機関紙「自治労府職」

 2005年8月15日号外

地域給与の勧告を強行
来年度から俸給表4.8%引き下げ
給与改定 月例給0.36%減、一時金0.05月増


 人事院は8月15日、月例給を0.36%引き下げる二〇〇五年給与勧告を行った。その内容は、@俸給表を0.3%引き下げる、A配偶者にかかる扶養手当を500円引き下げる、B一時金の支給月数を0.05月分引き上げ年間4.45月分とするなどである。改定の実施時期は法施行日からとする一方、官民給与を均衡させる方法は、四月分の官民比較給与をベースに較差分を制度調整する方式とした。同時に、来年四月以降、俸給表と諸手当の配分を大きく見直すことも勧告し、俸給表水準をさらに平均四・八%引き下げ、広域異動手当、本府省手当、地域手当などを新設するとしている。また、給与制度見直しは、勤務成績に基づく昇給制度と勤勉手当への実績反映の拡大、級構成の再編とフラット化、枠外昇給制度の廃止、などを実施するとしている。自治労は当面する人事委員会勧告を重視し、ただちに、対人事委員会交渉、首長による人事委員会要請に向けた対自治体交渉など、集中的な取り組みを行い、すべての単組が結集する産別統一闘争を強力に展開することを確認。秋にも政府・経済財政諮問会議が策定するとしている「総人件費改革のための基本指針」で、人勧制度の枠組みを超えた給与水準の引き下げや定員削減の方針が一方的に盛り込まれることを強く警戒し、労働基本権を確立した民主的で分権的な公務員制度改革を求め、公務員連絡会に結集して秋季闘争に取り組むこととした。以下は報告と勧告の全文。


平成十七年八月十五日
衆議院事務総長 駒崎 義弘殿
参議院議長 扇  千景殿
内閣総理大臣 小泉純一郎殿
人事院総裁 佐藤壮郎

 人事院は、国家公務員法、一般職の職員の給与に関する法律等の既定に基づき、一般職の職員の給与について別紙第1のとおり報告し、併せて給与の改定について別紙第2のとおり勧告するとともに、公務員人事管理について別紙第3のとおり報告する。
 この勧告に対し、国会及び内閣が、その実現のため、速やかに所要の措置をとられるよう切望する。


別紙第1
職員の給与に関する報告

報告の概要
(官民の給与の比較)

 本院は、国家公務員の給与水準に関して、国家公務員法に定める情勢適応の原則に基づき、毎年、公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行ってきている。近年の公務員給与は、民間企業の厳しい経営環境を反映して、平成十一年以降五年連続で特別給(ボーナス)の年間支給月数が対前年比でマイナスとなり、平成十四年以降二年連続で月例給の引下げとなったが、昨年は、景気の回復傾向を背景として、月例給、特別給ともに、前年の水準が維持された。
 本院において行った本年の春季賃金改定後の民間企業の給与実態調査おいては、ベースアップを実施している事業所は昨年より少なくなっていたが、定期昇給の停止、賃金カットのような厳しい給与抑制措置を実施している事業所も減少していた。一方、本年四月に支払われた国家公務員の給与水準は、昨年より若干増加しており、本年四月に支払われた月例給について行った官民の比較の結果では、公務員の月例給が民間を千三百八十九円(〇・三六%)上回っていることが明らかとなったことから、これに見合うよう月例給の引下げを行うこととした。
 月例給の配分については、本年の官民の給与較差の大きさ等からみて、月例給の中心である俸給の改定を基本とすることとし、併せて扶養手当を引き下げることとした。
 一方、特別給については、民間の支給状況をより迅速に反映させるため、昨年から民間の特別給の前年冬と当年夏の一年間の支給実績を調査することとしているが、本年は、昨年冬からの民間企業における特別給の好調な支給状況を反映して、民間の年間支給割合が公務員の年間支給月数を上回ることとなったことから、〇・〇五月分特別給の引上げを行うこととした。
 これらにより、職員の年間給与は、四千円程度減少することとなる。
(給与構造の改革)
 国家公務員の給与については、国家公務員法と一般職の職員の給与に関する法律により、職務給の原則、成績主義に則って実施すべきものとされているが、現実には、長期継続雇用を前提として、年功的な給与処遇がなされてきた。近年、民間企業においては、限られた人件費を従業員の職務や成果に応じて適切に配分しようとする能力主義、成果主義等による賃金制度が浸透してきており、公務においても、厳しい財政事情の下、民間と同様に、給与の年功的上昇を抑制し、職務・職責と実績を十分に反映し得る給与システムを構築することが不可欠となっている。
 また、国家公務員の俸給は、東京を含む全国平均を基礎としてその水準が設定されていることから、地方においては、国家公務員の給与が地域の民間企業、特に地場の民間企業の賃金水準より高くなっている地域が生じており、現在のような俸給と地域給の配分の在り方については、抜本的な見直しが求められてきている。
 これらの国家公務員の給与を巡る諸問題について、本院は、昨年夏の勧告時に検討の方向性を示した上で、さらに、民間給与の実態を調査し、全国各地で有識者、企業経営者などから広く意見を聴取するとともに、各府省の人事当局や職員団体からきめ細かく意見聴取を行いつつ検討を進めてきた。
 その結果、本年は、俸給制度、諸手当制度全般にわたる改革について、具体的な措置の内容、完成までのスケジュール等の全体像を示すとともに、平成十八年四月から実施すべき法律事項について勧告することとした。改革は、地域間の配分の適正化を図るための俸給水準の引下げ、年功的な給与上昇を抑制する給与構造への転換などを柱としており、具体的な措置の概要は、次のとおりである。
(1)俸給水準の引下げ、地域手当の支給等
 国家公務員の基本給(俸給)は、民間の全国平均の水準を基礎に定められているため、民間賃金が全国平均より低い地域では、公務員の給与が地場企業の賃金より高くなっている。このため、地域ごとの民間賃金水準の格差を踏まえ、全国共通に適用される俸給表の水準を平均四・八%引き下げる。
 一方、民間賃金が高い地域には、三%から最大一八%(現行調整手当は最大一二%)までの地域手当を支給するとともに、転勤のある民間事業所の賃金水準との均衡を考慮して、広域にわたる異動を行う職員に対しては、広域異動手当を支給する。
(2)中高齢層給与の抑制(給与カーブのフラット化)
 俸給表の水準を平均四・八%引き下げることとするが、中高齢層については民間の中高齢層の給与水準との均衡を考慮して更に二%程度の引下げを行う一方で、若年層については引下げを行わないことによって、給与カーブのフラット化を進めることとした。さらに、課長、課長補佐、係長等のそれぞれの職務・職責の違いを重視した俸給表への転換を図るよう、職務の級間の俸給水準の重なりを縮減するとともに、職務の級と役職段階との関係を再整理し、職務の級の統合、新設を行う。
(3)勤務実績に基づく処遇の推進(勤務実績に応じた昇給制度の導入、ボーナスへの勤務実績の反映の拡大)
 現行の普通昇給では、ほとんどの職員が一年に一号俸昇給していることに加え、特別昇給についても、持ち回り的な運用になりがちであるため、昇給への勤務実績の反映が十分行われているとは言い難い状況となっている。このため、現行の俸給表の号俸を四分割することにより、弾力的な昇給幅を確保した上で、普通昇給と特別昇給を勤務実績の評価に基づく昇給に統合し、勤務実績を適切に反映できるよう整備を図ることとした。具体的には、勤務成績が「良好」を超える区分については分布率を設定するとともに、「良好」未満の区分についてはその判断の基準を示すなどして、各府省において実効ある運用が行われるようにすることとした。
 また、ボーナス(勤勉手当)についても、支給額に勤務実績をより反映し得るよう、「優秀」以上の成績区分の人員分布を拡大する。
 こうした給与上の仕組みは、現在政府で検討中の新たな人事評価制度が実施されるまでの間は、当面の措置として、現行の各府省における勤務成績の判定手続を前提として運用することとなるが、勤務実績を的確に反映させるためには、各府省の人事当局と職員団体等との間で十分な話合いが行われることが望ましく、本院としても、実効性ある評価が行われるよう、そうした取組を支援していくこととする。
(4)スタッフ職活用のための環境整備
 行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、高度の専門能力を持つスペシャリストがスタッフとして活躍するとともに、在職期間の長期化への対応の観点から、職員が専門的な能力・経験を活かしつつ多様な働き方ができるような環境を整備することが必要である。そのため、スタッフ職職員の適切な給与処遇が行えるよう専門スタッフ職俸給表を新設する。各府省においては、複線型人事管理の具体化、専門スタッフ職にふさわしい職務の整備等、早急にその詰めを行っていく必要がある。
(5)その他の見直し
 以上のほか、@これまでの俸給月額の定率制としていた俸給の特別調整額(管理職手当)の職務・職責に応じた定額化、A本府省における職務の特殊性・困難性、人材確保の必要性に配慮した本府省手当の新設を行う。
(6)実施時期等
 (1)の俸給水準の引下げは、平成十八年四月一日から実施する。俸給の引下げについて、激変緩和措置を講ずる一方で、新たな改善措置に要する原資を確保するため、同日から四年間、昇給幅の抑制を行う。これらの措置により、(1)から(5)に示した新たな手当等は、平成二十二年までの間に順次実施することとする。

T 給与勧告の基本的考え方


1 給与勧告の意義と役割
 給与勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものであり、従来より、国家公務員の給与水準の適正化に加えて、給与制度の見直しについても勧告を行っている。
 公務員給与については、納税者である国民の理解と納得を得る必要があることから、本院が労使当事者以外の第三者の立場に立ち、官民給与の精確な比較を基に給与勧告を行うことにより、適正な公務員給与が確保されている。勧告が実施され、適正な処遇を確保することは、労使関係の安定を図ることにより、能率的な行政運営を維持する上での基盤となっている。

2 民間準拠の考え方
 本院は、国家公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行っている。比較対象となる民間企業の規模については、会社組織で働く民間従業員の過半数をカバーしている企業規模百人以上とするとともに、比較方法についても、単純な官民給与の平均値によるのではなく、主な給与決定要素である役職段階、年齢、勤務地域などを同じくする者同士を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行った上で、仮に公務員に労働基本権があればどのような結果をとなるのか等を念頭に置きつつ、社会経済情勢全般の動向等を踏まえながら勧告を行ってきている。
 民間準拠を基本に勧告を行う理由は、国家公務員も勤労者であり、勤務の対価として適正な給与を確保することが必要であるが、その給与は、民間企業と異なり、市場原理による決定が困難であることから、労使交渉等によってその時々の経済・雇用情勢等を反映して決定される民間の給与に準拠して定めることが最も合理的であり、職員をはじめ広く国民の理解と納得を得られる方法であると考えられることによる。

3 公務員給与を取り巻く諸情勢
(1)最近の賃金・雇用情勢等
ア 民間賃金指標の動向
 「毎月勤労統計調査」(厚生労働省、事業所規模三十人以上)によると、本年四月の所定内給与は、パートタイム労働者を除く一般労働者の増加もあって、昨年四月に比べ〇・八%増加している。また、所定外給与は〇・五%増加しており、これらを合わせた「きまって支給する給与」は〇・八%の増加となっている。一般労働者では、中高齢層の増加なども影響して、所定内給与及びきまって支給する給与は、それぞれ〇・八%の増加となっている。
 なお、同調査によると、本年四月の常用労働者に占めるパートタイム労働者の割合は、昨年四月に比べると、〇・二〇%ポイント減少して二〇・九三%となっている。

イ 物価・生計費
 本年四月の消費者物価指数(総務省、全国)は、昨年四月と同水準となっており、勤労者世帯の消費支出(同省「家計調査」、全国)は、昨年四月に比べ名目三・〇%の減となっている。
 本院が家計調査を基礎に算定した本年四月における全国の二人世帯、三人世帯及び四人世帯の標準生計費は、それぞれ一六六、二七〇円、二〇一、四二〇円及び二三六、五七〇円となっている。また、「全国消費実態調査」(同省)を基礎に算定した同月における一人世帯の標準生計費は、一二九、六五〇円となっている。

ウ 雇用情勢
 本年四月の完全失業率(総務省「労働力調査」)は、昨年四月の水準を〇・三ポイント下回り、四・四%(季節調整値)となっている。
 また、本年四月の有効求人倍率及び新規求人倍率(厚生労働省「一般職業紹介状況」)は、昨年四月に比べると、それぞれ〇・一六ポイント、〇・一八ポイント上昇して〇・九四倍(季節調整値)、一・四二倍(同)となっている。

