機関紙「自治労府職」
2004年10月21日号
府労連
勧告の問題点を整理
秋季年末闘争に全力
府人事委員会は20日、知事と府議会議長に「平成16年職員の給与等に関する報告及び勧告」を行った。本年4月の公民較差は1・79%(7812円)で3年連続のプラス勧告。国に準じ給料表改定は行わず、民間との較差を考慮した給料表適用、若年・中堅層への重点配分、新規採用職員の採用から1年以内の昇給を求めた。
実施時期は、条例公布の翌月から。なお一時金や扶養手当は、ほぼ民間に均衡することから改定勧告はない。本年勧告の特徴は較差是正を強く求め、その具体化として@民間を大きく下回る40歳未満への改善措置、A成績主義が普及した民間給与制度との均衡を図ることを強く打ち出したことである。また来年度施行の地公法改正による「人事委員会の勧告権」を強く意識し、勧告・意見の最大限の尊重など、踏み込んで表現され、新たな課題と問題点が多いものとなった。
府労連はこれまで府人事委員会に対し、大阪の「公民較差」を反映した賃金引上げ勧告を行うことなどを要請してきた。また、強く求めてきた@不均衡・不公平の是正、A次世代育成支援策の充実、Bメンタルヘルス問題での職場復帰システムの整備、C男女共同参画の取り組みなど要求に沿う内容が盛り込まれたが、一方で諸手当見直し、給与などへの勤務成績反映への強い言及など問題も大きい。本年は一層の財政悪化で困難な闘いとなるが、府労連は全力で要求実現をめざす。
勧告は4月遡及なしと不満な部分もあるが、給与改定を強く求め、若年・中堅層への重点配分や新採の昇給改善など府労連の強い主張を一定反映した。
一方、民間の成績重視の賃金システムの拡がりを理由に給与などへの成績主義の早期導入を求めている。民間準拠は全面的に否定できないが、公・民労働者の最も重要な違いは公務員労働者の労働基本権が制約されていることであり、労働基本権を回復させることが先決である。
さらに来年度からの人事委員会の権限強化を視野に「勤務条件は任命権者と職員団体の交渉で決定されるものでない」として「勧告・意見の最大限の尊重」を強く打ち出した。これは、労使慣行・労使交渉を否定し府労連と真っ向から対立するもので容認できない。
府労連秋季年末闘争は行財政計画(改定素案)など一段と厳しい状況下の取り組みとなるが、自治労府職は府労連に結集し取り組みに積極的に参加していく。
府人勧
公民較差は1.79%(7,812円)
若年・中堅層へ重点的な配分を求める
大人委 第1642号
平成16年10月20日
大阪府議会議長 若林 まさお 様
大阪府知事 齊藤 房江 様
大阪府人事委員会委員長 中村 久美子
職員の給与等に関する報告及び勧告について
地方公務員法第8条及び第26条の規定に基づき、別紙のとおり、職員の給与等について報告し、併せて給与の改定について勧告します。
第1 職員の給与等に関する報告
1 職員の構成と給与
本年4月における本府の一般職の職員及び市町村立学校の府費負担教職員(以下これらを合わせて「職員」という。) の給与等の状況は、次のとおりである。
(1) 職員の構成
ア 職員数
職員の総数は、8万8158人で、昨年より855人、率で約1%減少している。
これを職種別にみると、行政職1万6788人(事務職・技術職など)、研究職420人(研究所等に勤務する研究員)、医療職3500人(医師、薬剤師、看護師など)、教育職4万7301人(小・中・高等学校等の教員)、公安職2万125人(警察官)、指定職19人(大学の学長、病院の総長・院長及び本庁の部長など)、第二号任期付研究員(任期を定めて研究所等に勤務する研究員)5人となっている。
イ 年齢構成
職員の平均年齢は、44・3歳で昨年に比べ0・2歳低くなっている。
職員の年齢階層別構成は、「50歳〜54歳」を頂点とした構成となっており、40歳〜54歳の職員が占める割合は56・3%となっている。
行政職給料表の適用を受ける職員の平均年齢は、44・4歳で、昨年に比べて0・1歳高くなっている。年齢階層別構成は、「50歳〜54歳」を頂点とした構成となっており、40歳〜54歳の職員が占める割合は50・8% となっている。
ウ 性別構成
職員の性別構成は、男62・0%、女38・0%となっており、行政職給料表の適用を受ける職員の性別構成は、男72・2%、女27・8% となっている。
エ 学歴別構成
職員の学歴別構成は、大学卒60・7%、短大卒12・3%、高校卒26・1%、中学卒0・9%となっている。
行政職給料表の適用を受ける職員の学歴別構成は、大学卒28・3%、短大卒5・8%、高校卒61・3%、中学卒4・6%となっている。
(2) 職員の給与の状況
ア 平均給与
職員の平均給与月額(管理職手当及び時間外勤務手当等を除く。)は46万385円で、その内訳は、給料38万2775円、扶養手当1万2060円、調整手当3万9899円、住居手当5097円、通勤手当1万2278円、その他手当8276円となっている。
イ 給料
職員に対しては、その職種に応じて、12の給料表に規定する給料を支給している。
給料表別に平均給料月額をみると、行政職 35万8551円(平均年齢44・4歳) 、研究職 39万1654円(平均年齢45・2歳)、医療職(一)47万9134円(平均年齢43・3歳) 、医療職(二)34万9377円(平均年齢43・7歳)、医療職(三)31万44円(平均年齢37・2歳) 、教育職(一)47万1482円(平均年齢46・6歳)、教育職(二)41万9592円(平均年齢46・6歳) 、教育職(三)40万2469円(平均年齢46・0歳)、教育職(四)46万7973円(平均年齢47・0歳)、公安職34万9445円(平均年齢40・7歳)、指定職 89万4316円(平均年齢58・6歳)、第二号任期付研究員35万800円( 平均年齢32・0歳)となっている。
ウ 扶養手当
扶養親族を有する職員に対しては、その扶養親族1人当たり3000円〜1万6000円の扶養手当を支給している。
扶養手当を支給される職員は、全職員の56・7%で、その平均支給月額は2万1286円、受給者1人当たりの平均扶養親族数は、2・1人となっている。
エ 調整手当
在勤地における民間の賃金、物価及び生計費の状況に応じて、給料、管理職手当及び扶養手当の月額の合計額の10%に相当する調整手当を支給している。
オ 住居手当
借家・借間に居住する職員(職員宅舎居住者等を除く。)で月額1万2000円を超える家賃を負担する者に対しては、その負担する家賃の額に応じて2万7000円以内、また、自己所有の住宅に居住する者に対しては、4600円の住居手当を支給している。
住居手当を支給される職員は、全職員の60・8%で、その平均支給月額は8382円となっている。このうち、借家・借間居住者に対する平均支給月額は2万5711円、その負担する家賃の平均月額は7万303円となっている。
カ 通勤手当
交通機関又は交通用具を利用した通勤を常例とする職員に対しては、最も経済的かつ合理的と認められる通常の経路及び方法による交通費に応じて通勤手当を支給している。
通勤手当を支給される職員は、全職員の93・2%で、その平均支給月額は1万3180円となっている。
2 民間給与等の調査
(1) 調査の概要
本委員会は、職員の給与と民間給与との精確な比較を行うため、人事院及び大阪市人事委員会と共同して、常勤従業員数でみた企業規模100人以上、かつ、事業所規模50人以上の府内民間事業所のうちから、層化無作為抽出法によって抽出した486の事業所を対象に「平成16年職種別民間給与実態調査」を実施し、調査が完了できた447の事業所(調査完了率92・0%)において、公務と類似すると認められる77職種の2万1505人について、給与改定の有無にかかわりなく、本年4月分として個々の従業員に実際に支払われた給与月額等を実地に調査した。
(2) 調査結果
ア 平均給与等
調査対象従業員の平均給与月額(「きまって支給する給与」から時間外手当を除いた額)は、事務部長70万9262円(平均年齢49・7歳)、事務課長57万5730円(平均年齢45・4歳)、事務係長43万2575円(平均年齢40・7歳)、事務主任39万1836円(平均年齢38・4歳)、事務係員29万789円(平均年齢32・9歳)となっている。
また、初任給は、新卒事務員・技術者の平均で、大学卒20万1122円、短大卒16万6906円、高校卒16万769円となっており、本年4月に新規学卒者の採用を行った事業所のうち初任給を据え置いた事業所の割合は、大学卒で78・5%、高校卒で76・9%である。
イ 家族手当
家族手当(扶養手当)の平均支給月額は、配偶者のみ1万6637円、配偶者と子1人2万1960円、配偶者と子2人2万6922円、配偶者と子3人3万1478円となっている。
ウ 特別給
昨年8月から本年7月までの1年間に支払われた賞与等の特別給の1人当たり平均支給額は、平均給与月額の4・39月分に相当している。また、民間における賞与の配分状況は、一定率(額)分と考課査定分の比率が、課長級ではおよそ5対5、係員級ではおよそ6対4の割合となっている。
