は、昭和三十六年四月に新しい任地における生活習慣への適応に配慮し、職員の異動に伴う給与の減少による経済的影響を緩和する観点から、六カ月間を支給期間として創設されたものに由来する。その後、職員を広域にわたって頻繁に人事異動させざるを得ないという国家公務員の人事管理の実態の中で、支給期間は、人事異動の円滑化のため順次延長され、昭和四十五年から現行の三年間とされている。
 異動保障の運用に関して、近年、いわゆる「ワンタッチ受給」の事例が明らかになるとともに、三年の支給期間は本来の激変を緩和するという制度の趣旨からみると長すぎないかとの批判も行われてきた。
 異動保障については、調整手当をはじめ地域関連手当の再構築について検討を行う際に、廃止を含めその在り方を見直していく必要があるが、それまでの間の暫定措置として、異動保障の人事管理に果たす役割を考慮した上で、以下のような見直しを行うこととした。
 異動保障が適正に運用されるためには、いわゆる「ワンタッチ受給」を制度的に防止できることとする必要があり、通常の人事サイクルを念頭に置き、調整手当支給地域に六カ月を超えて在勤した職員に限ることを法律上の異動保障の要件とすることが適当である。異動保障については、従来は官民較差に含まれている措置であることから、給与の部内配分の問題として、公務部内の合意があれば弾力的な運用ができるものと考えられてきたところであるが、制度の趣旨に沿った給与の支給を求める国民の声を踏まえ、職員の異動に伴う調整手当の支給割合の低下により生じる給与の急激な減少を一定期間緩和するために必要な措置とすることとし、具体的には、一年目の支給割合は現行どおりとし、二年目は現行の支給割合の一〇〇分の八〇に引き下げ、三年目は支給しないこととする。この改定に伴い既に異動保障を受けている職員については、所要の経過措置を講ずることとする。

カ 期末手当・勤勉手当等
 期末手当・勤勉手当については、本年四月までの一年間における民間の特別給の支給割合との均衡を図るため、支給月数を〇・二五月分引き下げ、四・四月分とすることとする。本年度については、十二月期の期末手当から差し引くこととし、平成十六年度以降においては、民間の特別給の支給状況等を参考に、六月期及び十二月期における支給月数を定めることとする。
 また、指定職俸給表適用職員の期末特別手当、再任用職員の期末手当及び期末特別手当、任期付研究員及び特定任期付職員の期末手当についても同様に支給月数の引下げ、期別の再配分を行うものとする。

キ その他
 医師に対する初任給調整手当について、所要の改定を行う。
 委員、顧問、参与等の手当について、指定職俸給表の改定状況等を踏まえ、支給限度額に関する所要の改定を行う。
 なお、俸給の月額の引下げに伴い、調整手当など俸給の月額を算定基礎としている諸手当は、はね返りにより行政職の職員の場合、平均で二一三円の減となる。
(3) 改定の実施時期等
 本年の給与改定は、公務員の給与水準を引き下げる内容の改定であるため、この改定を実施するための法律の規定は、官民給与を均衡させるための所要の調整措置を講じた上、遡及することなく施行日からの適用とする。なお、減額改定に伴う日割計算などの事務の複雑化を避けるため、この改定は、公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときは、その日)から施行することとする。ただし、通勤手当及び調整手当の改定については、平成十六年四月一日から施行することとする。
 官民給与は四月時点で比較し均衡を図ることとしており、遡及改定を行わない場合であっても、四月からこの改定の実施の日の前日までの期間に係る官民較差相当分を解消させる観点からの所要の調整を行うことが情勢適応の原則にもかなうものである。
 この調整については、施行後速やかに調整が行われる必要があること、弾力的な調整を行う場合は月例給より特別給としての期末手当が適当と考えられることなどから本年十二月期の期末手当の額において、本年四月からこの改定の実施の日の前日までの間の官民較差相当分について制度的に調整するよう所要の措置を講ずることとする。具体的には、職員が本年四月に受けた官民比較の基礎となる給与種目の給与額の合計額(管理職等については、俸給の特別調整額を含めた額)に較差の率(△一・〇七%)を乗じて得た額に、本年四月からこの改定の実施の日の属する月の前月までの月数を乗じて得た額と、本年六月期の特別給に較差の率を乗じて得た額を合算した額を基にして調整を行うこととする。
 また、この調整方法をとるに当たっては、昨年の給与法改正法案に対する国会の附帯決議、本年の国営企業等の仲裁裁定の内容も踏まえ、職員団体と十分な意見交換を行うとともに、各府省の人事当局からの意見を聴取した。
 なお、俸給表の切替えに伴う調整措置としては、改定後の俸給表適用の日前に職務の級に異動があった職員等の号俸等について逆転防止のために必要な調整を行う。
(4) その他の課題
ア 国立大学の法人化等に伴う教育職俸給表の在り方等についての検討
 国立大学等は平成十六年四月から法人化することとなり、また、国立病院・療養所も同年六月までには独立行政法人へ移行する予定である。これらに伴い、国立大学や国立高等専門学校等の教授等の教職員は公務員でなくなり、国立療養所附属の准看護師養成所等の講師は一般職の国家公務員ではあるが給与法適用職員でなくなる。この結果、国立の高等学校等の教諭等、国立療養所附属の准看護師養成所の講師を適用対象とする教育職俸給表(二)及び国立の小中学校等の教諭等を適用対象とする教育職俸給表(三)については適用者がいなくなるとともに、国立大学等の教授等を適用対象とする教育職俸給表(一)及び国立高等専門学校等の教授等を適用対象とする教育職俸給表(四)においてもそれぞれ基幹となる適用者がいなくなる。
 教育職俸給表(一)については行政機関に置かれる大学校の教授等、教育職俸給表(四)については医療施設等に置かれる看護師等の養成所の教官等が適用対象となるため、それら職種の職務内容等を精査し、当該職種にふさわしい俸給表の在り方について、基本的な検討を行っていくことが不可欠である。今後は、それら俸給表の適用者を有する各省、職員団体との十分な意見交換を行い、教育職俸給表全体の在り方について、早急に必要な改正を行うための検討を進めることとする。
 なお、教育職員に係る諸手当で受給者がいなくなるものを廃止することや国立大学学長が公務員でなくなること等に伴う指定職俸給表の改正など、国立大学の法人化等に伴う形式的な改正等を含め、法令全体の整備の検討についても、教育職俸給表の検討に併せて行っていくこととする。

イ 寒冷地手当の実態の把握
 寒冷地手当については、平成八年に支給水準の見直し等を行ったところであるが、支給地域及び支給水準について、民間の支給状況との隔たりがあるとの指摘があることも考慮して、民間における同種手当の支給状況等地域の実情を把握するため、速やかに全国的な調査を実施することとする。その後、調査結果を踏まえて、必要な検討を進めていくこととする。

ウ 特殊勤務手当の見直し
 特殊勤務手当については、手当ごとの実態等を精査して特殊性が薄れているものなどについて廃止を含めた見直しを行うとともに、必要と認められるものについて所要の改善を図るための検討を進めることとする。