(2)各方面の意見等
ア 有識者との懇話会、中小企業経営者等との意見交換等
 本院は、公務員給与の改定を検討するに当たって、東京のほか全国四十都市において有識者との懇話会、中小企業経営者等との意見交換を行うこと等により、広く国民の意見の聴取に努めた。
 各界との意見交換においては、給与構造の改革の内容や現行の官民比較の方法について、おおむね妥当との意見が多かったが、国家公務員は全国で同じ仕事をしているので、給与水準に地域差を設ける必要はないのではないか、公務員の仕事を評価して、給与に反映させることは難しいのではないか等の意見も見られた。
 また、本院が委嘱している「国家公務員に関するモニター」(五百人)においては、公務員の給与を決定するに当たって重視すべき要素として、「個々の職員の仕事の実績や成果」(五四・七%)、「就いている仕事の種類や内容」(三三・八%)とする意見が高い割合となっている。

イ 公務員給与に関する要請等
 公務員給与に関して、本年六月に、政府から「人事院において、民間企業における賃金体系の改革の動向を踏まえ、公務員の給与体系の見直しを進める」よう、本院に対して要請が行われている。また、同月、財政制度等審議会から「現在人事院において、地域における民間賃金の実情をより具体的に反映し、職務・職責や実績を的確に反映すべく、給与構造の基本的見直しが検討されている。早急にその結論を得、具体化を図るべきである。」との意見が出された。

U 官民の給与較差に基づく給与改定

1 官民の給与の比較
(1)職員の給与の状況
 本院は、「平成十七年国家公務員給与等実態調査」を実施し、給与法適用の常勤職員の給与の支給状況等について全数調査を行った。その結果、本年の民間給与との比較対象である行政職俸給表(一)適用者(一六九、六九七人、平均年齢四十・三歳)の本年四月における平均給与月額は三八二、〇九二円となっており、医師、刑務官等を含めた職員全体(二八九、九四九人、平均年齢四十一・〇歳)では四〇〇、九六七円となっている。
 また、行政職俸給表(一)適用者の平均給与月額を組織区分別にみると、本府省四二四、四四一円(平均年齢三十九・一歳)、管区機関三九六、三四〇円(同四十一・三歳)、府県単位機関三八二、二四二円(同四十二・二歳)、その他の地方支分部局三五九、五〇六円(同三十九・七歳)、施設等機関等三五六、三九一円(同三十八・三歳)となっている。

(2)民間給与の調査
ア 職種別民間給与実態調査
 本院は、企業規模百人以上で、かつ、事業所規模五十人以上の全国の民間事業所約四〇、〇〇〇(母集団事業所)のうちから、層化無作為抽出法によって抽出した八、二八〇の事業所を対象に、「平成十七年職種別民間給与実態調査」を実施した。調査では、公務の行政職俸給表(一)と類似すると認められる事務・技術関係二十二職種の約二十九万人及び研究員、医師等五十四職種の約六万人について、本年四月分として個々の従業員に実際に支払われた給与月額等を実地に詳細に調査した。また、給与の抑制措置の状況や、各企業における雇用調整の実施状況等について、本年も引き続き調査を実施した。
 なお、この職種別民間給与実態調査の対象となる事業所については、給与改定の状況等にかかわらず無作為に抽出しており、ベースアップの中止・ペースダウン、定期昇給の停止、賃金カットなどの給与抑制措置を行った事業所の給与の実態も的確に把握するよう設計されている。
 職種別民間給与実態調査の調査完了率は、調査の重要性に対する民間事業所の理解を得て、本年も九一・〇%と極めて高く、調査結果は広く民間事業所の給与の状況を反映したものとなっている。

イ 調査の実施結果等
 本年の職種別民間給与実態調査の主な調査結果は次のとおりである。
(ア)本年の給与改定の状況
(初任給の状況)
 新規学卒者の採用を行った事業所は、大学卒で六〇・一%(昨年五九・三%)、高校卒で二六・九%(同二六・三%)と昨年に比べて増加しているが、そのうち大学卒で八五・八%(同八四・一%)、高校卒で八五・八%(同八六・一%)の事業所で、初任給は据置きとなっている。

(給与改定の状況)
 別表第一に示すとおり、民間事業所においては、一般の従業員について、ベア慣行のない事業所の割合が五六・四%(昨年三七・七%)と大幅に増加しており、ベースアップを実施した事業所の割合は二〇・五%(同二五・三%)にとどまっている。民間事業所における地域別の給与改定の状況をみると、別表第二に示すとおり、一般の従業員について、ベースアップを中止した事業所の割合は北海道・東北地域の三〇・九%から近畿地域の一八・三%までとなっており、地域別にバラツキが生じている。
 また、別表第三(略)に示すとおり、一般の従業員について、定期に行われる昇給を実施した事業所の割合は七九・六%(昨年七一・〇%)となっており、昨年に比べて増加している。

(賃金カットの状況)
 別表第四(略)に示すとおり、賃金カットを実施した事業所は、一般の従業員では〇・八%(昨年一・三%)、課長級では一・五%(同二・二%)となっており、昨年に比べて減少している。

(年俸制の導入状況)
 別表第五(略)に示すとおり、年俸制を導入している事業所は、課長級では一八・二%(昨年一六・二%)、部長級では二二・九%(同二三・五%)となっている。

(イ) 雇用調整の実施状況
 別表第六(略)に示すとおり、民間事業所における雇用調整の実施状況をみると、平成十七年一月以降に雇用調整を実施した事業所の割合は三一・五%となっており、昨年(三五・三%)より減少している。雇用調整の措置内容としては、業務の外部委託・一部職種の派遣社員等への転換(一二・三%)、部門の整理・部門間の配転(一一・五%)、採用の停止・抑制(一〇・六%)、残業の規制(六・七%)、転籍出向(五・九%)の割合が比較的高く、希望退職者の募集(三・二%)、正社員の解雇(一・二%)、一時帰休・休業(〇・四%)などの厳しい措置も引き続き実施されている。

(3) 官民給与の比較
 ア 月例給
 (官民給与の較差)

 本院は、国家公務員給与等実態調査及び職種別民間給与実態調査の結果に基づき、公務においては行政職俸給表(一)、民間においては公務の行政職俸給表(一)と類似すると認められる職種の者について、給与決定要素を同じくすると認められる者同士の四月分の給与額を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行った。その結果、別表第七に示すとおり、公務員給与が民間給与を一、三八九円(〇・三六%)上回った。
 なお、本年より、官民比較を行う給与種目について、実費弁償としての性格が強まった通勤手当を比較給与種目から外し、民間における役付手当の実態等を踏まえて俸給の特別調整額を比較給与種目に加えることとした。

(諸手当)
 民間における家族手当の支給状況を調査した結果は、別表第八(略)に示すとおりであり、職員の扶養手当の現行支給額と比較すれば、職員の扶養手当の支給額が民間の家族手当の支給額を上回っている。

 イ 特別給
 本院は、職種別民間給与実態調査により民間の特別給(ボーナス)の過去一年間の支給実績を精確に把握し、これに職員の特別給(期末手当・勤勉手当)の年間支給月数を合わせることを基本に勧告を行っている。また、民間の支給状況をより迅速に公務員給与に反映させるため、昨年から、民間の特別給の前年八月から当年七月までの一年間の支給実績を調査し、その結果に基づいて官民比較を行っている。
 本年の職種別民間給与実態調査の結果、昨年八月から本年七月までの一年間において、民間事業所で支払われた特別給は、別表第九(略)に示すとおり、所定内給与月額の四・四六月分に相当しており、職員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(四・四〇月)を上回っている。

2 本年の給与の改定
(1) 改定の基本方針

 前記のとおり、本年四月時点で、公務員の月例給与が民間給与を一、三八九円(〇・三六%)上回っていることが判明した。これは、大企業を中心とした企業収益の改善にもかかわらず、ベースアップを実施した事業所が少なくなっていること、地域別の経済情勢は様々であり、地域別の給与改定の状況も異なっていること、平均年齢の上昇等により国家公務員の給与が増加したことなどによるものと考えられる。
 給与勧告を通じて官民給与の精確な比較により適正な公務員給与水準を維持・確保することは、労働基本権制約の代償措置として、これまで各方面から強く求められているものであり、このような機能は民間の給与水準が上がる場合だけでなく、下がる場合も同様に働くべきものである。
 本年においては、公務員給与が民間給与を上回ることとなったが、本院としては、官民の給与較差の大きさ等を考慮し、これに見合うよう月例給の引下げ改定を行うことが適当であると判断した。
 月例給の改定については、基本的な給与である俸給月額の引下げ改定を行うとともに、扶養手当を引き下げることとした。
 特別給については、職種別民間給与実態調査の結果に基づき、昨年冬と本年夏の一年間の民間の特別給の支給割合に見合うよう、〇・〇五月分引き上げる必要があると判断した。

(2) 改定すべき事項
ア 俸給表
(行政職俸給表(一))

 官民の給与比較を行っている行政職俸給表(一)については、官民の給与較差の大きさ等を考慮しつつ、すべての職務の級の俸給月額について同率の引下げ改定を行うこととする。
 この改定により、俸給表の俸給月額(本年四月現在平均三二八、九七六円)は、平均一、〇五四円(〇・三%)の減となる。
 なお、再任用職員の俸給月額についても、再任用職員以外の職員の俸給月額の改定に準じた改定を行う。

(行政職俸給表(一)以外の俸給表)
 行政職俸給表(一)以外の俸給表についても、行政職俸給表(一)との均衡を基本に、所要の改定を行うこととする。
 指定職俸給表については、従来から参考としている民間企業の役員報酬との間の差が拡大していると認められるものの、公務部内の均衡に配慮し、行政職俸給表(一)と同程度の引下げ改定を行う。

イ 扶養手当
 民間における家族手当の支給状況をみると、配偶者及び子に対する手当額がそれぞれ減少しているが、子を扶養する職員の家計負担の実情を考慮して、配偶者に係る支給月額を五〇〇円引き下げることとする。
 この改定により、行政職俸給表(一)の職員の扶養手当の平均受給額一二、一四二円は、二一四円(一・八%)の減となる。

ウ 期末手当・勤勉手当等
 期末手当・勤勉手当については、昨年八月から本年七月までの一年間における民間の特別給の支給割合との均衡を図るため、支給月数を〇・〇五月分引き上げ、四・四五月分とすることとする。支給月数の引上げ分は、民間の特別給の支給状況等を参考に勤勉手当に割り振ることとし、本年度については、十二月期の勤勉手当を引き上げ、平成十八年度以降においては、六月期及び十二月期の勤勉手当が均等になるよう配分することとする。
 また、指定職俸給表適用職員の期末特別手当、再任用職員の勤勉手当及び期末特別手当、任期付研究員及び特定任期付職員の期末手当についても同様に支給月数を引き上げ、平成十八年度以降においては、再任用職員の期末特別手当について期別の再配分を行うものとする。

エ その他
 医師に対する初任給調整手当について、所要の改定を行う。
 委員、顧問、参与等の手当について、指定職俸給表の改定状況を踏まえ、支給限度額に関する所要の改定を行う。
 なお、俸給の月額等の引下げに伴い、調整手当など俸給の月額等を算定基礎としている諸手当は、はね返りにより行政職俸給表(一)の職員の場合、平均で一一八円の減となる。

(3) 改定の実施時期等
 本年の官民の給与較差に基づく給与改定は、公務員の給与水準を引き下げる内容の改定であるため、この改定を実施するための法律の規定は、官民給与を均衡させるための所要の調整措置を講じた上、遡及することなく施行日からの適用とする。なお、減額改定に伴う日割計算などの事務の複雑化を避けるため、この改定は、公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときは、その日)から施行することとする。なお、給与構造の改革に伴う給与改定については、Vに示すとおり、平成十八年四月一日から段階的に実施することとする。
 官民給与は四月時点で比較し均衡を図ることとしており、遡及改定を行わない場合であっても、四月からこの改定の実施の日の前日までの期間に係る官民較差相当分を解消させる観点からの所要の調整を行うことが情勢適応の原則にもかなうものである。
 この調整については、施行後速やかに調整が行われる必要があること、弾力的な調整を行う場合は月例給より特別給としての期末手当が適当と考えられることなどから、本年十二月期の期末手当の額において、本年四月からこの改定の実施の日の前日までの間の官民較差相当分について制度的に調整するよう所要の措置を講ずることとする。具体的には、職員が本年四月に受けた官民比較の基礎となる給与種目の給与額の合計額に較差の率(△〇・三六%)を乗じて得た額に、本年四月からこの改定の実施の日の属する月の前月までの月数を乗じて得た額と、本年六月期の特別給に較差の率を乗じて得た額を合算した額を基にして調整を行うこととする。
 なお、俸給表の切替えに伴う調整措置としては、改定後の俸給表適用の日前に職務の級に異動があった職員等の号俸等について逆転防止のために必要な調整を行う。

