機関紙「自治労府職」
2004年8月6日号外
月例給・一時金の改定据え置き
6年連続の年収マイナス阻止
声明
1、人事院は本日、月例給・一時金の改定を据え置き、国立大学の法人化に伴う教育職俸給表の改廃や寒冷地手当見直しの勧告、俸給表水準の引下げや査定昇給の実施などの地域給与・給与制度見直しの報告を行った。
2、二〇〇四人事院勧告期の取り組みに当たってわれわれは、公務員給与バッシングに加え、政府が骨太方針二〇〇四で地域給与の引下げ方針を決定するという、かつてない厳しい情勢のもとで、@六年連続の年収マイナスを阻止し公務員労働者の賃金水準を維持・改善することA寒冷積雪地の生活実態を踏まえ、制度を維持することを明確にした寒冷地手当見直しの成案を得ることB拙速な地域給与見直しの勧告・報告を行わないこと、などを重点課題に設定し、最終盤までその実現を目指してねばり強く取り組みを進めてきた。
3、その結果、本年の給与勧告で、月例給の改定が見送られたことについてはやむを得ないと考えるが、一時金が据え置かれたことについては民間賃金の動向からしても納得がいかず、不満が残る内容である。
寒冷地手当勧告については、支給地域・支給額の見直しのいずれについても該当地域にとって極めて厳しい内容であり、寒冷積雪地の生活実態を無視した不満なものである。しかし、公務労協・全国寒対協一体の体制を確立し、地域における様々な運動にねばり強く取り組んできたことによって、寒冷地手当制度の維持という最低限の目標が実現できたことや一定の激変緩和措置を設定させたこと、公務員給与を巡る厳しい情勢などを総合的に判断し、これらの勧告内容についてはこれまでの取り組みの到達点として受け止めざるを得ないものである。
地域給与・給与制度見直しについては、最終盤ギリギリまで交渉・協議を進め、「本年勧告」という政府の圧力の中で報告に止めさせ、今後のわれわれとの交渉・協議の中で具体化していくとの基本スタンスを明確にさせることができた。しかし、人事院が地域別の官民較差を公表し俸給表水準を引き下げる手法を提言したことについては、極めて遺憾である。われわれは、こうした手法で総人件費削減を目的として地域給与見直しを行うことについては反対である。また、「査定昇給」などの給与制度見直しについては、その前提となる評価制度のあり方と同時に議論すべきである。いずれにしろ、給与構造の見直しは勤務条件の重大な変更事項であり、労働基本権制約の代償措置である人事院が、「政治」や使用者の意向だけに基づいて検討を進めることは到底認められることではない。われわれとしては、地域給与見直しの手法や具体化の時期を含め、十分に交渉・協議し、文字通り合意の上で検討作業を進めることを強く求める。
4、以上のことから、われわれは、人事院勧告が労働基本権制約の代償措置であること、公務員給与を巡る極めて厳しい状況下で年間総収入が確保されたことなどを踏まえ、本年の勧告内容については人勧期の取り組みの到達点として確認し、今後、政府に対して勧告通りの実施を求めていくこととする。
確定期の取り組みは、総人件費抑制政策が強められ、公務員給与バッシングが継続するもとでの予断を許さないものとなる。これから本格化する地方自治体の確定闘争、独立行政法人や政府関係特殊法人等の闘いを含め、全力で進めていかなければならない。
また、地域給与・給与制度見直しを巡っては、本年の人事院報告で緊迫した新たな段階に突入したことを認識し、直ちに地域における取り組みや中央における交渉・協議など本格的な取り組みを開始していかなければならない。そのため、秋の総会において「地域給与等に関する闘争委員会」(仮称)を立ち上げ、文字通り組織の総力を挙げて取り組みを進める体制と方針を確立することとする。
公務員制度改革を巡っても本年の秋が大きな山場となる。能力等級制度と天下りのまやかし改革で事態を収束させようとする政府・与党の思惑を許さず、労働基本権確立を含む民主的な公務員制度の実現に向けて全力で取り組みを進めていかなければならない。
骨太方針二〇〇四に明確に現れているように、小泉内閣の進める構造改革路線は、社会保障や福祉、公共サービスを切り捨て、国民や公務員に犠牲を強要して財政再建を進める道である。われわれは、これらの山積する課題への取り組みを通して、公務労協が進める公共サービス確立の対抗戦略キャンペーンに結集し、連合の仲間や国民と連携し、こうした小泉構造改革に反撃する闘いに大きく踏み出していかねばならない。
二〇〇四年八月六日
公務員労働組合連絡会
人事院は八月六日、月例給の改定を見送り、一時金の支給月数を四・四○月に据え置く勧告を行った。本年の給与勧告では、六年連続の年収マイナスと三年連続のマイナス改定を阻止することに成功したものの、報告で人事院は給与構造の見直しを検討項目として俸給表構造の見直しや査定昇給の導入、勤勉手当等への実績反映拡大、民間賃金の地域差の反映などを列記し関係者との意見交換を進め、具体化をはかると言及している。自治労・公務員連絡会は人事院が報告した地域給与など給与構造の見直しについて、直ちに地域における交渉・協議など本格的な取り組みを開始するため、今秋の公務員連絡会総会で「地域給与等に関する闘争委員会」(仮称)を立ち上げ、連合と連携した大衆的な運動の強化を行い、不退転の決意で取り組むことを確認。○四確定期の課題の解決と要求の実現にむけた取り組み態勢を確立し、産別闘争を強力に推進していくとした。以下は報告と勧告の全文。
俸給表引下げ・査定昇給実施の報告
公務員連絡会、闘争委員会を設置へ
平成十六年八月六日
衆議院議長 河野 洋平殿
参議院議長 扇 千景殿
内閣総理大臣 小泉純一郎殿
人事院総裁 佐藤壮郎
◇
人事院は、国家公務員法、一般職の職員の給与に関する法律、国家公務員の寒冷地手当に関する法律等の規定に基づき、一般職の職員の給与について別紙第一のとおり報告し、併せて給与の改定について別紙第二のとおり勧告するとともに、公務員人事管理について別紙第三のとおり報告する。
この勧告に対し、国会及び内閣が、その実現のため、速やかに所要の措置をとられるよう切望する。
別紙第1
職員の給与に関する報告
我が国の経済は、バブル崩壊後、長期の低迷を続けてきたが、世界経済の回復に伴って、国内民間需要が着実に増加し、景気は堅調に回復している。この間、民間企業においては、経済のグローバル化、IT化、少子・高齢化等の企業を取り巻く環境の変化を踏まえて、企業戦略の見直しが積極的に行われている。経営戦略にとって重要な要素となる賃金システムについては、右肩上がりの成長を前提とすることなく、成果・実績をより重視することにより従業員の満足度を高めていけるよう、抜本的な見直しを進める動きが急速に拡大している。
国家公務員については、労働基本権が制約されていることの代償措置として、人事院の給与勧告制度が設けられている。この勧告は、国家公務員法に定める情勢適応の原則に基づき、毎年、公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に行ってきている。近年における民間企業の給与水準をみると、厳しい経営環境を反映して、平成十一年以来五年連続で特別給(ボーナス)の年間支給月数が対前年比でマイナスになったことから、これに応じて公務員についても特別給(期末手当・勤勉手当)が連年引き下げられてきた。一昨年からは、民間企業における給与抑制措置が一段と進み、公務員の月例給が民間の月例給を上回ったことから、二年連続で月例給の引き下げも行われている。
昨年後半以降、景気は回復傾向にあり、民間企業の企業収益は大幅に改善してきているが、地域別にみると、地域の経済の中心となる産業の種類に応じバラツキが生じている。このような民間企業の状況を踏まえて、本年の春季賃金改定後の民間企業の給与実態について、本院において例年同様の調査を行ったところ、ベースアップを実施している事業所は昨年より少なくなっていたが、定期昇給の停止、賃金カットのような厳しい給与抑制措置が講じられている事業所は減少しており、七割以上の事業所で定期に行われる昇給が実施されていた。また、特別給については、春季に夏季賞与の支給が決定している事業所(全体の約六割)のうち、約四割の事業所で増額となっていたが、減額となっている事業所も約二割あった。
本年四月分に支払われた月例給について、官民の比較を行った結果、公務員の月例給が民間をわずかに上回るが、本年度、寒冷地手当の見直しを行うと、ほぼ均衡することが明らかとなった。したがって、月例給についての改定を行わないことが適当であると判断した。
一方、特別給については、民間の支給状況をより迅速に反映させるため、本年から民間の特別給の前年冬と当年夏の一年間の支給実績を調査することとしたところであるが、本年は民間の年間支給割合が公務員の年間支給月数とおおむね均衡していたことから改定を行わないこととした。
また、地域に勤務する公務員の給与については、昨年、本院として、給与構造の基本的見直しと一体で見直しを検討することを表明し、検討を進めてきたところである。本年は、寒冷地手当の支給地域及び支給額の在り方等について、民間準拠を基本に、関係者の意見を聴取しつつ検討を行った結果、支給地域については民間事業所における支給状況を考慮し北海道を中心として支給するよう整理するとともに、支給額についても民間準拠により約四割の引下げを図る等制度の抜本的な見直しを勧告することとしたところである。さらに、月例給についても、本年は、地域別の官民の給与較差を示し、地域における公務員給与がそれぞれの地域の民間賃金を反映するよう見直しの具体的な方向を提起し、制度の抜本的な見直しに着手した。
民間企業においては、右肩上がりの給与改定が行われなくなる中で年功的な賃金体系の見直しが進められており、公務においても、職務・職責を重視し、実績を的確に反映する給与制度への見直しを行うことによって、職員に対する適切な処遇や士気の確保を図り、公務能率を増進していくことが求められている。このため、本院としては、民間企業における改革の実態を踏まえ、地域における公務員給与の見直しを含めた給与構造の基本的見直しの具体化を進めていくとともに、公務員制度全般の抜本的改革に向けた検討を進めることとする。これらの検討に当たっては、給与制度の透明性の確保に配慮するとともに、職員団体、各府省の人事当局などの関係者とも十分な意見交換を行っていくこととしたい。
1 給与勧告の基本的考え方
(給与勧告の意義と役割)
給与勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものである。公務員給与については、納税者である国民の理解と納得を得る必要があることから、本院が労使当事者以外の第三者の立場に立ち、官民給与の精確な比較を基に給与勧告を行うことにより、適正な公務員給与が確保されている。勧告が実施され、適正な処遇を確保することは、労使関係の安定を図り、能率的な行政運営を維持する上での基盤となっている。
(民間準拠の考え方)
