機関紙「自治労府職」

 2004年10月1日号

自治労府職(府費)本部、現業評議会、ユース部
高率で信任、新役員を選出


 自治労府職(府費)本部、現業評議会、ユース部の2005年度役員選挙は、すべての役職が定数内であったため、9月29日に信任投票が行われた。即日開票の結果、次のとおり高率で信任され、新執行部が選出された。
   ◆   ◆
■執行委員長
大橋 敏博(信任2332・不信任40・無効54)
■副執行委員長
西浦 昌寛(信任2317・不信任44・無効65)
川本富士夫(信任2337・不信任29・無効60)
■書記長
山嵜  聡(信任2332・不信任31・無効63)
■書記次長
則定 義秀(信任2314・不信任49・無効63)
■会計
松田 章義(信任2324・不信任37・無効65)
■会計監事
大鳥美矢子(信任2319・不信任40・無効67)
古村  明(信任2323・不信任30・無効73)
■執行委員
西村 明子(信任2326・不信任33・無効67)
山中  章(信任2328・不信任35・無効63)
阪田 淑子(信任2326・不信任38・無効62)
井上 忠宏(信任2328・不信任32・無効66)
宇野 利彦(信任2332・不信任32・無効62)
池口 忠史(信任2331・不信任31・無効64)

現業評議会役員
■議長
中村 正則(信任221・不信任10・無効12)
■副議長
堀内 義信(信任218・不信任10・無効15)
臼井 久直(信任222・不信任5・無効16)
■事務局長
森口 修弘(信任225・不信任5・無効13)

ユース部役員
■部長
松山 俊也(信任112・不信任1・無効1)
■副部長
筒井 清隆(信任111・不信任2・無効1)
■書記長
中  智章(信任112・不信任1・無効1)


関係労組が中央委員会で確認
新役員の任務分担決定

 自治労府職は1日、関係労組の第1回中央委員会を開き、新体制での任務分担を決定。活動を本格的にスタートさせた。
 新体制では、自治労府職(府費)、職安労組の役員改選などに伴う関係労組本部の体制を提案し、確認された。なお、関係労組本部の役員選出・決定は大会での議決事項であり、12月に開く定期大会の場で提案される。
 今回の改選などで退任された役員は次のとおり(敬称略)これまでの本部活動ご苦労様でした。
 立石  元(副執行委員長・社保)
 嵯峨山豊子(副執行委員長・税務)
 後藤 健司(副執行委員長・労働)
 竹下 知法(書記次長・総務)
 西岡  裕(会計監事・社保)
 大石 利樹(会計監事・センター病院)
 臼井 久直(会計監事・府立病院)
 末田 一秀(執行委員・環農水)
 浪江 達也(執行委員・税務)
 中村 正則(執行委員・総務)
 森口 修弘(執行委員・中宮病院)
 森下 博二(執行委員・税務)
 北野 義和(執行委員・職安)

苦言諫言

現場主義は口だけ?
 社長!社長! マスコミ受けを狙っただけの記者会見では、社員は再建にガンバレまへんで! 現場を勝手に無くしたり、決めつけで部下の仕事を批判しては「現場主義」が泣きまっせ。もっと風通しの良い組織をつくりましょ♪

行財政計画で申し入れ

 自治労府職は1日、執行委員会で「行財政計画(改定素案)に対する申し入れ」を行うことを決めた。
 9月に発表された「行財政計画(改定素案)」は、8日までパブリックコメントの手続きが行われており、自治労府職は、この期間内に太田知事に申し入れを行う予定。

2004年10月  日

大阪府知事  大田 房江 様

自治労大阪府職員労働組合
 執行委員長  大橋 敏博

行財政計画(改定素案)に関する申し入れ

 行財政計画の見直しに関しては5月31日付でも申し入れを行い、貴職に対し提言・交渉を積み重ねてきた。
 9月1日に公表された改定素案について、先の申し入れ事項が必ずしも反映されているとは言えず、加えて問題点も多くあることから次のとおり申し入れるので、真摯に対応されたい。

