機関紙「自治労府職」

 2005年7月1日号

公務員連絡会
「骨太の方針」閣議決定を受け麻生総務大臣と交渉
人勧制度尊重の姿勢示す


 公務員連絡会は6月22日、麻生総務大臣との交渉を行った。この日の交渉は「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」が閣議決定されたことを受け、17日に行われた総務省との交渉の際に提出した申入書に対する大臣の回答を求めるために行ったもの。
 公務員連絡会から、@閣議決定された『経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005』(以下『骨太の方針』)では、国・地方の公務員給与の見直し方針やこの秋に『総人件費改革のための基本指針』を政府として策定するとある。これは、人事院勧告に対する政府の政治的介入であり、極めて遺憾、A公務員に対しては、すべてにわたる見直し議論が行われているが、その視点は財政の論理しかない。それでは、この国の将来の姿がどうなるのか、行政や公共サービスの将来がどうなるのか、まったく描けない。職場ではそこが一番の不安であり、仕事の士気にも影響を与えている、B政府は人勧制度尊重の姿勢を堅持し『総人件費改革のための基本指針』策定には、組合の意見を十分聞いていただきたい、C賃金・労働条件は、労使交渉で決定するのが原則。政府が人勧制度の枠組みを超えるような総人件費削減の施策を検討するなら、労働基本権のあり方を含む制度の見直しは不可避である、と訴えた。
 麻生大臣は「経済財政諮問会議での『骨太の方針』議論では、金目の話が先行し、労使関係を軽視した議論になりがちだったが、最終的に給与は現行制度の下では人勧によることとされた。『総人件費改革のための基本指針』は内閣府で詰めることになるが、人勧が優先する。国家公務員の給与改定では、人勧制度尊重の基本姿勢のもと、社会経済情勢や財政事情等の国政全般との関連について検討し、対応したい」などと述べた。
 組合からはさらに、麻生大臣が諮問会議で行った「退職手当見直し発言」を質したところ、麻生大臣は「定年までの在職など公務内の人事管理の変化、民間の退職金制度の変化などに対応し、退職手当も見直す必要があるとの考え」と述べた。


国費評議会労働部会発
国費評全国交流集会に全国から300人
交流深め今後の闘いを決意


 社会保障の拡充、地方自治の拡大などを柱として、職場実態の報告や日常的な取り組みの交流を行う26回目の全国交流集会が6月13・14日の2日間に渡り、静岡県熱海市で開かれました。
 交流集会には全国から国費評議会の仲間300人以上が結集、労働部会連絡協議会からも14人が参加し、終始熱気に包まれたなかでの実り多いものとなりました。
 第1日目の全体集会では冒頭、自治労本部の笠見副委員長、自治労国費評議会の高端議長から交流会の成功と今後の闘う決意を込めてのあいさつが行われました。
 続いて「労働者をとりまく情勢と課題」と題して、労働大学講師の横田昌三さんから記念講演を受け、小泉構造改革の矛盾・問題点と国民参加の公共性の重要さを学習しました。
 基調提起では、平岡国費評議会事務局長が職場の実態を交えながら、労働安全衛生運動の強化と各職場での取組みの必要性を訴え、さらに労働部会から山本部会長がハローワークにおける市場化テストの現状と取組みの報告、自治労国費評議会に結集し職場からの活動を強化するとの決意を述べました。
 全体会終了後、分散会として第4回労働部会連絡協議会を行い、大阪職安労組、東京職安労組、沖縄国公労働支部、大阪職安支部の4組合から、それぞれ職場の実態や活動の状況が報告されました。具体的には「ハローワークの民営化」阻止の取組みを柱に、開庁時間延長やメンタルヘルスの問題、組合活動のあり方まで突っ込んだ議論も交わされ、最後に東京職安労組の高橋さんから「民間開放」オーストラリアの調査概要の報告を受け、日本との相違点や課題の認識を深めました。
 第2日目も、引き続き分散会が行われ、前日の議論を踏まえた取組みの総括、厚生労働省に提出する「要望書」素案及び今後の活動方針の確認、締めくくりとして、参加者一人ひとりが本交流集会を通じて学んだこと、今後の闘いに向けた決意を表明しました。
 最終となった全体集会では、労働部会連絡協議会から芝野事務局次長が壇上に立ち「ハローワークの民営化」阻止と労働安全衛生運動の取組みを中心に分散会の内容を報告、仲間の意見・気持ちを訴えました。
 最後に、自治労国費評議会の西岡副議長が参加者に今回の交流集会で「何を求め、どんな行動を起こし、そして何を得たか」を問いかけ、今後の活動にとって目的意識が重要であると総括し、全体を結びました。
【本部 山口正強生】