本院は、国家公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行っている。比較対象となる民間企業の規模については、会社組織で働く民間従業員の約六割をカバーしている企業規模一〇〇人以上とするとともに、比較方法についても、単純な官民給与の平均値によるのではなく、主な給与決定要素である職種、役職段階、年齢、勤務地域などを同じくする者同士を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行った上で、仮に公務員に労働基本権があればどのような結果となるのか等を念頭に置きつつ、社会経済情勢全般の動向等を踏まえながら勧告を行ってきている。
民間準拠を基本に勧告を行う理由は、@国は民間企業と異なり、市場原理による給与決定が困難であること、A職員も勤労者であり、社会一般の情勢に適応した適正な給与の確保が必要であること、B職員の給与は国民の負担で賄われていることなどから、労使交渉等によってその時々の経済・雇用情勢等を反映して決定される民間企業従業員の給与に公務員給与を合わせていくことが最も合理的であり、職員をはじめ広く国民の理解と納得を得られる方法であると考えられることによる。
2 官民の給与の比較
(1) 職員の給与の状況
本院は、「平成十六年国家公務員給与等実態調査」を実施し、給与法適用の常勤職員の給与の支給状況等について全数調査を行った。その結果、本年の民間給与との比較対象である行政職俸給表(一)適用者(一七〇、六五二人、平均年齢四〇・二歳)の本年四月における平均給与月額は三八一、一一三円となっており、医師、刑務官等を含めた職員全体(二九〇、六〇九人、平均年齢四〇・九歳)では四〇〇、四〇二円となっている。
また、行政職俸給表(一)適用者の平均給与月額を組織区分別にみると、本府省四一七、八二二円(平均年齢三九・一歳)、管区機関三九八、四五五円(同四一・一歳)、府県単位機関三八四、八二二円(同四二・二歳)、その他の地方支分部局三五八、六〇五円(同三九・六歳)、施設等機関等三五五、七〇六円(同三八・二歳)となっている。
(2) 民間給与の調査
ア 職種別民間給与実態調査
本院は、企業規模一〇〇人以上で、かつ、事業所規模五〇人以上の全国の民間事業所約三七、〇〇〇(母集団事業所)のうちから、層化無作為抽出法によって抽出した八、一四三の事業所を対象に、「平成十六年職種別民間給与実態調査」を実施した。調査では、公務の行政職俸給表(一)と類似すると認められる事務・技術関係二十三職種の約三十万人並びに研究員、医師等五十四職種の約六万人について、本年四月分として個々の従業員に実際に支払われた給与月額等を実地に詳細に調査した。また、給与の抑制措置の状況や、各企業における雇用調整の実施状況等について、本年も引き続き調査を実施した。
なお、この職種別民間給与実態調査の対象となる事業所については、給与改定の状況等にかかわらず無作為に抽出しており、ベースアップの中止・ベースダウン、定期昇給の停止、賃金カットなどの給与抑制措置を行った事業所の給与の実態も的確に把握するよう設計されている。
職種別民間給与実態調査の調査完了率は、調査の重要性に対する民間事業所の理解を得て、本年も九二・七%と極めて高く、調査結果は広く民間事業所の給与の状況を反映したものとなっている。
イ 調査の実施結果等
本年の職種別民間給与実態調査の主な調査結果は次のとおりである。
(ア) 本年の給与改定の状況
(初任給の状況)
新規学卒者の採用を行った事業所は、大学卒で五九・三%(昨年四七・八%)、高校卒で二六・三%(同二〇・〇%)と昨年に比べて増加しているが、そのうち大学卒で八四・一%(同八四・四%)、高校卒で八六・一%(同八四・八%)の事業所で、初任給は据置きとなっている。
(給与改定の状況)
別表第一に示すとおり、民間事業所においては、一般の従業員について、ベースアップを実施した事業所の割合は二五・三%(昨年三一・〇%)、ベースアップを中止した事業所の割合は三四・六%(同五〇・六%)と、昨年をいずれも下回っているのに対し、ベア慣行のない事業所の割合が三七・七%(同一五・四%)と大幅に増加している。
また、別表第二に示すとおり、一般の従業員について、定期に行われる昇給を実施した事業所の割合は七一・〇%(昨年七三・一%)となっており、昨年に比べてやや減少している。
(賃金カットの状況)
別表第三に示すとおり、賃金カットを実施した事業所は、一般の従業員では一・三%(昨年四・一%)、課長級では二・二%(同六・三%)となっており、昨年に比べて減少している。
また、賃金カットを実施した事業所における平均カット率は、一般の従業員では四・三%(昨年六・八%)、課長級では六・四%(同七・八%)となっており、昨年に比べて低くなっている。
(年俸制の導入状況)
別表第四に示すとおり、年俸制を導入している事業所は、課長級では一六・二%、部長級では二三・五%となっている。
(イ) 雇用調整の実施状況
別表第五に示すとおり、民間事業所における雇用調整の実施状況をみると、平成十六年一月以降に雇用調整を実施した事業所の割合は三五・三%となっており、昨年(五一・七%)より大幅に低下している。雇用調整の措置内容としては、採用の停止・抑制(一六・九%)、業務の外部委託・一部職種の派遣社員等への転換(一三・六%)、部門の整理・部門間の配転(一〇・六%)、残業の規制(七・三%)、転籍出向(五・七%)の割合が比較的高く、希望退職者の募集(三・一%)、正社員の解雇(一・二%)、一時帰休・休業(〇・四%)などの厳しい措置も引き続き実施されているが、措置内容すべてにおいて昨年より割合が低下している。
このように、民間企業においては、賃金カット等の賃金抑制措置、雇用調整に関するすべての項目において、昨年より緩和されていることが明らかとなった。
(3) 官民給与の比較
ア 月例給
本院は、国家公務員給与等実態調査及び職種別民間給与実態調査の結果に基づき、公務においては行政職俸給表(一)、民間においては公務の行政職俸給表(一)と類似すると認められる職種の者について、給与決定要素を同じくすると認められる者同士の四月分の給与額を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行った。その結果、別表第六に示すとおり、公務員給与が民間給与をわずかに上回るが、本年度、寒冷地手当の見直しを行うと、三九円(〇・〇一%)とほぼ均衡する。
なお、昨年まで比較の対象職種としていた行政職俸給表(二)の適用となる職種については、本年四月の国立大学の法人化、国立病院・療養所の独立行政法人化によって対象職員が半減し、代表的な職種として扱うことは適当ではないと考えられたことから、本年より、官民比較は行政職俸給表(一)の職種により行うこととした。
民間における家族手当及び住宅手当の支給状況を調査した結果をみると、それらの手当は職員の扶養手当及び住居手当の現行支給状況とほぼ見合うものとなっている。
イ 特別給
本院は、職種別民間給与実態調査により民間の特別給(ボーナス)の過去一年間の支給実績を精確に把握し、これに職員の特別給(期末手当・勤勉手当)の年間支給月数を合わせることを基本に勧告を行っている。従来は、民間の特別給の前年五月から当年四月までの一年間の支給状況に合わせて改定を行ってきたが、民間の支給状況をより迅速に公務員給与に反映させるため、本年より民間の特別給の前年八月から当年七月までの一年間の支給実績を調査し、その結果に基づいて官民比較を行うこととした。
本年の職種別民間給与実態調査の結果、昨年八月から本年七月までの一年間において、民間事業所で支払われた特別給は、別表第七に示すとおり、所定内給与月額の四・三九月分に相当しており、職員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(四・四〇月)とおおむね均衡している。
3 公務員給与を取り巻く諸情勢
(1) 最近の賃金・雇用情勢等
ア 民間賃金指標の動向
「毎月勤労統計調査」(厚生労働省、事業所規模三〇人以上)によると、本年四月の所定内給与は、昨年四月に比べ〇・二%増加している。また、所定外給与は三・七%増加しており、これらを合わせた「きまって支給する給与」は〇・五%の増加となっている。なお、パートタイム労働者を除く一般労働者では、所定内給与は〇・四%の増加、きまって支給する給与は〇・七%の増加となっている。
イ 物価・生計費
本年四月の消費者物価指数(総務省、全国)は、昨年四月に比べ〇・四%下落しており、勤労者世帯の消費支出(同省「家計調査」、全国)は、昨年四月に比べ名目六・六%の増となっている。
本院が家計調査を基礎に算定した本年四月における全国の二人世帯、三人世帯及び四人世帯の標準生計費は、それぞれ一八七、〇〇〇円、二一九、四四〇円及び二五一、八九〇円となっている。また、「全国消費実態調査」(同省)を基礎に算定した同月における一人世帯の標準生計費は、一二九、九〇〇円となっている。
ウ 雇用情勢
本年四月の完全失業率(総務省「労働力調査」)は、昨年四月の水準を〇・七ポイント下回り、四・七%(季節調整値)となっている。
また、本年四月の有効求人倍率及び新規求人倍率(厚生労働省「一般職業紹介状況」)は、昨年四月に比べると、それぞれ〇・一七ポイント、〇・二二ポイント上昇して〇・七七倍(季節調整値)、一・二四倍(同)となっている。
エ 国営企業等の賃金改定
一般職の国家公務員約六十六万人の四割強を占める国営企業(国有林野事業)、日本郵政公社、独立行政法人造幣局及び独立行政法人国立印刷局の職員の賃金改定は、昨年までは統一的な歩調で労使交渉が行われ、最終的には仲裁裁定に持ち込まれたが、本年は、日本郵政公社、独立行政法人造幣局及び独立行政法人国立印刷局については、初めてそれぞれの労使交渉に基づいて自主決着が図られた。妥結内容は、いずれも「平成十六年四月一日付けで昇給を実施し、ベースアップは行わない。」とするものとなっている。
(2) 各方面の意見等
本院は、公務員給与の改定を検討するに当たって、東京のほか全国四十都市において有識者との懇話会、中小企業経営者等との意見交換を行う等により、広く国民の意見の聴取に務めた。
各界との意見交換において、給与制度については、国民が納得できないような制度は見直すべきとの意見や勤務成績をより的確に反映できるような制度とすべきとの意見が出されたほか、評価については、透明性と納得性の問題が重要であるとの意見があった。また、業績給や成果給の検討に際しては、事前に労使間で十分な話合いをすべきとの意見も出された。さらに、地方に勤務する公務員の給与については、地方の国家公務員の給与が地場の賃金に比べて高いのは、転勤等もありコストがかかるのでやむを得ないところもあるとの意見がある一方で、地域の民間賃金が公務員給与に反映されていないとの意見があった。