なお、本委員会独自のアンケート調査によると、75・2%の事業所が人事評価を賞与の考課査定に反映させており、その際重視する査定項目としては、仕事の成果・実績(70・8%)、仕事で発揮された能力(47・2%)、勤務実績(39・3%)の順に多くなっている。
エ 本年の給与改定の状況
一般従業員について、ベア慣行のある事業所のうちベースアップを実施した事業所の割合は19・2%、一方ベースアップを中止した事業所の割合は41・6%、ベースダウンを実施した事業所の割合は1・4%となっている。
また、一般従業員について、定期昇給制度のある事業所のうち定期昇給を実施した事業所の割合は71・7%となっている。一方、定期昇給を停止した事業所の割合は9・5%となっている。
本委員会独自のアンケート調査によると、68・0%の事業所が昇給に人事評価の結果を反映させており、重視する項目は、仕事で発揮された能力(63・0%)、仕事の成果・実績(61・8%)、取組姿勢(46・0%)の順に多くなっており、その判定期間は、ほとんどの事業所で1年間としている。
なお、勤務成績等による降給については52・4%の事業所で制度化されており、34・3%の事業所で実際に運用がなされている。
オ 賃金カット等の状況
賃金カットを実施した事業所は、一般従業員でみると2・4%、管理職で4・7%となっており、昨年に比べてやや減少している。
一方、賃金カットを実施した事業所における平均カット率は、一般従業員は6・0%、管理職では7・6%となっており、昨年に比べやや低くなっている。
カ 雇用調整等の状況
平成16年1月以降に雇用調整等を実施した事業所の割合は44・0%であり、内容別に見ると採用の停止・抑制(21・6%)、部門の整理・部門間の配転(17・7%)、業務の外部委託・一部職種の派遣社員等への転換(15・7%)、残業の規制(11・8%)、希望退職者の募集(8・2%)、転籍出向(0・4%)といずれも昨年に比べ減少している一方、正社員の解雇(7・1%)といった厳しい措置は昨年より増加している。
3 職員の給与と民間給与との比較
本委員会が行った職員給与実態調査及び職種別民間給与実態調査の結果に基づき、職員にあっては行政職給料表の適用を受ける職員(技能労務系職員を除く。)、民間にあってはこれに相当する職種の職務に従事する者について、責任の度合、年齢等の条件が同等と認められる者相互の給与をラスパイレス方式により比較し、その較差を算定したところ、民間給与が職員の給与を7812円(1・79%)上回っている。
4 物価及び生計費
本年4月の消費者物価指数(総務省統計局) は、昨年4月に比べ、全国では0・4%の下落となり、大阪市でも0・5%下落している。本委員会が総務省の家計調査の結果を基に人事院方式により算定した本年4月の大阪市における標準生計費は、2人世帯15万8580円、3人世帯18万3110円、4人世帯20万7650円、5人世帯23万2180円となっている。
第2 人事院勧告の概要
(省略)
第3 勧告及び意見
1 勧告
職員の給与の決定条件に関する調査の結果は以上のとおりであり、職員の給与と民間給与との較差、職員の給与抑制の状況、物価・生計費及び国家公務員の給与改定に関する人事院勧告の内容等を総合的に勘案すると、下記により、職員の給与を改定する必要があると認められるので、所要の措置をとられるよう勧告する。
記
(1) 給料表等
ア 職員の給与と民間給与との較差を考慮して給料表を適用するとともに、その配分において若年層等へ重点的に措置すること。また、新規採用職員については、採用から1年以内に昇給できるよう措置すること。
イ 教育職給料表(一)を廃止すること。
ウ 指定職給料表を人事院勧告に準じて改定すること。
(2) 実施時期
(1)のア及びウの改定は、この改定を実施するための条例の公布の日の属する月の翌月の初日(公布の日が月の初日であるときは、その日)から実施すること。
(1)のイについては、平成17年4月1日から実施すること。
2 意見
(1) 今後の給与制度について
わが国は、世界経済の拡大・回復を背景に、堅調な景気の回復が続いており、大阪経済も一部に鈍い動きがあるものの緩やかながら回復に向かっている。一方、従業員の給与水準は、大企業を中心にボーナスが多少増加傾向にあるものの全体としては低迷が続いており、企業収益の拡大に見合うほどには改善していない。多くの民間企業では、急速なグローバル化による競争の激化や経営環境の変化に対応し、経営戦略の一環として、人件費の削減・合理化や設備投資の拡充等経営のスリム化と体質強化が進められており、人事給与制度についても、従業員のやる気と仕事への充足感を高めることを目的として、仕事の役割・内容や成果・実績をより重視する給与システムへの再構築が急速に進んでいる。大阪府内では、4分の3を超える事業所で賞与に人事評価が反映されているほか、ベースアップを実施した事業所は2割弱にとどまり、定期昇給制度もない事業所が課長級では約3分の1に達し、定期昇給制度があるとした事業所でも8割近くで査定昇給が実施されるなど、民間企業における勤務成績の給与への反映が全国平均を上回る勢いで進んでいる。
本委員会は、これまでから、地方公務員法に規定する情勢適応の原則に則り、給与水準の公民均衡を基本に勧告を行うとともに、給与制度の仕組みと運用における民間とのバランスの確保を求めてきたところである。具体的には、公民の給与較差の是正と併せて、24月昇給延伸という本府独自の給与抑制により生じている若年・中堅層への過重な負担の是正を勧告するとともに、勤勉手当や特別昇給などにおける勤務成績の反映等を要請してきた。しかし、特別昇給が若年層から一部勤務成績を反映して再開されるなど若干の改善はなされたものの、給与水準の公民較差と給与配分の不均衡はほとんど是正されず、逆に引下げの給与改定が実施されている。また、実質的な勤務成績判定を伴わない勤勉手当の一律支給や普通昇給における事実上の自動昇給が続くなど、給与制度全般を通じて情勢適応の原則に沿っているとは言い難い状況にある。職員の最も重要な勤務条件である給与は、次に述べるように、本委員会の勧告・意見を尊重して、社会一般の情勢に適応するよう措置され、決定されるべきものであり、そうすることによって、職員の勤務意欲を高め、必要な人材を確保し、公務能率の一層の増進を図る必要がある。
本委員会は、こうした見地から、当面、民間との給与水準の均衡、給与配分の適正化、給与への勤務成績の反映等を求めるとともに、次に掲げる考え方を基本として、民間に準拠した給与制度の再構築に向け、抜本的な改革を推進すべきであると考える。
ア 勧告・意見の最大限の尊重
地方公務員の勤務条件は、任命権者と職員団体の交渉で決定されるものではない。
中立的な専門行政機関である人事委員会が、情勢適応の原則等法令の趣旨を踏まえて議会及び長に勧告し、これを尊重して策定される条例により定められ、人事委員会が定める規則等により実施されるものである。もとより、この間において職員団体も重要な役割を果たすものであるが、協約締結権等職員の労働基本権が制約されている以上、その代償機関である人事委員会の勧告・意見は最大限に尊重されねばならず、勧告・意見の趣旨に沿った制度の設計と運用がなされる必要がある。
イ 法令の趣旨の遵守
給与制度は、法律・条例の定める諸原則に沿って運用する必要があり、任命権者と職員団体の合意によっても、法令の趣旨に合致しない運用が許されないことは当然である。現在の給与制度は、その運用において、情勢適応の原則等法令の定める諸原則や法令の趣旨に合致しているとは言い難い面があり、本委員会は、法令の趣旨等を尊重する見地から、給与への勤務成績の反映等を求めているのであって、速やかに必要な是正措置が講じられることを強く望むものである。
ウ 社会情勢の反映
公務員給与が府民の負担により賄われていることからすれば、給与制度を含むその勤務条件については、府民の理解と納得を得る必要があり、また、府民に支持されるものであることが望ましい。そのためには、給与制度の運用は、その時々の社会経済情勢を適正に反映したものでなければならず、その内容が合理性を有し、かつ、わかり易いものである必要がある。
現在の社会情勢からすれば、自動昇給等経済の右肩上がりを前提とする給与システムの運用はもはや過去のものであり、これまでの一律的な給与決定が府民の理解と納得を得られる状況にはない。仕事の役割・内容と成果・実績を基本とするより今日的で合理的な仕組みへと、国の動向に十分留意しながら、現在の給与制度を抜本的に見直していく必要がある。
(2) 給与制度の改善について
大阪府職員の給与は、法令の定める趣旨に沿って、水準が民間と均衡していることはもちろん、配分や運用等においても民間の状況を的確に反映したものであることが求められる。本委員会は、こうした見地から、本府の給与制度のうち次の事項について、速やかに必要な改善がなされることを望むものである。
ア 給与配分の適正化