<改定素案全体について>
1、全体として取り組みの具体的な内容が示されていない項目が多いことから、職員ですら十分に理解し議論できるものとなっていない。府民や職員の理解と議論への参加を得るため、人件費関係以外の再建策のすすめ方を明確にするとともに、めざすべき「大阪像」とそこでの府の役割を明確にした「再生」策を示すべきである。
2、HPなどで公開しパブリックコメントに付しているが、単なる手続きに終わっていないか。課題の大きさから、府民の浸透度を十分検証することが必要である。さらに深刻な状況について広く理解を得、議論を起こしていくためには、「新聞全面広告」など大きな広報が必要である。また、量が膨大で内容がわかりにくいことから、コンパクトに明快に伝える工夫が必要と考える。

<現計画集中取り組み期間の評価>
1、行財政計画(案)がわずか3年で見直しが必要になったのは、経済情勢や交付税総額の減額などのためとの説明されているが、経済情勢の見通しについては、現計画策定時から甘いと指摘してきた点である。このような見直しが繰り返され、労働条件切り下げをはじめとする追加措置が繰り返されるのであれば、集中取組期間を頑張ってきた組合員の苦労は報われない。
  同じ轍を踏まないよう条件設定すべきである。また、この間に進捗が遅れていると認めている「超過勤務の縮減」などの項目に関して、原因と対策を明確にすべきである。
2、集中取組期間の検証・評価について数値で明確に示すべきである。
  「全国一スリムな組織づくり」の項は勤務条件と定数問題であり、労使関の合意で確実に達成できる安易な手法によるものである。これを除き他は「すすめている。推進している」等、曖昧な表現に留まっているが、掲げた目標と結果、「改定素案」に引き継がれた課題を明らかにすべきである。
 ●「負の遺産」は巨額のプロジェクトで、常に議論の的になっているにも関わらず、取組み経過・検証・評価が不明確なままで、「改定素案」での取組みも具体的に明らかにされていない。府の財政との関係を含め明確な説明が必要である。
 ●「大阪モデル」も具体的な検証がない。特に、「府民との対話・アカウンタビリティ・施策の進行管理システム」について主観的な記述にとどまっているが、庁内外の評価を含め到達点と課題を明確化が必要である。
 ●「施策評価」の項も同様に評価事業数と結果が簡単に示されただけであり、施策見直しの指標に対しどのように「選択と集中」が図られたのか到達度合が不明である。
   「改定素案」の「再生重点枠」を効果的に活用するためにも、現行「再生予算枠」の分析・評価を明らかにすべきである。
 ●公の施設改革についても、「総点検を行い」の結果を示すこと。さらに「改定素案」の取組みにも関わる事項であることから「民間の活力・ノウハウの活用」の評価を明らかにすべきである。

<基本理念について>
1、自治労府職は、行財政改革にあたっては「どのような大阪府、大阪府政をめざすのか」という行政目標を明確に示すことを一貫して求めてきた。改訂素案では、「府政改革の理念」「大阪再生に向けた府政のめざすべき方向」「府政改革の基本目標」に9頁を割いているが、その内容には従来どおりの「小さな政府」論をはじめ、今回提起された理念と矛盾するものが含まれており、府民との議論、合意のプロセスの中で修正されるべきである。
2、敢えて「再建」と「再生」の二兎を負う計画としているが、「再建」策は具体性を欠くことから、二律背反の非常に危険な計画となる怖れが大である。
  「再建」計画の見込みと実際の数値との乖離が生じた場合、乖離の度合いと見直しとの関係、その場合どう見直すのか、「再建」分野か「再生」分野かなど、考え方を明らかにすべきである。
3、職員の意欲を引き出すとともに府民の理解と協力を得ていくために、大阪をどう「再生」するのか、その像を明確にし職員・府民に共有化された上での取組みとしていくべきである。めざすものが不明では「再建団体転落回避」のみが自己目的化され、「強いられ」感が強まって大きなマイナスになる怖れがある。

<めざすべき方向について>
 7つの戦略的取り組み分野で施策を重点化するとしているが、網羅的な記述になっている。限られた予算であり、各分野で何をどう具体的に重点化していくのか、施策選択の優先順位を具体的にするとともに、各分野間においても優先順位を設定することが必要ではないか。

<有識者会議について>
 改訂素案では、多くの項目で「有識者会議専門部会において検討していきます」と記述されているが、位置付けの根拠もない有識者会議に任せるべきではない。検討過程の透明化を計り、府民合意で進めるべきである。
 「再建」課題に分類される検討項目は「会議」と切り離し、識者意見を求める課題・範囲・権限の整理が必要である。

