機関紙「自治労府職」

 2006年8月8日号外

人事院勧告特集


比較規模の見直し強行
月例給・一時金の改定見送り


公務員連絡会「人勧制度の限界明らか」

人事院は、八月八日、内閣及び両院議長に対して国家公務員の月例給・一時金の改定を見送る報告及び勧告を行った。その内容は、@官民給与の較差(0.00%)が極めて小さく、月例給の水準改定を見送り、A期末・勤勉手当(ボーナス)は民間の支給割合とおおむね均衡し、改定なし、B比較対象企業規模など官民給与の比較方法の見直し、C給与構造の改革の計画的な実施などである。今勧告の最大の課題であった「官民比較方法における比較対象企業規模の見直し」について、人事院は百人以上から五十人以上に引き下げることを一方的に実施した。従来の比較方法ならば、月例給で四、二五二円、一時金で〇・〇五月の引き上げ勧告となるはずであったことを考えれば、今勧告の不当性は明らかである。私たちは、引き続き、自治体労働者の生活の維持・改善をめざして、賃金確定闘争をはじめとする二〇〇六秋季闘争に全力をあげよう。以下は勧告と報告の全文。

平成十八年八月八日

衆議院議長    河野 洋平殿
参議院議長    扇  千景殿
内閣総理大臣  小泉純一郎殿

人事院総裁 谷 公士

 人事院は、国家公務員法、一般職の職員の給与に関する法律等の規定に基づき、一般職の職員の給与について別紙第一のとおり報告し、給与の改定について別紙第二のとおり勧告する。あわせて、公務員人事管理について別紙第三のとおり報告する。

別紙第1
職員の給与に関する報告
報告の概要
(官民の給与較差に基づく給与改定)
 本院は、国家公務員の給与水準に関して、国家公務員法に定める情勢適応の原則に基づき、毎年、公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行ってきている。
 この民間準拠による公務員と民間企業従業員の給与の比較方法の在り方について、本院は、昨年の勧告時に、学識経験者の研究会を設けて、検討を行っていくことを表明した。
 その後、本院は、学識経験者による「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」を設置し、同研究会においては、官民給与の比較方法について、専門的、技術的な観点からの検証、検討が行われ、報告書が提出された。さらに、各界有識者による「給与懇話会」を設置し、給与懇話会においては、公務及び公務員の役割や公務員給与のあるべき姿等について、七回にわたる議論を経て、意見がとりまとめられた。また、本院は、官民給与の比較方法について、各府省の人事当局や職員団体から意見聴取を行いつつ、慎重に検討を進めてきた。
 その結果、本年の勧告の基礎となる官民給与の比較方法について、比較対象企業規模を従来の百人以上から五十人以上に改めるとともに、月例給の比較対象となる民間企業の従業員の範囲を見直すなど抜本的な見直しを行うこととした。
 近年の公務員給与は、月例給については平成十四年、平成十五年及び平成十七年に引下げとなり、特別給については平成十一年以降五年連続で年間支給月数が引下げとなり、平均年間給与の減少が続いていた。
 本院が行った本年の春季賃金改定後の民間企業の給与実態調査においては、ベースアップを実施している事業所の割合が昨年より高くなっていたほか、定期に行われている昇給を実施している事業所の過半数の事業所において昇給額が昨年より増額となっていた。
 このような状況において、前記の官民給与の比較方法の見直しを行った上で、本年四月に支払われた月例給について官民の比較を行った結果、公務員の月例給と民間の月例給がほぼ均衡していることが明らかとなった。したがって、月例給についての改定を行わないことが適当であると判断した。
 一方、特別給については、前期の比較対象企業規模の見直しを行った上で、民間の特別給(ボーナス)の昨年冬と本年夏の一年間の支給実績を調査し、官民の比較を行った結果、本年は、民間の年間支給割合が公務の年間支給月数とおおむね均衡していたことから、改定を行わないこととした。

(給与構造の改革)
 本院は、昨年の勧告時において、地域の民間賃金をより適切に反映させるための地域間給与配分の見直し、年功的な給与上昇を抑制し職務・職責に応じた俸給構造への転換、勤務実績の給与への反映の推進などを柱とする俸給制度、諸手当制度全般にわたる改革を行うこととし、改革の全体像についてその具体的な措置の内容、完成までのスケジュール等を示した。
 この給与構造の改革は、平成十八年度から平均四・八%の俸給表の水準引下げを段階的に実施する一方で、この俸給表水準引下げ分を原資として、新制度の導入や手当額の引上げについて、平成十八年度以降平成二十二年度までに逐次実施を図ることとしている。
 平成十九年度において新たに実施する施策は、次のとおりである。