エ 月例給の比較方法の見直し
 月例給の官民比較の比較職種のうち来年度から適用者が大きく減少することとなる行政職俸給表(二)については、必ずしも代表的職種といえなくなってきていること、これに相当する民間の人員数も減少傾向にあり、今後ますます官民較差の精確な把握が困難となっていくことから、来年から比較職種の対象外とする方向で検討を行うこととする。

オ 特別給の算定方法の見直し
 期末手当・勤勉手当の支給月数は、従来から民間の特別給の過去一年間の支給実績を精確に把握し、その支給状況に応じて改定を行っており、一年以上の遅れを伴うとはいえ、精確性や信頼性の点で評価されてきた。しかしながら、近年、民間の支給状況をより迅速に反映すべきとの意見が一層強まっていること、また、民間では、業績をベアではなく特別給に反映させる企業が増加していること等を踏まえ、来年以降の職種別民間給与実態調査においては、民間の特別給の前年冬と当年夏の一年間の支給実態を調査し、その結果に基づき期末手当・勤勉手当の支給月数の改定を行うこととする。

カ 独立行政法人等の給与水準の把握
 昨年の報告で、独立行政法人あるいは特殊法人等の役職員の給与水準を国として把握する必要性について言及したところであるが、その後、政府において、「主務大臣は、新独立行政法人の役員の報酬等及び職員の給与の水準を、国家公務員及び他の独立行政法人の役職員と比較ができる形で分かりやすく公表する」こととされ、現在、給与の水準の公表にあたってのガイドラインの策定に向けた検討が行われているところであり、本院としても、専門機関として給与の調査・比較等について必要な協力を行うこととする。
5 給与構造の基本的見直し
 (1) 地域における公務員給与をはじめ給与構造全般の見直しの必要性
 我が国の社会経済システムが大きく変革している中で、多くの民間企業においては、事業の再構築や組織の見直しを行うとともに、年功的人事・賃金体系を成果・実績重視の人事・賃金体系に改革し、成績に応じた個人の公平をより重視した仕組みへの見直しが進められている。
 公務員給与は、これまで全体としての給与水準の外部との均衡を図るとともに、部内における均衡を重視して制度設計が行われてきた。しかしながら、近時、公務員給与の部内配分の在り方についても、国民の関心が高まっており、地域の公務員給与は地域の民間給与の実情を十分に反映していないのではないか、公務員給与の制度・運用が年功的となっているのではないかなどの批判が行われている。
 地域における公務員給与の在り方は、地域給等の地域別給与配分のほかに、職種間、世代間など給与配分全体の在り方と密接に関係している。特に、公務員給与の地域差は、民間給与のそれに比べると不十分であり、今まで以上に地域の民間給与等を反映させる必要があるとの指摘がある。また、給与制度全般については、俸給表の各級の金額の上下幅が大きく、級間の給与水準の重なりが大きいなどの俸給表構造自体の問題や、昇格・昇給など成績反映の仕組みの活用が不十分であることなどから、地域に勤務する公務員を含め公務員給与が年功的・一律的に増加し、民間における成果・実績主義を強化する傾向と違いが生じてきているという事情がある。
 したがって、公務内外の大きな環境変化の下、国民の関心の高い、地域の公務員給与の問題に適切に対応していくためには、民間準拠の前提となる民間給与の調査について、民間企業における人事・組織形態の変化に合わせて調査・比較方法の適時の見直しを行うことが必要となる。加えて、給与決定における年功要素を縮小するとともに、職務・職責の的確な反映を基本に勤務実績・業績を重視した給与制度(信賞必罰の徹底)となるよう、制度の見直しを行いつつ、民間における給与の地域差に対応できる地域手当を設けることが肝要となる。
 このように地域における公務員給与問題に基本的に対処していくためには、給与制度全般として整合性の取れた形で見直しを進めていく必要がある。
 以上については、地域に勤務する公務員の給与にふさわしい給与の在り方について検討を行うため、昨年九月に設けられた学識経験者を中心とする「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」(座長:神代和欣横浜国立大学名誉教授)の基本報告(本年七月)においても、同様の認識が示されるとともに、今まで以上に地域の民間給与等を反映させるため、俸給と手当の配分を見直しつつ、支給地域、支給割合等を基本的に見直した地域手当を導入すること、給与の地域差を拡大する場合、必要な転勤を円滑に行えるよう、一定期間、逓減型の手当を導入することなどが提言されているところである。

(2) 主な給与制度改革の検討課題と今後の予定
 本院としては、地域における公務員給与問題の抜本的見直しは、給与制度見直しと一体で行う必要があるという基本的な認識に立ちつつ、前記基本報告を踏まえると、当面、次のような点が給与制度見直しについての主な検討課題となるものと考える。
 @ 職務を基本に個人の勤務実績・職務能力を重視した給与体系への転換を目指して、ライフ・ステージに応じた給与としての性格にも留意しつつ、職員層に応じてめりはりのある配分が的確に反映できるよう、等級構成のほか、昇給制度を含めた給与カーブなど俸給構造の在り方を抜本的に見直し。
 A 職責反映を徹底するとともに、職員の士気を確保する観点から、俸給のほかに、時々の具体的な職務・職責の違いを適切に反映させるための仕組みを整備。
 B 地域における民間給与の実情等がより一層反映できる仕組みとなるよう、俸給と手当の在り方を見直しながら、地域関連手当を再構築するとともに、転勤の在り方の見直しや必要な転勤が円滑に行える仕組みを検討。
 C 行政における専門性の重要度の高まりや職員の在職期間の長期化の要請を踏まえつつ、ライン職中心の体系のほかにスタッフ職の特性にも配慮した新たな仕組み(例えば、簡素な等級構成の新たな俸給表)についても検討。
 D 特別給については、人事評価制度の整備を図るとともに、勤務成績のより的確な反映を実現。

 公務員制度改革については平成十三年十二月の公務員制度改革大綱に基づき政府において検討が進められているところ、本院としては、職員の勤務条件に対する労働基本権制約の代償機能を適切に果たすべく、以上述べた課題をはじめとして、給与構造の基本的な見直しに向けて、各府省、職員団体等と積極的に意見交換を行いながら、早期に具体化が行えるよう検討を進めていくこととしたい。

6 給与勧告実施の要請
 人事院の給与勧告制度は、労働基本権を制約されている公務員の適正な処遇を確保するため、情勢適応の原則に基づき公務員の給与水準を民間の給与水準に合わせるものとして、国民の理解と支持を得ながら公務員給与の決定方法として定着している。
 公務員は、本府省をはじめ離島やへき地を含め全国津々浦々で、国民生活の維持・向上、生命・財産の安全確保等の職務に精励している。特に、近年は行政ニーズが増大するとともに複雑化する中で、個々の職員が高い士気をもって困難な仕事に立ち向かうことが求められており、公務員給与は、そのような職員の努力や成果に的確に報いていく必要がある。
 本年の改定は、昨年に引き続き月例給の引き下げ等を内容とするものとなったが、民間準拠により公務員給与を決定する仕組みは、長期的視点から見ると公務員に対し国民から支持される納得性の高い給与水準を保障し、前述のような職員の努力や成果に報いるとともに、人材の確保や労使関係の安定などを通じて、行政運営の安定に寄与するものである。
 国会及び内閣におかれては、このような人事院勧告制度の意義や役割に深い理解を示され、別紙第二の勧告どおり実施されるよう要請する。