<取組みについて>
1、現計画、「改定素案」はともに職員の勤務労働条件にかかる削減効果に大きく依存しており、職員は大変大きな影響を受けてきているが、「改定素案」はそれをさらに拡大することししている。現計画の検証・評価においても、また「改定素案」でも達成目標数値とそのための具体的な取組みを明記しているのは勤務条件の項のみであり、実効性を疑わざるを得ない。毎年度毎に策定される改革工程表に従い、施策分野においても確実な効果を得ていくためには、取組み課題・具体的な内容・取組み年次を明らかにすることが必要である。
  とくに緊急取組み期間において、府有財産の売り払いの330億をどう達成していくかの具体的な説明、さらに施策評価・事務事業見直しにかかる60億について、緊急の「見直し基準」を設けるなど、着実な達成を担保する方法を採るべきである。
  また現時点から、評価を待たずとも見直し・縮小すべき事業はないのか総点検するなど、計画開始年度を待たずに着手していくべきと考える。
2、組織のスリム化・勤務条件等の見直し
  改定素案の公表に先立ち府労連に@期末・勤勉手当の時限的カット、A時間外勤務命令の上限規制の導入、B互助会・互助組合の補助金見直し、C非常勤(若年)特別嘱託員制度の見直し、D3,000人定数削減の前倒し実施と02年度から11年度までの10年間で3,200人の削減をめざす等、これまでの抑制措置に加えた新たな人件費抑制策が提案された。
  「財政再建プログラム(案)」に基づく定期昇給24月延伸、特別昇給4年間停止、さらに府人事委員会のプラス勧告に対し、マイナス改定の実施(02、03年度)などにより、職員給与は一挙に全国都道府県の最低水準に落ち込んだ。背景には危機的な財政状況があるとしても、この間の給与抑制は8年間に及んでいる。このような中にあっても自治労府職組合員は、財政再建のため懸命な努力を続けてきたが、その我慢も限界に達している。
  全庁一丸となって大阪再生の改革を達成するためには、職員の労苦に報いることと、職員の将来への不安を払拭し、すべての職員が安心して職務に精励する態勢を整えることが必要である。以上の観点から提案に断固反対し、再考を求める。
3、民間活力の活用
 1)「協働」、「民間活用」が各所に謳われているが、サービスの質と水準・向上を担保していくためには、必要な公共サービスの水準を明確にし府民の合意を得ることが先決である。「組織のスリム化」のみの観点でなく、サービスの質と量の維持という行政責任として考えるべきである。
 2)この間の府職員の改革に向けた自助努力や直営で行っているサービス水準に対する適正な評価を前提とし、「民活ありき」での検討を行わないこと。府の行政の役割と責任を明確にし、組織・人員問題はもとより市場化テストなどについても自治労府職・府労連と十分に協議すること。
   また、「アウトソーシング後のサービス水準の確保」だけでなく「アウトソーシング先の労働条件」にも十分配慮すべきである。特に、指定管理者制度の適用については、次の2点について関係労組等と十分協議すること。@公募入札を行う場合は、政策入札の理念を尊重し、自治体としての政策効果の維持、強化を保障すること。A当該施設における従来の雇用・労働条件を受託組織の変更によって悪化させないこと。
4、地方独立行政法人制度の導入
  自治労府職は、府立5病院のあり方検討にあたっては、地方独立行政法人化に反対する。
  また、試験研究機関に関しては、8月26日に公表された環境農林水産部試験研究機能高度化調査報告書が「新たに必要となる経費や業務の増加」「所管業務の範囲や業務執行体制にかなり大きな影響」「国の機関や大学等と比して、 (中略) 独自収入確保の手段も限られている」と独立行政法人化の問題点を挙げている点を考慮すべきである。
5、「負の遺産」の整理
  現計画で「負の遺産」としてあげられた企業局事業、住宅供給公社、土地開発公社については、集中取組期間を通じて財政問題がどう推移したのか説明すべきである。特に、用地買収業務の受託で延命を図ろうとする土地開発公社の方針案は、改革の先送りである。収支見通しの情報を全て開示し、職場の意見を尊重して将来を見通した視点からあり方を検討すべきである。
  主要プロジェクトについても現計画の見直しは行われていない。事業の見直しや終息が必要なものについては、早急に取り組むべきである。
6、建設事業の重点化
  改訂素案では「建設事業のさらなる重点化を行い、建設事業費のおおむね10%削減」を打ち出しているが、単なるシーリングではなく、都市基盤施設の維持管理の充実にシフトさせるべきである。また、槇尾川ダムなど不要なダム計画は中止すべきである。