(1) 広域異動手当の新設
 職員の俸給水準を民間賃金水準の低い地域の水準を考慮して引き下げる中で、民間においては、広域的に転勤のある企業の従業員の賃金水準が地域の平均的な民間企業の従業員の賃金水準に比べて高い実態にあることを考慮し、公務において広域異動を行う職員の給与水準を調整するため、異動の距離区分に応じて三%又は六%の広域異動手当を支給する。

(2) 俸給の特別調整額の定額化
 俸給の特別調整額については、年功的な給与処遇を改め、管理職員の職務・職責を端的に反映できるよう、民間企業において役付手当が定額化されている実態も踏まえ、定率制から定額制に移行する。
T 給与勧告の基本的考え方
1 給与勧告の意義と役割
 給与勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものであり、従来より、国家公務員の給与水準の適正化についてのみならず、給与制度の見直しについても勧告を行っている。
 公務員給与については、納税者である国民の理解を得る必要があることから、本院が労使当事者以外の第三者の立場に立ち、官民給与の精確な比較を基に給与勧告を行うことにより、適正な公務員給与が確保されている。勧告が実施され、適正な処遇を確保することは、人材の確保や労使関係の安定を図ることにより、能率的な行政運営を維持する上での基盤となっている。

2 民間準拠の考え方
 本院は、国家公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行っている。
 民間準拠を基本に勧告を行う理由は、国家公務員も勤労者であり、勤務の対価として適正な給与を確保することが必要であるが、その給与は、民間企業と異なり、市場原理による決定が困難であることから、労使交渉等によってその時々の経済・雇用情勢等を反映して決定される民間の給与に準拠して定めることが最も合理的であり、職員の理解と納得とともに広く国民の理解を得られる方法であると考えられることによる。

3 公務員給与を取り巻く諸情勢
(1) 最近の賃金・雇用情勢等
ア 民間賃金指標の動向
 「毎月勤労統計調査」(厚生労働省、事業所規模三十人以上)によると、本年四月の所定内給与は、昨年四月に比べ〇・六%増加している。また、所定外給与は二・一%増加しており、これらを合わせた「きまって支給する給与」は〇・七%の増加となっている。なお、パートタイム労働者を除く一般労働者では、所定内給与は〇・七%の増加、きまって支給する給与は〇・九%の増加となっている。

イ 物価・生計費
 本年四月の消費者物価指数(総務省、全国)は、昨年四月に比べ〇・四%増加しており、勤労者世帯の消費支出(同省「家計調査」、全国)は、昨年四月に比べ名目三・七%の減となっている。
 本院が家計調査を基礎に算定した本年四月における全国の二人世帯、三人世帯及び四人世帯の標準生計費は、それぞれ一六九、八二〇円、二〇二、六六〇円及び二三五、五一〇円となっている。また、「全国消費実態調査」(同省)を基礎に算定した同月における一人世帯の標準生計費は、九七、九〇〇円となっている。

ウ 雇用情勢
 本年四月の完全失業率(総務省「労働力調査」)は、昨年四月の水準を〇・三ポイント下回り、四・一%(季節調整値)となっている。
 また、本年四月の有効求人倍率及び新規求人倍率(厚生労働省「一般職業紹介状況」)は、昨年四月に比べると、それぞれ〇・一一ポイント、〇・一二ポイント上昇して一・〇四倍(季節調整値)、一・五四倍(同)となっている。