また、本院が委嘱している「国家公務員に関するモニター」(五〇〇人)においては、公務員の給与を決定するに当たって重視すべき要素として、「個々の職員の仕事の実績や成果」(五七・五%)、「就いている仕事の種類や内容」(二八・一%)とする意見が高い割合となっている。
4 本年の給与の改定
(1) 改定の基本方針
前記のとおり、本年四月時点で、公務員の月例給与が民間給与を三九円(〇・〇一%)下回っていることが判明した。
本院としては、以下の事情を総合的に勘案した結果、本年は、月例給の改定を見送ることが適切であると判断した。
ア 官民較差が極めて小さく、俸給表改定が困難であること
本年の官民の給与較差が現行俸給表の最低単位である一〇〇円よりも小さく、職員全体について一律的に俸給表を改定することは困難である。加えて、来年度以降に俸給表の抜本見直しを予定しており、特定の級・号俸の特別改善を行うことも適当でない。
イ 諸手当についても官民均衡が図られており、小さな官民較差によって改定を必要とする手当がないこと
諸手当については、民間の各手当の支給状況とおおむね均衡していることから、小さな官民の給与較差によって改定する必要性がない。
ウ 特例一時金方式による場合にも、実施にあたっての事務負担が大きいこと
平成十三年のように、特例一時金で改定を行うこととしても、改定額が極めて小さいことに比べて、算定事務、支給事務等の負担が大きい。
以上のように、本年は月例給の水準改定は行わないが、本年四月に、国立大学が法人化し、国立病院・療養所が独立行政法人化したことに伴って、適用する職務がなくなった俸給表の廃止等の所要の法律の整備を行うこととした。
(2) 改定すべき事項
ア 国立大学法人化等に伴う改定
(ア) 俸給表
a 教育職俸給表(一)
教育職俸給表(一)については、行政機関に置かれる大学校の教授等の職員に対し、引き続き同表を適用することとし、適用する職務がない一級は削除して、従来の五級構成の俸給表を四級構成の俸給表とする。
b 教育職俸給表(二)及び教育職俸給表(三)
教育職俸給表(二)及び教育職俸給表(三)については、適用する職務がないことから廃止する。
c 教育職俸給表(四)
教育職俸給表(四)については、新たにその名称を教育職俸給表(二)とし、医療施設等に置かれる看護師等の養成所の教官等に適用することとし、適用する職務がない四級及び五級を削除して、三級構成の俸給表とする。
d 指定職俸給表
指定職俸給表十二号俸については、適用する官職がないことから削除する。
なお、指定職俸給表十二号俸の削除により給与法適用職員の最高額が指定職俸給表十一号俸となることから、任期付研究員俸給表(招へい型)及び特定任期付職員俸給表について、枠外の俸給月額の上限を指定職俸給表十二号俸に相当する額から指定職俸給表十一号俸に相当する額に変更することとする。これに伴い、現在、指定職俸給表十一号俸に相当する額を超える俸給月額を受けている職員について、所要の経過措置を講ずるものとする。
(イ) 研究員調整手当
国立学校の法人化によって、教育関係の職員が研究員調整手当の支給対象となることがなくなったことから、同職員を研究員調整手当の支給対象から除外する。
(ウ) ハワイ観測所勤務手当
国立学校の法人化によって、国家公務員がハワイ観測所に勤務することがなくなったことから、ハワイ観測所勤務手当は廃止する。
(エ) 義務教育等教員特別手当
国立学校の法人化によって、国家公務員が義務教育諸学校に勤務することがなくなったことから、義務教育等教員特別手当は廃止する。
イ 寒冷地手当
寒冷地手当については、支給地域及び支給額について、民間における同種手当の支給状況を把握するため全国的な調査を実施し、その調査結果を踏まえて、民間準拠を基本に、関係者の意見を聴取しつつ検討を行った結果、以下のような制度全般にわたる見直しを行うこととした。
支給地域については、民間事業所における支給状況を考慮し北海道を支給地域とし、併せて、気温及び積雪量が北海道とほぼ同程度である本州の一部地域も支給地域とするよう整理することとする。これにより、支給地域に在勤する職員数は、見直し前のおおむね半数程度となる。
支給地域以外に所在する官署であっても、気温及び積雪量が北海道とほぼ同程度であると認められる場合においては、在勤する職員のうち支給地域または当該官署に近接した区域に居住しているものに対して、寒冷地手当を支給することとする。
支給額については、各地域の民間事業所における同種手当の支給額に準拠した額とすることとする。また、民間事業所における支給の実情等を考慮し、基準額と加算額との区分を廃止することとする。なお、世帯主である職員に対する手当額について、単身赴任者の扶養親族が寒冷地以外に居住している場合には、調整を図ることとする。これらの結果、支給額は、約四割の引下げとなる。
支給方法については、基準日における一括支給から、十一月から翌年三月までの冬期間中における月額制に改め、これに伴い、追給・返納制度は廃止することとする。
豪雪手当は、対象となる地域のほとんどが支給地域から除外されること等を考慮して、廃止することとする。
これらの改定は、本年度に支給する寒冷地手当から実施することとする。また、これらの改定に伴い、寒冷地手当を受けている職員については、所要の経過措置を講ずることとする。
(3) その他の課題
ア 特殊勤務手当の見直し
昨年から取り組んでいる特殊勤務手当の見直しについては、引き続き手当ごとの実態等を精査して所要の見直しを図るための検討を進めることとする。
イ 官民比較方法の見直し
月例給の官民比較は、官民の月例給から、官民比較になじまない一部の給与種目を除いた額により比較を行っているが、来年の官民比較から、この比較給与種目を見直す方向で検討を行う。具体的には、通勤手当について、本年四月から六箇月定期券等の価額による一括支給に変更したこと等により、実費弁償としての性格が強まったことを踏まえて比較給与種目から外すこと、俸給の特別調整額について、民間企業における年俸制の拡大、役付手当の基本給への繰入れ等の実態を踏まえて比較給与種目に加えること等について、検討を行うこととする。
また、地域における民間企業の給与実態の適切な把握のほか、スタッフ職の従業員の増加等の民間企業における人事・組織形態の変化に対応できるように、官民比較方法の見直しを検討することとする。
ウ 独立行政法人等の給与水準の把握
昨年九月に総務大臣から発出された「独立行政法人の役員の報酬等及び職員の給与の水準の公表方法等について(ガイドライン)」に沿って、各主務大臣が実施した独立行政法人の役職員の給与実態調査の結果に基づき、本院は、各独立行政法人職員の給与水準の国家公務員との比較指標等の作成に協力し、先般、総務省において、その結果が取りまとめられて公表されたところである。
本院としては、専門機関として、独立行政法人等における給与水準の在り方等の検討において、今後とも必要な協力を行うこととする。
5 給与構造の基本的見直し
(1) 検討の必要性と基本的考え方
ア 改革の基本的な考え方
戦後の公務員給与は、成績に応じた処遇を目指しつつも、経済成長に伴うベースアップの下、年功的な処遇の確保が優先されてきた。
しかしながら、右肩上がりの経済の終焉に伴って民間企業では経営の合理化・効率化が求められ、給与についてもベースアップを行う企業が減少し、限られた人件費を従業員の仕事の内容や成果に応じて適切に配分する賃金制度が確立されつつある。
公務においてもこのような民間における厳しい経済情勢を反映して一昨年より二年連続して月例給の水準が引き下げられた。さらに、民間企業と同様、給与水準の年功的上昇をできるだけ抑制することが求められている。限られた財源の下で職員が生き生きと働けるよう、職務・職責や実績に応じた適切な処遇の確保や効率的な給与システムの構築が不可欠となっている。
公務員給与は職員の最も重要な勤務条件であり、その制度の基本は、公務部内の問題点を十分に調査研究した上で、各府省人事当局、職員団体等の意見を聴取しつつ、民間準拠、官民均衡の原則に則って整備されなければならない。加えて、公務員給与には納税者であり行政サービスの受け手である国民の理解と支持が必要であることから、制度の検討に当たっては、国民の目から見て合理性・納得性がある仕組みとなっているかという点も重要である。
今回の改革に当たっても、公務員給与水準については、精確な官民比較を行って民間賃金に準拠させるとともに、俸給や諸手当といった制度については、公務の特殊性を踏まえつつ、労働市場や賃金コストを反映する労使交渉の結果である民間企業の賃金制度の動向に十分配慮し、設定することとする。
イ 民間企業の賃金制度の動向
近年、多くの民間企業では、グローバル化に対応し競争力を強化するため人件費のスリム化に取り組むとともに、年功的な職能資格制度の見直し、人事評価制度の整備、職務や成果を重視した給与システムへの転換が急速に進んできている。例えば、基本給では、職能給制度に替えて、職務給制度に変更する企業や、役員や管理職を中心に年俸制を採用する企業も増加している。また、目標の達成度合いを評価し、これを昇給やボーナスへ反映させるなど、従業員の具体的な成果を賃金に一層反映させる動きが進んできている。
ウ 給与構造見直しの必要性
アで述べたような考え方に基づき、イで述べたような民間企業の賃金制度改革の動向を踏まえれば、公務部内の事情を的確に分析しつつ、俸給制度、手当制度全般にわたり次のような見直しを行っていく必要がある。
(ア) 職務・職責を重視し、実績を的確に反映する給与制度への転換
(現行制度の課題と改革の必要性)
国家公務員法の定める職務給原則の徹底を図るため、俸給制度については、昭和三十二年の八等級制への移行、昭和六十年の十一級制への移行、平成四年の昇格制度の見直し、平成七年以来の早期立ち上がり型への給与カーブの見直しなど、より職務の違いに応じて俸給が決定される方向で制度改正を進めてきている。しかし、上位の職務の級に昇格しないとしても俸給が一定水準まで到達し得るよう配慮された号俸設定が行われているため、上下の級の関係をみると極めて水準の重なりの大きい俸給表構造が維持されており、採用年次を重視した昇格運用とあいまって職員の給与水準の上昇が年功的に行われているとの指摘がある。
また、特別昇給制度や勤勉手当制度(ボーナス)では、勤務実績を反映することとされており、支給割合の基準に関する通達を発出するなど、実績主義を徹底する努力を行ってきたが、成果が数字に現われにくいという公務の特性や、集団的執務体制の維持が重視される職場風土の下で管理職の意識や評価のスキルも十分でなかったこと、勤務評定制度が必ずしも職員に受け入れられず給与への実績反映の手段として機能してこなかったことなどから、いわゆる持ち回り運用が行われるなど、勤務実績の給与への反映は必ずしも十分とはいえない状況にとどまっている。