大阪府職員の給与は、本委員会がこれまでから指摘しているように、24月にわたる昇給延伸の影響等により、30歳を中心とする若年・中堅層の給与が50歳を中心とする高齢層に比べ極端に抑制されており、新規採用職員が2年近く昇給できないなど、給与システム全体に大きなゆがみが生じている。こうした給与配分の不均衡・不公平は、新規採用職員の昇給期間短縮や若年層からの特別昇給により多少緩和されたものの、依然として抑制率、抑制額ともに非常に大きな格差として残っており、民間との比較においても、40歳未満の若年・中堅層の給与が低くなっている。昨年の勧告でも言及したが、たとえ財政破綻を回避するための給与抑制であっても、若年・中堅職員に過重な負担を強いることにより職員全体の給与水準を引き下げるような措置を続けることは、民間ではほとんど例がなく、本府の人事給与制度について、職員のみならず府民の信頼をも損なうおそれがあることから、条例に基づく昇給期間の短縮等により速やかに是正されるべきである。加えて、人事院は、本年の勧告で年齢別民間賃金との均衡を図るため、高齢層の引下げと若年層の引上げといった昇給カーブのフラット化を検討するとしているが、現在の本府の給与配分は、国以上に民間と乖離しており、その適正化の必要性は極めて大きい。
本委員会は、こうした理由から、昨年に引き続き、給与配分において若年層等へ重点的に措置することを求める勧告を行ったところであり、本勧告の趣旨に沿った条例措置を強く要請するものである。
イ 給料表の運用等の適正化
@ 昇給
普通昇給は、12月を下らない期間を良好な成績で勤務したときに1号上位に昇給させる制度であり、特別昇給は、職員の勤務成績が特に良好である場合に、昇給期間を短縮し、又は上位の号給に昇給させる制度である。しかしながら、普通昇給は、必要な日数出勤していれば、懲戒処分を受けない限り自動的に昇給する運用となっており、休職者等でも一定の期間が経過することで昇給できるなど、実質的な勤務成績を判定することなく昇給させている。また、特別昇給についても、人事評価に基づく昇給が行われているものの、勤務要件と年齢要件を満たすことで対象となった者のほぼ99%が昇給するなど、一律的な運用が残っており、いずれも制度の趣旨に合致しているとは言い難いものである。
昨年の勧告でも言及したところであるが、一部を除き顕著な改善が見られないことから、各制度の趣旨に沿った昇給への勤務成績の反映を強く求めるものであり、本委員会としても、当面、こうした見地から、昇給に関する基準等の見直しに順次取り組むこととしたい。
A 昇格
現行の給与制度は、昇格させることができる場合をその職務の級に属する職を占めている場合、つまり昇任等による職務の変更があった場合に限っているが、現実には在級年数による昇格が広く行われており、標準的な職務の内容も必ずしも明確ではない。一般的に、大阪府の行政職の場合は、昇任することなく勤続を重ねることで、ほとんどの者が、本来課長補佐の職務の級である7級まで昇格している。
こうした十分な合理性のない給与決定について、府民の理解と納得を得ることは困難である。もとより、昇格については、職員の処遇と密接に関連しており、各職務の級に在級している人数も、全体として見れば国や他府県と比較して多い訳ではない。しかしながら、こうした運用は、制度本来の趣旨に必ずしも合致するものではなく、本委員会としては、できる限り速やかに改善したいと考える。したがって、職員の処遇のあり方とともに、順次見直しに向けた協議・検討を進めるよう要請する。
なお、現在人事院で検討が進められている下位の級での勤務実績に関する具体的要件の設定など昇格(降格)基準の明確化や昇格に際し一定額を加えるなど昇格時の給与額決定方式の見直しについては、先に述べた自動的な年功による昇格を見直す中で、検討していくこととしたい。
B 給料表等の見直し
人事院は、本年の勧告で、現行の俸給表について、上位級との水準の重なりが8割程度となるなど、職務・職責の違いが反映されにくい構造となっているとして、級構成の再編等俸給表構造の見直しについて検討するとし、これと併せ、職務給の徹底を図るため、枠外昇給の廃止について検討するとしている。
大阪府の給料表については、そのほとんどを国に準拠しており、基本的な課題は国と異なるものではない。しかし、平成11 年度からの昇給延伸により給与構造にゆがみが生じていることを考慮すれば、昇給カーブのフラット化の要請は国よりも強く、また、号給が国以上に高位まで延びている級もあることから、水準の重なりが国より多く、枠外昇給の廃止についても、国との均衡をどのように確保するか等、独自の検討を要する面もあり、人事院の動向を注視しながら、見直しに向けた検討を進めていくこととしたい。
なお、給料の調整額についても、国及び他の都道府県との均衡を考慮し、府民の理解と納得が得られるかどうかという視点から、各職の実態を踏まえ、所要の見直しに着手することとしたい。
ウ 勤勉手当の適正化
条例上勤勉手当は、職員の勤務成績に応じて支給するとされているが、本委員会の度重なる成績率の通知等に関わらず、警察職員を除き、懲戒処分を受けた者等以外同じ割合で支給されている。国及び多くの都道府県の例に倣い、扶養手当の額をその算定基礎額から除外し、これを原資として、現行の支給総額の範囲内で勤務成績を反映した支給を行うことを要請する。
また、勤勉手当の期間率の定めのうち、勤務期間の計算に関する不合理な基準については、国等の事例を参考に改めることとしたい。
さらに、指定職給料表適用職員に支給される期末特別手当については、現行制度での勤務成績反映を求めるとともに、国等の動向に留意しつつ実績反映について検討することとしたい。
エ 諸手当の見直し等
@ 管理職手当の適正化
管理職手当については、課長級の職を中心に全国都道府県で最高の水準にあることから、国及び他の都道府県との均衡等を考慮し、所要の改定を行うこととする。
人事院は、本年の勧告で、国家公務員の管理職手当に相当する俸給の特別調整額について、民間企業における年俸制の拡大、役付手当の基本給への繰入れ等の実態を踏まえ、比較給与種目に加えること等を検討するとしており、本府で同様の比較を可能とするためにも、管理職手当の適正化が急務であることから、速やかに引下げ等を実施することとする。
なお、校長、教頭等学校職員の管理職手当については、大都市特有の事情や業務の困難性等を踏まえ、見直しに向けた検討を進めることとしたい。
また、本年の人事院勧告を踏まえ、管理職手当の定額化について、民間企業における役付手当の支給状況等を調査するなど、所要の検討を行っていくこととしたい。
A 扶養手当の現状と今後
扶養手当については、国及び他の都道府県との比較で見ると、配偶者に係る支給額が高く、子等3人目以降に係る支給額は低くなっている。しかし、大阪府の民間事業所の平均支給額は、昨年同様、いずれの場合も本府の現行の支給額とほぼ均衡している。扶養手当は、公民の給与較差の算定に含まれる手当であり、較差の是正に資するため、子等3人目以降の支給額を引き上げる方法もあるが、本委員会としては、昇給延伸の影響により生じた較差を手当で是正することは適当でないなどの理由により、改定の勧告は行わないこととした。
また、民間では、生活スタイルの変化や給与システムの改革により、扶養手当を含む家族手当全体の見直しが進んでおり、本委員会としては、今後とも、国の公務員制度改革の動向も注視ながら、家族手当のあり方として検討を進めていくこととしたい。
B 通勤手当の運用等
通勤手当については、国及び他の都道府県との均衡を考慮し、民間に準拠して支給限度額を設けることを要請する。
また、支給額の算定基礎となる交通機関等に係る運賃等相当額については、定期券、回数券のうち最も経済的かつ合理的であると認められる価額となるよう改定することとし、支給対象期間内に異動等があった場合の追給・返納額の算定等についても、支給事務の煩雑を軽減し、わかり易いものとするため、国等の取扱を参考に改善することとする。
昨年の勧告においても、同じ趣旨の意見を述べたところであり、速やかに措置されることを求めるとともに、規則改正等所要の措置を講じることとする。
なお、こうした運用の見直しを行うことにより、通勤手当の実費弁償的な性格が強まることから、来年以降、人事院の取扱に準拠し、給与の公民比較の対象から外すこととするが、通勤手当も給与の一部であって実費そのものではなく、条例の委任に基づき本委員会が定める基準等により決定され、支給されるものであることに留意すべきである。
C 特殊勤務手当の見直し
特殊勤務手当については、民間で同種の手当等を支給している事業所は2割程度であり、社会情勢の変化等により勤務の特殊性が薄れているものなどが見受けられることから、国における改善の動向に留意しながら、各手当の支給実態を踏まえ、府民の視点から所要の見直しを行うよう要請する。
例えば、種牛等取扱手当などのように頻度が少なくなったため国において廃止された手当や火薬類等取扱手当のように国が支給対象業務を見直した手当については、支給実態等を踏まえた見直しを検討する必要があり、職業訓練手当は、他の手当との併給や加算の妥当性等について、他の都道府県等との均衡を踏まえた見直しを行うべきであって、特殊現場作業手当についても、各手当の支給実績を踏まえ、技術の進歩等により特殊性が失われていないか等、制度の趣旨に合致しているかどうかについて、社会情勢の変化を踏まえ、個別に精査・検討すべきである。