(2) 各方面の意見等
 本院は、公務員給与の改定を検討するに当たって、東京のほか全国四十一都市において有識者との懇話会、中小企業経営者等との意見交換を行うこと等により、広く国民の意見の聴取に努めた。
 各界との意見交換においては、本年四月から実施している給与構造の改革について、勤務実績の給与への反映は制度を導入するだけでなく適切に運用することが重要ではないか等の意見もあったが、改革の内容は妥当との意見が多かった。また、公務員の給与水準について、これまでの比較対象企業規模では地域の民間給与の実態を十分反映できていないのではないかとの意見が見られた一方、能力を十分に発揮している公務員の給与は高くても良いとの意見もあった。
 本院が委嘱している「国家公務員に関するモニター」(五百人)においては、官民給与の比較方法について、「妥当である」又は「おおむね妥当である」とする人が相対的に多い(四八・九%)ものの、最近は減少傾向にある。一方、「調査対象を広げ、中小企業に勤務する従業員も対象とすべき」などを理由に「問題がある」又は「やや問題がある」とする人が増えてきており、本年はその割合が三二・一%となっている。また、公務員の給与を決定するに当たって重視すべき要素については、「個々の職員の仕事の実績や成果」(五七・三%)、「就いている仕事の種類や内容」(三三・一%)とする意見が高い割合となっている。

U 官民の給与較差に基づく給与改定
1 官民の給与の実態
(1) 職員の給与の状況
 本院は、「平成十八年国家公務員給与等実態調査」を実施し、給与法(「一般職の職員の給与に関する法律」)適用の常勤職員の給与の支給状況等について全数調査を行った。その結果、本年の民間給与との比較対象である行政職俸給表(一)適用者(一六八、七二二人、平均年齢四十・四歳)の本年四月における平均給与月額は三八一、二一二円となっており、税務署職員、刑務官等を含めた職員全体(二八八、九三五人、平均年齢四十一・二歳)では四〇〇、六八五円となっている。

(2) 民間給与の状況
ア 職種別民間給与実態調査
 本院は、企業規模五十人以上、かつ、事業所規模五十人以上の全国の民間事業所約五三、〇〇〇(母集団事業所)のうちから、層化無作為抽出法によって抽出した一〇、一七四の事業所を対象に、「平成十八年職種別民間給与実態調査」を実施した。調査では、公務の行政職俸給表(一)と類似すると認められる事務・技術関係二十二職種の約三十七万人及び研究員、医師等五十四職種の約六万人について、本年四月分として個々の従業員に実際に支払われた給与月額等を実地に詳細に調査した。なお、本年は、調査対象となる民間企業の規模を従来に百人以上から五十人以上に改めたほか、調査対象従業員の範囲をスタッフ職の従業員等に拡大した。
 また、各民間企業における給与改定の状況や、雇用調整の実施状況等についても、引き続き調査を実施した。
 職種別民間給与実態調査の調査完了率は、調査対象企業の範囲を拡大したにもかかわらず、調査の重要性に対する民間事業所の理解を得て、本年も八九・一%(企業規模百人以上では九〇・一%)と極めて高く、調査結果は広く民間事業所の給与の状況を反映したものとなっている。

イ 調査の実施結果等
 本年の職種別民間給与実態調査の主な調査結果は次のとおりである。
(ア) 本年の給与改定の状況
(初任給の状況)
 新規学卒者の採用を行った事業所は、大学卒で四一・二%、高校卒で二〇・七%となっているが、特に大学卒では、大企業の採用割合が高くなっており、企業規模三、〇〇〇人以上の事業所では八五・二%、企業規模一、〇〇〇人以上三、〇〇〇人未満の事業所では七八・一%となっている。また、これらのうち大学卒で七七・一%、高校卒で七九・四%の事業所で、初任給は据置きとなっている。

(給与改定の状況)
 別表第一に示すとおり、民間事業所においては、一般の従業員について、ベースアップの慣行のない事業所の割合が五七・四%となっており、ベースアップを実施した事業所の割合は二五・七%となっている。このベースアップを実施した事業所の割合を企業規模百人以上の事業所でみると二五・八%となっており、昨年(二〇・五%)に比べて増加している。
 また、別表第二に示すとおり、一般の従業員について、定期に行われる昇給を実施した事業所の割合は六八・四%となっている。三五・〇%の事業所において昨年よりも増額となっており、減額となっている事業所の割合(五・五%)を大幅に上回っている。

(イ) 雇用調整の実施状況
 別表第三に示すとおり、民間事業所における雇用調整の実施状況をみると、平成十八年一月以降に雇用調整を実施した事業所に割合は一九・九%となっており、企業規模百人以上の事業所で見ると二一・一%と昨年(三一・五%)に比べて大幅に減少している。雇用調整の措置内容をみると、部門の整理・部門間の配転(七・〇%)、業務の外部委託・一部職種の派遣社員等への転換(六・一%)、採用の停止・抑制(五・三%)の順になっている。