行政ニーズが増大し、複雑化する中で、個々の職員が高い士気をもって働くことにより公務能率の向上を図っていくためには、職員の働きぶりの違いを給与により適切に反映する必要がある。俸給表構造の見直しや手当の新設・改廃を進めることによって、より職務・職責に応じた給与決定が行われるような給与制度への転換を進めるとともに、今後の新たな評価システムの整備も踏まえて、昇格、昇給、勤勉手当等に実績をより的確に反映し得るよう、見直していく必要がある。
(イ) 在職期間の長期化に向けての環境整備
(現行制度の課題と改革の必要性)
国家公務員の人事管理においては、ライン中心のピラミッド型の組織構造を背景に、単線的なラインでの昇進を中心とした昇進選抜と年功的な給与システムによる管理がなされてきた。この人事システムを維持するため、幹部職員では早期退職慣行と民間企業等への再就職、いわゆる「天下り」が行われている。こうした「天下り」に対する国民からの厳しい批判にこたえ、また、高齢化社会を踏まえた職場作りという視点から、現在、政府全体として早期退職慣行の是正、在職期間の長期化への取組を進めている。
高いモラールを維持しつつ、在職期間の長期化に対応するためには、キャリアシステムの見直しや能力等級制度の導入などにより能力に応じた昇進管理を進めるとともに、公務部内でスタッフとして能力を活用する途を拡大するため、複線型人事管理を進めていく必要がある。在職期間の長期化を進めるに当たっては、給与制度の面からも民間の高齢者給与との均衡を図るための給与カーブの見直しや、複線型人事管理に資するよう公務部内に高い専門性を持つ人材を確保するための処遇の枠組みを整備していくことについても検討を進める必要がある。
(ウ) 適正な給与の地域間配分の実現
(現行制度の課題と改革の必要性)
公務員給与の水準設定に当たっては、調整手当の支給地域区分ごとの官民の給与較差を総合して全国平均での官民の給与較差を算出している。この全国平均による較差を埋め、官民均衡を図るよう俸給や諸手当の水準が設定されている。現行制度の下では、全国共通の俸給表に基づいて俸給が支給されるのに加えて、東京都特別区等の民間賃金等の高い地域に対しては、官民の給与水準の差を補うため俸給等の一二%を上限に調整手当が、さらに北海道等寒冷度の高い地域には寒冷地手当が支給されている。民間賃金の水準には地域別に相当の較差があるが、これまで調整手当の支給率については最も高い東京都特別区について、八%から一二%に順次引き上げるとともに、支給地域についても数次にわたり適正化を図ってきた。
このように、現在の公務員の俸給表の水準は東京都特別区のような高い民間賃金を含んだ全国平均の官民の給与較差に基づいて設定していることから、民間賃金の低い地域でも全国平均に基づく俸給表の水準が保障されることになり、そうした地域では公務員給与が高いのではないかという批判を生じる一方で、都市部では公務員給与の水準が民間賃金を下回るといった問題が生じている。
このような公務員給与と地域における民間賃金の在り方について本院では平成十三年の報告で問題提起を行うとともに、平成十四年には「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」を設置するなどして、検討を進めてきた。また、本年六月、政府から「地域における給与の官民格差を踏まえて、地域における国家公務員給与の在り方についての検討を行い早急に具体的措置を取りまとめるよう」、本院に対し要請が行われている。
本院としては、これまでの検討の結果を踏まえ、地域別配分見直しの一環として、本年は寒冷地手当の支給額及び支給地域等の抜本的な見直しを勧告することとしたところである。さらに、国家公務員の給与については地域ごとの民間賃金の水準を的確に反映したものとなるよう俸給水準の引下げを行う一方、民間賃金の水準が高い地域には新たに地域手当を支給することなどにより、適切な地域間配分の実現を図っていく必要があると考える。
(2) 具体的な検討項目
以上のような考え方に基づき、俸給制度・諸手当制度全般にわたって見直しを進めることとする。現時点では次の検討項目を考えている。
ア 俸給表の全体水準の引下げと地域に応じた適切な給与調整の実現
(ア) 給与の官民比較と地域格差
地域の民間賃金を公務員給与に反映させる場合、まず、地域格差の状況について明らかにする必要がある。
民間賃金の地域差をみると、賃金構造基本統計調査では全国一〇〇に対して最高一一六・五(東京)、最低八七・七(北海道・東北)と二八・八ポイントの開きがあるのに対し、本院が行ったラスパイレス方式による官民比較の地域別の較差では、最高三・七二%(東京)、最低△四・七七%(北海道・東北)(別表第八)と八・四九%の開きにとどまっている。これは、賃金構造基本統計調査では、生産労働者を含む全職種を対象とし、常用労働者全体(家族労働者等も含む。)の平均賃金を集計しているのに対し、官民給与比較では公務員給与に一定の地域差がある上に、比較の基礎となる本院の民間給与調査では調査の対象を公務と類似の民間企業の管理・事務・技術労働者とし、これを課長、係長等の役職別に集計しているため、その賃金水準は職種としての一定のまとまりがあり、すべての職種を単純平均する賃金構造基本統計調査に比べ地域別のバラツキが小さくなっているものと考えられる。賃金構造基本統計調査でも、同一職種の労働者が多いとみられる金融・保険業の地域別の格差をみると、全国一〇〇に対して最高一一三・八(東京)、最低九〇・三(北海道・東北)となり、地域間の民間賃金のバラツキが小さくなる傾向を示している。
官民給与の比較方法としては、ラスパイレス方式が妥当であるとされ本院としてもこの方式をこれまで採用してきたところである。したがって、地域における民間賃金を反映するよう公務員給与水準を調整する場合にも、職種、役職段階等を考慮した地域別のラスパイレス方式による官民比較を基礎に行う必要がある。
(イ) 地域の民間賃金の公務員給与への反映
具体的には、民間賃金の低い地域における官民の給与較差を考慮して公務員給与のベースとなる全国共通俸給表を引き下げることを検討する(地域別にみて最も大きな官民の給与較差は、平成十五年△六・四八%、平成十六年△四・七七%)。
あわせて、民間賃金の相対的に高い地域に勤務する職員に対しては、全国共通俸給表の引下げと現行の調整手当の支給率の上限(一二%)を考慮して、俸給等の約二〇%程度を上限として地域手当(仮称)(あるいは地域調整額(仮称))の支給を検討することとしたい。また、地域格差の調整方法としては、地域別に俸給表をもうけることなども考えられ、併せてこれらの調整方法についても検討する。
イ 俸給関連の課題
(ア) 専門スタッフ職俸給表(仮称)の新設
行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、高度の専門能力を持つスペシャリストがスタッフとして活躍できる処遇の枠組みを準備するとともに、在職期間の長期化への対応として、職員が専門的な能力・経験を活かしつつ多様な働き方ができるよう、複線型の人事制度の導入に向けての給与制度上の環境整備として、三級構成程度の簡素な級構成の専門スタッフ職俸給表の新設を検討する。
(イ) 俸給表構造の見直し
現行の俸給表は、長期勤続へのインセンティブ付与やライフ・ステージに応じた生計費増への配慮から、同一の級でも相当期間にわたって昇給が可能な数の号俸設定がなされているため、上位級との水準の重なりが八割程度となるなど、職務・職責の違いが反映されにくい構造となっている。より職務・職責を反映し得る俸給表構造となるよう、次の課題について検討する。
@ 級構成の再編(職務・職責の違いをより明確化する方向で級の新設・統合を検討)
A 昇給カーブのフラット化(年齢別民間賃金との均衡が図られるよう、高位号俸の水準の引下げ、前半号俸の水準の引上げを検討)
(ウ) 昇格基準の見直し等
導入が検討されている能力等級制度や新たな評価システムとの関連も踏まえ、下位の級での勤務実績に関する具体的要件を設定するなど昇格(降格)の基準の明確化を図る。
また、俸給表構造の見直しに伴い、昇格に伴う適切な給与額の上昇が確保できるよう、昇格に際し一定額を加える方式など、昇格時の給与額決定方式を見直す。
(エ) 実績評価に基づいた昇給(査定昇給)の導入等
現行昇給制度では、勤務実績が良好な場合が要件とされているが、評価制度が十分でなく、客観的な基準も明らかでないことから、ほとんどの職員が昇給するなど定期昇給的な運用がなされているとの指摘がある。
新たな評価システムの整備も踏まえ、普通昇給と特別昇給を廃止し、毎年の職員の勤務実績の評価に基づいて昇給額を決定する昇給制度を導入し、毎年の勤務実績を適切に反映し得るよう、昇給幅、昇給効果の在り方についても検討する。
また、俸給表構造の見直しと併せ、職務給の徹底を図るため、いわゆる枠外昇給の廃止について検討する。
ウ 手当制度関連の課題
(ア) 勤勉手当等への実績反映の拡大
勤務実績を支給額により反映できるよう、新たな評価システムの整備を踏まえ、標準者に係る支給月数を引き下げることなどによってプラス査定を行うための財源を確保する一方、成績率とその分布の基準を設定する。
関連して指定職俸給表適用職員に対する期末特別手当への実績反映について検討する。
(イ) 本府省手当(仮称)の新設
本府省における勤務の特殊性、困難性、人材確保の必要性に配慮し、非管理職に対し支給する定額の手当の新設及び本府省課長補佐等に対する俸給の特別調整額の廃止について検討する。
(ウ) 地域手当(仮称)(あるいは地域調整額(仮称))の新設
俸給水準を補完し地域の民間賃金との均衡を図るため、民間賃金の相対的に高い都市圏に勤務する職員に対し、調整手当に替えて俸給等の二〇%程度を上限に手当を支給する地域手当を新設することについて検討する。
(エ) 転勤手当(仮称)の新設
職員の給与水準を勤務地域における民間賃金と均衡させることに伴い、円滑な転勤運用を確保するため、転勤者の精神的・経済的負担に対し一定期間、手当を支給する転勤手当の新設及び調整手当の異動保障の廃止について検討する。
(オ) 俸給の特別調整額の定額化
民間企業における役付手当の定額化、本俸化等の動向も踏まえ、俸給の特別調整額について、管理職員の管理・監督業務の困難性の程度を端的に評価したものとなるよう定額化を図る。
(3) 今後の進め方
給与構造の基本的見直しの検討項目は、現時点での議論のたたき台を提示したものである。
給与制度は重大な勤務条件であり、その見直しに当たっては関係者の十分な理解を得ることが極めて重要である。今後、内閣官房において進められている公務員制度改革とも連携を図りつつ、各府省人事当局、職員団体等関係者との十分な協議を行い、その具体化を図っていきたいと考えている。
6 給与勧告実施の要請
人事院の給与勧告制度は、労働基本権を制約されている公務員の適正な処遇を確保するため、情勢適応の原則に基づき公務員の給与水準を民間の給与水準に合わせるものとして、国民の理解と支持を得ながら公務員給与の決定方式として定着している。