もうだまってられへん(下)
職場から財政再建の提言を 建設支部 酒井 祥吉


【掲載について】
 自治労府職では、大阪府行財政計画(改定素案)に対する見解を前号(9月11日号)で掲載していますが、自治労府職としての考え方を補強する目的で、支部・分会・組合員からの広範な意見を聞き、豊富化することを考えています。
 本部見解に対する意見をはじめ、職場の皆さんの声お待ちしています。いただいた意見につきましては、機関紙への掲載など、執行部で取り扱いを検討いたします。


6 負の遺産の整理はどうなったか
 平成13年の行財政計画(案)には、次世代に負の遺産を残さないためにただちに整理すると、高らかに宣言していた。ところが、集中取組期間における取組の概要に「整理だけでなく、活用の視点で取り組みます」と、早くも方針転換している。「ただちに整理」できなかった言い逃れに過ぎない。この3年間、公示価格で地価が約25%下落している。行財政計画(案)は、地価が変わらないとしたシミュレーションであり、見直しをして収支の見通しを明らかにすべきだ。
 また、自治労府職は、水と緑の健康都市事業について「事業を中止すべきである」と政策提言したが、府当局はこれを無視したため、ますますこの事業は泥沼に足を取られている(詳細は自治労府職建設支部自治研レポートの大阪府の負の遺産についての「水と緑の健康都市事業のその後」参照)。自治労府職の提言を生かしたならば、府政改革の起爆剤になったものを、最初で最後のチャンスを逃した。負の遺産をただちに整理できなかった大きな一因となった。行財政計画(案)の負の遺産とされる企業局事業、住宅供給公社、土地開発公社についてレポートしたい。
a.企業局
 行財政計画(案)では2079億円の財源不足になるとしていた。その内訳には、りんくうタウン2789億円、阪南スカイタウン471億円、水と緑の健康都市(建築都市部に会計移管)750億円、合わせて4010億円の損失を見込んでいた。これも地価が変わらずというシミュレーションで、今後の分譲土地の収入見込み額は、水と緑の健康都市事業を除く2事業で2081億円(収支の見通しP6及びP14参照)であった。この3年間で地価が25%下落したのだから、520億円を超える資産の損失があったことになる。この間、分譲価格の値下げと企業局職員の奮闘により、分譲された土地があるので、正確な試算はできないが、地価の25%の下落による損失は職員の努力により抗えない。
 また、知事のトップセールスによりイオングループの誘致をしたが、定期借地権による誘致は、財政にとってはどうなるのか。定期借地権は土地を野ざらしにしておくよりは良いし、街づくりや地元市の財政に寄与できる。しかし、府の財政の再建からの視点では必ずしも良いとは言えない。できるだけ早期に収支の見通しを明らかにすべきだ。
b.住宅供給公社
 行財政計画(案)では公社の損失額は509億円、対策額を合わせると997億円としていた。収支の見通しは示されていなかった。今回、9月13日、大阪府住宅供給公社は新経営計画を発表した。これに「保有資産全体の再評価を実施し、含み損・含み益の整理を行い、公社の経営実態を明確に示す」とある。公社もやっと重い腰を上げた。いわゆる「簿価会計」から経営実態を把握できる「企業会計」を導入した。理念や改善策を示されており、評価できる点が多い。しかし、財政状況の推移では、平成23年度の予測貸借対照表によれば、借入金が短期、長期合わせて、2243億円になる。賃貸住宅などの資産があるとはいえ、この借金を返せる目処も明らかにしていない。また、公社は水と緑の健康都市事業やいくつかの主要プロジェクトの土地を所有している。ほとんどが不良債権になる可能性があり、公社の財政を圧迫することになる。
c.土地開発公社
 土地開発公社は、地価下落に伴う未利用地の代替地の含み損を処理するとして、118億円が必要としていた。他の2つと比較して、額は少ないように見えるが、大きな問題が横たわっている。
1)土地開発公社とは
 公社は公有地の拡大の推進に関する法律第10条を根拠法として、昭和49年5月設立され、資本金にあたる基本財産は3000万円で、全額大阪府が出資している。
 公共事業を推進するためには、公共用地の取得が前提となり、大規模な公共事業においては、公社は重要な役割を果たしてきた。府の会計予算が原則単年度主義である一方、公社は弾力的な資金の運営ができ、公共用地の先行取得や代替地の取得などで事業推進に寄与してきた。設立以後、高度成長期からバブルの崩壊まで地価の上昇が続き、先行取得により安価な土地を購入することができた。
 しかし、バブル崩壊以後、地価が下落して、いわゆる「逆ざや現象」が起こり、公社の財務内容は、大阪府行財政計画の中でも「負の遺産」として位置づけられている。
2)外部監査が示したもの