2 官民給与の比較方法の見直し
(1) 見直しに至る経緯
 官民給与の比較は、公務員と民間企業従業員の同種・同等の者同士を比較することを基本として、公務においては行政職俸給表(一)、民間においては公務の行政職俸給表(一)と類似すると認められる事務・技術関係職種の者について、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴、勤務地域を同じくするもの同士を対比させ、精密に比較を行うものである。このラスパイレス方式による比較方法は、昭和三十四年に導入したものであるが、長年の経緯を経て、公務員の給与決定方法として定着している。その間、昭和三十九年に比較対象企業規模を五十人以上から百人以上に引き上げたほか、比較職種、比較における対応関係、比較給与種目等について、適宜、見直しを行ってきている。
 しかしながら、これまで比較方法の見直しについての全般的な検討を行っていないこと、近年、スタッフ職の従業員の増加等民間企業における人事・組織形態が変化してきていること等を踏まえ、本院は、昨年の勧告時に、学識経験者の研究会を設けて、比較方法の検討を行うことを表明した。
 また、官民給与の比較方法については、国会において、比較対象企業の範囲を拡大すべきとの議論が広くなされたほか、昨年九月、十二月及び本年七月の三度にわたる閣議決定において、人事院に対し、比較対象企業規模の見直し等についての要請が行われている。
 このような状況において、本院は、昨年十一月に学識経験者による「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」を設置した。同研究会においては、官民給与の比較方法全般について、専門的、技術的な観点からの検証、検討が行われ、本年三月に中間とりまとめ「論点整理及び当面の対応策」が提出された後、七月に報告書が提出された。
 また、本年一月には、各界有識者による「給与懇話会」を設置した。給与懇話会においては、各府省の人事当局や職員団体からのヒアリングを実施した上で、公務および公務員の役割、公務員の人材確保、公務員給与の在り方等のテーマについて、七回にわたる議論が行われ、七月に給与懇話会としての意見がとりまとめられた。
 本院は、これらの報告書等の内容を踏まえ、各府省の人事当局や職員団体から意見聴取を行いつつ、民間企業の給与水準をより適正に反映する方法として、従来の官民給与の比較方法をどのように見直すことが適当かという観点から検討を行った。

(2) 比較方法の見直しの考え方
 本年の官民給与の比較においては、比較対象企業規模を従来の百人以上から五十人以上に改めるとともに、月例給の官民比較について、比較対象従業員であるライン職の従業員の要件を改め、スタッフ職の従業員等を比較の対象に加えた上で、比較における対応関係を見直すこととした。

ア 比較対象企業規模
 公務と比較を行う民間企業の規模については、月例給における同種・同等の者同士を比較するという原則の下で、民間企業の従業員の給与をより広く把握し反映させることが適当である。
 月例給の官民比較においては、公務における役職の責任の大きさを基本に公務と民間の同種・同等の判断を行っているが、企業規模百人未満の民間企業のうち企業規模五十人以上の民間企業については、多くの民間企業において公務と同様の役職段階(部長、課長、係長など)を有していることから、公務と同種・同等の者同士による比較が可能である。また、企業規模五十人以上の民間企業であれば、これまでどおりの精緻な実地調査による対応が可能であり調査の精確性を維持することができる。
 本年の職種別民間給与実態調査においては、企業規模五十人以上の民間事業所を調査対象としたが、結果として、企業規模五十人以上百人未満の民間事業所においても、八四・三%の事業所において調査を完了し、官民の給与比較の対象となる役職段階別の調査実人員も十分に確保することができた。
 これらを踏まえて、比較対象企業規模については、五十人以上とすることとした。

イ 比較対象従業員
 月例給の官民比較において、公務と比較を行う民間企業の役職者は、これまでライン職に限り、ライン職についても部下数等の要件を満たす者に限定してきたが、比較対象従業員の範囲についても、民間の実態をできるだけ広く把握し反映することが適当であることから、公務及び民間企業の双方において、人事・組織形態が変化してきていることを踏まえ、所要の見直しを行うこととした。
 具体的には、ライン職の民間役職者について、公務における役職者の部下数等を考慮してその要件を改めることとし、スタッフ職及び要件を満たしていないライン職の役職者のうち、要件を改めた後のライン職の役職者と職能資格等が同等と認められるものについても比較の対象に加えることとした。