公務員は、本府省をはじめ離島やへき地を含め全国津々浦々で、国民生活の維持・向上、生命・財産の安全確保等の職務に精励している。特に、近年は行政ニーズが増大するとともに複雑化する中で、個々の職員が高い士気をもって困難な仕事に立ち向かうことが求められており、公務員給与はそのような職員の努力や成果に的確に報いていく必要がある。
本年は、月例給と特別給の双方について改定を行わないこととしたが、寒冷地手当については、民間の支給状況等を考慮し、抜本的な見直しを行うこととした。民間準拠により公務員給与を決定する仕組みは、長期的視点から見ると公務員に対し国民から支持される納得性の高い給与水準を保障し、前述のような職員の努力や成果に報いるとともに、人材の確保や労使関係の安定などを通じて、行政運営の安定に寄与するものである。
国会及び内閣におかれては、このような人事院勧告制度の意義や役割に深い理解を示され、別紙第2の勧告どおり実施されるよう要請する。
別表第一 民間における給与改定の状況(単位%)
別表第二 民間における定期昇給の実施状況(単位%)
(注)ベースアップと定期昇給を分離することができない事業所を除いて集計した。
別表第三 民間における賃金カットの実施状況(単位%)
(注)「所定内給与又は基本給」に対する賃金カットの実施状況である。
別表第四 民間における年俸制の導入状況(単位%)
別表第五 民間における雇用調整の実施状況(単位%)
(注)平成十六年一月以降の実施状況である。
別表第六 官民給与の較差
(注1)本年度の寒冷地手当の見直しを含まない場合、△二〇七円(△〇・〇五%)となる。
(注2)官民ともに、本年度の新規学卒の採用者は含まれていない。
別表第七 民間における特別給の支給状況
(注1)下半期とは平成十五年八月から平成十六年一月まで、上半期とは同年二月から七月までの期間をいう。
(注2)年間の平均は、特別給の支給割合を公務員の人員構成に合わせて求めたものである。
備考 公務員の場合、現行の年間支給月数は、平均で四・四〇月である。
別表第八 地域別官民給与の較差(単位%)
(注)各地域に含まれる都道府県は、次のとおりである。
「北海道・東北」…北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
「関東甲信越」…茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県
「中部」…富山県、石川県、福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
「近畿」…滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
「中国・四国」…鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県
「九州・沖縄」…福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
別紙第2
勧告
次の事項を実現するため、一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)、国家公務員の寒冷地手当に関する法律(昭和二十四年法律第二〇〇号)、一般職の任期付建機誘引の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律(平成九年法律第六十五号)及び一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成十二年法律第一二五号)を改正することを勧告する。
1 一般職の職員の給与に関する法律の改正
(1) 俸給表
別記第一のとおり、現行の教育職俸給表及び指定俸給表を改定することとし、教育職俸給表は、教育職俸給表(一)及び教育職俸給表(二)とすること。
教育職俸給表(一)及び教育職俸給表(二)への切替えは、別記第二の切替要領によること。
(2) 諸手当
ア 研究員調整手当について
共同研究等により、研究活動の状況、研究員の採用の状況等からみて人材の確保等を図る特別の事情があると認められる試験研究機関との有機的な連携が図られている機関に勤務する教育職俸給表(一)の適用を受ける職員等に対する研究員調整手当は、廃止すること。
イ ハワイ観測所勤務手当について
ハワイ観測所勤務手当は、廃止すること。
ウ 義務教育等教員特別手当について
義務教育等教員特別手当は、廃止すること。
2 国家公務員の寒冷地手当に関する法律の改正
(1) 支給の対象となる職員について、北海道及び北海道以外の寒冷の地域で別記第三の表に掲げるものに在勤する職員並びに寒冷及び積雪の度を考慮して当該地域との権衡上必要があると認められるものとして総務大臣が定める官署に在勤する職員で当該地域又は総務対人が定める区域に居住するものとすること。
(2) 支給方法について、支給日にその支給日に係る年度の寒冷地手当を支給することとされているものを、十一月から翌年三月までの各月について支給するものとすること。
なお、これに伴い、寒冷地手当を追給し、又は返納させる措置は、廃止すること。
(3) 支給月額について、寒冷地((1)の地域及び官署をいう。以下同じ。)の区分及び職員の世帯等の区分に応じ、次の表に掲げる額(一般職の職員の給与に関する法律附則第七項の規定の適用を受ける職員にあっては、その額からその半額を減じた額)とし、基準額と基準額に加算される額との別を廃止すること。
また、寒冷地の区分は、別記第三の表のとおりとすること。
(4) 豪雪に係る寒冷地手当は、廃止すること。
(5) (1)から(4)までの改定は、平成十六年度以降に支給する寒冷地手当について実施すること。また、(1)及び(3)の改定に伴い、所要の経過措置を講ずること。
3 一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律の改正
第一号任期付研究員について、一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律第六条第四項の規定により決定できる俸給月額の上限を、一般職の職員の給与に関する法律の指定職俸給表十一号俸の額に相当する額とすること。
なお、これに伴い所要の経過措置を講ずること。
4 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律の改正
特定任期付職員について、一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第七条第三項の規定により決定できる俸給月額の上限を、一般職の職員の給与に関する法律の指定職俸給表十一号棒の額に相当する額とすること。
なお、これに伴い所要の経過措置を講ずること。
5 改定の実施時期
1から4までの改定は、この勧告を実施するための法律の公布の日から実施すること。
別記第2 切替要領
1 改訂後の教育職俸給表適用の日(以下「切替日」という。)の前日において改定前の教育職俸給表(一)の適用を受ける職員で切替日において改定後の教育職俸給表(一)の適用を受けることとなるもの及び切替日の前日において改定前の教育職俸給表(四)の適用を受ける職員で切替日において改定後の教育職俸給表(二)の適用を受けることとなるものの切替日における職務の級(以下「新級」という。)は、これらの者の切替日の前日における職務の級(以下「旧級」という。)に対応する別表の新級欄に定める職務の級とする。
2 前記1により新級が定められる職員の切替日における号俸(以下「新号俸」という。)は、その者の切替日の前日における号俸(以下「旧号俸」という。)と同じ号数の号俸とする。
3 前記2により新号俸が定められる職員の旧号俸を受けていた期間は、新号俸を受ける期間に通算する。この場合において、人事院の定める職員の旧号俸を受けていた期間については、他の職員との均衡上必要な調整を行うものとする。
別紙第3
新たな公務員人事管理の実現に向けて
公務員制度改革については、過去数年の様々な議論を経て、現在、内閣官房行政改革推進事務局を中心に国家公務員法の一部改正等の準備が進められている。
人事院は、公務員制度改革が我が国構造改革の一つとしてとりわけ重要な位置付けをされた数年前から、公務員制度改革に関し、様々な分析を行う一方、自らの反省も加えた上でその役割を改めて問い直し、必要な提言を行ってきた。特に平成十三年以降、給与勧告時の報告において、公務員制度改革に当たっての基本的事項やその方向、公務員制度の基本理念等について整理を行い、提言も行ってきたところである。
もとより公務員制度改革の課題は多岐にわたるが、法律改正に向けての中心課題は、能力等級制を導入し、能力・実績に基づく人事管理を推進すること及び再就職規制の見直しを行うこととされている。いずれも公務員制度における重要なテーマであり、国民及び関係者に理解され、納得されるものである必要がある。その場合、公務員人事管理にあたっては、基本理念として中立公正性の確保が要請されており、また、労働基本権の制約が維持される限り代償措置の確保を図ることが肝要であることは、人事院として繰り返し主張してきたところである。
上記の改革の中心課題についての現時点における人事院としての考えは1及び2のとおりであり、さらに、これら以外の検討すべき課題とそれに対する考えは3のとおりである。
人事院としては、今後とも、法制化に向けての検討に際しては適宜必要な意見を表明することとし、実効性のある改革が、国民や関係者の理解を得て実現されるよう、必要な協力を行っていきたいと考えている。
1 能力・実績に基づく人事管理の推進
人事院制度とともに成績主義実現の中心的な制度として国家公務員法により導入を予定された職階制は、諸般の事情により実施されないまま現在に至っている。このため、給与制度と一体的に運用されてきた任用制度について、適切に評価した能力に基づいて任用する制度整備を図ることは、本来の成績主義に基づく任用を実現する枠組みを設けるという点で意義があるものと理解しており、新たな評価制度の導入により、これまでの採用年次等に過度に依存する人事管理が見直され、真に能力本位の公務員人事が実現することが期待される。その際、従前同様、成績主義本来の趣旨である中立公正な人事管理の実現が求められており、人事院としては、新たな任用制度の下でも、引き続き、基準の設定等を通じて公務員人事の中立公正性の確保の任に努めていくつもりである。
能力本位の任用を推進し、実績を踏まえた給与処遇を実現していくためには、各職員の能力や実績を的確に把握し、具体の人事・処遇に反映させることができる評価制度の整備が不可欠である。現在でも勤務評定制度が設けられているが、職員側の理解と納得が不十分なまま導入されたという経緯などがあるため、十分機能していないと指摘されている。したがって、新たな評価制度の導入に当たっては、理解と納得が得られるよう職員側との対話が重要であり、また、円滑な導入のための試行を十分に行うとともに、地方出先機関等を含め各職場において混乱が生じないよう努める必要がある。