別紙第2
 勧告
 次の事項を実現するため、一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九五号)、一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律(平成九年法律第六五号)及び一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成十二年法律第一二五号)を改正することを勧告する。

1 一般職の職員の給与に関する法律の改正
(1) 俸給表
 現行の俸給表を別記第1のとおり改定すること。
(2) 諸手当
 ア 初任給調整手当について
 (ア) 医療職俸給表(一)の適用を受ける医師及び歯科医師に対する支給月額の限度を三〇七、九〇〇円とすること。
 (イ) 医療職俸給表(一)以外の俸給表の適用を受ける医師及び歯科医師で、医学又は歯学に関する専門的知識を必要とする官職にあるものに対する支給月額の限度を五〇、二〇〇円とすること。
 イ 扶養手当について
 配偶者に係る手当の月額を一三、五〇〇円とすること。
 ウ 調整手当の異動保障について
 (ア) 支給の対象となる異動等について、異動等の前に在勤していた調整手当の支給地域等に引き続き六カ月を超えて在勤していた職員の異動等に限ることとすること。
 (イ) 支給期間について、異動等の日から二年を経過するまでの間とし、支給割合について、異動等の日から一年を経過するまでの間は異動等の前に在勤していた調整手当の支給地域等に係る調整手当の支給割合、その後異動等の日から二年を経過するまでの間は当該支給割合に一〇〇分の八〇を乗じて得た割合に引き下げた支給割合とすること。
 (ウ) (イ)の改定に伴い、当該改定前から調整手当の異動保障を支給されている職員について、当該改定の実施の日に新たに当該異動保障を支給される職員の支給割合等を超えない範囲内で所要の経過措置を講ずること。
 エ 住居手当について
 自らの所有に係る住宅に居住する世帯主である職員に対する住居手当について、当該職員等によって新築され、又は購入された住宅で当該新築又は購入がなされた日から起算して五年を経過するまでの間にあるものに居住している当該職員に限って支給するものとすること。
 オ 通勤手当について
 (ア) 交通機関等利用者に対する通勤手当の額は、その者が利用する交通期間等に応じて六カ月を超えない範囲内で人事院規則で定める期間(以下「特定期間」という。)についての運賃等相当額(当該交通機関等が二以上である場合にあっては、それぞれの特定期間についての運賃等相当額の合計額)とすること。ただし、当該運賃等相当額を当該特定期間の月数で除して得た額(当該交通機関等が二以上である場合にあっては、それぞれの運賃等相当額をそれぞれの特定期間の月数で除して得た額を合算した額。以下「一カ月当たりの運賃等相当額」という。)が五五、〇〇〇円を超えるときは、五五、〇〇〇円を一カ月当たりの当該通勤手当の額の限度とすること。
 なお、全額支給の限度額を超える場合において当該額との差額の二分の一を加算する措置(以下「二分の一加算措置」という。)は廃止すること。
 (イ) 交通用具使用者に対する通勤手当の額を、使用距離が片道四〇キロメートル以上四十五キロメートル未満の場合は月額二〇、九〇〇円、片道四十五キロメートル以上五〇キロメートル未満の場合は月額二一、八〇〇円、片道五〇キロメートル以上五十五キロメートル未満の場合は月額二二、七〇〇円、片道五十五キロメートル以上六〇キロメートル未満の場合は月額二三、六〇〇円、片道六〇キロメートル以上の場合は月額二四、五〇〇円とすること。
 (ウ) 交通機関等と交通用具を併用する者の通勤手当の額についても、交通機関等利用者及び交通用具使用者と同様の改定を行うとともに、一カ月当たりの当該通勤手当の額の限度を五五、〇〇〇円とし、二分の一加算措置を廃止すること。
 (エ) 勤務地を異にする異動等に伴い通勤に新幹線鉄道等を利用することが必要となった職員等に対する通勤手当の額は、特定期間についての特別料金等の額の二分の一に相当する額(その額が二〇、〇〇〇円に特定期間の月数を乗じて得た額を超えるときは、当該額)及び(ア)の額又は交通機関等と交通用具を併用する者の通勤手当の額の合計額とすること。
 (オ) 島等に所在する官署に通勤するためやむを得ず有料の橋等を利用する職員で一カ月当たりの運賃等相当額等が五五、〇〇〇円を超えるものに対する通勤手当の額は、特定期間についての特別運賃等の額に相当する額及びその額を負担しないものとした場合における(ア)の額、交通機関等と交通用具を併用する者の通勤手当の額又は(エ)の額の合計額とすること。
 (カ) (ア)又は(ウ)から(オ)までの通勤手当のうち特定期間に係る通勤手当は、特定期間の最初の月に係る人事院規則で定める日に支給すること。ただし、交通機関等利用者に係る一カ月当たりの運賃等相当額が五五、〇〇〇円を超える場合等にあっては、人事院規則で定めるところにより支給するものとすること。
 (キ) (ア)又は(ウ)から(オ)までの通勤手当を支給される職員について、特定期間において離職した場合その他の通勤の実情に変更が生じた場合で人事院規則で定める場合には、人事院規則で定める額を返納させることとすること。
 カ 期末手当及び期末特別手当について
 (ア) 平成十五年度の支給割合
 a 平成十五年十二月に支給される期末手当の支給割合を一・四五月分(特定幹部職員にあっては、一・二五月分)とし、同月に支給される期末特別手当の支給割合を一・六月分とすること。
 b 再任用職員については、平成十五年十二月に支給される期末手当の支給割合を〇・七五月分(特定幹部職員にあっては、〇・六五月分)とし、同月に支給される期末特別手当の支給割合を〇・八五月分とすること。
 (イ) 平成十六年度以降の支給割合
 a 六月及び十二月に支給される期末手当の支給割合をそれぞれ一・四月分及び一・六月分(特定幹部職員にあっては、それぞれ一・二月分及び一・四月分)とし、六月及び十二月に支給される期末特別手当の支給割合をそれぞれ一・六月分及び一・七月分とすること。
 b 再任用職員については、六月及び十二月に支給される期末手当の支給割合をそれぞれ〇・七五月分及び〇・八五月分(特定幹部職員にあっては、それぞれ〇・六五月分及び〇・七五月分)とし、六月及び十二月に支給される期末特別手当の支給割合をそれぞれ〇・八月分及び〇・九五月分とすること。
 キ 委員、顧問、参与等の職にある非常勤職員の手当について
 一般職の職員の給与に関する法律第二十二条第一項の委員、顧問、参与等の職にある非常勤職員に対する手当の勤務一日についての通常の場合における支給額の限度を三七、九〇〇円とすること。

2 一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律の改正
(1) 俸給表
 現行の俸給表を別記第2のとおり改定すること。
(2) 期末手当について
 ア 平成十五年度の支給割合
 平成十五年十二月に支給される期末手当の支給割合を一・六月分とすること。
 イ 平成十六年度以降の支給割合
 六月及び十二月に支給される期末手当の支給割合をそれぞれ一・六月分及び一・七月分とすること。