ウ 比較における対応関係
 月例給の官民給与の比較の対応関係については、給与構造の改革において、本年四月に俸給表の職務の級の新設・統合を行ったことに伴い、対応関係を整理することとした。
 また、企業規模五十人以上百人未満の民間企業の各役職段階と公務の各職務の級との対応関係については、現在も企業規模五百人以上と五百人未満の民間企業で対応する役職段階に一定の差を設けていること等を踏まえ、特定の役職段階について、企業規模百人以上五百人未満の民間企業との間で一定の差を設けることとした。
 これらにより、本年の官民給与の比較における対応関係は、別表第四のとおりとした。

エ 特別給の比較方法
 特別給の比較方法については、民間給与の実態調査において、月例給に加えて個人別に年二回分の特別給の支給額を調査することが困難であること、民間企業の特別給は企業全体の利益の配分として個々人の実績に応じて支給されており、同種・同等比較になじまない側面も有していること等を踏まえ、当面、事業所単位で調査を行っている現行の枠組みは維持することとした。
 なお、比較対象企業規模については、アのとおり、月例給の官民比較において、企業規模五十人以上の民間企業としたこととの整合性を考慮し、特別給の官民比較においても、企業規模五十人以上の民間企業を比較対象とすることとした。

3 官民給与の比較
 前期の官民給与の比較方法の見直しを行った上で、本年の官民給与の比較を行った結果は、次のとおりである。

(1) 月例給
 本院は、国家公務員給与等実態調査及び職種別民間給与実態調査の結果に基づき、官民の四月分の給与額を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行った。その結果、別表第五に示すとおり、公務員給与と民間給与の較差は十八円(〇・〇〇%)となり、ほぼ均衡している。
 民間における家族手当及び住宅手当の支給状況を調査した結果をみても、職員の扶養手当及び住居手当の現行支給状況とほぼ見合うものとなっている。

(2) 特別給
 本院は、職種別民間給与実態調査により民間の特別給(ボーナス)の過去一年間の支給実績を精確に把握し、これに職員の特別給(期末手当・勤勉手当)の年間支給月数を合わせることを基本に勧告を行っている。
 本年の職種別民間給与実態調査の結果、昨年八月から本年七月までの一年間において、民間事業所で支払われた特別給は、別表第六に示すとおり、所定内給与月額の四・四三月分に相当しており、職員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(四・四五月)とおおむね均衡している。

4 本年の給与の改定
(1) 改定の基本方針
 前記のとおり、本年四月時点で、公務員の月例給与が民間給与を十八円(〇・〇〇%)下回っていることが判明した。
 本院としては、以下の事情を総合的に勘案した結果、本年は、月例給の改定を見送ることが適切であると判断した。
ア 本年の官民の給与較差が現行俸給表で定めている俸給月額の最低単位である百円と比べても極めて小さく、適切な俸給表の改定を行うことが困難であること。
イ 諸手当については、民間の各手当の支給状況とおおむね均衡していることから、今回のような極めて小さな官民の給与較差の中で改定する特段の必要性は認められないこと。
 なお、平成十六年度においても、公務員の月例給与が民間給与の三十九円(〇・〇一%)下回っていたが、給与改定を見送っている。
 特別給については、前記のとおり、民間の年間支給割合が公務の年間支給月数とおおむね均衡していたことから、期末手当・勤勉手当等の支給月数の改定を行わないこととした。
 以上のように、本年は月例給と特別給の双方について水準改定は行わないが、給与構造の改革に関して、Vに示すとおり給与改定を行うこととした。

(2) その他の課題
ア 特殊勤務手当の見直し
 特殊勤務手当については、業務の外部委託の進展等により手当の支給実績が極めて低いもの、技術の進歩、社会情勢の変化等により特殊性が薄れていると考えられるものを中心に見直しを行っており、引き続き手当ごとの業務の実態等を精査して所要の見直しを図るための検討を進めることとする。

イ 独立行政法人等の給与水準の把握
 本院は、主務大臣及び各法人が行っている独立行政法人等の給与水準の公表において必要な協力を行ってきた。今年度は、新たに公表対象となった特殊法人及び認可法人を含め、各法人の給与水準の国家公務員との比較指標の提供等を行ったところである。
 本院としては、専門機関として、独立行政法人等における給与水準の在り方等の検討において、今後とも適切な協力を行うこととする。