(4) その他の課題
ア 特殊勤務手当の見直し
 特殊勤務手当については、平成十五年の勧告時の報告において、実態等を精査して見直すことを表明して以来、業務の外部委託の進展等により手当の支給実績が極めて低いもの、技術の進歩、社会情勢の変化等により特殊性が薄れていると考えられるものを中心に見直しを進めているところである。
 この結果、平成十六年に六手当九業務、平成十七年に九手当十四業務の見直しを行ったところであるが、今後も引き続き手当ごとの業務の実態等を精査して所要の見直しを図るための検討を進めることとする。

イ 官民比較方法の見直し
 官民比較における比較給与種目については、本年の官民比較より、通勤手当を比較給与種目から外し、俸給の特別調整額を比較給与種目に加えることとした。
 また、民間企業における人事・組織形態の変化に対応できるように、昨年来、民間企業におけるスタッフ職の従業員、非正規社員及び派遣労働者の在職実態の調査を行ってきた。
 その結果、スタッフ職の従業員については、各事業所において、官民比較の対象となる事務・技術関係職種の従業員が、各役職段階に二割から三割程度在職しており、また、スタッフ職の従業員は、ライン職の従業員と同様の雇用形態にあることから、引き続き、比較対象とする場合の要件等について検討していくこととする。一方、非正規社員及び派遣労働者は、短期雇用を前提に、時給制が多く、諸手当の支給割合が低いなど、雇用形態、賃金形態が常勤職員とは明確に異なっていることから、官民比較の対象とすることは困難である。
 官民比較の方法については、今後とも、民間企業の実態等を的確に把握していくほか、学識経験者の研究会を設けて、検討を行っていくこととする。

ウ 独立行政法人等の給与水準の把握
 本院は、昨年度から各主務大臣及び総務省で行っている独立行政法人の給与水準の公表において必要な協力をしており、今年度からは、新たに公表対象となった独立行政法人国立病院機構等並びに国立大学法人及び大学共同利用機関法人の給与についても、国家公務員との比較対象職種を拡大して比較指標等を作成・提供しているところである。
 本院としては、専門機関として、独立行政法人等における給与水準のあり方等の検討において、今後とも適切な協力を行うこととする。

V 給与構造の改革

1 基本的な考え方
(1) 改革の背景

 戦後の公務員給与は、制度的には、職務・職責に応じた給与を支給することを基本とし、成績に応じて昇給・昇格やボーナスの支給を行うものとしてきたが、現実には、経済成長に伴う給与水準の上昇の下、年功的な処遇が行われてきた。
 近年、長期低迷が続く経済環境の下で、民間企業では経営の合理化・効率化が求められ、その一環として仕事や成果に応じた賃金制度を導入する動きが広がっている。同時に、新たな事業への弾力的な人材配置の必要などから、仕事や実績を的確に反映できる賃金制度へ改める動きも見られる。
 公務においても、厳しい財政事情の下、職員の士気を確保しつつ、能率的な人事管理を推進することが求められている。国家公務員の任用システムは、継続的、安定的な行政を維持するため、多様な職務経験を経ながら職務遂行に必要な専門能力等を育成することを基本とした長期雇用を原則とするものになっている。しかし、このような長期雇用が年功的な給与処遇につながらないよう、年功的な給与上昇要因を抑制した給与システムを構築するとともに、個々の職員の給与決定についても職務・職責や勤務実績に応じた適切な給与を確保していく必要がある。
 公務員給与は、職員の最も重要な勤務条件であり、その制度の基本は、各府省人事当局、職員団体等の意見を十分聴取した上で、民間との均衡を考慮して整備していく必要がある。また、新しい公務員給与のシステムが国民の目から見て合理性・納得性を持つものとなっていることが重要である。このため、今回の見直しに当たり、本院としては、民間企業の賃金制度及び民間賃金の水準について十分調査・検証を行いつつ、公務部外の有識者の意見を聴取するとともに、公務部内の関係者とも十分意見交換を行った。

(2) 改革の必要性
ア 地域における公務員給与水準の見直し
 国の行政は全国各地で等しく行われていることから、その行政を担う国家公務員の基本的な給与は全国共通の俸給表に基づいて支給されている。現在、国家公務員に適用されている俸給表の水準は、東京都特別区などの高い民間賃金を含んだ全国平均の官民の給与較差に基づいているため、民間賃金の低い地域では公務員給与水準が民間賃金を上回るという状況が生ずることとなっている。全国共通に適用される俸給表を維持する一方で、このような状況を改めるためには、地域ごとの民間賃金水準の格差を踏まえ、地域の民間賃金がより適切に反映されるよう、俸給水準の引下げを行い、民間賃金水準が高い地域では地域間調整を図るための手当を支給するなどの措置を講ずる必要がある。

イ 年功的な俸給構造の見直し
 現行の俸給表は、上位の職務の級に昇格しないとしても俸給が一定の水準まで到達するよう配慮した号俸設定が行われているため、上下の職務の級の間における水準の重なりが極めて大きな構造となっている。加えて、最高号に達した職員も良好な職務成績を挙げれば特別に最高号俸を超えた俸給月額に決定し得る仕組み(いわゆる「枠外昇級制度」)となっており。年功的な給与上昇を許容するものとなっている。
 俸給は、生活給の側面も有しているが、基本的には職務・職責に応じたものとして支給されるべきものである(職務給の原則)。そのため、職務の級間の水準の重なりの縮小、最高到達水準の引下げによる給与カーブのフラット化、いわゆる枠外昇給制度の廃止などの措置を講ずる必要がある。

ウ 勤務実績に基づく処遇
 現行の特別昇給制度や勤勉手当制度は勤務実績を反映して行うべきものとされているが、成果が数字に現れにくいという公務の特性や、チームワークが重視される職場風土の下で、職員を評価するシステムや技法が十分に定着してこなかった。このため、いわゆる持ち回り的運用の指摘が行われるなど、勤務実績の給与への反映は、十分とはいえない状況にある。
 これに対しては、新たな人事評価制度を早急に構築していく必要があるが、それまでの間、当面、現行の各府省における給与決定のための勤務成績の判定の運用をより的確に行うことを前提として、新たな人事評価制度における活用も視野に入れつつ、昇給や勤勉手当に関し、成績判定結果を的確に反映し得る給与制度を整備しておく必要がある。また、いわゆる枠外昇給制度の廃止も踏まえ、五十五歳昇給停止措置について見直しを行う必要がある。

エ スタッフ職活用のための環境整備
 行政の多様化、複雑・高度化に対応するためには、高度の専門能力を持つスペシャリストがスタッフとして活躍できるような環境を整備する必要がある。
 また、近年の「天下り」に対する国民の厳しい批判にこたえるとともに、高齢社会を踏まえた職場作りという視点に立って、現在、政府全体として早期退職慣行の是正、在職期間の長期化への取組が進められているが、高い士気の下、在職期間の長期化を進めるためには、ライン職において適材適所の人事配置を推進することに加え、これまで培ってきた専門能力をスタッフとして活用できるようにする道を拡大するなどの複線型人事管理を導入する必要がある。現在、各府省において、複線型人事管理の具体化について検討が進められているが、本院としても、関係方面と連携を図りながら、そうしたスタッフ職職員の人材確保のため、適切な給与処遇が行えるよう専門スタッフ職俸給表を設ける必要があると考えている。

オ その他の見直し
 以上の見直しに加え、より職務・職責に応じた給与を推進するとの観点から、これまで俸給月額の定率制としていた俸給の特別調整額(管理職手当)について、管理職員の職務・職制に応じた定額制とする必要があるほか、本府省における職務の特殊性・困難性、人材確保の必要性に配慮した本府省手当を新設する必要が認められる。

2 改革すべき事項
(1) 俸給表及び俸給制度の見直し
 地域の公務員給与がそれぞれの地域の民間賃金水準をより適切に反映したものとなるよう、地域間配分を見直すこととする。
 この見直しについても、役職段階、学歴、年齢などの給与決定要素を合わせて官民の給与を比較するラスパイレス方式により行うことが適当であり、また、サンプル数の制約等によりこの方式が技術的に可能な最小の単位は地域ブロックであることから、官民の給与格差のマイナス幅が最も大きい地域の結果を参考として、全国共通の俸給表の水準を引き下げることとする。また、年功的な給与上昇を抑制し、職務・職責に応じた給与とするため、俸給表の級構成、号俸構成及び給与カーブの是正を行うとともに、昇級・昇格制度についても見直しを行う。

ア 行政職務俸給表(一)の見直し
(ア) 俸給水準の是正
 平成十五年、平成十六年及び平成十七年の地域別の官民の給与格差の三年平均値を参考として、本年の改定を行った後の俸給表の水準を全体として、平均四・八%引き下げる(平成十七年の地域別の官民の給与格差については、別表第十参照)。その際、中高齢層については、公務員給与が民間給与を七%程度上回っていることを踏まえ、更に二%引き下げる。一方、若年の係員層については、俸給水準の引き下げは行わないこととする。
 具体的には、現行四級以上の各級について、民間水準を上回る傾向が見られ始める三十歳代半ばの職員に適用されている号俸以上の号俸については、四・八%の水準引下げに加え、更に最大二%程度引き下げる。他方、現行四級・五級等の前半号俸の水準引下げを四・八%未満に抑制する。現行一級・二級及び三級の前半号俸については、引下げを行わない。現行三級の後半号俸については、現行四級以上の水準引下げを踏まえ、必要最小限の引き下げを行う。
(イ) 級構成の再編
 次のような級構成の見直しを行い、現行の十一級制から十級制の級構成とする。
@ 職務・職責の同質化が進み、人事管理上も別々の職務の級として存続させる必要性の少なくなった現行一級及び二級(係員級)並びに現行四級及び五級(係長級)をそれぞれ統合する。
 なお、現行一級及び二級の統合に伴い、U種採用職員及びV種採用職員はともに新一級に決定されることとなるが、その初任給については、これまでと同様の号俸差を設けることとする。
A 近年、本府省課長の中には、複数の部局課の業務の調整など従来の本府省課長の職責を上回る職務が生じてきており、これらの職務を適正に評価するため、新たな職務の級を設ける。
(ウ) 号俸構成等
@ 現行の一号俸当たりの昇給額では額が大きく、きめ細かい勤務実績の反映を行うことが困難であることから、現行の号俸を四分割する。
A 現行の俸給表では、昇格しないとしても一定の水準に達することができるよう号俸設定が行われているため、上下の職務の級間で水準の重なりが大きくなっている。職務の級間の水準の重複を減少させるため、初任の職務の級を除く現行四級以上の各職務の級について、いわゆる一号上位昇格制度を適用した結果、現在在職者がいないか、在職実態が極めて少ない初号等の号俸をカットする。
B 現時点における最高号俸を超える者の在職実態を踏まえ、枠外在職者が極めて少ない職務の級を除き、当該職務の級における枠外在職者の少なくとも過半数が最高号俸までの対象となるよう、現行の三号俸に相当する範囲内で号俸の増設を行う。
(エ) 中途採用者の初任給決定の制限の見直し
 民間経歴等を有する者の初任給決定については、公務部内の長期勤続者を優遇する観点等から、五年以内の民間経験は一年につき一号俸とするものの、五年を超える民間経験は一・五年を一号俸換算すること、上位の職務の級の初号の水準を上回らないこと(いわゆる「初号制限」)などの制限が設けられてきた。今般の見直しでは、有用な民間経験を持つ者の初任給を公務に直採用された者と同様に決定することが可能となるよう、これらの制限を見直すこととする。
(オ) 昇格時の号俸決定方法
 昇格時の号俸決定は、昇格時の職務・職責の高まりを給与上評価するものであることから、現行と同様の昇格メリットを確保するとともに、どの号俸からでも一定の昇格メリットを享受できるよう、昇格前の俸給月額に対応する基幹号俸(各職務の級の初号を起点として四号俸ごとに置かれる号俸)の俸給月額に職務の級別に一定額を加算した額に対応する上位の職務の級の基幹号俸に所要の号俸数を加算した号俸の俸給月額に決定する方法に改める。具体的には、俸給表別、職務の級別に、昇格対応号俸表を別に定めることとする。
(カ) 級別資格水準表の取扱い
 級別資格基準表については、職務の級の再編に応じて修正した上で、昇格に当たって必要な勤務成績を総合的に判断するための期間と位置づけて、当面存置する。なお、勤務成績が極めて優秀な場合の必要経験年数等の特例も、当面存置する。