D 農林漁業改良普及手当の見直し
農林漁業改良普及手当については、本年の農業改良助長法改正で支給対象の職が変更され、支給割合について各都道府県の実態を考慮して定めることができるようになったことから、法の趣旨を踏まえ、本府における人材確保上の要請や業務上の必要性等を考慮し、本府の実情に見合うよう支給額等を見直し、速やかに所要の改定を行う必要がある。
E 退職手当制度の改革
退職手当については、勤続に対する報奨であると同時に給与の後払いとしての性格から、法令に定められた場合を除き全額払いが原則とされている。しかし、近年、民間では、団塊の世代を中心とする従業員の高齢化等を背景に、退職一時金と企業年金を併用する企業が増えつつあり、退職後の就業状況等との関係から年金を選択する者も少なくない。こうした制度を公務員に導入するには基本的に立法措置が必要であるが、大阪府においても、3年後には定年退職者数がピークを迎えると予測されていることなどから、退職手当について、民間の事例等を参考に、職員がその事情等に応じて分割受給を含む多様な受給方法を選択できるよう早急に検討を進めることが適当である。
また、早期勧奨退職制度(選択定年制)については、昨年の勧告でも述べたように、これまで職員のライフプランを支援するものとして相当な実績を挙げてきた経緯があり、対象年齢の引上げ等所要の措置を講じた上で、今後とも制度としての継続を検討すべきである。
加えて、近年、民間では、給与制度の見直しの一環として、退職金の算定に在職中の勤務実績を反映させる企業が増えていることから、本委員会としても、職員の勤務意欲の向上を図るため、在職中の成果・実績を適正に評価し、退職手当に反映させる制度の検討に積極的に取り組んでいくこととしたい。
(3) 公立学校教員の給与等について
(省略)
(4) 勤務成績の評定制度について
地方公務員法では、任命権者は、職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果に応じた措置を講じなければならないとされており、勤務評定の結果は、昇給、昇格、勤勉手当の査定等の資料として活用することとなっている。給与制度の改善を図るためには、職員の理解と協力を得ながら、この勤務成績の評定制度が適切に機能することが基本である。
現在国では、公務員制度改革の根幹となる能力等級制等に関する法案について、早期の国会上程に向けた作業が進められている。今回の改革では、この能力等級制は任用の基礎となるものと位置づけられており、給与制度は人事院がこの能力等級制と整合した
給与準則を立案することとなっている。この中で、評価制度は、主に任用に際しての重要な判断材料として政府が基準を定める能力評価と、主に勤勉手当、昇給、昇格等給与に活用するものとして人事院が基準・手続きを策定する実績評価に区分して実施する案が検討されている。
これまでから、本委員会は、勤務成績の評定に関する「総合的企画」を担任する中立的な人事給与行政の専門機関として、主に給与等へ反映する場合における評価制度の改善に向けた意見を申し出てきたところである。本年の地方公務員法改正では、人事委員会の権限として、上記の「総合的企画」に代えて「勤務成績の評定」が、「絶えず研究を行いその成果を議会、長等に提出すべき事項」に追加された。人事委員会は、「勤務成績の評定に関し必要な事項について」の勧告権と併せて、これまでと同様、勤務成績の評定制度について非常に重要な役割を担うこととされている。殊に、評価結果を給与等の勤務条件に反映させようとする場合は、評価制度自体に中立性、客観性が強く求められることは当然であり、今後とも、評価制度の企画、設計、実施に当たっては、国における人事院と同等の役割を担う人事委員会の勧告・意見を十分尊重することを要請するものである。
本委員会は、こうした考え方から、今後の勤務成績の評定制度のあり方や改善すべき点等について、次のとおり意見を申し述べるものである。
ア 評価の制度の見直し
大阪府内の民間事業所では、約4分の3が賞与に人事評価を反映させているほか、昇給や昇格でも約3分の2の事業所が評価結果を反映させており、給与に全く反映させないという事業所は7%に満たない。評価事項や評価回数については、本府の場合と大きな違いは見受けられないが、給与に反映させる場合の評価項目は、昇給では、ほぼ3分の2の事業所が「仕事の成果・実績」と「仕事で発揮された能力」を査定しているが、賞与では、約7割が「仕事の成果・実績」を査定しているのに対し、「仕事で発揮された能力」を査定している事業所は半数に達しない。こうした民間調査の結果からすると、昇給では、「仕事の成果・実績」と「仕事で発揮された能力」をほぼ同等に評価しているのに対し、ボーナスでは、主に「仕事の成果・実績」が重視されていると考えられる。こうした民間の状況を考慮すると、昇給・勤勉手当それぞれの制度の趣旨に見合った評価を検討する必要があり、本委員会としては、現在各任命権者が実施している評価制度を前提としつつ、人事院が作成を進めている実績評価や民間事例等も考慮して、評価結果が給与へ適正に反映されるよう所要の見直しを進めることを求めるものである。
イ 成績主義への転換
現在民間企業で進められている勤務評価制度の改革は、これまでの職務能力を基礎とする評価が年功中心に流れたことへの反省を踏まえ、主に仕事の内容・役割と業務目標の達成度合いを評価する制度に再構築しようとするものであり、能力評価については、潜在能力や人柄といった業務と直接関係のない不明確な要素を極力除外し、仕事において有効に発揮された能力に限定するのが一般的である。こうした民間の動向は十分注視する必要があり、本府の勤務評定制度についても、国の動き等も参考にしつつ、職務と成果を中心とするものに見直していくべきである。
また、業務目標を設定する場合は、数値等による客観化にこだわることなく、事前に評価者と被評価者が十分に話し合い、少なくとも双方がイメージを共有し得るまで理解し合うことが重要である。一方的な押しつけではなく、評価者と被評価者双方の理解と納得の下に実施するのでなければ、勤務評価は効果を発揮しないことに十分留意すべきである。
ウ 評価の適正化
昨年度の知事部局等における新人事評価制度では、C評価(普通)以上の者が全体の99%近くを占めており、B評価(優れている)以上でも6割近くになっており、こうした極端な寛大化の傾向は平成12年度以降年々顕著になっている。一方、学校職場では、「極めて優れた勤務成績を有すると判定される事実が認められた職員」が、学校長からの推薦が極端に少なかったため全体の約0・2%しか選定できないという逆の事態も発生している。
こうした状況が、府民の理解と納得を得られるとは考えられない。もとより、本委員会は、必ずしも同じ職場の職員全てに優劣を設ける意味での相対評価を望むものではないが、職員の給与等に勤務成績を適正に反映し得る評価とすることを求めるものである。このため、管理職員以下全評価者の意識啓発、被評価者への理解の徹底、非協力者への指導等あらゆる手段を通じて、職員の意識改革に努めるよう強く求めるものである。
エ 自己申告制の検討
現在本府で実施されている新人事評価制度等では、チャレンジシートや自己申告票の提出等が実施されているが、自己申告制は、評価制度に対する職員の理解を徹底し、目標達成への意欲や職務への充足感を高め、評価結果に対する納得性を深めるなど様々な効果が期待されるものである。国で検討が進められている評価制度では、能力評価では自己評価が、実績評価では自己申告が評価面談とともに検討されており、こうした国の状況も注視しながら、更なる充実に向けた検討を進めることを求めるものである。
オ 多面的な評価の拡充
現行の評価制度では、行政職だけでなく、医療職、研究職、教育職、公安職等職種に応じ、また、職階に対応して、評価要素を変えるなど様々な工夫がされているが、勤務評価は、給与を負担する府民の視点から客観的かつ公平・妥当なものであることが求められる。そのためには、評価の基準について、本委員会の意見等を考慮して絶えず見直しを行うとともに、評価の実施に当たっても、行政サービスの受け手からの評価や同僚からの評価など多面的な評価を可能とする仕組みについて、より検討を深める必要がある。
カ 苦情処理制度の充実
勤務成績の評定制度について、職員の勤務意欲の向上や公務能率の増進といった所期の目的を果たすためには、評価者と被評価者双方の理解が不可欠である。そのためには、十分な話し合いを通じて、被評価者の評価者に対する信頼を深めていくことが肝要であるが、併せて、評価の公平性、透明性、納得性の向上を担保する観点から、職員からの苦情や相談を適切に処理する機能を高めていくことが重要である。
本年の地方公務員法改正では、職員の人事管理に関する苦情を処理することが人事委員会の権限に追加された。これは、人事委員会機能の充実の一環として、職員の苦情の処理を人事委員会の担任事務に加えるものである。本委員会としても、職員の苦情処理制度について、来年度実施に向けた執務体制等の準備に万全を期するとともに、職員総合相談センター等の職員相談機関と連携を図りながら、処理方法のあり方等について、積極的に検討を進めていくこととしたい。
