機関紙「自治労府職」

 2004年3月1日号

85.12%

04自治労スト批准投票
圧倒的な成功

 官民ともに要求提出が行われ、春闘が本格化している2月24日、自治労府職はストライキ批准投票を行った。結果は、投票率90.33%、賛成率94.23%、スト批准率85.12%で、圧倒的な成功を収めた。
 これは、年間を通じて一波につき2時間を上限とするストライキ権を自治労中央闘争委員会に委譲するため行われたもので、高率での成功は自治労府職の団結を内外に示すもの。
 自治労府職は決起集会を11日に設定。最大のヤマ場となる18日に向け、取り組みを進めていく。
 組合員の皆さんのご結集をお願いします。


公務員連絡会地公部会と総務省
短時間勤務の法制化へ交渉

 公務員連絡会地公部会は2月20日、総務省公務員課と交渉を行った。これは、総務省が昨年12月にまとめられた地方公務員制度調査研究会報告に基づき、公務での多様な勤務形態の法制度化にむけた作業を進めており、現時点での検討状況・考え方について明らかにするよう求めたもの。
 現時点での検討状況・考え方について総務省は「地公研報告に基づき法案作成作業を進めており、内閣法制局との調整を行っている。概ねの柱は固まり、細部について検討しているところである。新設する制度の具体的なイメージは@短時間勤務職員制度の創設により、本格的業務に従事することができる職員を採用可能とする、A任期付採用の拡大は、従来のような専門的知識・資格を持った人材だけではなく、民間企業退職者などの市民参加を一定の要件・期間を区切って認める、B常勤職員の修学部分休業は、成果を公務に還元するとの前提で部分休業を取得して大学などで学ぶことを認める、C高齢者部分休業は、地域貢献を行いながら、なだらかに引退することを可能にするもの」として、地方公共団体が条例で決定して、導入するかどうかを判断するとした。
 そのうえで「@、Aは、任期を3年、必要と認める場合は5年を限度とし、給与は職務給の原則に照らして処遇する、Bの取得期間を2年までとし、1週あたりの休業時間を20時間。給料は、休業の時間は減額する。Cは、地域でボランティアを行うようなケースを想定しているが、公務に支障のない限りある程度自由なものとしたいと考えている。期間は最長で5年とし、休業時間は週20時間まで」とした。
 これに対して組合は、@任用期限が切れた場合の更新の取り扱い、A定期昇給の適用、B一時金、退職金の取り扱い、などについて質問した。
 これに対して、総務省は、「詳細は、通知の段階で明らかにしていくつもりであり、今回、法改正を行いたいと考えている」とした。
 組合は3月上旬に再度話し合うことを求め、総務省が了解したため、交渉を終了した。


公務員制度改革対策本部
実効ある政労協議へ道筋

 労働基本権確立・公務員制度改革対策本部は2月24日、行革推進事務局に「政労協議に向けた関係者実務協議の場設置について」の要請書を提出。早急に実務協議の場を設置するよう求めた。
 要請事項は、@実効ある政労協議実現に向けた行革推進事務局・関係各省と組合との実務協議の場設置、A実務協議における「1・15金子大臣・丸山本部長交渉」の経緯尊重と、ILO勧告を踏まえた労働基本権問題を含めた協議、の2点。政労協議は、昨年5月の小泉首相と笹森連合会長とのトップ会談で確認したもので、早期開催を求めてきた。今回の要請は、関係大臣との実効ある政労協議実現への道筋をつけることを目的に、実務者による意見交換を行う場の設置を求めたもの。
 行革推進事務局は、要請を受け入れ「実務レベルでの公務員制度改革全般にわたる率直な意見交換の場を設置したい」として、1回目の会合を開くことを提案。その結果、2月26日に行革推進事務局・総務省・厚生労働省・人事院と組合との間で、第1回の「関係者実務協議」を行うことで調整することを確認した。