V 給与構造の改革
 職員の士気を確保しつつ、能率的な人事管理を推進し、職務・職責や勤務実績に応じた適切な給与を実現するため、本院は、昨年の勧告時において、地域の民間賃金をより適切に反映させるための地域間給与配分の見直し、年功的な給与上昇を抑制し職務・職責に応じた俸給構造への転換、勤務実績の給与への反映の推進などを柱とする俸給制度、諸手当制度全般にわたる改革を行うこととし、改革の全体像についてその具体的な措置の内容、完成までのスケジュール等を示すとともに、平成十八年度から実施する措置については勧告を行ったところである。
 この給与構造の改革は、平成十八年度から平均四・八%の俸給表の水準引下げを経過措置を設けながら段階的に実施する一方で、この俸給表水準の引下げ分を原資として、新制度の導入や手当額の引上げについては、平成十八年度以降平成二十二年度までに逐次実施を図ることとしている。
 具体的には、手当の新設等については、@地域手当は、平成十八年度から段階的に実施し、平成二十二年度に完成させること、A広域異動手当は、平成十九年度から二段階に分けて導入すること、B俸給の特別調整額の定額化は、平成十九年度から実施し、経過措置を講ずること、C専門スタッフ職俸給表及び本府省手当の新設については、平成二十二年度までの間に実施するものとして準備を進めていくこと、を表明しているところである。
 また、給与への勤務実績反映の推進として、新たな昇給制度及び勤勉手当の勤務実績反映の拡大措置を平成十八年度から実施している。昇給、勤勉手当における勤務成績の判定については、成績上位者の判定の尺度及び標準的な勤務成績に達しないとされる場合の判定基準を示したところであり、これら勤務成績の判定に係る改善措置の活用は、平成十八年度から管理職層について先行して行い、引き続きその他の職員について行うこととしている。

(平成十九年度において実施する事項)
 これらの給与構造の改革は、計画的かつ着実に実施していく必要があり、平成十九年度においては、俸給表水準が段階的に引き下げられていくことにより見込まれる当年度の引下げ分を原資として、以下の施策について所要の措置を講じていくこととする。

(1) 地域手当の支給割合の改定
 地域手当の支給割合は、平成二十二年三月三十一日までの間は、地域手当の級地の区分ごとに人事院規則で定める暫定的な支給割合とすることとされているが、支給地域における職員の在職状況等を踏まえ、平成十九年四月一日から平成二十年三月三十一日までの間の支給割合は別表第七のとおりとする。

(2) 広域異動手当の新設
 国の行政機関においては、公正な行政サービスの提供、各官署における適正かつ責任ある業務執行の確保等のために、相当数の職員について広域的な人事異動を行う必要がある。
 職員の俸給水準を民間賃金水準の低い地域の水準を考慮して引き下げる中で、民間においては、広域的に転勤のある企業(他県に支店を有する企業)の従業員の賃金水準が地域の平均的な民間企業の従業員の賃金水準に比べて高い実態にあることを考慮し、公務において広域異動を行う職員の給与水準を調整するため、広域異動手当を新設し、広域異動の円滑化を図ることとする。

ア 支給対象職員
 官署を異にする異動を行った職員のうち、異動前後の官署間の距離及び異動前の住居から異動直後の官署までの距離のいずれもが六〇q以上となる職員(異動の態様等からみて、広域異動手当を支給することが適当でないと認められる職員を除く。)に支給する。
 また、異動前後の官署間の距離のみが六〇q以上となる職員及び特別職に属する国家公務員等から採用された職員で支給対象職員との権衡上必要と認められる者についても支給する。

イ 手当額(支給割合)及び支給期間
 広域異動手当は、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に次に掲げる異動前後の官署間の距離区分に応じた支給割合を乗じて得た額とし、異動の日から原則三年間支給する。
(ア) 六〇q以上三〇〇q未満三%(平成十九年度は二%)
(イ) 三〇〇q以上六%(平成十九年度は四%)
 なお、広域異動手当の支給期間中において職員が官署を異にする異動を行った場合における広域異動手当の支給については別に定める。
 また、施行日前に広域異動を行った職員に対する所要の経過措置を講ずるものとする。