3 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律の改正
(1) 俸給表
 現行の俸給表を別記第3のとおり改定すること。
(2) 特定任期付職員の期末手当について
 ア 平成十五年度の支給割合
 平成十五年十二月に支給される期末手当の支給割合を一・六月分とすること。
イ 平成十六年度以降の支給割合
 六月及び十二月に支給される期末手当の支給割合をそれぞれ一・六月分及び一・七月分とすること。

4 改定の実施時期等
(1) 改定の実施時期
 1から3までの改定は、この勧告を実施するための法律の公布の日の属する月の翌月の初日(公布の日が月の初日であるときは、その日)から実施すること。ただし、1の(2)のウ、オ及びカの(イ)、2の(2)のイ並びに3の(2)のイについては、平成十六年四月一日から実施すること。
(2) 平成十五年十二月に支給する期末手当及び期末特別手当に関する特例措置
 ア 平成十五年十二月に支給する期末手当または期末特別手当(以下「期末手当等」という。)の額は、期末手当基礎額または期末特別手当基礎額に、当該期末手当等の支給割合を乗じて得た額に、在職期間別の割合を乗じて得た額(以下「基準額」という。)から、(ア)及び(イ)に掲げる額の合計額に相当する額を減じた額とすること。この場合において、当該相当する額が基準額以上となるときは、当該期末手当等は、支給しないこととすること。
 (ア) 平成十五年四月一日(その日の翌日以後に新たに職員となった者にあっては、新たに職員となった日)において職員が受けるべき俸給、俸給の特別調整額、初任給調整手当、扶養手当、調整手当、研究員調整手当、住居手当、通勤手当、単身赴任手当の基礎額、特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。)、暫定筑波研究学園都市移転手当及び教職調整額の月額の合計額に一〇〇分の一・〇七を乗じて得た額に、同月から1から3までの改定の実施の日の属する月の前月までの月数を乗じて得た額(同年四月一日から当該実施の日の前日までの間において俸給を支給しないこととされていた期間等がある職員にあっては、当該額から当該期間等を考慮して人事院規則で定める額を減じた額)
 (イ) 平成十五年六月に支給された期末手当及び勤勉手当の合計額又は期末特別手当の額に一〇〇分の一・〇七を乗じて得た額
 イ 平成十五年四月一日から同年十二月に支給する期末手当等の基準日までの間において特別職に属する国家公務員等であった者から引き続き新たに職員となった者で任用の事情を考慮して人事院規則で定めるものについては、アの額の算定に関し所要の措置を講ずること。

別紙第3 
公務員制度改革の具体化に向けて

 はじめに
 公務員制度改革は、喫緊の課題であり、国民の批判に正面からこたえつつ、新たな時代の要請に的確に対応した実効ある改革を実現していかなくてはならない。人事院は、かねてより、中立第三者機関、人事行政の専門機関として、これからの行政を支える公務員制度を実現するという視点から、新たな人事評価システムや職務・職責を基本に実績を的確に反映した新しい給与制度についての提言等を行ってきた。
 平成十三年一月に内閣官房行政改革推進事務局が発足し、同年十二月に閣議決定された「公務員制度改革大綱」に基づき、同事務局を中心に法制化の作業が進められている中で、人事院としても、同事務局に対し改革案の問題点や留意すべき事項を伝えるとともに、昨年の給与勧告時の報告や国会の場において、公務員制度改革の基本的方向について提案するなど、その役割を果たしてきた。
 人事院としては、これからも、公務員制度改革の検討が進められるに当たって適切な役割を果たしていきたいと考えているが、公務員制度は、公務員に対してだけでなく、行政の在り方、国民生活に重大な影響を与えるものであり、改革後の公務員制度が国民から支持され、実効ある制度として運用されるためには、関係者や各界有識者を含め各方面で幅広い見地からオープンな議論が行われる必要があると考える。
 以下は、このような議論に資するため、公務員制度改革が向かうべき方向性などについて現時点での人事院の意見を表明するものであり、国民の期待にこたえる実効ある制度改革の実現に向けて、各界各方面において広範な議論が行われることを期待したい。

1 公務員制度改革を取り巻く状況
 我が国の景気のぜい弱性を除去し、持続的な経済成長を実現するために社会経済構造の抜本改革が求められ、効率的で透明な国民本位の行政への転換が必要とされる中で、公務員制度についても、時代の変化に対応し、能力・実績を重視した柔軟で開放的な人事管理を目指して改革に取り組んでいくことが求められている。
 人事院としても、こうした状況を踏まえ、公務員が高い士気の下で能力を十全に発揮して国民から信頼される行政運営が可能となるような公務員制度改革を実現すべく、これからの公務員制度が向かうべき方向について昨年の報告において提言を行い、引き続き検討してきているところである。

2 公務員制度改革に当たっての基本事項
(1) 国民の求める改革への対応
 公務員制度改革の出発点は、国民の公務員に対する批判にこたえることである。現在、公務員に対しては、国民から、セクショナリズム、キャリアシステム、「天下り」、幹部公務員不祥事、年功的人事等について様々な批判があり、これらが国民不在の行政、公務員と国民との意識の乖離を生んでいるとの厳しい指摘もなされている。これらの問題は、公務員制度だけですべて解決できるものではなく、政治、行政など多方面からのアプローチが必要であるが、公務員制度改革において避けて通ることのできない課題であると考える。
(2) 公務員制度の基本理念
 国家公務員制度は、「国民に対し、公務の民主的且つ能率的な運営を保障する」ことを目的とするものであり、公務員人事管理の中立公正性の確保と労働基本権制約の下での代償機能の確保が基本理念として要請されている。
 公務員人事管理の中立公正性の確保については、議院内閣制の下で、公務員には、国民全体の奉仕者として、外部の団体等と適切な距離を保ちつつ、その時々の内閣に忠実に仕え政策立案を補佐したり、法令に基づいて公正に職務を執行することが求められており、このような公務員の職務遂行を支えるため、公務員人事管理が中立公正に行われるような仕組みが必要である。とりわけ中立公正性を確保することが最も要請されている採用試験や研修等については、人事院が引き続き重要な役割を果たす必要がある。
 また、公務員にも憲法第二八条の保障が及んでおり、勤務条件に関する事項については本来労使対等の交渉で決定することが求められるが、公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみその労働基本権が制約されている。その代償措置として人事院の代償機能があり、労働基本権の制約を継続する場合には、制約に見合った代償機能が適切に発揮される仕組みが維持される必要がある。
 機動的・弾力的な行政運営を確保するため、各府省における任命権者の責任に基づく人事管理を目指すことは必要であるが、その場合にも、これら現行公務員制度の基本理念に立って改革が実現される必要があり、また、そのような枠組みを整えることは現実にも可能である。
(3) 検討プロセス
 公務員制度は、国民生活にも深く関わるものであり、その検討に当たっては国民的視点が不可欠である。そのため、有識者等を含めた幅広いオープンな議論を経て改革案が作成されることが必要である。
 また、今般の公務員制度改革は、公務員の意識、行動原理を大きく改め、新たな時代の要請に合った行政への転換を図る中で実現されるものであり、新たな制度を導入するに当たって、実際の人事管理を担う現場の管理者を含め各府省において、今回の改革の趣旨や新たな制度の内容等が十分理解されなければ、改革の実を挙げることはできない。また、実際に働く職員側の納得を得て改革が進められなければ、結局のところ、実効ある改革としてその目的を達成することはできない。
 なお、これまで公務員制度の改革に当たっては、人事院の、国会及び内閣に対する勧告・意見の申出等の手続を経て行われてきていることに留意することも重要である。