また、人事院としては、給与制度についても、新たな評価制度の導入を踏まえ、職務・職責を重視し、実績を的確に反映する給与制度の実現に向けて、俸給及び諸手当全般にわたり給与構造の基本的見直しの検討を進めていくこととしている。
2 再就職ルールの適正化
再就職規制の見直しについては、「天下り」に対する国民の厳しい批判を踏まえ、営利企業への再就職だけではなく、特殊法人、公益法人等への再就職を含めた再就職全般について内閣が責任を持って一括管理し、個別にチェックを行うことの必要性をこれまで表明してきた。人事院としては、その具体化に向けて、引き続き適切な役割を果たしていきたいと考えている。
また、「天下り」に対する国民の批判にこたえるため、各府省が、平成十四年十二月の閣僚懇談会申合せに基づき、公務員の早期退職慣行の是正に向けた計画的取組を着実に進め、公務内においてその能力を活用していくことが肝要である。そのために、人事院も必要な協力を行うこととしている。
3 検討すべき課題〜残された課題及び今日的な課題〜
(1) キャリアシステムの見直しの検討
社会経済情勢の変化を的確にとらえ、複雑化する様々な行政課題に適切に対応していくためには、従来にも増して幅広い視野や専門性を備えた幹部要員の確保・育成が不可欠となってきている。
現在キャリアシステムについては、採用時の一回限りの試験で幹部要員が選抜されることに対して、T種採用職員には誤った特権意識を与え、U種・V種等採用職員には不公平感を生じさせる原因となっているといった弊害が指摘されており、このような指摘にこたえる一方、今後も質の高い行政を展開していくためには、国民全体の奉仕者として使命感を持ち、政策立案能力、管理能力等にも優れた幹部要員の採用・選抜・育成・処遇システムを再構築する必要がある。
今後の幹部要員の選抜、育成方法等の在り方については、これまで有識者の意見を聴取するなど検討を進めてきたところであるが、幹部要員には深い教養からくる洞察力や高い倫理観を有していることが必要などとの意見が出されているところであり、引き続き有識者から意見聴取を行うとともに、各府省とも緊密な連携を図りながら、幅広く検討を進める。その際、T種、U種、V種等採用試験の種類等との関連や公務外からの人材登用との関係などにも十分留意しつつ検討を行うこととする。
なお、当面、能力と意欲のある優秀なU種・V種等採用職員については、人事院が平成十一年に示した「U種・V種等採用職員の幹部職員への登用の推進に関する指針」に基づき、計画的な育成を行い、従前T種採用職員が就いていたポストへの配置の拡大などを通じ、幹部職員への登用を進めていくことが必要である。
(2) セクショナリズムの是正
公務においては、採用から退職後の再就職のあっせんに至るまで各府省が一貫して人事管理を行っているとの指摘がある。また、新卒者を採用し、部内育成を図ることが基本であり、中途採用や民間との人事交流は少数にとどまっている。このような公務組織における人事管理の閉鎖性が、国民の意識との乖離を生じさせる一方、所属府省等の利益を優先するといったセクショナリズムを生じさせているとの批判がある。このようなセクショナリズムを是正するためには、人事制度だけでなく行政の組織運営全般を踏まえた総合的取組が不可欠と考える。
人事院では、これまで府省間人事交流の促進の必要性を指摘してきたほか、民間人材の中途採用や官民人事交流に係る制度の整備、政府職員としての一体感の涵養を図るための研修などにより、セクショナリズムの是正に取り組んできた。今後も、各府省と連携してこれら制度の一層の活用を進めるとともに、研修を通じて意識の改革を図ることとする。
(3) 民間人材活用及び人事交流の促進
国民に対して質の高い行政サービスを提供していくためには、公務内の育成では得られない高度な専門性や多様な経験を有する有為な民間人材を採用し、活用することが重要である。人事院では、これまで民間人材の中途採用、官民人事交流、任期付職員の各制度を整備し、各府省や経済団体等に対し、これら制度の積極的な活用を要請してきた。しかしながら、現状は、民間人材の採用は増えつつあるが、民間企業への派遣は少数にとどまっている。今後とも、各府省との連携を図りつつ、民間人材の採用を一層促進するとともに、若手職員について、民間企業への交流派遣の拡大に努めていくこととする。
さらに、非営利法人への職員の派遣についても、非営利法人での実務経験を通じた人材育成や非営利法人との連携による国の施策の効果的な推進等に資するものと考えられることから、関係者等の意見も聴取しながら、国から非営利法人への職員派遣制度について、派遣手続の公正性や透明性の確保のための方策等を考慮しつつ、具体化の方向で引き続き検討を進めることとする。
(4) 勤務環境と服務規律の整備
ア 職業生活と家庭生活の両立支援策〜勤務時間制度の弾力化・多様化〜
昨年十月に設置した「多様な勤務形態に関する研究会」(座長 佐藤博樹東京大学教授)においては、業務遂行上の必要性及び人材の活用・育成・確保上の必要性の二つの観点から、勤務時間制度の在り方について検討が進められており、その中で、本年七月に、次世代育成支援に関わる職業生活と家庭生活との両立に関する課題についての対応策の提言を中心とする「中間取りまとめ」が行われた。
人事院としては、勤務時間に関する制度を弾力化・多様化して職業生活と家庭生活の両立を支援し、公務における人材の活用・育成・確保を図ることは、公務能率の維持・向上のためにも重要であることから、「中間取りまとめ」を受けて、提言された対応策を中心に検討を進め、両立支援のための施策を一層推進することとする。
(ア) 育児を行う職員が、職務から完全に離れることなく子育てができるような環境の一層の整備を図るため、部分休業の対象となる子の範囲を小学校就学前の子までに拡大することなどについて検討し、別途意見の申出を行う。また、育児を行う職員が常勤職員のまま短時間の勤務をすることを認める短時間勤務制の導入についても検討を進める。
(イ) 育児を行う職員が、所定の勤務時間の勤務を行いながら子育てができるようにするため、早出・遅出勤務の適用を可能とし、業務遂行上可能な場合には、在宅勤務等を活用し、自宅等での勤務を行うことができるようにする。また、管理者が、職員の意向に基づき、公務運営に支障がないよう配慮しながら、あらかじめ計画的に、弾力的な勤務時間の割振りができる仕組みの導入について検討する。
(ウ) 男性職員の育児参加を促進するため、育児休業等の取得促進を図っていくこととし、当面、妻の産前産後の期間における男性職員の育児休業、部分休業又は年次休暇の取得を促進する。また、妻の産前産後の期間における育児のための特別休暇制度の導入についても検討する。
(エ) あわせて、介護を行う職員についても、上記の措置のうち必要なものについて検討を進める。
(オ) 職業生活と家庭生活の両立の支障となる恒常的な長時間勤務を解消又は軽減するために、早出・遅出勤務の活用を促進するとともに、管理者の判断で、業務の繁閑に応じて弾力的な勤務時間の割振りができる仕組みの導入について検討する。
なお、各府省において、管理職に「残業はコストである」という意識を徹底させ、業務の効率化を進めることなどにより、一層の超過勤務の縮減を図ることが重要である。
また、来年四月からの施行を目途として国会に提出されている「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の改正法案において、期間を定めて雇用される労働者についても権利として子の看護休暇が認められることとされていることから、その施行に併せて、非常勤職員について子の看護のための休暇を認める必要があると考えている。
イ 心の健康づくりの推進〜メンタルヘルス対策〜
公務における心の健康づくりを推進するため、昨年十月に「メンタルヘルス対策のための研究会」(座長 吉川武彦中部学院大学大学院教授)を設置し、その検討結果に基づき、本年三月に「職員の心の健康づくりのための指針」を発出したところである。今後は、この指針を基礎に、施策の一層の具体化を図るため、専門家の協力を得ながら心の健康づくりのための教材、相談窓口のモデル例、早期対応及び職場復帰に係るモデル例などの検討を進めるとともに、各府省と連携しつつ心の健康づくり対策を推進することとする。
ウ セクシュアル・ハラスメントの防止対策
セクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」という。)の防止や被害者救済は、職員の利益の保護、職員の能力の発揮等のために重要である。人事院は、平成十一年四月から人事院規則10―10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)を施行し、セクハラ防止等に努めてきたところであるが、セクハラによる懲戒処分は増加傾向にあり、また、苦情相談件数は高い水準のままである。
このため、セクハラに対し、加害者の懲戒処分を始め厳正な対応が行われるよう、悪質なケースについては、各府省が人事院と事前に相談することとしたところであり、今後、更に各府省と協力しつつ、ホームページ、パンフレット等を活用した啓発や職場の監督者に対する研修の充実、各府省のセクハラ防止担当者等との連携の強化などにより、一層のセクハラの防止に努めるとともに、セクハラ相談員を対象とした指導を充実し、被害者にとって相談しやすい体制を整備する。
エ 不祥事の防止及び懲戒処分の厳正性・公正性の確保
近年、国家公務員の不祥事が相次ぎ、懲戒処分の増加傾向が続いている。
国民からの国家公務員に対する信頼を確保していくためには、各府省において、不祥事の原因を分析して再発防止策を講じ、これに基づいて服務規律の遵守の徹底を図るとともに、不祥事が発生した際には適切な懲戒処分により厳正に対処することが肝要である。
このため、人事院としては、懲戒処分の厳正性を確保するための「懲戒処分の指針」を平成十二年に発出し、その後随時必要な見直しを行っているほか、昨年十一月には適正な懲戒処分の公表に資するための「懲戒処分の公表指針」を策定し、各府省に示すなど、懲戒処分の厳正性・公正性の確保に努めているところである。
さらに、「懲戒処分の指針」について標準例などの見直しを行うことを含め、懲戒処分のより一層の厳正性・公正性の確保のための方策について検討を進めていく。
(5) 人材の確保・育成
ア 試験制度の改革
(ア) T種試験制度の改革
行政が複雑・高度化し、国民の期待にこたえる質の高い行政の実現を担う人材の確保・育成がますます重要な課題となっている。このような状況の中で、本年度から多数の法科大学院や公共政策大学院等が学生受入れを開始するなど、T種試験を中心に公務の人材供給構造の変化が見込まれる。さらに、現在のT種試験に対しては、知識偏重との批判がある。