公務員連絡会
人事院総裁に人勧期要求書提出
官民比較 
現行企業規模を維持


 公務員連絡会は23日、佐藤人事院総裁と交渉を行い、公務員給与に対する人事院の基本姿勢をただすとともに「2005年人事院勧告に関わる要求書」を提出した。
 公務員連絡会の丸山議長は「政府からの人事院勧告に対する『政治的圧力』が行われるなか、勧告への話し合いを行う前提として、総裁から、比較企業規模の問題を含め官民比較のあり方に関する基本的な考え方を聞いておきたい」と人事院の基本姿勢をただした。
 これに対して佐藤総裁は「官民比較は、国内の労働市場、賃金構造の動向に留意しつつ常にその妥当性を検証する必要があるが、現行の比較企業規模は、民間会社の従業員の過半数をカバーしており、このような状況に大きな変化がなければ適当なものと考えている」との見解を示した。
 人事院総裁が、官民比較の基本的枠組みを維持し、公務員給与の水準を確保する、との基本姿勢を表明したことを受け、今後、公務員連絡会として人勧期の交渉・協議に対応していくとの考え方を示した。
 そして、本年の課題である地域給与・給与制度見直しでは「措置案の『俸給表水準を引き下げる地域給与の見直し案』や『新たな評価制度が整備されないまま勤務成績に基づく昇給制度の導入』は、到底認めらない。一方的に勧告するようなことはやめてもらいたい」と訴えた。
 これに対して、佐藤総裁が「公務員連絡会の考え方は重く受け止め、今後真摯に対応していきたい」とこたえたことから、要求事項をめぐるやり取りに移り、山本事務局長が@地域給与・給与制度見直し、Aベア・一時金などの給与改善、B介護・育児職員の短時間勤務制度など重点課題を説明、今後交渉を積み上げ、しかるべき段階に総裁から回答するよう求め、交渉を終えた。