3 制度改革が向かうべき方向
 時代の要請にこたえ得る新たな公務員制度を構築するためには、「二 公務員制度改革に当たっての基本事項」を踏まえつつ、以下のような改革の方向で諸課題の検討に取り組む必要があり、人事院としては、国民の期待にこたえる実効ある改革が実現するよう、公務員人事管理の中立公正性の確保や労働基本権制約の代償機能の観点から、各府省や職員団体、更に有識者等の意見を聴取しつつ、適切な役割を果たしていきたい。
(1) 能力等級制
 ア 人事院としては、公務において、年功的人事を是正し、能力主義による人事管理を推進することは極めて重要であると考える。この場合、能力・実績に基づく人事管理を実効あるものとしていくためには、職務を遂行する能力を的確に評価し、それを基礎として昇任・配置等を行うとともに、実際に従事する職務・職責を基本として、実績や成果を適切に反映したインセンティブに富んだ給与システムを構築し、それを適正に運用する制度とすることが適当であると考える。これらの検討に当たっては、各府省や職員団体などの関係者と十分な意見交換を行うとともに、広く有識者とオープンに議論するなど、透明な検討プロセスを経ることが求められている。
 イ 今回の改革の検討では「能力等級制」の導入が柱となっているが、その是非を広く関係者等においてオープンに議論するためには、官職が必要とする能力基準、評価基準の案が公表される必要がある。これらの基準があいまいのまま能力等級制を導入することは、類似のシステムを導入した民間企業に多くみられるように、むしろ年功的運用が強まるおそれがある。
 ウ 能力等級制における能力等級表及び能力等級は、俸給表の種類及び給与の等級などの職員の給与決定の基準となるものであることから、重要な勤務条件であり、この点については、多くの労働法学者が指摘するところである。仮に能力等級制が勤務条件には該当しないとするのであれば、その論拠を明確にした上で、労働法学者や関係者との間でオープンな議論を十分に行う必要がある。
 能力等級制の下で想定されている評価制度も、給与・任用等の勤務条件決定の基礎となるべきものであり、その評価基準などは職員団体との交渉事項となり得るものと考えられることから、同様の議論等が必要である。
 エ 民間企業において新たな評価制度を設ける場合、円滑な導入のために十分な労使の話合いが行われており、評価に関する制度設計においては、労使間の意思疎通が不可欠と考える。評価基準については、中央レベルにおいて関係者と協議の上、共通的・統一的な基準を作成し、各府省レベルにおいてそれをブレークダウンすることが適切である。
 また、実効ある評価を実施していくためには、制度設計に先立ち職員団体等とも協議の上評価の試行を行い、これを通じてその実効性、有効性を検証し、それを制度設計に生かす取組が必要である。併せて、評価結果についての職員からの苦情等に対応するための苦情処理システムの充実を図る必要がある。(「(5)ア 不服申立て・苦情処理システム」参照)
(2) 「天下り」問題
 ア 再就職規制の見直し
 (ア) 営利企業への再就職規制を人事院承認から大臣承認に移行することは、許認可や契約締結の責任者である大臣が再就職のあっせん等に関わり、その再就職の承認の是非の判断を行うということである。こうしたことは、国民の理解を得られるものとは考えられず、この点については、マスコミ、有識者が大臣承認制は「お手盛り」につながると指摘しているところである。
 国民の「天下り」に対する厳しい批判は、営利企業への再就職に関してだけでなく、特殊法人、公益法人等への再就職も含めたものである。各府省の退職管理の一環として行われる再就職の組織的なあっせん等がセクショナリズムの温床になっていることを踏まえ、その是正を図る観点からも、営利企業への再就職だけではなく、特殊法人、公益法人等への再就職等を含めた再就職全般について内閣が責任を持って一括管理するものとする必要がある。
 (イ) 再就職を認める基準は、営利企業においては、営利企業への組織的な影響力に着目した基準を充実するとともに、例えば特定の企業を利するような情報を有する職員の再就職について一定の基準を設けるなど、国民の批判にこたえたものとする必要がある。その際、営利企業への再就職基準は、制度の根幹に関わる事項であり、国民にとっても重要な関心事項であることから、法律で定める必要がある。また、特殊法人、公益法人等への再就職についても、公務に対する信頼性、国民に対する透明性等を確保するために、統一的、総合的な基準を定めることが必要である。
 (ウ) 民間企業等からの人材要請に基づく再就職で、在職中に培った知識・能力等を真に活用するものについては、公正な手続の中で、再就職の透明性を確保しつつ企業からの要請にこたえ得る仕組みの充実・活用を図ることが適当である。
 イ 早期退職慣行の是正
 (ア) 本格的な高齢社会を迎える中、「天下り」に対する国民の厳しい批判にこたえ、公務に対する国民の信頼を保持していくためには、早期退職慣行を是正し、公務内において長期に職員の能力を活用できるよう、人事システムを再構築することが重要である。
 (イ) 昨年十二月の閣僚懇談会において、今年度からの五年間で幹部公務員の平均の勧奨退職年齢を三歳以上引き上げることを目標とし、引上げに当たっては能力主義の徹底により年次主義やピラミッド型人事構成の見直しを進めること等の申合せが行われ、現在、各府省においてこの申合せに基づく取組に着手しているが、引き続き、スタッフ職の整備と適切な処遇の確保、重要な地方機関の長への経験豊かな幹部職員の起用等により、幹部公務員の退職年齢の引上げを計画的に実現していくことが必要である。
 (ウ) 各府省の計画的な取組を前提として、その要望等を聴取しつつ、人事院としては、関係諸制度について所要の見直し等を行うこととし、退職年齢の引上げによる在職期間の長期化に対応する施策として、能力・適性に応じた人事管理を支える評価制度の整備、職員の自発的な能力開発に資する一定期間公務を離れ得る制度の導入、スタッフ職の特性にも配慮した給与システム等について検討を進める。
(3) 人材の確保・育成
 ア キャリアシステムの見直しの検討
 (ア) 現在のキャリアシステムは、採用時の一回限りの試験で幹部要員の選抜を行うもので、これが優秀なU種・V種職員の意欲を削いだり、T種職員の誤った特権意識につながる場合があるなどの問題点が指摘されている。他方、複雑化する行政課題に的確に対応していくためには、幅広い視野や専門性を備えた幹部要員を確保・育成していくことが不可欠である。したがって、国民全体の奉仕者としての使命感を持ち、製作立案能力、管理能力等にも優れた幹部要員の採用・選抜・育成・処遇システムを新たな視点で再構築する必要がある。
 そのため、T種・U種・V種の採用試験の種類を維持することの適否など採用試験について精査するとともに、選抜、育成方法を見直し、その中での中途採用者の位置付けなどにも十分配慮しながら検討する必要がある。その場合、各府省との連携や有識者からの意見の聴取を含め、幅広く検討を行い、幹部要員の採用・選抜・育成・処遇システムについて国民的な合意形成を図っていく必要がある。
 (イ) なお、当面、意欲と能力のある優秀なU種・V種等採用職員の幹部職員への登用を一層推進していくため、人事院の「U種・V種等採用職員の幹部職員への登用の推進に関する指針」に基づき、U種・V種等採用職員の計画的育成を行い、今後とも、従前T種採用職員が就いていたポストへの配置の拡大などを通じ、幹部職員への登用を着実に進めていく必要がある。
 イ 試験制度の改革
 (ア) 困難な行政課題が山積する中で、国民の期待にこたえる質の高い行政を実現するためには、人材の供給構造の変化等を踏まえ、それを担う人材を確保し、育成していくことがますます重要となっている。
 T種採用試験については、キャリアシステムの見直しを進める中でその基本的在り方について検討を進める必要があるが、他方、法科大学院や公共政策系大学院等の創設に伴い、人材供給構造が変化していくことを踏まえた人材確保のための検討も必要となっている。さらに、現在の採用試験について知識偏重との批判があることなども踏まえ、時代の要請に的確に対応できる人材の確保に向けた試験内容の見直しなどの取組が求められている。
 このため、今後受験者として大学院卒者が増大することへの対応を中心に、試験種目の在り方や最終合格者の決定方法などについて、各府省、大学関係者等と協議を行いつつ検討する。その際、一次試験における教養試験は、公務員に必要な幅広い教養や論理的思考力・分析力等基礎的素養をみる試験内容・構成への再編を更に進める。また、専門的知識、応用能力に加え、問題設定能力、多角的考察力等の能力についてもよく検証して最終合格者を決定する試験に改編するため、二次試験における論文試験を重視する。