このような状況に対応するため、平成十八年三月には法科大学院等からの修了者が出ることを踏まえ、平成十八年度からの実施に向けて、T種試験の見直しの検討を進めている。具体的には、幅広い教養と専門知識、思考力に加え、行政を取り巻く状況の中から課題を見つけ出す問題発見能力や、問題解決に当たっての多角的考察力等についても検証する採用試験に改める方向で、昨年十二月に有識者から成る「T種採用試験に関する研究会」(座長 村松岐夫学習院大学教授)を設置して幅広く検討を進めており、各方面の意見を聞きながら、改革内容の周知期間も勘案して、本年中にその内容の取りまとめを行うこととしている。
(イ) 採用試験の受験資格としての年齢制限の撤廃・中途採用試験の検討
採用試験の受験資格として設けられている年齢制限については、「規制改革・民間開放推進三か年計画」(平成十六年三月十九日閣議決定)において、「存続すべき理由があるものを除き撤廃する方向で検討を行い、結論を得る。」とあることを踏まえ、関係者等の意見を聴取しつつ、検討を進めている。また、この検討と併せて、我が国全体としての人材の流動化への対応や公務組織の活性化を図る等のために、一定の民間での職業経験を有する者等を対象とした中途採用試験のような新たな採用の枠組みについても検討することとしている。
イ 女性国家公務員の採用・登用の拡大
国の行政への女性の参画の推進は、男女共同参画社会実現の基盤をなすものであり、各府省等は、人事院が平成十三年に示した「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づき、平成十七年度までの「女性職員の採用・登用拡大計画」を策定し、その実現に向けて取組を進めている。
また、本年四月の男女共同参画推進本部決定に基づく各府省の申合せにおいては、当面(平成二十二年度ごろまで)の採用者に占める女性の割合の目安として、T種試験の事務系の区分については三〇%程度を目標とするとされ、人事院に対しては、T種試験の受験者数及び合格者数の増加のための一層の取組を進めるよう、要請がなされている。人事院では、T種試験について女性の受験者数及び合格者数の増加につながるよう募集活動の強化などの取組を重点的に行う。さらに、本年七月に有識者から成る「女性幹部職員を育成・登用するための研究会」(座長 奥山明良成城大学教授)を設け、女性の幹部職員への登用を促進するため実効性のある方策を検討するとともに、上記指針について必要な見直しを行うなど、引き続き女性国家公務員の採用・登用の拡大に向けて取り組むこととする。
ウ 職員の能力開発の機会の拡充
人事院は、近年、思索型プログラムによる幹部行政官セミナー(アスペンメソッド)の導入、各府省との連携の下での研修教材の開発など、公務員の基本的在り方に関わる研修の充実に努めてきているところであるが、複雑化、高度化する行政運営を担うにふさわしい能力を備えた公務員の育成や能力・実績に基づく人事管理の推進のためには、能力開発の機会を更に拡充していくための積極的な取組が必要となっている。
(ア) 能力開発の機会を幅広く提供できる新しい研修形態の導入
公務員の基本的在り方に関わる研修については、職員に幅広く受講機会を与えることが急務であり、時間、場所の制約が少なく大規模な研修実施が可能な新しい研修形態であるeラーニングの導入を通じ、公務員倫理、服務などの研修を充実させる方策を検討することとする。また、eラーニングの実施上の問題点を踏まえ、実施に当たってのガイドラインを整備する。
(イ) U種・V種等採用職員を対象とした研修の充実
能力・実績に基づく人事管理を推進し、能力と意欲のある優れたU種・V種等採用職員の幹部職員への登用を進めるためには、前述のとおり、計画的な育成が必要であり、従前T種採用職員が就いていたポストへの配置の拡大のほか、各府省におけるU種・V種等採用職員の幹部登用に対する支援施策の一環としての研修機会を拡充することが必要である。
a 新たな幹部養成研修
これまで、U種・V種等採用職員に対し、幹部登用に資することを目的として係長級及び課長補佐級の行政研修を実施しているが、これらU種・V種等採用職員に対し幹部要員として必要な資質を早期に付与し、幹部職員への登用を一層促進する観点から、係長昇任前の上級係員を対象とした政策立案能力や管理能力等を涵養する研修の新設を検討する。
b 海外派遣研修
行政官長期在外研究員の派遣数は年々増加してきているが、U種・V種等採用職員の派遣は極めて限られており、今後、能力開発の機会を拡充する観点から、これら職員の派遣機会の拡大について検討することとする。
(ウ) 職員の自発的な能力開発のための環境整備
複雑・高度化する行政ニーズにこたえていくとともに、能力・実績に基づく人事管理を推進していくためには、職員が自ら積極的に能力開発に取り組む環境を整備することが重要である。このため、職員の発意に基づき一定期間公務を離れることができる制度の導入について、民間における状況を踏まえつつ、検討することとする。
(エ) マネジメント能力養成のための研修の充実
新たな行政ニーズへの迅速な対応、より効果的・効率的な行政運営が求められる中、業務の中核となる第一線の監督者がより適切に職務を遂行できるよう、マネジメントの基本を踏まえつつ、目標による管理、創造性の開発、部下の動機づけなどについて考えさせる新たな研修教材の開発を検討している。
(オ) 留学派遣者の早期退職問題への対処
行政官長期在外研究員制度などについては、留学派遣者の増加も踏まえ、派遣者が復帰後、早い時期に退職する問題への対処について検討する必要がある。
(6) 再任用制度の積極的な活用
我が国が本格的な高齢社会を迎え、公的年金の支給開始年齢の引上げが行われる中、職員が定年後の生活に不安を覚えることなく職務に専念し、長年培った能力・経験を有効に発揮できるよう、平成十三年度から新たな再任用制度が導入されており、任命権者には、再任用を希望する定年退職者等をできる限り採用するよう努めていることが求められる。
再任用は各府省において平成十四年度から本格的に実施され、一定の採用実績を残しているところであるが、初年度は六十一歳であった年金支給開始年齢が六十五歳へと順次引き上げられることに伴い、定年退職者等のうち再任用を希望する者が増加することが見込まれる。このような中で、定年後も公務内において引き続き働く意欲と能力を有する職員をできる限り再任用していくためには、職員の意向に配慮しつつ短時間勤務を活用することなどを考える必要があり、人事院としては、各府省が職員を積極的に再任用できる環境の整備について、各府省の実情等も踏まえながら、更に検討を進めることとしたい。
(7) 人事・給与関係業務等の電子化の推進・活用
各府省共通の人事・給与等の内部管理業務について、手続の電子化と簡素化を推進することが、政府全体の方針として決定されている。これを受けて、人事院は、関係府省と連携、協力して、全府省が利用する「人事・給与関係業務情報システム」の開発を行っており、各府省は平成十九年度末までに当該システムを順次導入することを予定している。
人事院では、システム化へ向け、電子化に適合するよう人事院規則等を整備するとともに、システム導入後は制度改正等に即応した改修を行うなど当該システムの充実強化に取り組み、各府省への定着を図る。
また、電子化を機会として、人事・給与関係手続の更なる簡素合理化についても検討を進める。
このほか、府省共通業務・システムの一つである「研修・啓発業務」について、関係府省と連携、協力しながら最適化計画の策定に向け検討を進めることとしている。
(8) 不服申立て・苦情相談の充実
職員を取り巻く勤務環境の変化や職員の価値観の多様化などを背景として、職員から様々な不服申立てや苦情相談が寄せられている。また、今後、能力・実績に基づく人事管理を一層推進していく上で、職員の利益保護の観点から、不服申立てや苦情相談を充実する必要性は高まるものと考える。
人事院では、これまで集中審理方式等による公平審理の効率的な実施など事案の早期処理、苦情相談の手続・対応方法の明確化や人事院における職員相談室の設置などによる苦情相談体制の充実に取り組んできたところであるが、職員からの様々な不服申立てや苦情を適切に処理するシステムの充実を図るため、不服申立制度におけるあっせんの手続や簡易かつ実効性のある苦情処理の手続についても引き続き検討を進めることとする。また、本年度から電子メールによる受付や土曜相談室の開設など、人事院としての苦情相談体制を充実させたところであるが、今後、各府省の行っている苦情相談の状況を把握し、人事院の行う苦情相談との連携、協力の一層の強化等を検討することとする。
別記第3
寒冷地の区分 地域等
1級地〜3級地は北海道の地域のため省略
4級地
青森県
岩手県のうち
盛岡市 水沢市 花巻市 北上市 久慈市 遠野市 一関市 江刺市 二戸市 岩手郡 紫波郡 稗貫郡 和賀郡 胆沢郡 西磐井郡のうち平泉町 東磐井郡のうち大東町、千厩町及び東山町 上閉伊郡のうち宮守村 下閉伊郡 九戸郡 二戸郡
宮城県のうち
古川市 刈田郡のうち七ケ宿町 柴田郡のうち川崎町 黒川郡のうち大和町及び大衡村 加美郡 志田郡のうち三本木町 玉造郡 栗原郡のうち築館町、栗駒町、高清水町、一迫町、鶯沢町、金成町、志波姫町及び花山村
秋田県のうち
秋田市 能代市 横手市 大館市 湯沢市 大曲市 鹿角市 鹿角郡 北秋田郡 山本郡 南秋田郡 河辺郡 由利郡のうち矢島町、由利町、鳥海町及び東由利町 仙北郡 平鹿郡 雄勝郡
山形県のうち
山形市 米沢市 新庄市 寒河江市 上山市 村山市 長井市 天童市 東根市 尾花沢市 南陽市 東村山市郡 西村山市 北村山郡 最上郡 東置賜郡 東田川郡のうち朝日村
福島県のうち
会津若松市 喜多方市 安達郡のうち大玉村、白沢村、岩代町及び東和町 岩瀬郡 南会津郡 北会津郡 耶麻郡 河沼郡 大沼郡 西白河郡 東白川郡のうち棚倉町及び鮫川村 石川郡 田村郡のうち三春町、大越町、都路村、常葉町及び船引町 双葉郡のうち川内村及び葛尾村 相馬郡のうち飯舘村
栃木県のうち
日光市 上都賀郡のうち足尾町 塩谷郡のうち栗山村及び藤原町 那須郡のうち塩原町
群馬県のうち
沼田市 北群馬郡のうち伊香保町 吾妻郡のうち中之条町、長野原町、嬬恋村、草津町、六合村及び高山村 利根郡
新潟県のうち
長岡市 新発田市 小千谷市 十日町市 見附市 栃尾市 新井市 五泉市 上越市 中蒲原郡のうち村松町 南蒲原郡のうち下田村 東蒲原郡のうち津川町、上川村及び三川村 三島郡のうち越路町 古志郡 北魚沼郡 刈羽郡のうち高柳町及び小国町 東頸城郡 中頸城郡のうち頸城村、妙高高原町、中郷村、妙高村、板倉町、清里村及び三和村 西頸城郡のうち青海町 岩船郡のうち山北町
富山県のうち
上新川郡 中新川郡のうち上市町 下新川郡のうち宇奈月町 婦負郡のうち山田村及び細入村 東礪波郡のうち城端町、平村、利賀村及び井口村
石川県のうち
江沼郡 石川郡のうち鶴来町、河内村、吉野谷村、鳥越村、尾口村及び白峰村
福井県のうち