ウ 他の手当との調整
 広域異動手当の支給される職員に、地域手当が支給される場合には、広域異動手当の額が地域手当の支給額を超える場合に限り、当該超える部分の額の広域異動手当を支給する。また、研究員調整手当が支給される場合には、研究員調整手当について必要な調整措置を講ずる。さらに、特地勤務手当に準ずる手当が支給される場合には、特地勤務手当に準ずる手当の支給割合を二%減ずることとする。

エ 諸手当の算定基礎
 広域異動手当は、民間賃金水準を考慮して俸給水準の調整を行う手当であることから、地域手当と同様に、諸手当(超過勤務手当、期末・勤勉手当等)の算定基礎とする。

オ 実施時期
 平成十九年四月一日から実施する。

 なお、広域異動手当の実施に当たっては、各府省において行われている異動が、公務上の必要性に基づき適切に行われるよう十分留意する必要がある。

(3) 俸給の特別調整額の定額化
 俸給の特別調整額については、年功的な給与処遇を改め、管理職員の職務・職責を端的に反映できるよう、民間企業において役付手当が定額化されている実態も踏まえ、俸給表別・職務の級別・俸給の特別調整額の区分別の定額制とする。

ア 手当額
 行政職俸給表(一)が適用される職員の手当額については、各職務の級の平成十八年四月一日現在の人員分布の中位に当たる号俸の俸給月額に俸給の特別調整額の区分ごとの支給割合と同率の算定割合を乗じて得た額とする。ただし、地方機関の管理職に適用される三種から五種までの手当額については、地方機関における超過勤務手当の支給実績等を考慮して、現行の俸給の特別調整額の支給割合と比べて高率の算定割合を設定した上で定額化する(三種一七・五%(現行一六%)、四種一五%(現行一二%)、五種一二・五%(現行一〇%))(別表第八参照)。
 行政職俸給表(一)以外の俸給表が適用される職員の手当額については、行政職俸給表(一)との均衡を考慮し、同俸給表において用いる号俸に相当する号俸の俸給月額を基礎として算定する。
 また、再任用職員の手当額については、職務の級別に定められた再任用職員の俸給月額を基礎として算定する。

イ 実施時期等
 俸給の特別調整額の定額化は、平成十九年四月一日から実施する。定額化後の俸給の特別調整額が平成十九年三月三十一日に受けていた俸給の特別調整額に達しない職員に対しては、平成二十年四月一日から一定割合を減じる方法による経過措置を適用する。
 定額化に伴い、給与法に規定する俸給の特別調整額の上限について所要の改定を行うとともに、週休日等に臨時又は緊急の勤務をした場合に支給する管理職員特別勤務手当の手当額についても、俸給の特別調整額の定額化による改定との均衡を考慮した所要の改定を行う。

(4) 勤務実績の給与への反映
 新たな昇給制度及び勤勉手当制度における勤務成績の判定に係る改善措置等の活用は、本年度から管理職員層について先行して行ったところであるが、その他の職員への活用について、平成十九年度からの実施に向けて必要な準備を進める。
 また、昨年の報告において平成十九年四月一日から実施することを表明している昇格運用の見直しに係る措置についても、実施のための準備を進める。
 なお、給与構造の改革として掲げている諸施策のうち、専門スタッフ職俸給表の新設に関しては、各府省における複線型人事管理に関する検討状況等をみつつ、検討を進めてきたところであるが、本院としては、今後とも、各府省において検討が進められている複線型人事管理の具体的内容や、専門スタッフ職にふさわしい職務の整備状況を踏まえて、関係府省と連携を図りながら、引き続きその具体化について検討を進めていくこととする。

 民間における家族手当の支給額と職員の扶養手当の現行支給額とを比較すると、配偶者と子二人に係る支給月額についてはほぼ見合うものとなっている。一方で、現行の扶養手当においては、三人目以降の子の支給月額が五、〇〇〇円となっており、二人目までの子が六、〇〇〇円であるのに対し一、〇〇〇円低い額となっていることから、我が国全体としての少子化対策が推進されていることに配慮し、扶養親族である子等のうち、三人目以降に係る支給月額を一、〇〇〇円引き上げ、二人目までの子等の額と同額とすることとし、給与構造の改革の実施とあわせて平成十九年四月一日から実施することとする。