 (イ) 採用試験の受験資格として設けられている年齢制限については、年齢にかかわりなく均等な受験の機会を確保するという観点から、関係者、有識者等の意見を聴取しつつ、撤廃する方向で検討を進める。その際、高卒程度の試験については、高卒者の雇用確保の観点を考慮する必要があること、大学校入学試験の性格を有する試験もあることなどを考慮して検討を行う。
 (ウ) 採用試験については、国民全体の奉仕者である公務員の採用に関する中立公正性の確保を基本としつつ、国民の期待にこたえる行政を担う人材の確保に向けて、内閣及び人事院がその本来的機能に即した役割を担う仕組みとすることが適当である。
 したがって、内閣がこれからの行政を支えるためにどのような人材が必要とされるかといった採用に関する基本方針を定め、人事院がそれを踏まえて採用試験を企画・実施するシステムとすることが、国民からの採用試験に対する信頼を確保する上で適切である。
 ウ 人事交流及び民間人材活用の促進
 職員の採用から退職後の再就職のあっせんに至るまで一貫して採用時の府省が管理していることに加え、中途採用や民間との交流が例外的であるなどの公務組織における人事管理の閉鎖性が、各府省のセクショナリズムの問題を生み出している。そのため、セクショナリズムを是正するとともに、組織を活性化し、また、複雑・高度化した行政課題へ対応する観点から、各府省間の人事交流や民間人材の活用を一層促進する。
 (ア) 各府省の管理職に占める他府省出身者の割合について具体的な数値目標を設定するなどにより、特に幹部公務員の府省間人事交流を促進する。
 (イ) 民間人材の中途採用について、個々の専門能力等を的確に評価することにより、処遇の一層の適正化を図る。基幹的ポストへの採用・登用についても、各府省等との連携を図りつつ、促進していくこととする。
 (ウ) 円滑な民間人材採用のために障害・阻害要因となっているものを軽減・除去するため、官民人事交流法による交流採用職員の交流元企業との身分併有等について、公務の中立公正性の確保を図りつつ的確に対処する。
 エ 研修
 (ア) 近年、幹部職員を含む公務員の不祥事等により、国民の批判が高まっており、公務及び公務員に対する国民の信頼を回復していくことが急務である。そのため、人事院は、国民全体の奉仕者性の徹底を中心とした公務員の基本的在り方に関わる研修について、各府省と連携しつつ、一層強化する。また、深い教養に根ざした洞察力と高い倫理観をかん養することで、高次のリーダーシップを有する者を養成していくことを目的とした思索型プログラムによる幹部行政官セミナーを新たに導入する。さらに、公務運営を支える第一線の監督者のマネジメント能力養成のための研修の充実を図る。
 (イ) 在職期間の長期化への要請をも踏まえ、本府省の企画官、課長相当職以上の職員について幅広い視野等をかん養するため、行政官短期在外研究員として諸外国の政府機関等への派遣の機会を付与する。
 (ウ) 研修については、任命権者、内閣総理大臣、人事院がそれぞれの立場で実施することが適当である。具体的には、任命権者は、業務研修を中心に各府省の業務遂行に必要な研修を実施し、内閣総理大臣は、内閣の政策の徹底と各府省横断的な政策のための政策研修を実施し、人事院は、その性格上国民全体の奉仕者としての職業公務員の養成研修を実施すべきである。
 オ 休職・派遣制度等
 公務組織の活性化、職員のキャリアパスの多様化、能力開発の機会の拡大等に資するため、@研究休職等の休職制度について、その性質に応じた制度の再編、A職員の自発的な能力開発に資する一定期間公務を離れ得る制度の導入、B非営利法人への派遣などの新たな派遣制度の導入について検討を行う。
 カ 女性国家公務員の採用・登用の拡大
 (ア) 国の行政への女性の参画の推進は、男女共同参画社会の実現の基盤をなすものである。人事院は「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」を発出し、各府省等はその指針に基づき、平成一七年度までの「女性職員の採用・登用拡大計画」を策定している。各府省等における女性職員の採用・登用は着実に前進しており、人事院としては、この計画のフォローアップを的確に行い、一層の前進が図られるよう対応する。
 (イ) 育児休業が広く活用されることは、職業生活と家庭生活の両立のために重要であり、そのため、より利用しやすくなるよう制度の改善を図る。また、育児休業の取得率の極めて低い男性職員の取得が促進される必要があり、各府省に対して、制度の周知、代替要員の確保など育児休業を取得しやすい環境の整備等について引き続き要請する。
(4) 服務規律と勤務環境の整備
 ア 懲戒処分の適正化のための方策
 (ア) 近年続発した幹部職員を含めた公務員の不祥事に関し、各府省による調査、処分では甘くなりがちとの批判を踏まえ、公務に対する国民の信頼の確保を図るため、各府省と人事院が協力して一層厳正・公正な懲戒権の行使が可能となる仕組みを導入し、調査・処分の厳正性・公正性の確保に努める必要がある。
 (イ) 懲戒処分が厳正・公正に行われることを確保するため、各府省の任命権者が懲戒処分を行う場合には、人事院が定める処分量定の基準によらなければならないものとする。
 (ウ) 不祥事の再発防止と公務に対する国民の信頼の確保を図るため、各府省が懲戒処分の公表を判断する際の指針を作成する。
 イ 多様な勤務形態の導入
 (ア) 国内外の困難な情勢に迅速・的確に対応するための公務能率の向上、実際の対応に当たる職員の健康管理、少子高齢化の進展等による育児・介護等の個人的事情への配慮等の観点から、多様な勤務形態の導入が必要であり、公務におけるフレックスタイム制、短時間勤務制、裁量勤務制等の適用範囲の拡大及び制度の弾力化を図る。
 (イ) 多様な勤務形態の導入の検討に当たっては、適正な勤務条件の確保及び総労働時間の縮減にも留意するとともに関係府省等と十分連携しながら進める。また、人事院としては、多方面から総合的に検討するため、有識者による研究会を設置する。
 ウ セクシュアル・ハラスメント防止対策
 人権意識の高まりやセクシュアル・ハラスメント問題に関する認識の深まり等を背景に、被害者のより迅速・的確な救済、加害者に対する厳正な対応等が強く求められており、被害者救済等の観点から、更に実効ある苦情相談体制を構築する。また、任命権者においても責任を持って調査し、被害者救済のための措置等を行い、苦情相談を行った者にその結果を通知するとともに、加害者に対する懲戒処分等が厳正に行われるよう、悪質なケースについては、任命権者と人事院が協力して対応できることとするなどの制度の整備を図る。
 エ メンタルヘルス対策の充実
 公務において、自殺した職員の数が増加し、長期病休中の職員のうち精神・行動の障害によるものの数が急増している。職員の健康管理は身体面のみならず精神面においても重要であり、メンタルヘルス対策の一層の充実に取り組むため、メンタルヘルスに関する専門家による研究会を設置し、予防対策の充実と適切な治療と回復のための施策等について検討する。
(5) 人事管理の適正な運用の確保
 ア 不服申立て・苦情処理システム
 (ア) 今後、能力・実績に基づく人事制度を整備するに当たっては、職員の利益を保護し、公務員人事管理の中立公正性を確保する観点から、新しい制度の運用上発生する職員からの様々な不服申立てや苦情を適切に処理するシステムの充実を図ることが不可欠となる。
 (イ) このため、職員からの不服申立てを迅速かつ弾力的に解決できるよう、あっせんの手続を設けるとともに、簡易な審理方式等を整備する。
 また、能力・実績に基づく人事管理の下で発生する評価に対する不満などの苦情を処理するため、人事院の苦情処理と各府省の苦情処理とを併置するとともに、苦情処理の体制・方法、手続等各府省共通の指針を設定する。
 イ 人事院による改善勧告等の事後チェック機能
 各府省における自律的で責任ある人事管理に資するよう、人事院は任用、給与、勤務時間等の取扱いについて、平成十四年度に大幅な基準化への転換を措置したところであり、今後とも各府省の運用の実情や具体的な要望等に応じ、基準化・事後チェック化の措置を更に進めていくこととしている。その際、各府省が人事院の設定した基準の下で責任を持って人事管理の運営を行う一方で、人事院が適切に事後チェック機能を果たすためには、報告から調査、是正指導等を経て人事行政改善勧告に至る手続等を整備する必要がある。
 ウ 内閣との連携
 (ア) 公務員制度においては、公務員人事管理の中立公正性の確保と労働基本権制約の代償機能の確保が基本理念として要請されており、人事院がそのような観点からの企画立案機能を担う必要がある。一方、内閣は機動的・効率的な行政運営の観点から人事行政についての総合調整機能等を発揮することが期待される。
 (イ) このような観点から、中央人事行政機関(人事院及び内閣総理大臣)が、それぞれの任務を適切に遂行するため、必要に応じて開かれた形で意見交換を行うなど、緊密な連携を保つ透明な仕組みを設けることが適当である。