健康一番 11
協力 羽曳野病院支部


一般外科の患者さんも手術します

ていねいで確実な
手術を実践しています

 当院は、昨年10月より、羽曳野病院から大阪府立呼吸器・アレルギー医療センターと名称を変えました。よく院外の人から、「外科はどうなっているのか」と聞かれるのですが、今までどおり、ちゃんと外科の患者さんを診させて頂きます。羽曳野・藤井寺地区は20万人の人口を擁する大医療圏であり、その中の大病院である当院はしっかりした総合病院の機能を有している必要があります。特に羽曳野市には主な公的病院が少なく、当院がこの地区の人々の健康に対して大きな責任があると思っています。当院は呼吸器疾患が全国的に見て群を抜いている病院の一つですが、それ以外にも外科がちゃんとあることを分かっていただきたいと思います。
 甲状腺・乳腺や、食道・胃・大腸などの消化器、ヘルニア、虫垂炎などの手術を要する疾患はこの20万人の医療圏では年間700〜1000人程度の患者さんが毎年発症しているはずです。この方たちのうち、多くの人が遠方の病院に行かれているのが現状で、我々は大変な責任を感じると同時に、もっとこの病院が一般外科にも十分な努力をはらっていることを広く市民の人にも知っていただきたいと思います。
 羽曳野・藤井寺地区は20年ぐらい前に大規模な住宅開発が進んだようですが、どの地区でもそうであるように、高齢者の比率が高くなってきています。高齢者には癌などの長期に療養を必要とする疾患が増加してきます。また高齢者は遠方の病院で手術を受けたり、それに続く長期の通院加療を行っていくのは大変です。当院には上に述べた一般外科、消化器外科においても十分な設備とスタッフを備えていますので是非とも当院にて安心して手術を受けてください。また皆さんのお知り合いの方に手術の必要な患者さんが居られたら、当院にご紹介ください。我々は最善を尽くし、患者さんに満足していただけるようがんばります。
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター
一般外科部長 角村純一


府費の組合員さ〜ん
忘れてない?
いきいきフレックスプラン
給付申請は4月30日まで



平成16年度組織改正・職員定数配置計画


 府当局は2月27日、平成16年度の「組織改正(案)」及び「職員定数配置計画」を自治労府職に提案した。
【2面に組織改正(案)を掲載】
 職員定数に関しては、総務サービス事業の開始を見込み、e―府庁アクションプランでの計画を上回る大幅な減員提案となっている。詳細については、各支部ニュースに委ねるが府当局は、19日をめどに回答を得たいとしており、今後、支部・分会での検討・論議を進めていく。

 組織改正
 組織改正では、政策立案機能の一元化と充実に向け、企画室の復活や、「総務サービス事業」の開始にあわせた課名の改称、法改正に伴う組織の廃止、SARSなど感染症への対応強化、中小企業支援・ヤミ金業対策などによる金融室の設置、放置自動車対策に向けた課の名称変更などが主なものとなっている。

 定数配置
 「職員定数配置計画」では、「府行財政計画(案)」に基づき実施される「総務サービス事業」に関連し、全部局にまたがる総務サービス事業による大幅な減員が提案され、部局総務課においては、グループの統廃合も含む、著しい減員となっている。また、本庁各課・各出先では、概ね1人以上の減員とされている。
 なお、税務関係職場の多くでは複数以上の減員となっており、解明と対策が必要である。
 また、昨年度に策定された「病院改革プログラム」に基づく各病院での休床等による看護師等の減員や府立大学先端科学研究所事務課の廃止などが内容となっている。
 一方「行財政計画」の見直しに向けた増員や非行少年の立ち直り支援業務等による増員、地球温暖化・ヒートアイランド対策関連の業務への対応で増員提案されている。


税務職員連絡協議会が定期会合
地方税制度の議論深める


 税務支部が事務局を務める自治労都道府県税務職員連絡協議会は26日から3日間、第95回の定期会合をホテルアウィーナ大阪で開いた。
 36年ぶりに大阪での開催となった定期会合には、全国から約90人が参加。民主的な地方税制度の確立に向けた各地での取り組み報告や、小泉内閣の下で進められている地方税財政制度改革に関連しての議論が行われた。
 あいさつした柳議長は「いわゆる、三位一体の改革は、地方分権と言いながら『権限と金は国が持つ』とする旧態依然としたもので、基本的には変化が無いと感じている。地方分権の考え方に沿った税源委譲が本当に行われるのか不安」とするとともに「春闘の取り組みが進められているが、定期昇給の確保さえも厳しい状況となっている。地方自治体でも44都道府県で基本賃金に手をつけられており、そうしたなかで賃上げや特勤手当の課題などは議論しにくい。しかし、労働条件や職場環境。業務に見合った人員の配置などの課題は取り組みを進めなければならない。今回の定期会合で各地との情報交換を行い、議論を深めてもらいたい」とした。
 来賓あいさつに続いて、総務省自治税務局都道府県税課柴山佳徳課長補佐から「都道府県税制の現状と課題」と題した記念講演が行われた。
 その後、「賃金・労働条件等の情報交換」「業務問題・OA化等の情報交換」とする分科会に分かれ、各地での取り組み状況や問題点についての議論が行われた。