イ 指定職俸給表の見直し
 指定職俸給表についても、行政職俸給表(一)との均衡を考慮し、その水準を現行の行政職俸給表(一)十一級と同程度引き下げるとともに、現在在職者がいない一号俸から三号俸までの号俸をカットする。

ウ 行政職俸給表(一)及び指定職俸給表以外の俸給表の見直し
 行政職俸給表(一)及び指定職俸給表以外の俸給表については、行政職俸給表(一)との均衡を基本とし、各俸給表毎に適用される各職種における運用実態を考慮して、職務の級及び号俸構成、水準是正などの見直しを行う。
 なお、行政職俸給表(一)を含め、各俸給表における級構成及び平均改定率をまとめると、別表第十一及び別表第十二(別表は略)のとおりとなる。

エ 委員、顧問、参与等の手当
 委員、顧問、参与等の手当については、指定職俸給表の改定状況を踏まえ、支給限度額の引下げを行う。

オ 再任用職員の俸給月額並びに任期付研究員俸給表及び特定任期付職員俸給表の見直し
 再任用職員の俸給月額については、基本的には、当該俸給月額が設定されている各俸給表の各職務の級ごとに、同程度の水準にある再任用職員以外の職員の俸給月額の改定率に準じて引下げを行うが、号俸カットにより同程度の水準にある再任用職員以外の職員の俸給月額がなくなる場合には、号俸カット後の新初号の俸給月額とする。しかし、その額が現行の再任用職員の俸給月額を上回る場合には、当面、現行の俸給水準をそのまま据え置くこととする。
 任期付研究員俸給表については、研究職俸給表の改定率に準じて、特定任期付職員俸給表については、行政職俸給表(一)の改定率に準じて、それぞれ引き下げを行う。

カ 俸給の調整額の見直し
 俸給の調整額については、俸給表の水準是正との整合性を確保する必要があり、その調整基本額は、現行の算定基礎とされている俸給表の各職務の級の号俸(原則として中位号俸)に相当する新俸給表の各職務の級の号俸の俸給月額の三%に相当する額とする。

(2) 地域手当及び広域異動手当の新設
ア 地域手当の新設
 現行の調整手当制度は、それまで物価及び生計費に着目した地域間調整を行っていた暫定手当制度を賃金、物価及び生計費の地域差に着目した制度に転換するため、昭和四十二年に措置された。
 今般の改革においては、民間賃金の地域間格差が適切に反映されるような地域給制度を導入する必要があることから、これまでの調整手当に替えて、物価等も踏まえつつ、主に民間賃金の高い地域に勤務する職員に対し、地域手当を支給することとする。
(ア) 支給地域の指定
 地域手当の支給地域の指定は、民間事業所が集積し、経済活動が安定的、継続的に行われている地域について行う趣旨で、人口五万人以上の市を単位として行う。また、中核的な都市が支給地域となる場合は、当該都市と地域の一体性が認められる市町村についても支給地域に指定する。
(イ) 支給区分及び手当額
 民間賃金が特に高い東京都特別区の支給区分については、現行給与水準を維持するために必要な十八%とし、それを上限に、現行の調整手当との連続性等を考慮して、十八%、十五%、十二%、十%、六%及び三%の六区分とする。また、手当額は、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に支給割合を乗じて得た額とする。
(ウ) 指定基準
 俸給水準が四・八%引き下げられることを考慮して、厚生労働省の賃金構造基本統計調査による賃金指数(全国平均一〇〇、一〇ヶ年平均)が九五・〇以上であることを基本として、支給地域及び支給割合を定めるものとする。調整手当支給地域(指定解除のため経過措置が適用されている地域を除く。)のうち、当該基準を満たさない地域については、当分の間、適用することとされていた調整手当の支給割合と同じ割合の地域手当を支給する。
(地域手当の支給地域及び支給割合については、別表第十三参照)
 なお、このほか、調整手当を地域手当に改めることに伴う所要の経過措置を講ずるものとする。
(エ) 地域手当の特例
@ 現在、成田国際空港及び中部国際空港の区域に設置されている官署については、これらの空港が設置されている市町村に係る調整手当の支給区分にかかわらず、移転に伴う当分の間の特例措置としての調整手当が支給されている。
 これらの大規模空港については、大都市部に設置されていたものが周辺地域に移転した経緯があり、大都市との一体関係があること、当該移転時に多数の官署とともに相当多数の民間事業所も移転し、当該民間事業所の賃金は空港が設置されている市町村の民間事業所の賃金とは異なっている等の特別の事情が認められることから、これらの空港の区域に設置されている官署に在勤する職員について、特例措置として、十五%を超えない範囲内の支給割合による地域手当を支給する。それに伴い、当該官署から異動した職員については、Bの特例の対象に含めることとする。
A 民間における医師の給与水準について、地方勤務者の給与水準が高いという特性を考慮して、医療職俸給表(一)適用者等については、支給区分十五%以上の地域に在勤する場合を除き、在勤する地域にかかわらず、特例措置として十五%(現行調整手当十%)の地域手当を支給する。
 その他の官署移転の円滑な実施、移転官署の要員の確保等に資するために設けられている現行の調整手当の特例措置は、地域手当の特例措置として継続する。
B 公務においては、全国一律の行政サービスの提供、多様なキャリアを積ませることによる人材育成、昇進管理や職場の活性化といった人事管理上の要請、行政の相手方との癒着等の不正の防止、へき地勤務の公平性の確保等の観点から、転勤を伴う人事異動がかなりの頻度で行われている。
 適材適所の職員配置を行うに当たり、異動後の地域手当の支給割合が現に受けている地域手当の支給割合を下回る場合には、円滑な異動及び適切な人材配置を確保するため、その職員が受けている地域手当の支給割合を一定期間保障する必要がある。具体的には、平成十六年に見直しを行った現行の調整手当の異動保障措置と同様の措置として、異動後一年間の地域手当の支給割合は異動前の支給割合と同じ割合、二年目は一年目の支給割合の八割を特例的に支給するものとする。
(オ) 諸手当の算定基礎
 地域手当は、民間賃金水準に合わせて俸給水準の調整を行う手当であることから、現行の調整手当と同様に、諸手当(超過勤務手当、期末・勤勉手当等)の算定基礎とする。

イ 広域異動手当の新設
 国の行政においては、公正なサービスの提供、各官署における適正かつ責任ある業務執行の確保等のため、相当数の職員について広域的な異動を行う必要がある。俸給水準が民間賃金水準の低い地域の水準を考慮して引き下げられる中で、民間において転勤のある企業(他県に支店のある企業)の従業員の賃金水準が地域の平均的な民間賃金水準より高いことを考慮すれば、広域異動を行った職員に対して新たに広域異動手当を設けることが適当である。
(ア) 支給対象
 官署を異にする異動を行った職員のうち、異動前後の官署間の距離および異動前の住居から異動直後に在勤する官署までの間の距離がいずれも一定以上(六十q以上)となる職員に支給する。
(イ) 手当額
 広域異動手当は、広域異動の日から、原則として三年以内の期間について支給する。手当額は、俸給、俸給の特別調整額および扶養手当の月額の合計額に、原則として、異動前後の官署間の距離区分に応じて、六十q以上三百q未満の場合は三%、三百q以上の場合は六%を乗じて得た額とする。
(ウ) 他の手当との調整
 地域手当(地域手当の特例を含む。)が支給される場合には、広域異動手当の額が地域手当の支給額を超える場合に限り、当該超える部分の額の広域異動手当を支給する。また、特地勤務手当に準ずる手当が支給される場合には、特地勤務手当に準ずる手当の額を一定程度減ずることとする。
(エ) 諸手当の算定基礎
 広域異動手当は、民間賃金水準を考慮して俸給水準の調整を行う手当であることから、現行の調整手当と同様に、諸手当(超過勤務手当、期末・勤勉手当等)の算定基礎とする。

 なお、前記ア(エ)Bの地域手当の特例措置及び上記イの広域異動手当の実施に当たっては、各府省において行われている転勤が、公務上の必要性に基づき適切に行われるよう十分留意する必要がある。

(3) 勤務実績の給与への反映
ア 勤務成績に基づく昇給制度の導入
 現在行われている特別昇給(定員の十五%以内)と普通昇給は、ともに勤務成績が良好以上の者を対象とすることとされているが、持ち回り的運用や一律的運用がなされる傾向にあることから、両者を統合するとともに、昇給の区分を五段階(A〜E)設けることで、職員の勤務成績が昇給に適切に反映される仕組みとする。
(ア) 昇給時期の統一
 昇給時期を全府省共通の年一回、一月一日に統一し、昇給のための勤務成績判定期間を前年の一月一日から十二月三十一日までとする。
(イ) 昇給の基準
 職員を初任層、中間層及び管理職層に区分し、それぞれの職員層ごとに、昇給区分に応じた昇給号俸数を設定する。さらに、勤務成績が「特に良好」である場合に適用される昇給区分B以上については、適用される職員割合を示した分布率を運用指針として設定するとともに、判断に当たっての基本的考え方を示すこととする。その際、管理職層は、それ以外の職員層よりも「良好(標準)」の場合に適用される昇給区分Cの昇給号俸数を抑制することとする。
 勤務成績が「良好(標準)」に満たない場合の昇給区分D以下については、分布率は設定せず、該当事由に関する判断基準を別に定めることとする。
 なお、採用後の最初の昇給など勤務成績判定期間が一年に満たない者について、勤務成績を量的に判断する一つの基準として、一年間のうちの実勤務期間の割合に応じて昇給号俸数を算出することができることとする。
 あわせて、殉職、表彰等に基づく昇給については、人事管理上の必要性をふまえ、適切な時期に昇給が行えるよう別途措置する。
(ウ) 枠外昇給制度の廃止等
 年功的な給与制度を見直し、各職務の級における職務・職責の違いを明確にするため、最高号俸に達した職員も良好な勤務成績を挙げれば特別に最高号俸を超えた俸給月額に決定し得る現行のいわゆる枠外昇給制度を廃止する。これに伴い、枠外俸給月額への初任給決定が可能な仕組みについても廃止する。
(エ) 五十五歳昇給停止措置に替わる五十五歳昇給抑制措置の導入
 公務の中高齢層の給与は民間より高いこと、民間では年齢による昇給停止が五割近くあったことなどから、公務でも五十五歳昇給停止措置をとってきている。今回の見直しによって、昇給制度は厳しく勤務成績を反映させる制度に改められるとともに、中高齢層の水準を平均引き下げ率より更に二%程度引き下げ、給与カーブのフラット化を進め、かつ、いわゆる枠外昇給制度を廃止するとこにより、中高齢層の給与上昇が抑制されることとなる。このような抑制措置がとられることに加え、勤務実績に基づく昇給制度が導入されることからすれば、中高齢層についても勤務実績をより適切に給与に反映させるよう、年齢により一律に昇給停止させる制度は廃止することが適当と考えられる。しかしながら、民間企業においても年齢による昇給停止措置がある事業所の割合は、成果主義の導入等により減りつつはあるものの、なお三割を占めていること、昇給制度についても新たな人事評価制度が導入されない中での運用となることから、五十五歳以上の昇給についてはその昇給幅を通常の職員の半分程度に抑制するものとする。

イ 勤勉手当への実績反映の拡大
 勤勉手当について、勤務実績を支給額により反映し得るよう、本年の勤勉手当の支給月数の引上げ分(〇・〇五月分)の一部(六月期、十二月期にそれぞれ〇・〇一五月分)を用いて、「優秀」以上の成績区分の人員分布の拡大を図ることとする。また、新たに「特に優秀」及び「優秀」の成績区分に係る人員分布率を設定する。
(ア) 「良好(標準)」の成績率
 「良好(標準)」の成績区分に係る成績率を一〇〇分の七一(特定幹部職員にあっては、一〇〇分の九一)とする。
(イ) 分布率の設定
 「特に優秀」及び「優秀」の成績区分に係る人員分布率を設定する。

ウ 昇格基準の見直し
 昨年十二月に閣議決定された「今後の行政改革の方針」に基づいて、現在政府及び本院を含む関係者により新たな人事評価制度の試行が検討されており、本格的な昇給基準は新たな人事評価制度の導入を踏まえて改めて検討する必要がある。一方、それまでの間の暫定的な措置として、現行制度の枠内での昇格運用の改善措置を進める。
 具体的には、昇格の要件として現在運用通知で規定されている「勤務成績が良好であること」を人事院規則で明示し、昇格に係る勤務成績の判定に当たって次のような運用指針を定める。
@ 昇格に係る勤務成績判定のための基礎資料の一つとして、勤務評定記録書等とともに昇給及び勤勉手当に係る勤務成績の判定結果を活用すること。
A 昇格日前一年間において、昇給及び勤勉手当に係る勤務成績の判定基準に照らし、「良好(標準)」を下回る場合に該当するような事実がないこと。