給与勧告の骨子
○本年の給与勧告のポイント
 〜平均年間給与は5年連続、かつ、過去最大の減少
  (年収△16.3万円(月例給△1.1%と期末・勤勉手当△1.5%を合わせて△2.6%))
 @官民給与の逆較差(△1.07%)を是正するため、2年連続で月例給の引き下げ改定
  −俸給月額の引下げ、配偶者に係る扶養手当の引下げ、自宅に係る住居手当の支給対象を限定
 A期末・勤勉手当(ボーナス)の引下げ(△0.25月分)
 B通勤手当の6箇月定期券等の価額による一括支給への変更、調整手当の異動保障の見直し
 C本年4月からこの改定の実施の日の前日までの期間に係る官民較差相当分を解消するため、4月の給与に較差率を乗じて得た額を基本として、12月期の期末手当で調整
1 給与勧告の基本的考え方
 ・公務員給与が民間給与を上回った場合においても、官民給与の精確な比較により公務員給与の適正な水準を確保することが、情勢適応の原則にかなうものと判断
 ・配分、改定実施までの官民較差相当分の調整方法等については、各府省の人事当局や職員団体の意見を十分に聴取し検討
2 官民給与の比較
   約8,100民間事業所の約36万人の個人別給与を実地調査(完了率93.5%)
〈月 例 給〉官民の4月分給与を調査(ベア中止、定昇停止、賃金カット等を実施した企業の状況も反映)し、職種、役職段階、年齢、地域など給与決定要素の同じ者同士を比較
〈ボーナス〉過去1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間支給月数を比較
 ○官民較差(月例給) △4,054円 △1.07%
             [行政職…現行給与 377,535円 平均年齢 41.0歳]
              俸  給 △3,459円  扶養手当  △209円
              住居手当 △  173円  はね返り分 △213円
3 改定の内容と考え方
〈月 例 給〉官民較差(マイナス)の大きさ等を考慮し、月例給を引下げ
(1)俸給表:すべての級のすべての俸給月額について引下げ
 @行政職俸給表  級ごとに同率の引下げを基本とするが、初任給付近の引下げ率は緩和、管理職層の引下げ率は平均をやや超える率(平均改定率△1.1%)
 A指定職俸給表  行政職俸給表の管理職層と同程度の引下げ(改定率△1.2%)
 Bその他の俸給表 行政職との均衡を基本に引下げ
(2)扶養手当  配偶者に係る扶養手当の支給月額を500円引下げ(14,000円→13,500円)
(3)住居手当  自宅に係る住居手当を新築・購入から5年間(2,500円)に限定(月額1,000円に係るものは廃止)
(4)通勤手当 ・6カ月定期券等(交通機関等利用者)の価額による一括支給を基本とすることに変更するとともに、2分の1加算措置を廃止し、55,000円まで全額支給
      ・交通用具使用者に係る通勤手当について片道40q以上の使用距離区分を4段階増設
(5)調整手当 ・いわゆる「ワンタッチ受給」防止のため、異動前の調整手当支給地域における在勤期間が6カ月を超えることを要件化
      ・異動保障の支給期間(現行3年間)を2年間とし、2年目の支給割合は現行の80/100
(6)その他の手当
 @委員、顧問、参与等の手当
   指定職俸給表の改定状況等を踏まえ支給限度額を引下げ(38,400円→37,900円)
 A医師の初任給調整手当 ・医療職(一)         最高311,400円→307,900円
             ・医療職(一)以外(医系教官等)最高 50,800円→ 50,200円
〈期末・勤勉手当等(ボーナス)〉民間の支給割合に見合うよう引下げ 4.65月分→4.4月分
[実施時期等]3の(1)、(2)、(3)、(6)及び期末・勤勉手当等の改定については、公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときは、その日)から実施。3の(4)及び(5)の改定については、平成16年4月1日から実施
   本年4月からこの改定の実施の日の前日までの期間に係る官民較差相当分を解消するため、4月の給与に較差率を乗じて得た額に4月から実施の日の属する月の前月までの月数を乗じて得た額と、6月期のボーナスの額に較差率を乗じて得た額の合計額に相当する額を、12月期の期末手当の額で調整
〈その他の課題〉
(1)教育職俸給表の検討    国立大学の法人化等に伴い、教育職俸給表の在り方等について早急に必要な改正を行うため検討
(2)寒冷地手当の実態の把握  速やかに全国的な調査を実施し、調査結果を踏まえて検討
(3)特殊勤務手当の見直し   手当ごとの実態等を精査して廃止を含めた見直し等を検討
(4)月例給の比較方法の見直し 行政職俸給表(二)を来年から比較の対象外とする方向で検討
(5)特別給の算定方法の見直し 民間の特別給の前年冬と当年夏の実態調査に基づき特別給を改定
(6)独立行政法人等の給与水準 役職員の給与水準の公表に向けた検討への協力
4 給与構造の基本的見直し
 ・公務内外の大きな環境変化の下、地域の公務員給与の在り方について、国民の関心の高まり
  −地域における公務員給与は民間に比べ高く、公務員給与の地域差は民間に比べ不充分との指摘
 ・職務・職責を基本に勤務実績・業績を重視した制度となるよう給与全般の見直しを行いつつ、民間給与の地域差に対応できる仕組みとするなど、全体として整合性の取れた形での見直しが必要
  −「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」の基本報告(本年7月)でも同様の認識・提言
 ・今後とも、労働基本権制約の代償機能を適切に果たすべく、各府省、職員団体等と積極的に意見交換を行いながら、早期に具体化が行えるよう検討
  −昇給制度を含めた俸給構造の見直し、民間給与の地域差に対応できるよう地域関連手当を再構築、スタッフ職を念頭においた新俸給表の設定、人事評価システムの整備など