 平成11年度、公社は包括外部監査を受けた。その主な内容は、すでに供用されて、道路や河川などになっている土地を公社が保有しているものが金額ベースで1280億円に上っている。供用済みの土地は、大阪府がすみやかに公社から買戻しをすることになっているにもかかわらず、その行為を怠っていたと指摘された。土木部は部の予算に買戻し用地費として計上すべきところを公社に抱えさせて、工事費などの確保にあてていた。5年を超える保有土地が金額ベースで2136億円あること。その内供用済み土地849億円も含んでいるが、保有期間が長くなると、金利、管理費などが嵩み、買戻し時に高くなり、無駄な予算を計上することになる。また、地価の下落によって「逆ざや現象」が起こり、二重に割高な用地費となる。外部監査は「公共用地の長期保有は簿価が増嵩して財政の効率化を阻害している」と指摘している。
3)305億円以上の損害
 土木部にどのぐらい「財政の効率化を阻害しているか」と再三明らかにするように要求しているが、未だ損害額を明らかにしていない。こちらで推計せざるを得ない。土木部は外部監査の指摘を受けて、12年度から16年度の5カ年にかけて供用済み土地の買戻しをしている。その予算額は1525億円となっている。外部監査では供用開始から5年を超える土地が849億円あるとされている。この額は買戻し総額の5割を上回っていること、5年間かけて買い戻しをしたことなどを勘案すると、少なめだが、供用開始後平均5年経過して買い戻したとする。5年前の平成11年の公示価格を100とすると、16年は住宅地67・4、商業地54・4と地価が下落している。単純平均は60となる。国の国庫補助は買戻し時の土地価格になるため地価が下落すると、対象額が下がる。補助率は1/2とする。表1は、供用開始前すぐに買戻ししたケースと、今回外部監査の指摘を受けて買い戻したケースとを比較して損害額を推計する。
 なんと305億円以上の損害になる。この額は国庫補助の裏負担である単独費に起債が承認され、交付税額に反映する分を除いた金額であるから、純粋に大阪府の損害になる。長期間、公社が保有していたため、これに金利、管理費などが加わる。もう少し単純化して説明すると、公社が1億円の土地を買収して、すぐ買い戻すと、国庫補助額は5000万円になる。5年後買い戻すと、その土地の価格は6000万円に下がっているから国庫補助額は3000万円になる。単独費の裏負担は5000万円で済んだのが7000万円になってしまう。その差額の2000万円が余分に支出することになる。先行取得を止めれば、4000万円の予算を削減できた。
 地価が下落傾向にある間は、先行取得がもたらす用地費が割高になることは間違いない。地価の下落傾向が2,3年の期間であれば、用地買収業務の困難性もあって、先行取得もしかたない。しかし、この13年間地価が下落傾向にあったにもかかわらず、従来の事業手法から転換できなかったことが大きな失政を招いた。一部の事業に対して、最近、国は購入時の価格を補助額としているが、税金の無駄遣いであることに変わりがない。
4)公社改革
 この公社の問題は、今後の公共事業のあり方を指し示している。地価の下落傾向の間は、公共用地の先行取得を最小限に留めて、数値目標も明らかにして、単年度予算主義の弾力化のみに限定する。この8月に土木部は、先行取得費を平成17年度100億円、18年度50億円、19年度20〜30億円と数値目標を定めたことは評価できるが、もっと減額のスピードを上げるべきだ。そして、すみやかに買戻しを実行することだ。
 代替地については、取得する前に代替地希望者と事前契約することとし「塩漬け土地」を極力少なくする。不明朗な代替地取得ができないシステムづくりが必要となる。また、大阪府からの派遣職員を少なくするなどの改革を始めなければならない。こうした公社改革を先送りして、土木事務所の用地職員を公社に派遣し、用地買収業務を全面委託することは、改革とは言えない。
5)隠れた負の遺産は1500億円
 この外部監査の結果を中枢の幹部職員が知らないとは言わせない。会計的に不適正だけではなく、土木部は公社を第2会計的に利用していた。建設事業費が圧縮されると、用地費を圧縮して、本来買戻しをしなければならない道路や河川の供用済の用地を公社に抱かせ、工事費などに回してきた。損害額305億円以外にも先行取得の「逆ざや」による損失を加えると、600億円以上になる。では、今後はどのぐらいの損失になるか、表2で推計する。公社の保有地の保有期間が10年以上を12年、5年以上を7年、5年未満を2年と少なめに見積もり、公示価格の宅地と商業地の地価の推移を平均して求める。
 推計額は846億円の損失となり、これに金利、管理費などが加わる。これまでの600億円と合わせると、1500億円超える無駄な税金を投入することになる。損害額の推計は国庫補助率1/2とすると表1と同様に計算できるから、半分の423億円になる。これまでの305億円と併せて728億円になる。このようなことが民間会社で行われた場合、会社に損害を与えたとして株主代表訴訟になり、会社役員は給料や退職金だけでなく、私財も没収されるだろう。公社の保有する土地のほとんどが大阪府の「裏書」があるため、公社の会計(財政)には出てこないが、このような構造から無駄な税金を投入することになり、隠れた負の遺産になる。