これまで述べた勤務成績に関する評定制度は、評価結果が給与や任用に適正に活用されることを通じ、仕事に対する充足感を満たすことで職員の勤務意欲を高めることを目的とするものであり、その成否が本府の活性化の鍵となる。職員一人一人が制度の趣旨を十分理解し、制度の円滑な実施に一層努めることはもちろん、各任命権者が、その改善に不断の努力を重ねることを期待する。
(5) 勤務環境等の整備について
人事院は、本年の勧告で勤務時間に関する制度を弾力化・多様化して職業生活と家庭生活の両立を支援し、公務における人材の活用・育成・確保を図ることは、公務能率の維持・向上のためにも重要であることから、様々な対応策について検討を進め、両立支援のための施策を一層推進するとしている。
本府においても、勤務条件の透明性を高め、多様化する府民のニーズに的確に対応した府政運営を確保するとともに、就業意識の変化や価値観・ライフスタイルの多様化を前提としてより優秀な人材を確保し、育成し、活用していくことが求められており、こうした見地から、育児・介護に従事する職員を支援することなどにより、職業生活と家庭生活の両立を図り、勤務形態の多様化を推進していくことが重要である。
本委員会としては、職員の健康を保持し、増進することを通じて公務能率を一層高める意味から、時間外勤務の縮減、健康管理の徹底、休暇の取得促進等の課題に積極的に取り組んでいくこととしたい。
ア 特別休暇の規定の適正化
特別休暇については、地方公務員法の定める勤務条件条例主義に則り、主な休暇は条例で規定することとし、例外的な休暇については、条例に委任規定を設け、人事委員会規則で定めることとされたい。
昨年の勧告でも、特別休暇制度全般の見直しに向けた検討を求めたところであるが、本年は、まず、府民の理解と納得を得ることが重要と考え、透明性を高めるため、条例化の徹底を求めることとしたものである。
イ 育児や介護を行う職員への支援
人事院は、本年の勧告で、育児や介護を行う職員への支援として、部分休業の対象となる子の範囲の拡大や短時間勤務制の導入について検討を進めるとともに、子育て等のための早出・遅出勤務の適用を可能とし、業務上可能な場合は在宅勤務等を活用できるようにするとし、また、男性職員の育児参加を促進するため、育児休業の取得促進を図るとともに育児のための特別休暇の導入を検討するとしている。大阪府においても、職業生活と家庭生活の両立を支援する見地から、これらの各施策について、人事院の動向を注視しつつ実現に向けた検討を行う必要があり、本年の地方公務員法の改正を踏まえ任期付短時間勤務職員制度の活用を検討することも重要である。さらに、育児休業を取得する際の代替要員の確保などの条件整備や送迎の実態等に応じた保育所等への送迎のための休暇の改善について検討するとともに、育児に従事する職員の支援策として、特別休暇のうち、育児時間については、他の都道府県との均衡を考慮して対象となる生児の年齢の引き上げを求めるものである。
ウ 労働時間の短縮
恒常的な超過勤務の是正は、職員の心身の健康障害を防止し、職業生活と家庭生活の両立を推進する意味からも、早急に取り組むべき課題である。
人事院は、本年の勧告で恒常的な長時間勤務を解消又は軽減するため、早出・遅出勤務の活用を促進するとともに、管理者の判断で、業務の繁閑に応じて弾力的な勤務時間の割振りができる仕組みの導入について検討するとしており、本府でも、先頃公表された「行財政計画(改定素案)」の実施において、時間外勤務の上限を年間360時間とすることなどが提案されている。
超過勤務を縮減するには、まず、管理者、職員双方の意識改革を徹底し、業務の合理化・効率化を一層進める必要がある。具体的には、管理者は、残業はコストであるとの意識を職員と共有し、業務遂行状況等に関して十分なコミュニケーションを図る中で、臨時又は緊急の必要性に基づき明示的に時間外勤務を命じることを徹底すべきである。さらに、人事院の提案例等を参考に、業務の繁閑に応じた勤務時間の割振りについても検討する必要があり、時間外勤務の上限時間の設定による縮減については、実態の改善と合わせて今後とも推進すべきである。
しかしながら、上限時間の管理を厳格にするあまり、いわゆるサービス残業(賃金不払い残業)が発生することがあってはならず、これを防止するため、厚生労働省の指針に沿ってタイムカード等で退庁時間を客観的に記録するなどより適切な措置を検討すべきである。
エ 心身の健康づくりの推進
職員の心身の健康を増進することは、職員やその家族にとって重要であるばかりでなく、公務能率を増進し、質の高い府政運営を確保する上で欠くことのできないものである。本府では、近年、精神疾患による休職者数が一般疾患によるものを大きく上回っており、ストレスに関する相談件数も増えている。
本委員会は、平成13年の勧告で、こうした状況を踏まえ、健康や職場の悩みなどに関する総合相談機能の強化やメンタルヘルスを含めた健康管理の充実に言及したところであり、これを受けて、本府では、平成14年に職員総合相談センターを整備し、職員の職場の悩みや健康に関する相談に積極的に対応するとともに、本年からストレスチェックシートを全職員に配布し、疾患の予防に努めているところである。
こころの健康づくりは、職員自身の健康管理とともに各職場における適切な対応が求められる課題であり、管理監督の立場にある職員への研修を徹底するなどにより、精神疾患を含む仕事でのストレスに起因する疾患の防止に万全を期す必要がある。今後は、悩みを抱えた職員が安心して相談できるよう、こころの健康に関する相談機能を一層充実させるとともに、国の取組を参考に、専門家の協力を得ながら、早期対応や職場復帰に係るモデル例の検討を進めるなど、必要な対策を推進すべきであり、仕事のストレス等で休職した職員が円滑に復帰できるよう、職場復帰に際し各職場において一層きめ細やかな配慮がなされることを望むものである。
また、現在本府では、長時間労働による職員の健康障害を未然に防止するため、要綱を定めて産業医による保健指導等の徹底に努めているが、今後とも、厚生労働省の通達に沿って適切に対処されるよう求めるものである。
なお、心身のリフレッシュを図ることで職員の健康を保持し、公務能率を増進する上で、特に夏期休暇については、3日以上の連続した休暇の取得を推進すべきであり、国や民間等の事例も参考に、見直しに向けた検討に着手すべきである。
オ 勤務形態の多様化
本年の地方公務員法改正では、新たな休業制度として、修学部分休業と高齢者部分休業が追加された。
修学部分休業は、高度化・複雑化する行政ニーズに柔軟な発想で、迅速かつ適切に対処できる職員が求められている現状からして、自主的な研鑽のための時間の確保を容易にする制度を導入することの意義は大きく、いわゆる社会人のための大学院への参加等において、通学時間との関係から勤務時間中に職場を離れざるを得ないケースもあることから、こうした制度の存在は、職員の学習意欲を一層触発し得るものであり、速やかに具体化に向けた検討を進めるよう求めるものである。一方、高齢者部分休業は、定年前であっても一定の年齢に達した場合には、職員個人の状況に合わせた生活設計を可能とするものであり、高齢社会への対応という時代の要請に沿うものとして大きな意味をもつ制度であるが、現実の勤務実態を考えた場合どの程度の職員ニーズがあるかといった点や公務への影響などにも留意しながら、今後、制度の具体化に向けた検討を行うべきである。
カ 人事・給与関係業務の電子化の推進等
本府では、人事・給与等の内部管理業務について、手続の電子化による簡素化を推進するため、都道府県では全国初の試みとして総務サービスセンターへの事務の集約化を進めており、本年度から本格的に稼働している。こうしたIT技術を活用した事務の集約化は、意思決定を含む事務処理の効率化とスピードアップ等により超過勤務の縮減等勤務環境の改善に大きな効果を及ぼすことが期待されるものである。しかしながら、現実には、勤務成績報告が不十分であるなどにより給料決定の誤りがこれまでになく発生し、また、他のシステムとの連携等から事務処理の一部において従来より煩雑となるなどの課題も見受けられることから、更なる研修の強化やマニュアルの整備などにより速やかに解決すべきである。
今後の給与事務の電子化に当たっては、人事委員会等各制度を所管する機関と調整し、法制面、実務面双方から事前に十分な検討を行うことが重要であり、こうした点に留意しながら、現行の給与システムを改善することが急務となっているが、併せて、給与制度の改革にも対応できるよう、システム機能の一層の充実強化に取り組む必要がある。本委員会としては、電子化に適合するよう規則等の整備を推進するとともに、これを機会として、人事・給与関係手続の更なる簡素合理化について検討したいと考えており、今後の改善に当たっては、課題の処理と併せて本委員会と十分協議するよう要請する。