5病連が病院事業局と交渉
不誠実な回答に抗議
継続協議を申し入れ


 自治労府職・府立5病院関係支部連絡協議会(5病連)と本部は2月18日、昨年12月に提出した各病院の労働条件に関する5項目の緊急要求書に基づいて病院事業局と交渉した。
 病院事業局は回答で、具体的な人員配置や勤務体制の問題については、各病院ごとの労使協議に委ねたいとの姿勢に終始した。
 回答に対して5病連・本部は、職場の訴えに対して不誠実なものであり病院事業局の存在意義自体を問うとして、各要求は継続協議とするよう申し入れ、交渉を終えた。
 交渉では、要求内容の具体的な勤務実態を各病院支部の代表者が訴え、その改善を強く求めた。
 中宮病院支部からは、緊急救急病棟での遅出勤務の過重労働問題や、現行の放射線技師1人職場では入院患者の検査が十分に対応できない問題を指摘。府立病院支部からは、手術室の当直勤務実態では大変な過重労働状態になっており、医療事故や職員の健康状態が危ぶまれている問題の改善などを強く求めた。また、5病院で共通する当直勤務体制問題など各要求項目を早急に改善するよう強く求めた。

−12月25日提出の緊急要求書−

1.精神医療センターの緊急救急病棟における遅出勤務については、21:00を過ぎてからの入院も多く、残業で対応している。来年度から受付窓口が延長されることにより、夜間の入院が増すことが予想される。遅出勤務は準夜勤務と同等の勤務なのに、夜間勤務手当も支給されない。
  21時を過ぎてからの夜間の残業は過重労働であるので、遅出勤務を廃止し、準夜4、深夜3の夜勤体制にすること。
2.精神医療センターの放射線技師は1人職場であり、入院患者の高齢化に伴い、転倒等による骨折や合併症も多くなってきており、対応が困難となっている。また、入院患者に対する定期的な症状診断のための検査にも十分対応ができていない。至急、複数配置とすること。
3.急性期・総合医療センターの稼動状況については、極めて困難かつ過重労働となっている。予定手術の時間外、深夜への食い込みはもちろん、当直勤務帯での緊急手術への対応や夕方から開始される「予定手術」など、まさに昼夜を分かたない激務となっているにもかかわらず、時間外・深夜の勤務体制が「当直体制」と「勤務振替」とされたままであり、心身の休息が保障されていない状態である。
  2003年に出された厚生労働省労働基準局長通知でも指摘されているように、「当直勤務」に名を借りた通常勤務体制であり、直ちに是正するとともに、交代制勤務を導入すること。
4.急性期・総合医療センターにおいては、当直勤務体制の変更時に翌日の勤務振替を含めて、対応してきたところである。また、「当直勤務時間帯」に通常勤務が発生した場合には、超過勤務対応としている。しかし、こうした場合に何の根拠もなく、「当直勤務」が中断扱いされていることが判明した。
  これは、宿日直手当と超過勤務手当の併給を認めている労働省通知違反であり、直ちに是正し、過去に遡及して減額された手当を支給すること。
5.自治労府職は、府立の病院における当直勤務については、多くの問題があることについて、この間指摘してきたところであるが、最近では労働基準局通知や国税当局からの納税告知など、その業務のあり方が問い直されているところである。
  あらためて、当直勤務体制について全般的な議論検討の場を至急設定すること。