公務員制度改革に関する報告の骨子
 公務員制度改革が国民から支持され、実効ある制度として運用されるためには、関係者や各界有識者を含め各方面で幅広い見地からオープンな議論が行われる必要。このような議論に資するため、公務員制度改革が向かうべき方向性などについて人事院の見解を表明
1 公務員制度改革に当たっての基本事項
 ○ 国民の求める改革への対応
  ・公務員制度改革の出発点として、国民の公務員に対する批判に正面からこたえる必要。国民からは、セクショナリズム、キャリアシステム、「天下り」、幹部公務員不祥事、年功的人事等について様々な批判
 ○ 公務員制度の基本理念
  ・国民全体の奉仕者たる公務員の公正な職務遂行を支えるため、公務員人事管理が中立公正に行われるような仕組みが必要。とりわけ採用試験や研修等については、人事院が引き続き重要な役割を果たす必要
  ・公務員にも憲法第28条の保障が及ぶ中で、労働基本権の制約を継続する場合には、制約に見合った代償機能が適切に発揮される仕組みが維持される必要
 ○ 検討プロセス
  ・公務員制度の検討に当たっては国民的視点が不可欠。そのため、有識者等を含めた幅広いオープンな議論を経て改革案が作成されることが必要
  ・改革の趣旨や新たな制度の内容等について、現場の管理者を含め各府省において十分理解されることが必要。また、実際に働く職員側の納得を得て改革を進める必要
2 制度改革が向かうべき方向
 ○ 能力等級制
  ・公務において、能力主義による人事管理を推進することは極めて重要。そのため、職務を遂行する能力を的確に評価し、昇任・配置等を行うとともに、職務・職責を基本として、実績や成果を適切に反映した給与システムを構築することが適当
  ・検討に当たっては、各府省や職員団体などの関係者との十分な意見交換を行うとともに、広く有識者とオープンに議論するなど、透明な検討プロセスが必要。その際、「能力等級制」の是非を議論するためには、官職が必要とする能力基準、評価基準の案が公表される必要
  ・能力等級表及び能力等級は、職員の給与決定の基準となるものであり、重要な勤務条件。これは多くの労働法学者も指摘
  ・評価基準については、中央レベルにおいて関係者と協議の上、共通的・統一的な基準を作成し、各府省レベルにおいてそれをブレークダウンすることが適切
  ・評価結果についての職員からの苦情等に対応するための苦情処理システムの充実が必要
 ○ 「天下り」
  ・「大臣承認制」についてはマスコミ、有識者から厳しい批判。セクショナリズムを是正するためにも、営利企業への再就職だけではなく、特殊法人、公益法人等への再就職等を含めた再就職全般について内閣が責任を持って一括管理する必要
  ・営利企業への再就職を認める基準は、法律で定める必要。また、特殊法人、公益法人等への再就職についても、統一的、総合的な基準が必要
 ○ 人材の確保・育成
  ・キャリアシステムの見直し……全体の奉仕者としての使命感を持ち、政策立案能力、管理能力等にも優れた幹部要員の採用・選抜・育成・処遇システムを新たな視点で再構築する必要。そのため、採用試験の種類について精査するとともに、中途採用者の位置付けなどにも十分配慮しつつ検討。なお、U・V種等採用職員の登用も着実に推進
  ・試験制度……T種採用試験について、大学院卒の受験者の増大への対応を中心に、問題設定能力、多角的考察力等についてもよく検証して最終合格者を決定する試験に改編
    採用試験については、内閣がどのような人材が必要とされるかなどの採用に関する基本方針を定め、人事院がそれを踏まえて試験を企画・実施するシステムとすることが適当
  ・研修……国民全体の奉仕者性の徹底を中心とした研修の強化、思索型プログラムによる幹部行政官セミナーの導入
    研修については、任命権者、内閣総理大臣、人事院がそれぞれの立場で実施し、人事院は、その性格上国民全体の奉仕者としての職業公務員の養成研修を実施することが適当
  ・人事交流及び民間人材活用の促進……具体的な数値目標を設定するなどにより府省間人事交流を一層進めるとともに、民間人材の基幹的ポストへの採用・登用を促進
  ・女性国家公務員の採用・登用の拡大……各府省の「女性職員の採用・登用拡大計画」のフォローアップを的確に行い一層の促進。育児休業をより利用しやすくする制度の改善
 ○ 服務規律と勤務環境の整備
  ・各府省と人事院が協力して一層厳正・公正な懲戒権の行使が可能となる仕組みの導入。また、各府省が懲戒処分の公表を判断する際の指針を作成
  ・多様な勤務形態の導入を図るための研究会を設置し、フレックスタイム制、短時間勤務制などの適用拡大、弾力化等を検討
  ・セクシュアル・ハラスメント防止対策について、実効ある苦情相談体制などを構築
  ・メンタルヘルスに係る研究会を設置し、予防対策の充実と治療回復のための施策等を検討
 ○ 人事管理の適正な運用の確保
  ・職員からの不服申立てを迅速かつ弾力的に解決できるよう、あっせんの手続を設けるとともに、簡易な審理方式等を整備。また、人事院の苦情処理と各府省の苦情処理とを併置するとともに、苦情処理の体制・方法、手続等各府省共通の指針を設定
  ・基準化をさらに進めつつ、人事院が適切に事後チェック機能を果たすため、報告から調査、是正指導を経て人事行政改善報告に至る手続等を整備