最近読んだ本
蜂 起
森巣 博 著


はじき出された国民の憤怒が
「日本」に落し前をつける時


 森巣博著「蜂起」(金曜日刊)は、暗転する日本の未来を疑視し、のたうつ国家と個人(民衆)の姿を暗示する作品。近未来日本の運命に「希望」はあるのだろうか。
 「蜂起」という表現はいまでは死語に等しい。「騒乱」や「叛乱」でなく、「蜂起」という題名が「夢」をひきつける。支配者の圧政に耐えかね大勢の人たちが一斉に反乱を起こすことを意味する「蜂起」−−どんな展開をするのだろうか。
 「蜂起」は2003年11月から、ほぼ1年間にわたって週刊金曜日に連載されたもので、連載された2003年の世相が背景としてリアルにちりばめられる。それ故、読者は小説に酔えるというより「現実」というものに直面せざるをえない。どこで「蜂起」に出会うのだろうか。
 「蜂起」は1部と2部で構成される。1部に4人が登場する。懲戒免職される警視。リストラから身を守るため上司のセクハラに耐えるOL。伝統右翼集団塾長の生きざま。リストカットを繰り返す女子高校生。この登場人物たちが現在の病める「日本」の特色を表現するにふさわしいかどうか意見のあるところだが、平穏な日常生活が崩壊に傾斜する4人の姿に迫力がある。それは戦後の日本が腐臭しドロドロした風景へと変化した反映でもある。
 警視と伝統的右翼で日本に巣くった腐敗について語られる。国家権力とパチンコ業界の癒着、パチンコ利権が生みだす特別保障の警察共済組合への巨額な年金など。そして、その利権の甘い汁を吸う現職の警察官たち。
 全国的に極左過激派集団の活動がほとんど死滅したために、機動隊員が肥満してしまう語りや伝統的右翼の「シノギのネタ」の語りには笑ってしまう。バブルの崩壊前はシノギのネタで面白いほど金が集まってきた時代だったが「暴対法」の施行で建設現場・企業スキャンダルがシノギのネタでなくなった。社会全体が極端に右傾化してきたいま、教育現場の「日の丸・君が代」もシノギからはずされてしまった。
 毎年、卒業式・入学式に東京都の公立小中学校訪問で「お車代」をもらえた右翼であったが東京では教育長の名による職場命令で愛国教育が徹底され「日の丸・君が代」の強行に対決する教職員は弾圧された。一体どうなってしまったのか。伝統的右翼は嘆く。家族をかかえて必死に生計をたてる彼の生き残る道はとざされてしまう。
 第2部は、社会からはじき出された4人がどう生き残れるか。題名の「蜂起」が第2部である(「崩壊の兆し」と終章「ものみな砕け散る」)。そこにホームレスが無数に登場する。いわば第2部の主役的存在だ。厚労省の2003年の調査では、全国に約2万5300人。ホームレスの群の中に、伝統的右翼もいた。ホームレスの手配師に携わる元警視もいた。「どうせホームレスをやるなら都心の一等地」という動機で皇居外苑に全国から結集するホームレスという名の新民族。
 そして日本国の財政の破たん、日本国民1人当り1000万円を超す借金。国家の体を成していない不毛の政治、国債の増発……破滅に向かいばく進する日本国民。はじき出された国民の憤怒を「日本」に向け、「日本」というシステムに落とし前をつける騒然たる主張が第2部である。
 「落とし前」をどうつけるか、そのつけ方の提案が簡単な方法として出されてくる。そして日本中がひっくり返った(皇居外苑のホームレスは大多数虐殺され、東京都内の騒乱と反乱の同時多発によって70〜90万人が犠牲者となった)。革命集団と関係なく、個人の自主的なやり方によって。マンガ的な表現もあるが、虐げられた者たちの憤怒に共感するのに充分な説得力があるのだ。
 「蜂起」がエンターテイメントで終わるのではなく親近感を感じるのは、読者へ向け「虐げられているのか」の問いがあり、この「日本」をそろそろどうするのかという命題がかけられているからだろう。
 「人は誰でも大量破壊兵器を携えたテロリストとなりうる」。だが「テロリストに希望はない」「希望がないからテロに走るのである」。この矛盾のはざまで悩む著者がいる。生き残ったリストカットの女子高校生は「1人ひとりが別個に起つ。そして共に撃つ」。日本という社会に落とし前をつけると決意する。連帯を求めるけれど独立を恐れない彼女がある。


シネマはやっぱりおもしろい
―7月公開の映画―


マラソン

 チョウォンは自閉症の障害を持ち、予測不能の行動やストレートな感情表現でいつも騒動を起こす。しかし、彼の無垢で純粋な心は人をいやすパワーも秘めていた。
 19歳の時、ハーフマラソンで見事に3位入賞を果たしたチョウォン。走っているときだけ楽しそうに輝くチョウォンの表情を発見した母親のキョンスクは、チョウォンにフルマラソンに挑戦させようと決めた。
 本格的なトレーニングが必要となり、チョウォンの学校に社会奉仕でやってきた元マラソン選手、ソン・チョンウクにコーチを頼みこむ。しかし、マラソンへの情熱を失っているチョンウクにはコーチする気持ちがない。しぶしぶコーチを引き受けたものの、ベンチに寝ころんでチョウォンにグランドを走らせるだけだ。そんなある日、チョンウクは、グランド100周という気まぐれな命令を出した。ふらふらになりながらも実直にその命令を成し遂げるチョウォン。その姿を目のあたりにし、心を動かされたのはチョンウクだった。2人の関係はこの日を境に一変した。マラソンのトレーニングはもちろん、一緒に競馬に行ったり、ビールを飲んだり。
 しかし、そんなチョンウクの態度をコーチとして不誠実だと思うキョンスクはついに彼と口論。「コーチはいらない。私の息子は私が育てる」を言い切った。
 チョンウクが立ち去ったあとトラブルが続出し……。
 韓国で大ヒットしたこの作品は、実話を元に描かれもの。主役のチョウォンを演じたチョ・スンウの演技に注目したい。
▼7月2日(土)よりロードショー▼2005年韓国/監督=チョン・ユンチョル/出演=チョ・スンウ(チョウォン)、キム・ミスク(キョンスク)、イ・ギヨン(ソン・チョンウク)▼上映館/〈大阪〉梅田ブルク7Tel:06(4795)7602、他、〈京都〉MOVIX京都Tel:075(254)3215、〈神戸〉三宮東映プラザTel:078(391)6758、他