大野市 勝山市 吉田郡のうち上志比村 大野郡 今立郡のうち池田町 南条郡のうち今庄町
山梨県のうち
富士吉田市 東山梨郡のうち三富村及び大和村 東八代郡のうち芦川村 西八代郡のうち上九一色村 北巨摩郡のうち高根町、長坂町、大泉村及び小淵沢町、南都留郡のうち道志村、忍野村、山中湖村、鳴沢村及び富士河口湖町 北都留郡のうち小菅村及び丹波山村
長野県のうち
長野市 松本市 上田市 岡谷市 諏訪市 須坂市 小諸市 伊那郡 駒ヶ根市 中野市 大町市 飯山市 茅野市 塩尻市 佐久市 千曲市 東御市 南佐久郡 北佐久郡 小県郡 諏訪郡 上伊那郡のうち高遠町、辰野町、箕輪町、飯島町、南箕輪村、中川村及び長谷村 下伊那郡のうち阿南町、清内路村、阿智村、浪合村、平谷村、根羽村、売木村、泰阜村、大鹿村及び上村 木曽郡のうち木曽福島町、上松町、南木曽町、楢川村、木祖村、日義村、開田村、山岳村、王滝村及び大桑村 東筑摩郡 南安曇郡 北安曇郡 更級郡 埴科郡 上高井郡 下高井郡 上水内郡 下水内郡
岐阜県のうち
高山市 飛騨市 揖斐郡のうち藤橋村及び坂内村 加茂郡のうち東白川村 恵那郡のうち川上村及び加子母村 大野郡 吉城郡
滋賀県のうち
伊香郡のうち余呉町
兵庫県のうち
美方郡のうち村岡町及び美方町
和歌山県のうち
伊都郡のうち高野町
鳥取県のうち
日野郡のうち日野町、江府町及び溝口町
島根県のうち
飯石郡のうち頓原町
岡山県のうち
真庭郡のうち湯原町、新庄村、川上村、八束村及び中和村 苫田郡のうち上齋原村及び阿波村 英田郡のうち西粟倉村
広島県のうち
山県郡のうち芸北町 北婆郡のうち高野町及び比和町
総務大臣が定める官署
備考 この表に掲げる名称は、平成十六年四月一日における名称とし、同表に定める地域は、それらの名称を有するものの同日における区域を用いて示された地域とし、その後におけるそれらの名称の変更又はそれらの名称を有するものの区域の変更によって影響されないものとする。
給与勧告の骨子
○本年の給与勧告のポイント
〜月例給、ボーナスともに水準改定なし(6年振りに前年水準を維持)
@官民給与の較差(0.01%)が極めて小さく、月例給の改定を見送り
A期末・勤勉手当(ボーナス)は民間の支給割合と均衡
B寒冷地手当の支給地域、支給額、支給方法を抜本的に見直し
1 給与勧告の基本的考え方
〈給与勧告の意義〉労働基本権制約の代償措置、労使関係の安定を図り、能率的な行政運営を維持
〈民間準拠の考え方〉市場原理による給与決定が困難、民間給与に公務員給与を合わせることが最も合理的
2 官民給与の比較
約8,100民間事業所の約36万人の個人別給与を実地調査(完了率92.7%)
〈月 例 給〉官民の4月分給与を調査(ベア中止、定昇停止、賃金カット等を実施した企業の状況も反映)し、職種、役職段階、年齢、地域など給与決定要素の同じ者同士を比較
○官民較差 39円 0.01%〔行政職(一)…現行給与 381,113円 平均年齢40.2歳〕
(寒冷地手当の見直しを含まない場合の官民較差 △207円 △0.05%)
〈ボーナス〉昨年冬と本年夏の1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間支給月数を比較
○民間の支給割合 公務の支給月数(4.40月)とおおむね均衡
3 改定の内容と考え方
〈月 例 給〉官民較差が極めて小さく、俸給表改定が困難であること、諸手当についても民間の支給状況とおおむね均衡していること等を勘案して、月例給の水準改定は見送り
(1)国立大学法人化等に伴う給与法等の規定の整備
@教育職俸給表 教育職(一)は1級を削除、教育職(二)及び教育職(三)は廃止、教育職(四)は名称を教育職(二)とし、4級、5級を削除
A指定職俸給表 指定職12号俸を削除
任期付研究員、特定任期付職員の俸給月額の上限を指定職11号俸相当額に変更
B研究員調整手当、ハワイ観測所勤務手当、義務教育等教員特別手当
廃止等の所要の改定
(2)寒冷地手当 地域の公務員給与の見直しの一環として、民間準拠を基本に、抜本的に見直し
・支給地域 北海道及び北海道と同程度の気象条件が認められる本州の市町村に限定
(市町村数の4割強、職員の約半数を対象から除外)
・支 給 額 民間事業所における支給実態に合わせて、支給額を約4割引下げ
(最高支給額 年額230,200円→131,900円)
・支給方法 一括支給から月額制(11月から翌年3月までの5箇月間)に変更
・実施時期等 本年の寒冷地手当(現行10月末日一括支給)から実施。実施に当たっては所要の経過措置
〔実施時期〕公布の日から実施
〈その他の課題〉
(1)特殊勤務手当の見直し 引き続き手当ごとの実態等を精査して所要の見直しを検討
(2)官民比較方法の見直し 比較給与種目(通勤手当、俸給の特別調整額等)の見直しのほか、民間企業の人事・組織形態の変化に対応できるように官民比較方法の見直しを検討
(3)独立行政法人等の給与水準 役職員の給与水準の在り方等の検討において今後とも必要な協力
4 給与構造の基本的見直し
(1)検討の必要性と基本的考え方
・公務員給与に対する国民の理解と支持を確保し、職員が生き生きと働けるよう、職務や成果を重視した民間企業の賃金制度改革の動きを踏まえ、俸給制度、諸手当制度全般を見直し
ア 職員の給与水準の上昇が年功的になりがちな俸給表構造や、採用年次を重視した昇格運用、特別昇給・勤勉手当における持ち回り運用に対し、
→ 職務・職責を重視し、実績を的確に反映する給与制度へ転換
イ 「天下り」に対する国民からの批判、高齢化社会を踏まえた職場作りという視点から、
→ 在職期間の長期化に向けての給与制度上の環境を整備
ウ 地域での公務員給与が高いのではないかという批判等に対応し、
→ 適正な給与の地域間配分を実現
(2)具体的な検討項目〜たたき台を提示
@俸給表の全体水準の引下げと地域に応じた適切な給与調整の実現
・民間賃金の低い地域における官民の給与較差を考慮して公務員給与のベースとなる全国共通俸給表の水準を引下げ
・俸給水準を補完し、地域における民間賃金を反映するため、調整手当に替えて地域手当(仮称)を新設
・円滑な転勤運用を確保するため、転勤者の精神的・経済的負担に対し一定期間支給する転勤手当(仮称)を新設
A俸給関連の課題
・専門スタッフ職俸給表(仮称)の新設
― スペシャリストのスタッフ職としての処遇や、在職期間の長期化に対応した複線型人事の導入のため、3級程度の簡素な級構成の専門スタッフ職俸給表を新設
・俸給表構造の見直し
― 俸給表について、より職務・職責を反映したものとなるよう、級構成の再編(新設・統合)と昇給カーブのフラット化
・昇給基準の見直し等
― 能力等級制度や新たな評価システムとの関連を踏まえ、昇格・降格の基準を明確化
・実績評価に基づいた昇給(査定昇給)の導入等
― 新たな評価システムの整備を踏まえ、普通昇給と特別昇給に替えて、毎年の職員の勤務実績の評価に基づいて昇給額を決定する査定昇給を導入。これに併せ、枠外昇給は廃止
B手当制度関連の課題
・勤勉手当への実績反映の拡大
― 新たな評価システムの整備を踏まえ、勤勉手当への実績反映を拡大。関連して、期末特別手当についても実績反映を導入
・本府省手当(仮称)の新設
― 本府省における勤務の特殊性、困難性、人材確保の必要性に配慮して本府省手当を新設
・俸給の特別調整額の定額化
― 俸給の特別調整額について、管理職員の管理・監督業務の困難性の程度を端的に評価したものとなるよう定額化
(3)今後の進め方
各府省、職員団体等の関係者との十分な協議を行い、検討項目の具体化を図る
公務員人事管理に関する報告の骨子
公務員制度については、実効性のある改革が国民や関係者の理解を得て実現される必要。今後とも、法制化に向けての検討に際しては適宜必要な意見を表明
1 能力・実績に基づく人事管理の推進
・新たな評価制度の導入により、能力本位の任用を推進し、実績を踏まえた給与処遇を実現することが必要
・新たな評価制度の導入に当たっては、理解と納得が得られるよう職員側との対話が重要であり、また、円滑な導入のための試行を十分に行うことが必要
2 再就職ルールの適正化
・営利企業への再就職だけではなく、特殊法人、公益法人等への再就職を含めた再就職全般について内閣が責任を持って一括管理し、個別にチェックを行うことが必要
・「天下り」に対する国民の批判にこたえるため、公務員の早期退職慣行の是正に向けた計画的取組を着実に進め、公務内においてその能力を活用していくことが肝要
3 検討すべき課題〜残された課題及び今日的な課題〜
○ キャリアシステムの見直しの検討
幹部要員の選抜、育成方法等の在り方について、採用試験の種類等との関連などにも十分留意しつつ幅広く検討。なお、能力と意欲のある優秀なU・V種等職員の幹部登用の促進が必要
○ セクショナリズムの是正
府省間人事交流を促進。中途採用や官民人事交流に係る制度を一層活用。政府職員としての一体感の涵養を図るための研修を通じて意識を改革
○ 民間人材活用及び人事交流の促進
・民間人材の採用を一層促進するとともに、若手職員の民間企業への交流派遣の拡大に努めていく必要
・非営利法人への職員派遣について、具体化の方向で検討
○ 勤務環境と服務規律の整備
・「多様な勤務形態に関する研究会」の中間取りまとめを受け、職業生活と家庭生活の両立支援策を一層推進(勤務時間制度の弾力化・多様化)
両立支援策として、育児を行う職員の部分休業の拡充、短時間勤務制の導入、男性職員の育児参加促進策などについて検討
・「職員の心の健康づくりのための指針」を基礎に、心の健康づくり対策を推進
・セクハラに対し加害者の処分等厳正な対応、監督者の研修の充実などによる一層のセクハラ防止、被害者にとって相談しやすい体制の整備
・「懲戒処分の指針」の見直しを含め、懲戒処分のより一層の厳正性・公正性の確保策を検討
○ 人材の確保・育成
・T種採用試験の改革について、「T種採用試験に関する研究会」において検討を進め、本年中に取りまとめ
・採用試験の年齢制限の撤廃及び中途採用試験について検討
・「女性幹部職員を育成・登用するための研究会」を設置し、実効性のある登用促進策を検討。「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」の見直し
・eラーニングの導入を通じ、公務員倫理、服務などの研修を充実
・U・V種等職員を対象とした幹部養成研修の拡充、海外派遣の機会の拡大
・留学派遣者の早期退職問題への対処について検討
○ 再任用制度の積極的な活用
短時間勤務を活用することなどを考える必要。各府省が職員を積極的に再任用できる環境の整備について更に検討
○ 人事・給与関係業務等の電子化の推進・活用
人事・給与関係業務情報システムを開発。また、人事・給与関係手続の更なる簡素合理化について検討
○ 不服申立て・苦情相談の充実
不服申立制度におけるあっせんの手続、簡易かつ実効性のある苦情処理手続を検討。また、各府省の苦情相談と人事院の苦情相談との連携、協力の一層の強化等を検討