7 建設事業費と人件費
a.埋め合わせの責任
 改定素案の歳出の削減策を見ると、建設事業費と人件費の削減が車の両輪となっている。建設事業費は、これまで述べたとおり305億円以上もの損害を府政、府民に与えている。一方、出先の技術職員は日夜、税金の無駄遣いをしないため、工法検討や施工方法などにより「コスト縮減」に勤めている。この職員の汗を無駄にするほどの桁違いの損害を被らせておいて、中枢の幹部職員はどのような責任を取るのだろう。外部監査の言う「財政の効率化を阻害し」た額は、先行取得後5年経過するだけで、地価が下落しているために買戻し額の4割になる。買戻した額は1525億円であるから、600億円を超える。今後の「財政の効率化を阻害し」た額は、後846億円(表2参照)になり、金利、事務費を加え、合わせて、総額1500億円を超える。この分は建設事業費で埋め合わせをする責任がある。このような税金の無駄遣いすることを府民や職員にお詫びも反省もしないで、改定素案には3年間で建設事業費を113億円削減すると胸を張っている。人件費の削減を言う前に正すべきことは正すべきだ。
b.二重差別の人件費の削減策
 財政危機になった責任を職員レベルで問えば、幹部職員が第一だが、次は府政に長く関わった年齢の高い職員だろう。私も職階は平職員だが、それ相応の年齢に達している分は責任を回避するつもりはない。ところが、定昇2年停止措置は逆立ちしたアンフェアーなものとなっている。以前、定昇2年停止した場合の損失額を私より15歳若い後輩の職員と、当時の給料表で比較したことがある。額で2倍、率で4倍も若い職員の損失額が多かった。財政危機に責任の少ない若い職員が、より不利になる二重に差別的な給与削減措置を放置しておいて、府政の改革や立て直しなどできるはずがない。また、いつ財政再建するかも言わずに、どのように職員のやる気を引き出すのか。一旦給与を人事委員会勧告どおり実施した上で「3年間で財政再建して、人事委員会勧告を3年後完全実施します。その間、人件費を○%カットさせて下さい。幹部職員は責任の度合いに合わせて一般職員を上回る○%をカットして、○○○億円削減します。一般施策でその『倍』の額をカットして、総額○○○○億円生み出します。歳入が計画より上回ったときは、その一部は人件費に当てる」ぐらいのことは言えないのか。財政再建の時期を明確にしないで、建設事業費も人件費も正さないで「断腸の思い」と言われても、空疎にしか聞こえない。職員の目の色が変わるようなインパクトのある改革なしに財政再建はできない。