エ 給与決定のための勤務成績の判定についての改善
 昇給、勤勉手当における勤務成績の判定については、従来から各府省において行われているところであるが、全般的に見ると、職員及び管理者の双方において評価制度に対する信頼が十分でないことから、現在の評価の在り方を見直さないまま給与に差を持ち込むことには慎重となるところが多かった。
 現在、新たな人事評価制度の構築に向けて政府全体での検討が行われているが、適切な評価に基づく勤務実績の給与への反映は、能力・実績主義の給与を一層推進し、個々の職員が高い士気を持って職務に精励することを確保していく上での必須条件であり、その実現に向けて今後とも着実に歩を進めていく必要がある。
 今回、実績反映を一層進めるための昇給制度、勤勉手当制度の見直しを実施することとするが、これらの運用に資するよう、新たな人事評価制度が導入されるまでの間の措置として、現在各府省で行われている判定手続きをベースに、その明確化を図ることにより、各府省の勤務成績判定の運用の実効を上げていくことが必要と考える。具体的には、客観的な事実の把握に基づく勤務成績の判定が適切になされるよう、各府省において運用体制を整備することとするとともに、各府省における職員の勤務成績の判定を行いやすくするとの観点から、成績上位者についての判定の尺度の例示を行うこととする。
 また、標準的な勤務成績に達しないとされる場合の判定については、新たな人事評価制度が導入されるまでの間、運用の統一性の確保の観点から、全府省共通の判定基準を示すこととする。具体的には、@懲戒処分を受けた場合、A訓告・厳重注意等各府省の内規に基づく矯正措置を受けた場合、B勤務すべき日数のうちの一定割合を勤務していない場合、C無断欠勤がある場合のほか、D職員の勤務成績が良好でないことを示す客観的な事実があり、注意や指導を受けたにもかかわらず同様の事実が繰り返し見られた場合について、昇給区分及び勤勉手当の成績率の適用において「良好(標準)」を下回る判定を行うこととする。この場合においては、具体的な事実についての適正な判断が必要となるが、Dに該当する事例の判断については、新たな人事評価制度が導入されていない中での取組となるため、当分の間、各府省があらかじめ人事院に協議して決定することとする。
 なお、昇給区分や勤勉手当の成績率の決定に関して苦情がある職員は、人事院に対し、給与の決定に関する審査の申立てを行うことができる。

(4) 専門スタッフ職俸給表の新設
 行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、高度の専門能力を持つスペシャリストがスタッフとして活躍できる給与の枠組みを準備するともに、在職期間の長期化への対応の観点から、職員が専門的な能力・経験を活かしつつ多様な働き方ができるよう、複線型人事管理の導入に向けての環境整備として、専門スタッフ職俸給表を新設する。
 専門スタッフ職俸給表の級構成は、三級構成程度の簡素なものとし、各職務の級の水準は、新たな行政職俸給表(一)の本府省の課長補佐級から課長級までの給与水準に対応する水準とする。
 なお、その具体化に当たっては、各府省における複線型人事管理の具体的な検討や、専門スタッフ職にふさわしい職務の整備と整合するよう配慮する。

(5) 俸給の特別調整額の定額化
 俸給の特別調整額について、年功的な給与処遇を改め、管理職員の職務・職責を端的に反映できるよう、民間企業において役付手当が定額化されている実態も踏まえ、定率制から定額制に移行する。

ア 手当額
 俸給の特別調整額の手当額は、俸給表別・職務の級別・支給区分別の定額制とする。行政職俸給表(一)が適用される職員の手当額については、定額化実施の際の各職務の級の人員分布の中位に当たる号俸の俸給月額に支給区分別の支給率を乗じて得た額とする。また、行政職俸給表(一)以外の俸給表が適用される職員の手当額については、行政職俸給表(一)との均衡を考慮して算定する。

イ 改善措置
 地方機関の管理職に適用される三種から五種までの手当額については、超過勤務手当が支給される管理職昇任前の職員との関係、地方機関の超過勤務手当の支給実績を考慮した改善を行った上で定額化する(三種一七・五%(現行一六%)、四種一五%(現行一二%)、五種一二・五%(現行一〇%))。

(6) 本府省手当の新設
 本府省における職務の特殊性・困難性に配慮するとともに、近年、各府省において必要な人材を本府省へ確保することが困難になっている事情を考慮し、本府省の課長補佐、係長及び係員を対象とした本府省手当を新設する(これに伴い、本府省の課長補佐に対する俸給の特別調整額(八%)は廃止する。)。

ア 支給対象
 本府省手当の支給対象は、本府省内部部局等に勤務する課長補佐、係長及び係員のうち、行政職俸給表(一)、専門行政職俸給表、税務職俸給表、公安職俸給表(一)及び公安職俸給表(二)の各俸給表が適用されている者とする。

イ 手当額
 手当額は、役職段階別・職務の級別の定額制とする。行政職俸給表(一)が適用される課長補佐(現行七級から九級)の手当額については、本府省の課長補佐に対する俸給の特別調整額(八%)の水準(俸給の特別調整額が地域手当の算定基礎とされることも考慮した水準)を維持した額とし、係長以下(現行六級以下)の手当額については、手当新設の際の各職務の級の人員分布の中位に当たる号俸の俸給月額に、係長(現行四級から六級)、係員(現行一級から三級)別にそれぞれ一定の割合を乗じて得た額とする。また、行政職俸給表(一)以外の俸給表が適用される職員に対しては、当該俸給表の各職務の級に相当する行政職俸給表(一)の職務の級の手当額を支給することとする。
ウ 諸手当の算定基礎
 本府省手当は、本府省の職務の特殊性や人材確保の必要性等に配慮した加算措置的な給与として位置づけられることから、諸手当(地域手当、超過勤務手当、期末・勤勉手当等)の算定基礎とはしない。

3 実施スケジュール
(1) 基本的な考え方

 今般の給与構造の改革は、俸給表の水準を平均四・八%引き下げる一方で、その引下げ分を原資として、地域手当等の新設等を行おうとするものである。俸給については、最大七%程度の制度改正による引下げとなることから、その基本給としての性格も考慮すれば、経過措置を設けて段階的に実施していくことが必要となる。なお、民間企業における給与体系の見直しの実例を見ても、多くの場合急激な不利益変更をせずに何らかの経過措置を講じつつ斬新的に見直しが行われていることも考慮する必要がある。
 俸給表の水準の引き下げは、平成十八年度から実施し、新制度の導入や手当額の引上げなどについては、地域手当を平成十八年度から段階的に導入するなど、逐次実施を図り、平成二十二年度までに完成させるものとする。

(2) 新制度の段階的な実施方法
ア 俸給表等の実施時期と経過措置

 新たな俸給表は、平成十八年四月一日から施行することとし、同日にすべての職員の俸給月額を新俸給表に切り替える。なお、俸給表の切り替えに伴う調整措置として、改定後の俸給表の適用の日前に職務の級に異動があった職員等の号俸等について逆転防止のために必要な調整を行う。また、俸給の調整額の改定も、平成十八年四月一日から施行する。
 ただし、上記(1)の趣旨を踏まえ、以下の方法により段階的に実施する。
@ 新たな俸給表の俸給月額が平成十八年三月三十一日に受けていた俸給月額に達しない職員に対しては、経過措置として、その達するまでの間は新たな俸給月額に加え、新旧俸給月額の差額を支給する(差額を加えた額を俸給とする。)。
A 職員の昇級について、平成十八年度から平成二十一年度までの間は、昇級幅を一号俸抑制する。
B 俸給の調整額について、新たな俸給の調整額が平成十八年三月三十一日に受けていた俸給の調整額(同日において、人事院規則九―六―二十五附則に定める額を受けていた職員にあっては、当該附則の適用がないものとした場合の額)に達しない職員に対しては、平成十九年四月一日から一定割合を減じる方法による経過措置を適用する。

イ 手当の新設等の実施方法
 新たな俸給表を段階的に導入していくことに伴い、全体の給与水準との均衡に配慮しつつ、地域間給与の在り方に関わる手当が先行して導入されるよう、諸手当の改定等についても段階的に実施する。
@ 地域手当は、平成十八年度から段階的に実施し、平成二十二年度に完成させるものとする。その間の手当額は、人事院規則で定める暫定的な支給割合を乗じて得た額とする。
A 広域異動手当は、平成十九年度から二段階に分けて導入し、俸給の特別調整額の定額化は平成十九年度から実施するものとする。定額化後の俸給の特別調整額が平成十九年三月三十一日に受けていた俸給の特別調整額に達しない職員に対しては、同年四月一日から一定割合を減じる方法による経過措置を適用する。
 専門スタッフ職俸給表及び本府省手当の新設については、給与構造の改革の段階的導入期間である平成二十二年度までの間に実施するものとして準備を進めていくこととする。
 なお、これらの改定については、実施年の前年の給与勧告において、その時点における職員の在職状況や民間企業の動向等を踏まえ、制度及び手当額について報告及び勧告を行う。

ウ 給与への勤務実績反映の実施方法
 新たな昇給制度は、平成十八年四月一日から実施する。この場合、新制度による最初の昇給は、平成十八年四月一日から同年十二月三十一日までを勤務成績判定期間として、平成十九年一月一日に行う。
 勤勉手当の勤務実績反映の拡大については、平成十八年の六月期の勤勉手当から実施する。
 昇格運用の見直しに係る措置については、平成十九年一月一日の昇給の結果や平成十八年の六月期及び十二月期の勤勉手当の結果も参考にしつつ、平成十九年四月一日から実施する。
 新たな昇給制度における勤務成績の判定に係る改善措置等の活用は、平成十八年四月一日から管理職層について先行して行い、引き続きその他の職員について行う。
 なお、今後、新たな人事評価制度が導入されることとなった場合には、必要に応じ、これらの運用等について見直しを行うこととする。

4 平成十八年度から実施すべき事項
 前記3で述べたスケジュールを踏まえ、前記2の給与構造の改革の全体像のうち、平成十八年度から実施すべき事項をまとめると、以下のとおりである。

(1) 俸給表等の改定
ア 行政職俸給表(一)

 行政職俸給表(一)については、現行の一級及び二級並びに四級及び五級を統合するとともに、十級を新設し、従来の十一級構成の俸給表を十級構成の俸給表とする。また、号俸を四分割し、初号等をカットするなど号俸構成を変更する。さらに、俸給月額について、全体を平均四・八%引き下げるとともに、中高齢層が適用される俸給月額を更に二%程度引き下げ、給与カーブのフラット化を行う。

イ 指定職俸給表
 指定職俸給表についても、行政職俸給表(一)との均衡を考慮し、その水準を現行の行政職俸給表(一)十一級と同程度引き下げるなど所要の改定を行う。

ウ 行政職俸給表(一)及び指定職俸給表以外の俸給表
 行政職俸給表(一)及び指定職俸給表以外の俸給表についても、それぞれの俸給表の特殊性を踏まえつつ、行政職俸給表(一)との均衡を基本に、級構成、号俸構成及び俸給月額について所要の改定を行う。

エ 委員、顧問、参与等の手当
 委員、顧問、参与等の手当については、指定職俸給表の改定状況を踏まえ、支給限度額に関する所要の改定を行う。

オ 再任用者の俸給月額並びに任期付研究員俸給表及び特定任期付職員俸給表
 再任用者の俸給月額並びに任期付研究員俸給表及び特定任期付職員俸給表の俸給月額についても、行政職俸給表(一)等関係俸給表との均衡を基本に、俸給月額について所要の改定を行う。

カ 俸給の調整額
 俸給の調整額の調整基本額は、現行の算定基礎とされている俸給表の各職務の級の号俸(原則として中位号俸)に相当する新俸給表の各職務の級の号俸の俸給月額の三%に相当する額とする。

(2) 地域手当の新設
 現行の調整手当に替えて、民間賃金が高い地域に在勤する職員に対し、地域手当を支給する。現行の調整手当の特定措置のうち、現在成田国際空港等に適用されている一般職の職員の給与に関する法律第十一条の五の規定は、設置に特別の事情がある空港区域についての特例措置に改める。その他の現行の調整手当の特例措置(同法第十一条の四、第十一条の六、第十一条の七)は、地域手当においても同様に設ける。

(3) 昇給制度及び勤勉手当制度等の改定
ア 昇給制度の改定
 現行の号俸を四分割し、普通昇給と特別昇給を統合する。人事院規則で定める日(一月一日)に過去一年間を良好な成績で勤務した場合は、四号俸(管理職層は三号俸)昇給するものとする。ただし、五十五歳以上の職員が良好な成績で勤務した場合は二号俸昇給するものとする。また、現行のいわゆる枠外昇給制度を廃止する。