また、給与の決定に誤りがあった場合の「給与の訂正基準」については、任命権者が職員団体との協議を経て定めているものであるが、必ずしも民法等一般法の諸原則に沿ったものとなっていないことから、本委員会等関係機関と協議の上速やかに見直すべきである。
キ 地方独立行政法人への移行に伴う勤務環境の整備
平成17年4月から、大阪府立大学をはじめとする3つの府立大学が再編統合され、公立大学法人が設置、管理する大学となることが予定されている。その職員の身分については、地方公務員法の適用を受ける公務員から法人職員となり、その給与等の勤務条件については、地方独立行政法人法の定めるところに従い、労働組合法の適用を受ける労働組合との交渉により、就業規則で定められることとなり、労働基準監督業務の所管も人事委員会から労働基準監督署に移管されることとなる。
こうした大学の法人化は、府大学の自律的、機動的運営を確保し、教育研究の活性化を図る見地から有意義なものであるが、移行に当たっては、職員の意見を聴く機会を設けるなど、職員の権利利益を不当に侵害することのないよう十分配慮するとともに、労働基準法・労働安全衛生法等による労働基準の遵守を徹底し、勤務環境の整備に万全を期すことを望むものである。
本委員会としては、府大学の法人化により、教育職給料表(一)について、適用する職務がなくなることから廃止することとするが、本府における地方独立行政法人の勤務条件のあり方等の検討において、今後とも、専門機関として必要な協力を行うこととする。
(6) 多様な人材の採用と活用について
高度化、多様化する府民のニーズに的確に対応し、公務能率の一層の増進を図るためには、多様な能力を有する多様な人材を的確に採用し、活用することが重要であり、雇用ニーズに応じ様々な雇用形態で採用することができるよう制度化に努める必要がある。
今回の地方公務員法等の改正では、任期付採用を一定期間内に業務終了が見込まれる場合などに拡大するとともに、原則3年を任期とする任期付短時間勤務職員制度が導入され、一般の任期付採用が可能な場合に加えて、住民サービスを向上する場合や育児、修学等の部分休業を取得した職員の代替として採用することができることとされた。
任期付採用の拡大は、行政ニーズの変化への的確な対応や意欲と能力のある多様な人材の効率的な活用に資するものである。また、短時間勤務職員制度は、常勤職員に比べ柔軟な人事配置が可能であるなどの利点があり、単に常勤職員の部分休業のバックアップとなるだけでなく、窓口などにおける行政サービスの向上にきめ細かく、かつ効率的に対処することが可能となる。加えて、常勤職員を充てるほどの必要がない業務量の増加にも的確に対応できるようになることで公務運営の一層の能率化に資するとともに、短時間勤務職員によるワークシェアリングで地域の雇用創出に貢献するなど、様々な効果が期待されるものである。しかしながら、こうした新しい雇用形態が所期の効果を発揮するには、どのような要請により、どのような職に、どういう人材を求めるかを明確にして採用する必要があり、労働市場の動向にも留意しつつ、今後、制度のより有効な活用を図るための検討を進めていくことが望まれる。
また、民間等での職業経験を有する優秀な人材を確保し、組織の活性化等を図る観点から、受験資格の年齢制限や主査級昇任考査との関係等を踏まえ、これまでの採用試験とは別の枠組みによる民間等経験者を対象とした試験の早期の具体化に向けた検討を行っていくこととしたい。
(7) 男女共同参画社会の形成に向けた取組について
本府は、平成13年に策定された「おおさか男女共同参画プラン」に基づき、「男女共同参画モデル職場」に向けて、性別にとらわれず、生き生き働くことができ、自己の能力が最大限に発揮できる職場をめざした様々な取組を全庁挙げて推進している。
ア 男女共同参画意識の徹底と職場環境づくり
男女共同参画のモデル職場となるためには、まず、男女共同参画の意識、イメージを全職員が共有する必要があり、管理職員が中心となって性別にとらわれずに能力を発揮できる職場環境づくりを進めることで、男女共同参画に向けた雰囲気を全ての職場で高めていくことが重要である。
現在本府では、男女共同参画意識の全職員への定着を図るため、モデル職場づくり啓発ポスターを作成し全職場へ掲示するとともに、男女共同参画の基本的な知識や府庁の現状を掲載した「男女共同参画必携(仮称)」の作成・配布を進めており、また、性別にとらわれずに能力を発揮できる職場環境づくりとして、管理職の意識と行動を改革するため階層別研修での男女共同参画研修の拡大を推進するなどの取組が進められている。 今後は、こうした男女共同参画に向けた取組を各職場に定着させるため、職場単位で研修体制の一層の整備や日々の業務の中でのチェック方法の検討等職員一人一人が男女共同参画についてより認識を深めることができるような取組が求められている。
また、家庭等仕事以外の生活とバランスの取れた働き方を容易にするため、先に述べた育児や介護を行う職員への支援策に加えて、フレックスタイムや在宅勤務の制度化、時間差出勤の弾力的運用など男女が家庭や地域等での責任を共に果たしつつ勤務することができるよう、勤務形態の多様化についても検討する必要があり、男性職員の育児・介護に関する休暇・休業等の取得を強力に推奨することなどで、家庭生活において男性職員が女性と全く同等の責任を負っているとの意識を庁内に定着させるとともに、休業中の職員について庁内情報の提供システムを確立するなどにより、大阪府全体としてその速やかな職場復帰を積極的に支援することが求められる。
さらに、本府が「男女共同参画モデル職場」となることを目指す当然の前提として、男女が互いに尊重しあえる職場である必要があり、セクシュアル・ハラスメントの防止を徹底するとともに、妊娠中の職員等への時間差通勤や超過勤務での配慮、受動喫煙の防止など働きやすい職場環境の整備に積極的に取り組むべきである。
なお、現在本府では、次世代育成支援対策推進法に基づく特定事業主行動計画の策定に向けた取組が全庁挙げて進められている。次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される環境の整備を推進することは、男女共同参画のモデル職場づくりを進める上で極めて重要な意義を有するものであり、職員のニーズを十分把握しながら、これまでに述べた事項に加え、子どもの出生時における父親の休暇取得の促進や子育て中の職員に対する定時退庁日等の徹底、地域と一体となった託児施設の整備など、創意工夫を凝らした先進的な計画となることを望むものである。
イ 女性職員の積極的登用と職域拡大
男女共同参画社会の実現を図るには、本府がモデル職場として、女性職員を幅広い分野へ積極的に登用し、その能力開発と育成を推進することが重要であり、女性職員の職域拡大により、意欲のある女性職員が十分に力を発揮できる職場とする必要がある。
本委員会では、これまでから、女性のための職員採用セミナーの開催などにより、女性が男性と同等に採用試験に応募できる環境づくりに努めてきたところであり、その結果、合格者に占める女性の割合は、ここ数年著しく増加している。一方、主査級昇任考査に占める女性受験者の割合は、男性に比して相当低くなっており、女性職員の登用を図る上で女性役職者比率の向上が課題となっている。このため、本府では、現在、女性職員の意識を改革し、女性職員の仕事への意欲を高め、キャリア形成の一助とするための「女性職員のためのキャリアサポート研修」を実施するとともに、女性職員の体験談を紹介するなどの取組を行っている。さらに、女性職員の職域拡大により、意欲ある女性職員が十分に力を発揮できる職場環境の整備を推進することを目的として、女性職員の複数配置を進めており、本年度の定期人事異動方針では、今後当面、10名以上の課には、原則として女性職員を配置することとし、全ての職場に複数の女性職員を配置していくことを目指すとしており、本年4月には、86・4%の課に女性職員が複数配置されている。
こうした状況において、女性職員の登用と職域の拡大を推進するには、家庭生活や能力面での不安を一掃し、将来に向けた登用・育成の方針を明らかにすることで、女性職員の意欲を高めることが重要である。育児・介護等家庭生活と仕事の両立に向けた環境整備は今後一段と進むものと予測され、職員の意識改革が進めば、能力・実績主義による人事給与制度の定着と併せて、意欲のある女性職員が登用される可能性は、非常に大きくなる。管理監督の立場にある職員が、性別にとらわれず個人の能力や適性に応じて配置や職務分担を行うよう留意することはもちろん、キャリアサポート研修の充実や複数配置の徹底など様々な取組を通じて、女性職員が現在置かれている状況を正しく認識し、将来への不安を解消するとともに、その能力の向上を図ることができる機会の拡大に一層努力されることを期待する。
(8) 今後の給与制度の改革に向けて