8 土地経営の戦略
 企業局事業や主要プロジェクト事業などは広大な土地を抱えていて、そのほとんどの土地が不良債権化している。いずれの事業も、事業の見直しや分譲価格を市場価格にまで値下げした、しようとしている。また、定期借地権方式の導入などを上げている。改定素案では歳入策として、3年間で府有財産の売払いで330億円を確保しようとしている。税収の見通しについて、有識者会議で疑問を呈せられたが、このままでは330億円も甘い見通しと言わざるを得ない。
 9月22日に地価調査が発表され、この1年間で宅地6・6%、商業地7・7%の地価の下落があり、3大都市圏で最大の下落幅となっている。どのようにして330億円を確保できるのか。土地経営の戦略のないままに各部局の抱えている土地の値下げ競争が始まろうとしている。
 例えば、民間の病院事業者が病院を建替えて、新設したいための土地を探してるとする。都市計画や建築規制、医師会との調整など、何でもそろっているのが府庁組織だ。場合によっては、土地を探してる情報も入手できるかもしれない。職員は府民や法人と接する機会はたくさんある。工場用地や福祉施設用地もしかり。また、大阪府の土地を購入して、家を建てた場合、一級建築士の竣工検査を受けることができることにするなど。知恵を出し合い、土地利用やまちづくりの観点などの付加価値を付けて売る。行政は絶対に民間会社より上回るものがある。それは信用だ。この優位性も活用する。これらの施策を講じることによって、市場価格を上回る価格で売却できる。
 そのために各部局横断型の土地経営戦略を持った組織を立ち上げる。府有地だけでなく、土地開発公社の代替地(未利用地)をはじめとする第3セクターの土地を含めて“土地のデパート”を造る。土地のIT化(一部している)を図り、検索機能を充実させる。陳列するだけでなく、どのような付加価値を付けるのか、知恵を絞ることにより「バナナの叩き売り」をしないで済む。ノウハウは充分にある。今大阪府がしている仕事を有機的に連関させるだけではないか。民の目線や民間の経営感覚も大事だろうが、足元をよく見れば、最大で最高のシンクタンクがある。府庁の組織だ。職員はあらゆる分野の情報、知識を有している。問題はこれをコーディネートするリーダーがいないことだ。

9 おわりに
 庁内では、ガタガタ言うより「再建団体になった方が早く財政再建できる」という声が聞こえてくる。私たちの諸先輩は、千里ニュータウンを開発して、民間の乱開発を防いだだけでなく、千里モデルが全国に波及した。これは金額に換算できないほどの価値を生んだ。また、公害防止条例など国をリードする施策も実施してきた。
 こんな大阪府に誰がしたと嘆いていても、誰も助けてはくれない。過去の失政を反省し、責任を取り、新たな府政改革に立とう。また、中堅のキャリアと言われる幹部職員たちは、嵐が通り過ぎるのを待っているのか。その後には何も残っていないことぐらいは分かっているのに。
 今回は私の職域の政策提言をした。稚拙ながら、提言活動の活性化になれば幸いと思っている。他の職場にも同様なことが起こっているはずだ。組合員からの投稿を期待する。


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 自治労府職の恒例行事、棚田での稲刈り&収穫祭の季節がやってきた。参加希望の方は自治労府職本部(TEL 06−945−4056)までお申し込み下さい。

ところ 能勢町長谷地区農園番号I石倉一二三農園(案内板あり)
    能勢電鉄「山下駅」下車阪急バス乗車、「森上」下車徒歩約20分。
    車を利用の場合は阪神高速池田線「池田木部」出口から国道173号線北上、能勢第2トンネル越えて信号3つ目左折
・稲刈り
 と  き 10月17日(日) 9時30分集合
 内  容 9時30分 集合
      10時00分 稲刈り(手刈り)
      12時00分 昼食(弁当・飲み物を配布します)
      13時00分 解散・自由行動
 参加費用 無料
 そ の 他 軍手・着替え・タオルなどは各自ご用意下さい。
・収穫祭
 と  き 10月24日(日) 10時00分集合
 内  容 10時00分 集合
      10時30分 オープニング・いも掘り、焼きいも、体験コーナー・物産販売、餅つき、などなど
      13時00分ごろ随時解散