イ 勤勉手当制度の改定
 六月期及び十二月期の勤勉手当の「良好(標準)」の成績区分に係る成績率を一〇〇分の七一(特定幹部職員にあっては、一〇〇分の九一)とするとともに、「優秀」以上の成績区分の人員分布の拡大を図ることとする。また、新たに「特に優秀」及び「優秀」の成績区分に係る人員分布率を設定する。

ウ 昇格時の号俸決定方式の改定
 初任の職務の級を除く職務の級への昇格時の号俸決定について、いわゆる一号上位昇格制度を廃止し、どの号俸からの昇格でも一定の昇格メリットが生ずるように改める。

(4) 実施時期及び段階的導入期間の特例措置
ア 実施時期

 上記(1)〜(3)の改定は、平成十八年四月一日から実施する。

イ 段階的導入期間の特例措置
(ア) 俸給月額
 新たな俸給表の俸給月額が平成十八年三月三十一日に受けていた俸給月額に達しない職員に対しては、経過措置としてのその差額を支給する。
(イ) 俸給の調整額
 新たな俸給の調整額が平成十八年三月三十一日に受けていた俸給の調整額(同日において、人事院規則九―六―二十五附則に定める額を受けていた職員にあっては、当該附則の適用がないものとした場合の額)に達しない職員に対しては、平成十九年四月一日から一定割合を減じる方法による経過措置を適用する。
(ウ) 昇給制度
 平成十九年一月一日、平成二十年一月一日、平成二十一年一月一日及び平成二十二年一月一日の昇給について、勤務成績良好者の昇給号俸数を三号俸(管理職層にあっては二号俸)とするなど、昇給号俸数を通常より一号俸ずつ抑制する。ただし、平成十九年一月一日の昇給については、勤務成績判定期間が一年に満たない九か月となることから、勤務成績良好者の昇給号俸数を二号俸(管理職層にあっては一号俸)とする。
(エ) 地域手当
 平成十八年四月一日から平成二十二年三月三十一日までの間の地域手当は、人事院規則で定める暫定的な支給割合を乗じて得た額とする。なお、平成十八年四月一日から平成十九年三月三十一日までの間の支給割合を示すと、別表第十六(略)のとおりである。
(オ) 委員、顧問、参与等の手当
 新たな手当額が平成十八年三月三十一日に受けている手当額に達しない委員、顧問、参与等に対しては、その委嘱期間が満了するまでの間、当該手当額を経過措置として支給する。

5 今後の進め方等
 給与構造の改革は、職員全員に影響が及ぶ広範囲なものであり、かつ、見直しには相応の期間も必要とする。この改革を円滑かつ着実に進めるためには、各府省、職員団体をはじめとする関係者の改革に向けての前向きな努力が求められる。本院としても、給与構造の改革の諸施策について、制度及び運用の両面で公務に定着し、国民の理解が得られる公務員給与の仕組みとなるよう、全力を挙げて取り組んでいきたいと考えている。

W 給与勧告実施の要請

 人事院の給与勧告制度は、労働基本権を制約されている公務員の適性な処遇を確保するため、情勢適応の原則に基づき公務員の給与水準を民間の給与水準に合わせるものとして、国民の理解と指示を得て、公務員給与の決定方式として定着している。
 公務員は、離島やへき地を含め全国津々浦々で、国民生活の維持・向上、生命・財産の安全確保等の職務に精励している。特に、近年は行政ニーズが増大するとともに複雑化する中で、個々の職員が高い士気をもって困難な仕事に立ち向かうことが求められており、公務員給与は、そのような職員の努力や実績に的確に報いていく必要がある。
 本年の勧告は、官民の給与較差を解消するための月例給の引下げと特別給の支給月数の引上げに加えて、従来から課題とされてきた給与構造の改革について、俸給制度、諸手当制度全般にわたる抜本的な見直しを行うことを内容とするものとなった。
 民間準拠により公務員給与を決定する仕組みは、長期的視点から見ると、公務員に対し国民から支持される納得性の高い給与水準を保障し、前述のような職員の努力や実績に報いるとともに、人材の確保や労使関係の安定などを通じて、行政運営の安定に寄与するものである。
 国会及び内閣におかれては、このような人事院勧告制度の意義や役割に深い理解を示され、別紙第二の勧告どおり実施されるよう要請する。


別紙第2 勧  告

 次の事項を実現するため、一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九五号)、一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律(平成九年法律第六五号)、一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成十二年法律第一二五号)等を改正することを勧告する。

T 平成十七年四月の官民の給与格差に基づく給与改定のための関係法律の改正
1 一般職の職員の給与に関する法律の改正
(1) 俸給表

 現行の俸給表を別記第1のとおり改定すること。
(2) 諸手当
ア 初任給調整手当について
(ア) 医療職俸給表(一)の適用を受ける医師及び歯科医師に対する支給月額の限度を三十万六千九百円とすること。
(イ) 医療職俸給表(一)以外の俸給表の適用を受ける医師及び歯科医師で、医学又は歯学に関する専門的知識を必要とする官職にあるものに対する支給月額の限度を五万円とすること。
イ 扶養手当について
 配偶者に係る手当の月額を一万三千円とすること。
ウ 勤勉手当及び期末特別手当について
(ア) 勤勉手当の支給割合
a 平成十七年十二月に支給される勤勉手当の支給割合を〇・七五月分(特定幹部職員にあっては、〇・九五月分)とすること。
b 平成十八年度以降については、六月及び十二月に支給される勤勉手当の支給割合をそれぞれ〇・七二五月分(特定幹部職員にあっては、それぞれ〇・九二五月分)とすること。
(イ) 期末特別手当の支給割合
 十二月に支給される期末特別手当の支給割合を一・七五月分とすること。
(ウ) 再任用職員の勤勉手当及び期末特別手当の支給割合
a 十二月に支給される勤勉手当の支給割合を〇・四月分(特定幹部職員にあっては、〇・五月分)とすること。
b 平成十七年十二月に支給される期末特別手当の支給割合を一・〇月分とすること。
c 平成十八年度以降については、六月及び十二月に支給される期末特別手当の支給割合をそれぞれ〇・八五月分及び〇・九五月分とすること。
エ 委員、顧問、参与等の職にある非常勤職員の手当について
 一般職の職員の給与に関する法律第二二条第一項の委員、顧問、参与等の職にある非常勤職員に対する手当の勤務一日についての通常の場合における支給額の限度を三万七千八百円とすること。

2 一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律の改正
(1) 俸給表
 現行の俸給表を別記第2(略)のとおり改定すること。
(2) 期末手当について
 十二月に支給される期末手当の支給割合を一・七五月分とすること。

3 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律の改正
(1) 俸給表
 現行の俸給表を別記第3(略)のとおり改定すること。
(2) 特定任期付職員の期末手当について
 十二月に支給される期末手当の支給割合を一・七五月分とすること。

U 給与構造の改革のための関係法律の改正
1 一般職の職員の給与に関する法律等の改正

(1) 俸給表
 Tの1の(1)による改定後の俸給表を別記第4のとおり改定すること。
 新俸給表への切替えは、別記第5の切替要領によること。
(2) 昇給制度について
 昇給制度について、次のように改めること。
ア 職員(指定職俸給表の適用を受ける職員を除く。)の昇給は、人事院規則で定める日に、同日前一年間におけるその者の勤務成績等に応じて、人事院規則の定めるところにより行うものとすること。
イ アの場合における昇給の号俸数は、アに定める期間の全部を良好な成績で勤務した職員の号俸数を四号俸((1)による改定後の行政職俸給表(一)の適用を受ける職員でその職務の級が七級以上であるもの及びこれに相当する職員として人事院規則で定めるものにあっては、三号俸)とすることを標準として人事院規則で定める基準に従い決定するものとすること。ただし、五十五歳(人事院規則で定める職員にあっては、五十六歳以上の年齢で人事院規則で定めるもの)を超える職員を昇給させる場合の号俸数は、アに定める期間の全部を良好な成績で勤務した職員の号俸数を二号俸とすることを標準として人事院規則で定める基準に従い決定するものとすること。
ウ 職員は、その属する職務の級における最高の号俸を超えて昇給しないものとすること。
エ 職員の昇給は、予算の範囲内で行わなければならないものとすること。
(3) 諸手当
ア 地域手当について
(ア) 一般職の職員の給与に関する法律第十一条の三の規程による調整手当を、次のとおり、地域手当に改めること。
a 地域手当は、地域における民間の賃金水準を基礎とし、物価等を考慮して人事院規則で定める地域に在勤する職員に支給すること。その地域に近接し、かつ、民間における賃金水準等に関する事情がその地域に準ずる区域に所在する官署で人事院規則で定めるものに在勤する職員についても、同様とすること。
b 地域手当の月額は、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に、次の表に掲げる地域手当の級地の区分に応じ、同表に定める支給割合を乗じて得た額とすること。
c 地域手当の級地は、人事院規則で定めること。
(イ) 地域手当の特例は、次のとおりとすること。
a 大規模空港に係る特例
 設置に特別の事情がある大規模な空港の区域であって、当該区域内における民間の事業所の設置状況、当該民間の事業所の従業員の賃金等に特別の事情があると認められる区域として人事院規則で定めるものに所在する官署に在勤する職員には、(ア)にかかわらず、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に一〇〇分の一五を超えない範囲内で人事院規則で定める割合を乗じて得た月額の地域手当を支給すること。
 なお、これに伴い、一般職の職員の給与に関する法律第十一条の五の規定による調整手当は、廃止すること。
b 医師及び歯科医師に係る特例
 一般職の職員の給与に関する法律第十一条の四の規定による調整手当を地域手当に改め、一級地及び二級地に係る地域及び官署以外の地域又は官署に在勤する医療職俸給表(一)の適用を受ける職員及び指定職俸給表の適用を受ける職員(医療業務に従事する職員で人事院の定めるものに限る。)には、当分の間、(ア)及びaにかかわらず、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に一〇〇分の一五を乗じて得た月額の地域手当を支給すること。
c 特別の法律に基づく移転等に係る特例
 一般職の職員の給与に関する法律第十一条の六の規定による調整手当を地域手当に改めること。
d 異動した職員等に係る特例
 一般職の職員の給与に関する法律第十一条の七の規定による調整手当を異動等の円滑な実施を図るための地域手当に改めること。また、aにより地域手当の支給を受けていた職員が異動した場合等には、aにより受けていた地域手当の支給割合を基礎としてこの特例を適用すること。
(ウ) 地域手当を算出基礎とする給与及び地域手当と調整を要する給与の範囲等については、調整手当における取り扱いと同様とすること。
イ 委員、顧問、参与等の職にある非常勤職員の手当について
 一般職の職員の給与に関する法律第二十二条第一項の委員、顧問、参与等の職にある非常勤職員に対する手当の勤務一日についての通常の場合における支給額の限度を三万五千三百円とすること。
ウ 暫定筑波研究学園都市移転手当について
 暫定筑波研究学園都市移転手当は、廃止すること。

2 一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律の改正
 Tの2の(1)による改定後の俸給表を別記第6(略)のとおり改定すること。

3 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律の改正
 Tの3の(1)による改定後の俸給表を別記第7(略)のとおり改定すること。

V 改定の実施時期等
1 改定の実施時期

 この改定は、この勧告を実施するための法律の公布の日の属する月の翌月の初日(公布の日が月の初日であるときは、その日)から実施すること。ただし、Tの1の(2)のウの(ア)のb及び(ウ)のc、U並びにVの3の(1)から(3)までについては、平成十八年四月一日から実施すること。

2 平成十七年十二月に支給する期末手当及び期末特別手当に関する特例措置
(1) 平成十七年十二月に支給する期末手当又は期末特別手当(以下「期末手当等」という。)の額は、期末手当基礎額又は期末特別手当基礎額に、当該期末手当等の支給割合を乗じて得た額に、在職期間別の割合を乗じて得た額(以下「基準額」という。)から、ア及びイに掲げる額の合計額に相当する額を減じた額とすること。この場合において、当該相当する額が基準額以上となるときは、当該期末手当等は、支給しないこととすること。
ア 平成十七年四月一日(その日の翌日以後に新たに職員となった者にあっては、新たに職員となった日)において職員が受けるべき俸給、俸給の特別調整額、初任給調整手当、扶養手当、調整手当、研究員調整手当、住居手当、単身赴任手当の基礎額、特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。)及び暫定筑波研究学園都市移転手当の月額の合計額に一〇〇分の〇・三六を乗じて得た額に、同月からこの改定の実施の日の属する月の前月までの月数(同年四月一日から当該実施の日の前日までの期間において在職しなかった期間、俸給を支給されなかった期間その他の人事院規則で定める期間がある職員にあっては、当該月数から当該期間を考慮して人事院規則で定める月数を減じた月数)を乗じて得た額
イ 平成十七年六月に支給された期末手当及び勤勉手当の合計額又は期末特別手当の額に一〇〇分の〇・三六を乗じて得た額
(2) 平成十七年四月一日から同年十二月一日までの間において特別職に属する国家公務員等であった者から引き続き新たに職員となった者で任用の事情を考慮して人事院規則で定めるものについては、(1)の額の算定に関し所要の措置を講ずること。