商工支部提供
自然文化園 日本庭園 入園引換券
80枚プレゼント


 商工支部から、3月14日(日)まで使える自然文化園・日本庭園(日本万国博覧会記念機構)入園引換券の提供がありました。
 つきましては、先着順で組合員の皆様にお譲りいたしますので、自治労府職教宣部まで電話でお申し込み下さい。
有効期間  3月14日(日)まで
受付方法  先着順80枚まで
申し込み先 自治労府職教宣部  
TEL      06―6945―4056
その他    数に限りがありますので、最大5枚までのお申し込みとさせていただききます。


開催中とこれからの展覧会
アートが好き


「日本洋画の130年―見つめ、感じ、表現する画家たち―」
▼期間/3月7日(日)まで▼会場/京都国立近代美術館(京都市バス「京都会館美術館前」下車、岡崎公園内)▼開館時間/午前9時半〜午後5時(入館は4時半まで)▼休館日/月曜日▼観覧料/一般800円、大学生450円、高校生250円▼TEL075(761)9900

「藤原新也の聖地―旅と言葉の全軌跡」
▼期間/3月3日(水)〜15日(月)▼会場/大丸ミュージアム・梅田(JR「大阪」駅下車、大丸梅田店15階)▼開館時間/午前10時〜午後8時、ただし12日と最終日は6時閉館(入場は閉館の30分前まで)▼観覧料/一般800円、高・大学生600円、中学生以下無料▼TEL06(6343)1231

「画家ピカソの陶芸展 天才の横顔〜南仏ヴァロリス日々〜」
▼期間/3月28日(日)まで▼会場/美術館「えき」KYOTO(JR「京都」駅ビル内、ジェイアール京都伊勢丹7階隣接)▼開館時間/午前10時〜午後7時半、ただし3月1日は6時半、最終日は5時閉館(入館は閉館の30分前まで)▼観覧料/一般700円、高・大学生500円、小・中学生300円▼TEL075(352)1111

「奄美群島日本復帰50周年記念 奄美を描いた画家田中一村展」
▼期間/3月17日(水)〜29日(月)▼会場/大丸ミュージアム・心斎橋(地下鉄御堂筋線「心斎橋」駅下車、大丸心斎橋店本館7階)▼開館時間/午前10時〜午後8時、最終日は6時閉館(入場は閉館の30分前まで)▼観覧料/一般800円、高・大学生600円、中学生以下無料▼TEL06(6271)1231

梅原龍三郎「雲中天壇」1939年

「俗界冨士」から(c)藤原新也

「ヴェールをかけた女性」大壷
(c)2003‐Succession Pabio Picasso‐SPDA(JAPAN)

「アダンの木」1972〜73年


自治労府職・退職予定者集会
退職後の手続きなど説明


 自治労府職は2月24日、退職予定者集会をエルおおさか南館で開いた。
 「退職手当と退職後の生活設計」と題し、森下執行委員が退職金の計算方法や退職後の税金・健康保険、再任用制度などについて具体的な事例を示しながら説明、続いて芳仲書記次長から年金について説明があった。
 また、退職後の自動車共済や団体生命共済、マインド、火災・交通災害共済、労金などの取り扱いについても担当者から説明した。
 集会であいさつした大橋執行委員長は、自治労府職運動への永年のご支援に感謝するとともに、退職後も引き続きご指導をいただくようお願いした。
 退職者会の満薗会長は、高齢者・退職者が安心して暮らせる社会をめざして活動している退職者会への加入を呼びかけた。
 集会後には懇親会が開かれ、参加者は相互に交流を深めた。


平和と人道支援をめぐる
市民・NGOの役割


 ピースおおさかでは21世紀の平和を考えるセミナー第10回として、講演「平和と人道支援をめぐる市民・NGOの役割」を開く。
 戦争の惨禍が世界のさまざまな地域に広がる中で、平和と人道支援をめざしたNGOの活動に注目が集まっている。
 今回のセミナーは、地雷除去やNGO活動の第一線で活躍している長有紀枝さん(地雷禁止国際キャンペーンメンバー)を招いての講演。
 新しい時代の平和の実現に向け、私たちにできることは何かを考える機会となる。
▼とき/3月20日(土・祝)午後2時〜4時
▼ところ/ピースおおさか講堂(JR環状線・地下鉄中央線「森ノ宮」駅下車、西へ徒歩5分)
▼参加費/無料、ただし入館料(一般250円、高校生150円)は必要
▼定員/250人(先着順受付。定員になり次第締め切る)
▼申込方法/電話またはFAXで住所・名前・年齢・電話番号を知らせる
▼申込先・問い合わせ/大阪国際平和センター(ピースおおさか)TEL06(6947)7208、FAX06(6943)6080