現在国では、公務員制度改革の根幹の一つである能力・実績主義による人事給与制度の改革が、具体化の段階を迎えようとしている。本年の人事院勧告では、給与構造の基本的見直しとして、「職務・職責を重視し、実績を的確に反映する給与制度への転換」や「適正な給与の地域間配分の実現」などの必要から、「地域の民間賃金の公務員給与への反映」や「俸給表構造の見直し」などを検討項目に掲げ、その具体化を図っていきたいとしている。一方、大阪府では、本年9月、「行財政計画(改定素案)」が公表された。これによると、現状のまま推移すれば平成19年度には準用再建団体への転落が危ぶまれるとし、これを回避するため、現在実施されている昇給延伸措置等に加え、期末・勤勉手当の削減(カット)など更なる人件費の削減等を図るとしている。
本委員会は、こうした公務員の人事給与制度をめぐる諸情勢の変化を考慮し、これまで述べた当面の対応に関する意見に加えて、今後の大阪府における給与制度改革の基本的な考え方と検討課題について見解を表明し、地方公務員法の定める諸原則に沿った民間準拠の人事給与制度をめざし、府民の理解と納得を得て、改革を推進することとしたい。
ア 基本的な考え方
人事院は、本年の給与勧告で、国家公務員の給与が地域ごとの民間賃金の水準を的確に反映したものとなるよう俸給水準の引下げを行う一方、民間賃金が相対的に高い都市圏には新たに調整手当に替えて地域手当(仮称)を支給することなどを検討するとし、また、職員の働きぶりの違いを給与により適切に反映するため、俸給表構造の見直しや手当の新設・改善を進めることによって、より職務・職責に応じた給与決定が行えるような給与制度への転換を図るとしている。一方、本府の「行財政計画(改定素案)」でも、こうした国の動向を踏まえ、地域の実情をより反映した給与のあり方や能力・実績主義を重視した給与のあり方等について検討していくとしている。
今後、大阪府の民間給与の状況をより的確に反映した給与決定を行うためには、まず、民間との給与比較に基づく人事委員会勧告を完全実施することが当然の前提でなければならず、その内容としては、給与勧告の基礎となる民間給与実態調査の精度を一層高めるとともに、物価、生計費の水準はもちろん大阪府の地域的な特殊性等も十分考慮した給与決定を行うことが重要である。加えて、民間企業における成果主義による給与体系の普及に対応し、職務と実績に基づく新しい給与システムを構築していくことが急務となっており、人事院の検討状況等を踏まえ、民間準拠の観点から昇給や手当等現行の給与制度そのものを改革していくことが求められている。
本委員会は、こうした考え方から、給与等勤務条件における地方分権の一層の推進を図るため、今後実現に向け取り組むべき課題を提示し、公務能率の一層の増進に役立てることとしたい。
イ 今後の検討課題
@ 民間給与実態調査の充実
地域における民間企業の給与実態をより適切に把握するため、現行の企業規模・事業所規模の範囲内において、地域の代表的な企業が調査対象から漏れることのないよう、抽出基準の見直し等を人事院に要望するとともに、独自調査の拡大についても検討することとしたい。また、調査の精度をより一層高めるため、スタッフ職の増加等民間企業における人事・組織形態の変化に対応できるよう、調査する職階等の基準の改定や公民比較方法の見直し等について検討し、人事院、近隣府県等関係機関と十分協議の上、対処していくこととしたい。
A 調整手当(地域手当等)の見直し等
地域の事情をより的確に反映するため、国における地域手当等の検討状況に留意しながら、大阪府における民間給与の状況をより的確に反映するように調整手当の支給割合等を見直すこととする。この場合、物価、生計費等大都市圏特有の事情に配慮するとともに、大阪府域の地理的、地域的事情等を考慮し、原則として一律支給を維持する方向で検討する。また、国における地域手当等の整備に伴う全国共通俸給表の水準引き下げの検討と併せて、大阪府の実情をより反映した独自の給料表の作成についても検討することとしたい。
さらに、転勤手当等については、人事院での検討状況を踏まえ、本府の事情との整合を図りながら、導入について検討していくこととする。
B 査定昇給の拡大
現在民間企業では、自動昇給という意味での定期昇給がなくなろうとしており、こうした民間の状況を考慮すれば、勤務成績による昇給制度が複数存在することは、府民にわかりにくく、誤解を招くおそれもある。人事院は、本年の勧告で、新たな評価システムの整備も踏まえ、普通昇給と特別昇給を廃止し、毎年の職員の勤務実績の評価に基づいて昇給額を決定する昇給制度を導入するとしており、その検討状況を参考に、より勤務実績が的確に反映できるよう、昇給制度の見直しの検討に着手することとしたい。
C 勤勉手当への実績反映の拡大
人事院では、勤勉手当の支給額に勤務実績をより反映できるよう、標準者に係る支給月数を引き下げることなどによってプラス査定を行うための財源を確保する一方、成績率とその分布の基準を設定するとしている。本府においても、警察職員においてこれに近い運用がなされているが、扶養手当分を原資とするのみでは、民間に準拠して勤務実績を適正に反映することが難しい場合も予測されることから、成績率とその分布の基準設定と併せて、人事院の実施状況を参考に、実績反映の拡大方法の検討に取り組んでいくこととしたい。
ウ 「行財政計画(改定素案)」における期末・勤勉手当の削減
先月公表された「行財政計画(改定素案)」では、全職員の期末・勤勉手当について、平成17年度から3年間の削減が提案されている。今後3年にわたる給与抑制をあらかじめ条例で定めるようなことがあれば、地方公務員法の情勢適応の原則等に反するものであり、この削減案が実施されると、月例給のみならず賞与においても民間との不均衡・乖離が生ずることなどから、本委員会としては、誠に遺憾なことであると言うしかなく、適切に対処することを求めるものである。
(9) 人事委員会機能の強化について
政府は、本年6月の閣議で、地方公務員給与等の適正化の推進と併せて、地域の民間給与の状況をより的確に反映し決定できるよう、人事委員会機能の強化をはじめとしてそのあり方を見直すことを決定した。
本年の地方公務員法改正では、人事委員会の権限として、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し構ずべき措置について議会及び長に勧告することや職員の苦情を処理すること、また、情勢適応の原則により構ずべき措置について、随時、議会及び長に勧告することなどが明記されており、法制度的には、ほぼ人事院に近い権能が付与されたといえる。しかしながら、全国都道府県の給与、勤務時間等の勤務条件は、一部独自措置はあるもののそのほとんどが国に準拠しており、人事委員会の給与勧告も国に準拠するものが大半であるなど、中立第三者的な人事給与の専門機関として、人事委員会は十分機能していないとの意見がある。こうした声は、地域に勤務する公務員の給与が当該地域の民間従業員と比較して高いのではないかという批判と相まって、地域の民間給与の状況をより的確に反映し決定できるよう、人事委員会機能を強化すべきであるという政府方針となったものである。
ア 基本的な考え方
憲法の地方自治の本旨からすれば、自治体職員の給与は、その地域の実情に応じて、その地域の社会情勢に適応するよう各自治体独自で決定されるべきものである。
本委員会は、これまでから、人事院、大阪市と共同して、大阪府内の民間事業所における給与の支給状況を詳細に調査し、その結果に基づいて給与勧告を行うとともに、適宜、給与決定の仕組みや勤務時間等についても民間調査を行い、勧告・意見に反映させてきた。その結果、勧告の内容は、例年大阪府の民間の状況をほぼ的確に反映したものとなっており、現時点において、人事院等との共同調査としては、基本的に見直す必要はないと考える。一方、任命権者における現実の給与制度等の実態を見ると、制度の仕組みや内容は、そのほとんどが国に準拠しており、職員団体との交渉や独自の財政措置による加重や削減はあるものの、運用についても、ほぼ国に沿った体裁でなされてきたといえる。
本委員会は、これまでから、民間給与との精緻な比較による給与勧告や給与関係の規則、基準等の策定、実施等を通じ、職員の適正な処遇の確保に重要な役割を果たしてきたところであるが、主として国及び都道府県間の均衡を拠り所に制度設計等を行い、独自の企画・立案機能を十分に発揮してこなかったことは否めない。今後、地方分権の趣旨を踏まえ、地域の実情をより的確に反映した人事給与制度を構築していくためには、地方における委員会制度の現状を前提として、組織・体制の強化を含む人事委員会の権限と機能を一層強化する必要があると考える。
イ 委員会機能の強化に向けての提言
@ 給与等勤務条件に関する制度について、人事委員会が独自に企画、立案、設計等を行うことを可能とするには、給与等勤務条件に関する勧告の実質的な尊重義務を法令に明記することが重要であり、また、人事委員会が、独自に地域の民間給与等を調査し、反映させることができるよう、民間給与実態調査の拡充のための権能、人員、予算等を整備する必要がある。