3 経過措置
(1) 差額の支給
ア Uによる改定後の俸給表の適用の日(以下「切替日」という。)における俸給月額が切替日の前日において受けていた俸給月額に達しない職員に対しては、その者の受ける俸給月額が同日に受けていた俸給月額(俸給表の適用を異にして異動した場合その他の人事院の定める事由に該当する場合にあっては、人事院の定める額。以下「切替前俸給月額」という。)に達するまでの間、切替前俸給月額とその者の受ける俸給月額との差額に相当する額を支給すること。切替日以後に新たに俸給表の適用を受けることとなった職員のうち、任用の事情を考慮して上記の差額に相当する額の支給を受ける職員との権衡上必要があると認められる職員についても、これに準じて差額に相当する額を支給すること。
イ アの差額に相当する額は、一般職の職員の給与に関する法律の規定の適用については、同法に規定する俸給に含まれるものとすること。
(2) 昇給に関する特例措置
 平成十八年四月一日から平成二十二年三月三十一までの間におけるUの1の(2)の昇給については、Uの1の(2)のイ中「四号俸」とあるのは「三号俸」と、「三号俸」とあるのは「二号俸」と、「二号俸」とあるのは「一号俸」とすること。
(3) 地域手当の支給割合の特例措置
 平成十八年四月一日から平成二十二年三月三十一日までの間における地域手当の支給割合については、Uの1の(3)のアの(ア)のb中「支給割合を」とあるのは「支給割合を超えない範囲内で人事院規則で定める割合を」とし、Uの1の(3)のアの(イ)のb中「一〇〇分の一五」とあるのは「一〇〇分の一五を超えない範囲内で人事院規則で定める割合」とすること。
(4) その他所要の経過措置
 (1)から(3)までに掲げるもののほか、この改定に伴い、所要の経過措置を講ずること。


別記第五  切替要領
1 職務の級の切替え
 切替日の前日から引き続き在職する職員であって同日においてその者が属していた職務の級(以下「旧級」という。)が別表第一に掲げられているものの切替日における職務の級(以下「新級」という。)は、旧級に対応する同表の新級欄に定める職務の級とする。この場合において、同欄に二つの職務の級が掲げられているときは、人事院の定めるところにより、そのいずれかの職務の級とする。
2 号俸の切替え
一 前記1により新級が定められる職員(二:に掲げる職員を除く。)の切替日における号俸(以下「新号俸」という。)は、旧級、その者の切替日の前日における号俸(以下「旧号俸」という。)及びその者が旧号俸を受けていた期間(人事院の定める職員にあっては、人事院の定める期間。以下「経過期間」という。)に応じて別表第二に定める号俸とする。
二 旧級がこれに対応する別表第一(略)の新級欄に2の職務の級が掲げられている職務の級である職員の新号俸は、新級、旧号俸及び経過期間に応じて別表第三(略)に定める号俸とする。
三 切替日の前日において指定職俸給表の適用を受けていた職員の新号俸は、旧号俸に対応する別表第四(略)の新号俸欄に定める号俸とする。


給与勧告の骨子

本年の給与勧告のポイント
  平均年間給与は減額(行政職(一)平均 △4千円、△0.1%)
  給与構造の抜本的な改革を実施(昭和32年以来約50年振りの改革)
 @官民給与の逆較差(△0.36%)を解消するため、2年振りに月例給の引下げ改定
  −俸給月額の引下げ、配偶者に係る扶養手当の引下げ
 A期末・勤勉手当(ボーナス)の引上げ(0.05月分)
 B俸給制度、諸手当制度全般にわたる抜本的な改革の実施
  −俸給水準の引下げ、地域手当の新設、給与カーブのフラット化、勤務実績の給与への反映等


T 給与勧告の基本的考え方
 〈給与勧告の意義と役割〉勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し、適正な給与を確保する機能を有するもの、労使関係の安定、能率的な行政運営を維持する上での基盤
 〈民間準拠の考え方〉国家公務員の給与は、市場原理による決定が困難であることから、その時々の経済・雇用情勢等を反映して決定される民間の給与に準拠して定めることが最も合理的

U 官民の給与較差に基づく給与改定
 1 官民給与の比較
    約8,300民間事業所の約35万人の個人別給与を実地調査(完了率91.0%)
  〈月例給〉官民の4月分給与を調査(ベア中止、定昇停止、賃金カット等を実施した企業の状況も反映)し、役職段階、年齢、勤務地域など給与決定要素の同じ者同士を比較
  ○官民較差 △1,389円 △0.36%〔行政職(一)…現行給与 382,092円 平均年齢 40.3歳〕
        (俸給 △1,057円 扶養手当 △214円 はね返り分 △118円)
  〈ボーナス〉昨年冬と本年夏の1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間支給月数を比較
  ○民間の支給割合 4.46月(公務の支給月数 4.40月)
 2 給与改定の内容と考え方
  〈月例給〉官民較差(マイナス)の大きさ等を考慮し、月例給を引下げ
  (1)俸給表
   @行政職俸給表(一) すべての級の俸給月額を同率で引下げ(改定率△0.3%)
   A指定職俸給表  行政職俸給表(一)と同程度の引下げ(改定率△0.3%)
   Bその他の俸給表 行政職俸給表(一)との均衡を基本に引下げ
  (2)扶養手当 配偶者に係る扶養手当の支給月額を500円引下げ(13,500円→13,000円)
  (3)その他の手当
   @医師の初任給調整手当
    ・医療職(一)          最高307,900円→306,900円
    ・医療職(一)以外(医系技官等) 最高 50,200円→ 50,000円
   A委員、顧問、参与等の手当
    指定職俸給表の改定状況を踏まえ支給限度額を引下げ(37,900円→37,800円)
  〈期末・勤勉手当等(ボーナス)〉
   民間の支給割合に見合うよう引上げ 4.4月分→4.45月分
   (一般の職員の場合の支給月数)


   [実施時期等]公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときは、その日)から実施。本年4月からこの改定の実施の日の前日までの期間に係る官民較差相当分を解消するため、4月の給与に較差率を乗じて得た額に4月から実施の日の属する月の前月までの月数を乗じて得た額と、6月期のボーナスの額に較差率を乗じて得た額の合計額に相当する額を、12月期の期末手当の額で調整
  〈その他の課題〉
   (1)特殊勤務手当の見直し   平成16年に6手当9業務、平成17年に9手当14業務の見直しを実施、今後も引き続き手当ごとの業務の実態等を精査して所要の見直しを検討
   (2)官民比較方法の見直し   民間企業における人事・組織形態の変化に対応できるように、官民比較方法について、学識経験者の研究会を設けて検討
   (3)独立行政法人等の給与水準の把握   専門機関として、独立行政法人等における給与水準の在り方等の検討において今後とも適切な協力


V 給与構造の改革
 1 給与構造の改革の基本的な考え方
   職員の士気を確保しつつ、能率的な人事管理を推進するため、年功的な給与上昇要因を抑制した給与システムを構築するとともに、職務・職責や勤務実績に応じた適切な給与を確保していく必要
   その場合、公務員給与は、職員の最も重要な勤務条件であり、その制度の基本は、民間との均衡を考慮して整備していく必要。又、新しい公務員給与のシステムが国民の目から見て合理性・納得性を持つものであることが重要
  (改革の必要性)
  (1)地域ごとの民間賃金水準の格差を踏まえ、俸給水準の引下げを行い、民間賃金水準が高い地域では地域間調整を図るための手当を支給
  (2)年功的な給与上昇を抑制し、職務・職責に応じた俸給構造への転換
  (3)勤務実績をより的確に反映し得るよう昇給制度、勤勉手当制度を整備
  (4)スペシャリストのスタッフ職としての処遇や、在職期間の長期化に対応した複線型人事管理の導入に向けた環境整備
 2 改革すべき事項
  (1)俸給表及び俸給制度の見直し
   ア 行政職俸給表(一)の見直し
    ・地域別の官民較差の3年平均値を参考として、俸給表の水準を全体として平均4.8%引下げ
    ・若手の係員層については引下げを行わず、中高齢層について7%引き下げることにより、給与カーブをフラット化
    ・現行1級・2級(係員級)及び4級・5級(係長級)の統合。従来の本府省課長の職責を上回る職務に対応した級の新設(11級制→10級制)
    ・きめ細かい勤務実績の反映を行うため現行の号俸を4分割
    ・現在在職者がいないか、在職実態が極めて少ない初号等の号俸をカット
    ・現時点の最高号俸を超える者の在職実態を踏まえ、号俸を増設
    ・最高号俸を超える俸給月額に決定し得る枠外昇給制度を廃止
    ・中途採用者の初任給決定の制限、昇格時の号俸決定方法について見直し
   イ 指定職俸給表の見直し
     現行の行政職俸給表(一)11級と同程度引き下げるとともに、現在在職者がいない1号俸から3号俸までの号俸をカット
   ウ 行政職俸給表(一)及び指定職俸給表以外の見直し
     行政職俸給表(一)との均衡を基本として、職務の級及び号俸構成、水準是正などの見直し
   エ 俸給の調整額の見直し
     俸給表の水準引下げとの整合性を確保
  (2)地域手当及び広域異動手当の新設
   ア 地域手当の新設
     民間賃金の地域間格差が適切に反映されるよう、現行の調整手当に替えて、主に民間賃金の高い地域に勤務する職員に対し、地域手当を支給
    ・賃金構造基本統計調査による賃金指数を用いた指定基準を基本として、支給地域及び支給割合を決定
    ・支給区分は、18%、15%、12%、10%、6%及び3%の6区分。手当額は、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に支給割合を乗じて得た額(現在の調整手当支給地域のうち、指定基準を満たさない地域については、当分の間、継続して支給)
    ・大規模空港区域内の官署に在勤する職員について、当該区域内の民間賃金等の事情を考慮して、特例的な地域手当を支給
    ・医師に対する調整手当の特例及び官署移転の円滑な実施等のために設けられている調整手当の特例についても、地域手当の特例として存置
    ・円滑な異動及び適切な人材配置を確保するため、平成16年に見直しを行った現行の調整手当の異動保障と同様の制度を引き続き措置
   イ 広域異動手当の新設
     転勤のある民間企業の従業員の賃金水準が地域の平均的な民間賃金水準より高いことを考慮し、広域異動を行った職員に対して手当を新設
    ・官署を異にする異動を行った職員のうち、異動前後の官署間の距離及び異動前の住居から異動直後に在勤する官署までの間の距離がいずれも60q以上となる職員について、広域異動の日から、原則3年以内の期間支給
    ・手当額は、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に、異動前後の官署間の距離区分に応じて、60q以上300q未満の場合は3%、300q以上の場合は6%を乗じて得た額
    ・地域手当が支給される場合には、地域手当の支給額を超える部分の額の広域異動手当を支給
  (3)勤務実績の給与への反映
   ア 勤務成績に基づく昇給制度の導入
     特別昇給と普通昇給を統合し、昇給の区分を5段階(A〜E)設けることにより、職員の勤務成績が適切に反映される昇給制度を導入
    ・年4回の昇給時期を年1回(1月1日)に統一。昇給号俸数は、A(極めて良好)で8号俸以上、B(特に良好)で6号俸、C(良好)で4号俸、D(やや良好でない)で2号俸、E(良好でない)は昇給なし。ただし、管理職層は、C(良好)を3号俸昇給に抑制。B以上は分布率を設定。D以下については、該当事由に関する判断基準を別に設定
    ・55歳昇給停止措置に替えて、55歳以上の昇給については昇給幅を通常の半分程度に抑制
   イ 勤勉手当への実績反映の拡大
     勤務実績を支給額により反映し得るよう、査定原資を増額(平成17年の引上げ分0.05月分のうち0.03月分を平成18年の6月期、12月期の勤勉手当の査定原資として配分)し、「優秀」以上の成績区分の人員分布の拡大を図る。また、新たに「特に優秀」及び「優秀」の成績区分に係る人員分布率を設定
   ウ 昇格基準の見直し
     昇給及び勤勉手当に係る勤務成績の判定結果を活用
   エ 給与決定のための勤務成績の判定についての改善
     昇給及び勤勉手当の運用に資するよう、当面、各府省の現行の判定手続を明確化、成績上位者の判定尺度を例示、標準的な勤務成績に達しない場合の統一的な判定基準を設定
  (4)スタッフ職活用のための環境整備
    スペシャリストのスタッフ職としての処遇や、在職期間の長期化に対応した複線型人事管理の導入のため、3級程度の簡素な級構成の専門スタッフ職俸給表を新設
  (5)俸給の特別調整額の定額化
    経験年数にかかわらず、管理職員の職務・職責を端的に反映できるよう、定率制から俸給表別・職務の級別・支給区分別の定額制に移行。地方機関の管理職に適用される三種〜五種の手当額については、改善を行った上で定額化
  (6)本府省手当の新設
    本府省における職務の特殊性・困難性、人材確保の必要性に配慮し、本府省の課長補佐(俸給の特別調整額(8%)は廃止し、手当の水準は維持)、係長及び係員を対象とした本府省手当(役職段階別・職務の級別の定額制)を新設
 3 実施スケジュール
  (1)基本的な考え方
    俸給の引下げは、経過措置を設けて段階的に実施するとともに、新制度の導入や手当額の引上げについても段階的に導入し、平成22年度までの5年間で完成
  (2)新制度の段階的な実施方法
   ア 俸給表等の実施時期と経過措置
     新俸給表は平成18年4月1日から適用。同日にすべての職員の俸給月額を新俸給表に切替え。経過措置として新旧俸給月額の差額を支給。平成18〜21年度までの間、昇給幅を1号俸抑制。俸給の調整額の改定も平成18年4月1日から施行
   イ 手当の新設等の実施方法
     地域手当は平成18年度から、広域異動手当は平成19年度から段階的に導入。俸給の特別調整額の定額化は平成19年度から実施。専門スタッフ職俸給表及び本府省手当の新設は平成22年度までの間に実施
   ウ 給与への勤務実績反映
     新昇給制度は平成18年4月1日から実施(新制度による最初の昇給は平成19年1月1日)。勤勉手当の勤務実績反映の拡大は平成18年の6月期から実施。昇格運用の見直しに係る措置については平成19年4月1日から実施。新昇給制度における勤務成績の判定に係る改善措置等の活用は、平成18年4月1日から管理職層について先行して行い、引き続きその他の職員について行う