最近読んだ本
四百年の長い道
朝鮮出兵の痕跡を訪ねて
尹達世 著


400年前の歴史に光をあてた労作

リーブル出版 本体1,500円+税

 関西では太閤さんと親しまれる豊臣秀吉の「朝鮮征伐」いわゆる「朝鮮の役」(「1592年の文禄・1597年の慶長の役」、別名「焼き物戦争」)のことを、1980年から23年かかって実地調査し、400年前の「強制連行」(拉致)の実態を調べた本が出版された。「400年の長い道―朝鮮出兵の痕跡を訪ねて―」(尹達世=ユン ダルセ著)である。
 天下統一の後、豊臣秀吉の野望は中国大陸への侵略の軍事拠点を朝鮮に築くことであった。この無為無策の侵略は、秀吉の死をもって敗北に終わるが、この戦争で数万人の朝鮮人が日本に拉致されてきた。「朝鮮の役」に出兵した大名たちとその藩士が好みに応じて連れ帰ってきたのである。
 拉致された朝鮮人は全国に散逸した。著者は、彼らのことを被虜人(ひりょじん)と称している。僧や医師などの知識人、陶工などの職人、「位」の高い者(両班=ヤンバン)たちの子女、そして数えきれぬほどの無名の人々。異国の地で、ある者は自殺し、逃亡をくわだて切り捨てられただろうが、日本で結婚させられたりして名を変えての「日本人」としての生活が始まってもいっただろう。望郷の念でどれだけの涙が流されたか、私には思いもよらなかった。
 連行された被虜人の子孫の痕跡を訪ねて、気の遠くなるような旅が始まった(それが、この本であり、第1部西日本編としての発刊である)。四国、中国、九州、沖縄など、その子孫の分布図は全県に渡っている。子孫たちは、いまも現存しており、出自を隠そうとしない子孫も多い。
 知らない事実が次々と紹介されていく。唐人の由来(中国の唐でなく朝鮮のこと。唐人塚、唐人町、唐人豆腐など)、日本社会の中で、高い地位を獲得したもの(1707年京都の大本山妙心寺の住職になった譲天和尚、大分の朝山家の家老になった安塚儀、大名の妻になったもの、赤穂義士の武林唯七の祖父は被虜人だった。などなどエピソードにこと欠かない)。また陶工としての焼き物とのかかわりは有名だが、韓紙熊本城などの朝鮮瓦鍋島更紗(ちょうせんかわらなべしまさらさ)など日本文化に与えた影響は小さくない。
 秘話の中でも、今年で100年を迎えた日露戦争の乃木希典司令官(旅順の攻防戦でロシア軍事要さいを陥落させたものの、日本側死傷者5万9304人を出した無策の司令部として有名。明治天皇に殉死した陸軍大将として「軍神」に祭りあげられ乃木神社が建てられた)の祖先も兵庫県城崎郡城崎町野木谷に住んだ朝鮮人捕虜だったことが公にされている。
 陽の当たらなかった400年前の歴史に光をあて日本の土になった無名の人々がどう生きたかに思いをはせた労作である。「拉致」問題がクローズアップされている今日、400年の拉致の重さを受けとめたい。
 なお豊臣秀吉の朝鮮侵略は韓国では壬辰倭乱と呼ばれているが、著者は日本に連行された朝鮮人の痕跡の調べに重点をおいているため、朝鮮の人々が命を賭して戦ったことや、朝鮮水軍をひきいて戦ったイスンシン(李瞬臣)将軍のことなど言及していない。コラム欄で扱えば、もっと読みごたえのあるものになったろう。
 それは「焼き物戦争」と言われるゆえんについても同じように言える。連行された陶工の技術で作られたのは萩焼、上野焼、高取焼、唐津焼、平戸焼、有田焼(伊万里焼)、八代焼、薩摩焼であり、ここから影響を受けて九谷焼、瀬戸焼、清水焼、砥部焼などが作られていったのである。
 著者の尹達也さんは神戸在住の韓国人2世。大阪が登場する第2部東日本編の発行が待たれる。