A 地方分権をより実質的なものとする見地から、地域の創意工夫を活かした改革が可能となるよう、給与等勤務条件における国及び他の都道府県との均衡の原則の緩和を求めるとともに、給与勧告の実効性を確保し、給与制度の所管を明らかにするため、人事院と同じく人事委員会が給与条例等勤務条件に関する条例の実施を確保し、その責めに任ずる旨法文に明記することを望むものである。
B 労働基本権制約の代償機関として人事院と同等の権能を確保するため、給料表の級別定数は人事委員会が定め、管理するものとする必要があり、支払い監理に係る権能についても、監査委員との役割分担も含め法文で明確に規定することで、その実効性を確保すべきであると考える。
地方公務員制度改革を推進するに当たり、各都道府県の人事委員会が、人事院との協働関係を維持しながら、国に依存することなく独自に給与等勤務条件に関する制度を企画設計し、勧告できるよう措置することで、地方公務員の処遇における民間準拠が徹底され、地方行政に対する国民の理解と信頼が一層確かなものとなると考える。
3 結語
職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与水準を確保することは、職員の公正・中立かつ能率的な職務遂行を維持していく上での基本であり、労働基本権制約の代償措置として設けられた給与勧告制度を担任する人事委員会の大きな責務である。そのため、本委員会では、毎年度、民間給与実態調査を実施し、本府職員と民間企業従業員の給与を対比させ、精確な比較を行った上で、毎年4月現在における職員の給与を民間の給与水準に均衡させることを基本に、国や他の都道府県の動向も参照しつつ、給与改定の勧告を行ってきた。
本府においては、平成11年から、財政危機に対処することを理由に、普通昇給の24月延伸などの独自の給与抑制措置がとられていることから、民間との給与較差は、国や他の都道府県と大きく異なる事態となっている。本府職員の給与水準は、平成11年4月から現在に至るまで、5年以上民間を下回る状況が続いており、特に平成14年以降は、本委員会の引上げ勧告に対し給料表の引下げ改定が実施されたため、本年も職員給与が民間給与を1・79%下回る状況となっている。現在本府職員の給与水準は、ラスパイレス比較で国家公務員を3ポイント近く下回っていると推測され、平成13年4月以降、全国都道府県、政令市中で最低のレベルにある。本年度は、大阪経済が緩やかながらも回復に向かっているものの、右肩上がりの経済成長を前提としない成果・実績重視の賃金システムの普及を反映して民間給与の上昇はほとんど見受けられず、本府では、準用再建団体への転落を回避するため、新たに期末・勤勉手当の削減が提案されるなど、本府職員の給与をめぐる情勢は、一段と厳しさを増している。
本委員会としては、民間との給与較差の是正と職員間の給与配分の適正化という過去2年の給与勧告の内容がほとんど実現されていないことを深く憂慮するとともに、成績主義が定着しつつある民間の給与制度との均衡確保に早急に取り組む必要があると考える。
本年の給与勧告に当たっては、給料表の改定を求めなかったものの、民間との給与較差は解消する必要があり、若年・中堅層に重点的に配分することで、不均衡・不公平な給与配分を是正するとともに、特に、新規採用職員については、採用後1年以内に昇給できるよう措置することが、人材を確保し職員の士気を維持する上で急務と考えたところである。
より具体的には、昇給延伸により生じた較差や不均衡・不公平な給与配分については、昇給短縮で是正すべきとの考えから、民間との給与較差を解消するように若年・中堅層に重点を置いた昇給期間の短縮等を条例で措置することを求めている。さらに、本委員会の「意見」についても、本年の地方公務員法改正により勤務条件に関する人事委員会の勧告権が明記されたことから、来年度からの法施行を視野に入れた表現に改めるとともに、民間事業所の状況を考慮して給与への勤務成績の反映を強く求めることとした。なお、公民較差の是正については、本年も、条例による昇給延伸措置が続いているという本府独自の事情に加え、大阪府における厳しい民間給与の低迷などの事情を考慮して4月に遡ることを求めなかったが、本勧告後、速やかに条例で措置することを要請するものである。本勧告が完全実施されれば、本年度の職員の年間給与は僅かながらもプラスとなり、平成11年以降5年間続いていた減収にようやくストップがかかることとなる。
本委員会は、自治の放棄につながる準用再建団体への転落は何としても回避しなければならず、府民福祉の切り下げを回避するために行う緊急避難的な給与抑制については、職員にとって公平・公正な暫定措置である限り、誠に遺憾なことではあるがやむを得ないと考えてきた。しかしながら、本府独自の給与抑制は既に5年を超えており、将来への明確な展望を欠いたまま、これ以上継続されるべきではない。さらに本府では、平成17年度から3年間、期末・勤勉手当を削減することが提案されている。こうした給与抑制が続くことは、給与勧告制度の根幹に関わる事態であることはもちろん、若年・中堅層に過重な負担を強いる不均衡・不公平な給与配分と相まって、職員の勤務意欲や人材の確保等に大きな影響を及ぼし、結果として、公務能率が低下するなど府政全般への影響が懸念される。
本委員会の使命は、本府職員の給与水準について、地域の経済雇用情勢を反映した民間の給与水準と均衡すべきものとして、客観的な調査結果に基づき勧告することである。本委員会の勧告を尊重し、職員給与を大阪府内の民間給与に均衡させるよう措置することの意義は大きく、さらに、民間に準拠して、より合理性、効率性の高い成績主義による人事給与システムを作り上げることで、一層の公務能率の増進が図られるものと期待する。
現在本府では、準用再建団体への転落を回避するため、「行財政計画(改定素案)」を作成し、財政再建と大阪再生に向けた更なる府政改革に取り組もうとしているところであり、本委員会としても、本府職員が、5年を超える厳しい給与抑制を経て更なる人件費の削減を迫られるという厳しい状況の中で、府政の再建に真摯に取り組み、日々懸命に職務に精励していることは、十分に承知しているところである。こうした職員の努力に対し幅広い府民のご理解をお願いするとともに、府議会及び知事におかれては、職員のおかれている厳しい環境と給与勧告制度の意義に深いご理解をいただき、本委員会の勧告及び意見を尊重され、適切に対処されることを望むものである。
アートが好き
開催中とこれからの展覧会
「没後100年記念 エミール・ガレ展」▼期間/11月7日(日)まで▼会場/サントリーミュージアム[天保山](地下鉄中央線・テクノポート線「大阪港」駅下車、北西へ徒歩5分)▼開館時間/午前10時半〜午後7時半(入館は七時まで)▼休館日/月曜日▼観覧料/一般1000円、シニア700円、高・大学生700円、小・中学生500円▼TEL06(6577)0001
「世紀の祭典 万国博覧会の美術〜パリ・ウィーン・シカゴ万博に見る東西の名品〜」▼期間/11月28日(日)まで▼会場/大阪市立美術館(JR・地下鉄「天王寺」駅、近鉄「阿部野橋」駅下車、天王寺公園内)▼開館時間/午前9時半〜午後5時(入館は4時半まで・月曜日休館)▼観覧料/一般1300円、高・大学生900円、中学生以下は無料▼TEL06(6771)4874
「古写経―聖なる文字の世界」▼11月28日(日)まで▼会場/京都国立博物館(京都市バス「博物館・三十三間堂前」下車徒歩1分、京阪「七条」駅下車、東へ徒歩7分)▼開館時間/午前9時半〜午後6時、ただし金曜日は午後8時閉館▼休館日/月曜日▼観覧料/一般1000円、高・大学生700円、小・中学生300円▼TEL075(525)2473
「ヨーロッパ宮廷の扇展―すえひろがりの華」▼期間/11月30日(火)まで▼会場/神戸ファッション美術館(JR「住吉」駅・阪神「魚崎」駅のりかえ六甲ライナー「アイランドセンター」駅下車)▼開館時間/午前10時〜午後6時(入館は5時半まで)▼休館日/水曜日▼観覧料/一般500円、小・中・高・65歳以上250円▼TEL078(858)0050
「印象派誕生130年記念モネ―光の賛歌」▼12月5日(日)まで▼会場/奈良県立美術館(近鉄「奈良」駅下車徒歩5分)▼開館時間/午前9時〜午後5時、金・土曜は午後9時閉館(入館は閉館の30分前まで)▼休館日/月曜日▼観覧料/一般1300円、高・大学生900円、小・中学生500円▼TEL0742(23)3968
お詫びと訂正
機関紙10月1日号2面の「もうだまってられへん(下)」記事中の「6の4)公社改革」の項で「この8月に土木部は、先行取得費を平成17年度100億円、18年度50億円、19年度20〜30億円と数値目標を定めたことは評価できるが、もっと減額のスピードを上げるべきだ。そして、すみやかに買戻しを実行することだ。」との記事は認識間違いがありました。次のとおり訂正し、関係者にお詫びいたします。
「この8月土木部は、公社改革案を示したが、先行取得費の数値目標を上げていない。建設事業費を10%削減して、3年間で113億円削減しても、この額を用地費の先行取得費に加えるならば、なんら建設事業費を削減したことにならない。先行取得費の数値目標を定めなければ、問題が先送りされ、後年度負担が増え、財政危機の要因になる。」