公務員人事管理に関する報告の骨子 〜行政の専門集団を目指して〜
 公務員の人事管理全般について、時代の要請に的確に対応した改革を進めることは引き続き重要
 公務員人事管理の改革に関する本院の基本的問題意識、当面の主な課題と具体的方向を表明
1 公務員人事管理を取り巻く状況
 ・「小さくて効率的な政府」への取組として、国の行政のスリム化・減量化が進展。市場化テストなど官と民の守備範囲の議論も活発
 ・各界から、公務員人事管理に関する種々の提言。「天下り」については引き続き厳しい批判
2 本院の基本認識 〜求められる公務員像〜
  複雑・高度化する行政ニーズにこたえるため、公務員は国民本位の効率的行政を支える専門集団となる必要
 ・政治主導の政策決定を支え、その着実な実施を担う行政の専門家として今後も重要な役割
 ・企画立案重視・事後監視型の業務遂行スタイルへの変化に対応して、特定分野の高度専門職の確保・養成とともに、行政官の専門的知識・能力の一層の向上が重要
 ・国際的な視野の下、多面的な問題分析能力・交渉能力等のかん養が不可欠
 ・所管行政に過度にとらわれない、幅広い国家的視野が必要。市民感覚の保持、高い倫理観・使命感のかん養が重要。透明性・説明責任についての高い意識が不可欠
 ・「官業」の民間開放に向けた取組が行われる中、職員の取扱いは民間労働法制の取扱いを踏まえつつ、適切な配慮が必要。公務の範囲の在り方については引き続き関心を持って研究
3 主な課題と具体的方向
 @ 多様な有為の人材の確保と専門能力の向上
  国家公務員の志望者層に変化が生じつつあるとの指摘があり、人材確保の取組が重要
  ア 大学院教育を重視する大学の変化等に対応するため、18年度試験からT種試験を見直し(出題科目・出題数、記述式重視等)。専門職大学院の動向等を踏まえ、引き続き検討
    U種試験(行政区分)(地域ごとの試験)において、本府省の人材確保のため、各地域の試験合格者から本府省に採用できる仕組みを整備−18年度から実施
  イ 民間経験者の公務への採用機会を拡大し、各府省の選考採用を支援するため、公募手続や能力実証の一部を人事院が担う経験者採用システムについて18年度導入を目途に検討
  ウ 「キャリア・システム」に対しては、各方面から批判。幹部要員の選抜・育成の在り方をより柔軟で開放的なものにしていく方向で検討。当面、U種・V種等採用職員の計画的育成と登用の一層の推進を図っていくことが必要
  エ 留学派遣者が早期退職した場合の留学費用返還制度を検討−早急に別途意見の申出
  オ 府省間・官民間の人事交流の推進が重要。各府省・民間企業の交流希望についての情報交換の仲介等の環境を整備
  カ 米国連邦政府職員の「マンスフィールド研修」のような海外派遣システムを検討
   日中韓三国間における人事行政ネットワークを通じ、幅広い協力計画を積極的に実施
 A能力・実績に基づく人事管理
  ア 能力・実績に基づく人事管理の土台として、客観的で公正性や透明性が高く、実効性ある人事評価制度の整備が必要。職員、各府省、職員団体の理解・納得を得られるよう、関係者間で十分協議を行った上で、試行を行い、実効性等を検証しつつ制度設計することが不可欠
  イ 「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」の見直しなどの取組を推進
  ウ 分限処分に関し、各任命権者が制度の趣旨に則った対処を行えるよう、分限事由に該当する場合の対応の仕方等について鋭意検討
 B勤務環境の整備
  ア 育児・介護を行う職員が常勤職員のまま短時間勤務することを認める短時間勤務制を導入−早期に成案・別途意見の申出
  イ 修学等の能力開発や社会貢献等の活動のため、自発的休業制度の導入を検討
  ウ 勤務時間の弾力的な運用のため、基準・モデルを示し、助言・指導・事後チェックを実施。併せて、勤務時間の割振り基準の法的整備を検討−別途意見の申出
    「事業場外労働のみなし労働時間制」相当の仕組みの導入を検討
  エ 超過勤務の縮減のため、超過勤務命令の基準を明確化。また、明示的な超過勤務命令を徹底し、超過勤務時間を管理者が日々遅滞なく把握・確定するシステムを確立
  オ 心の健康づくり対策を一層推進し、各機関の専門医の確保を促進
  カ 各府省の人事・給与関係業務情報システム導入を支援。安定的運用のためのシステム開発
 C退職管理
  ア 営利企業への再就職規制について、各府省における制度の徹底等適切な対応を要請
  イ 早期退職慣行を是正し、公務内において長期に職員の能力を活用できるよう、専門スタッフ職俸給表の新設など在職期間の長期化に資する環境整備について検討
    再任用制度の円滑な運営に向けた環境の整備を図る。なお、民間の動向に注視しつつ、60歳代前半の本格的な雇用の在り方についても検討
  人事院は、人事行政の公正の確保、労働基本権制約の代償を担う中立第三者機関・専門機関として、引き続きその役割を適切に果たしてまいりたい


声明

1、人事院は、本日、月例給を〇・三六%引下げ、一時金を〇・〇五月引き上げる本年の給与改定に関する勧告と地域給与・給与制度見直しに関する勧告・報告を行った。
2、二〇〇五人勧期の取り組みは、依然として公務員給与バッシングの嵐が吹き荒れ、政府・与党が公務員の総人件費削減を財政再建や増税政策を推し進めるスケープゴートとして位置づけるという極めて厳しい情勢のもとでの取り組みとなった。
 こうした情勢のもとでわれわれは、本年の人勧期の取り組みを「前半期」と「後半期」の二つに区分し、前半期においては、本格的に人勧期闘争を進めるための条件整備の取り組みを全力で進めてきた。その結果、六月二十一日の骨太方針二〇〇五で政府が、当面、人事院勧告制度の枠組みを維持するとの方針を固めたことを受け、地域給与・給与制度見直しを中心とした後半期の闘いを進めることとした。
 そして、六月二十三日の要求提出の際、人事院総裁から“現行の公務員給与の水準を確保するための企業規模など官民比較方法の基本に関わる事項は変更しない”との見解を引き出し、@公務員労働者の給与水準を維持・改善する給与勧告を実現することA俸給表水準を引き下げる地域給与見直しではなく、合意できる見直し案を再提案することB新しい評価制度が整備されるまでは拙速な勤務実績反映の給与制度見直しを行わないことC育児・介護を行う職員の短時間勤務制度導入の意見の申出を行うこと、などを重点課題に設定し、近年にない規模の五次の中央行動や様々な全国的な行動を実施し、それを背景に人事院との交渉・協議を最終盤までねばり強く進めてきた。
3、本日の勧告・報告のうち、本年の給与改定に関する勧告については、月例給がマイナスとなったことは不満ではあるが、民間賃金の動向や人事院勧告が労働基本権制約の代償措置であることを踏まえれば、やむを得ないものと判断する。
 しかし、地域給与・給与制度見直しに関わる勧告・報告については、われわれが強く反対したにもかかわらず、@公務員の生活だけでなく地域経済にも大きな影響を与える俸給表水準の四・八%引下げが行われたことA新たな評価制度の整備が行われないまま、給与決定や労使関係のあり方の基本に関わる勤務実績反映の給与制度見直しが打ち出されたこと、からして到底これを認めることはできない。これだけ大きな制度見直しにもかかわらず、十分な説明もなく、最も影響を受ける地域の公務員の納得が得られないまま、勧告・報告に踏み切った人事院に対して強い怒りと抗議の意を表明する。
 勧告を巡る情勢が緊迫した段階で設定した“影響を最小限に止めるための重点ポイント”については、@「当分の間」地域を含め地域手当の指定地域を極力拡大させたことA号俸延長の実現や五十五歳定昇ストップ措置を廃止させたことB本府省手当の実施を先送りさせたことC一般職員の査定昇給を先送りさせ、勤勉手当の標準者の成績率の引下げを行わせなかったことD「現給保障」を実施させたこと、などが確認できる。これらは、終始基本姿勢を堅持し、最終盤ギリギリの段階までねばり強く進めた交渉・協議の結果である。
 昨年報告した両立支援策の残された課題であり、組合員が強く期待した育児・介護を行う職員の短時間勤務制度の意見の申出が先送りされたことについても、極めて不満といわざるを得ない。時代の要請に応えず、従来の定員管理の方法と権限にこだわった総務省行政管理局の姿勢を強く批判するとともに、人事院には、雇用形態の違いによる格差解消にも資する短時間勤務制度の一刻も早い実現を強く求める。
4、以上のことから公務員連絡会は、今後、政府に対して、本年の給与改定に関する勧告については勧告通り実施することを求めていくが、地域給与・給与制度見直しに関する勧告・報告については、公務員の使用者としての責任においてわれわれと十分交渉・協議を行い、この実施を見送る方針決定を行うよう求めていくこととする。
 さらに、これから本格化する地方自治体の確定闘争や独立行政法人、政府関係特殊法人等の闘いにおいても、人事院勧告が行われたという厳しい情勢を踏まえ、公務員連絡会の地域給与・給与制度見直しに対する基本方針を堅持し、統一闘争体制のもとに全力で取り組みを進めることとする。
 総選挙後の政治情勢の中で取り組まれる本年の確定期の取り組みは、極めて厳しく、かつ不透明なものとなることが想定される。
 われわれは、この秋にも策定される「総人件費改革のための基本指針」において、人事院勧告制度の枠組みを超えた給与水準の引下げ方針や、定員削減を自己目的化し、公共サービスを切り捨てる方針が盛り込まれることについては、強く反対していかねばならない。同時に、われわれは、労働基本権の確立を含む公務員制度改革の取り組みを引き続き強力に推し進めていかなければならない。
 今回の総選挙は、郵政民営化阻止を含め、市場万能主義に基づく「小さな政府」作りや公共サービス切り捨ての小泉構造改革路線に「NO」を突きつけ、国民生活と社会に安心・安定をもたらす政権作りの絶好のチャンスである。公務員連絡会の各構成組織は、公務労協や連合に結集し、まずはこの総選挙闘争の勝利に向け全力で闘い抜く決意である。
二〇〇五年八月十五日
公務員労働組合連絡会