W 給与勧告実施の要請
 人事院の給与勧告制度は、労働基本権を制約されている公務員の適正な処遇を確保するため、情勢適応の原則に基づき公務員の給与水準を民間の給与水準に合わせるものとして、国民の理解と支持を得て、公務員給与の決定方式として定着している。本年は、この民間準拠による官民給与の比較方法について、民間企業の給与水準をより適正に反映させるとの観点から、改めて検討を行い、比較対象企業規模、比較対象従業員の範囲等を見直すこととした。
 公務員は、行政ニーズが増大し、複雑化する中でそれぞれの分野において、離島やへき地を含め全国津々浦々で、国民生活の維持・向上、生命・財産の安全確保等の職務に精励している。特に、近年は「簡素で効率的な政府」の実現が求められる中で、個々の職員が高い士気をもって困難な仕事に立ち向かうことが一層強く求められており、公務員給与は、そのような職員の努力や実績に的確に報いていく必要がある。
 本年の勧告においては、月例給と特別給の双方について水準改定を行わないこととしたが、本年四月から段階的に実施している給与構造の改革について、広域異動手当の新設及び俸給の特別調整額の定額化を行うこととし、あわせて三人目以降の子等に係る扶養手当の額の改定を行うこととした。
 民間準拠により公務員給与を決定する仕組みは、長期的視点からみると、公務員に対し国民から支持される納得性のある給与水準を保障し、前述のような職員の努力や実績に報いるとともに、人材の確保や労使関係の安定などを通じて、行政運営の安定に寄与するものである。
 国会及び内閣におかれては、このような人事院勧告制度の意義や役割に深い理解を示され、別紙第二の勧告どおり実施されるよう要請する。


別紙第2 
勧  告
 次の事項を実現するため、一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)を改正することを勧告する。

1 改定の内容
(1) 俸給の特別調整額について
 特別調整額表に定める俸給月額の特別調整額は、職務の級における最高の号俸の俸給月額の一〇〇分の二五を越えてはならないこと。

(2) 扶養手当について
 配偶者以外の扶養親族に係る手当の月額(職員に扶養親族でない配偶者がある場合又は職員に配偶者がない場合の一人に係る手当の月額を除く。)を各一人につき六千円とすること。

(3) 広域異動手当について
ア 新たに広域異動手当を設け、職員がその在勤する官署を異にして異動(人事院規制で定める異動を除く。)をした場合において、当該異動の直前に在勤していた官署と当該異動の直後に在勤する官署との間の距離(以下「官署間の距離」という。)及び当該異動の直前の住居と当該異動の直後に在勤する官署との間の距離がいずれも六〇q以上であるときは、当該異動の日から三年を経過するまでの間、当該職員(これに相当すると認められる職員を含む。)に対し支給すること。

イ 広域異動手当の支給月額は、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に次に掲げる職員の区分に応じてそれぞれ次に定める割合を乗じて得た額とすること。
(ア) 官署間の距離が三〇〇q以上である職員 一〇〇分の六
(イ) 官署間の距離が六〇q以上三〇〇q未満である職員 一〇〇分の三

ウ 広域異動手当を支給される職員が、地域手当を支給されることとなる場合には、当該地域手当の額の限度において、広域異動手当を支給しないこととするほか、研究員調整手当又は特地勤務手当に準ずる手当を支給されることとなる場合には、所要の調整を行うこと。

エ 広域異動手当は、超過勤務手当、休日給、夜間手当、期末手当、勤勉手当、期末特別手当及び休職者の給与等のそれぞれの算出基礎とすること。

2 改定の実施時期
 この改定は、平成十九年四月一日から実施すること。

3 経過措置等
(1) 広域異動手当の支給割合の特例措置
 平成十九年四月一日から平成二十年三月三十一日までの間における広域異動手当の支給割合については、1の(3)のイ中「一〇〇分の六」とあるのは「一〇〇分の四」と、「一〇〇分の三」とあるのは「一〇〇分の二」とすること。

(2) その他所要の経過措置
 (1)に掲げるもののほか、この改定に伴い、所要の経過措置を講ずること。

 別紙第3
  公務員人事管理に関する報告
(省 略)


声明

(1) 人事院は、本日、比較対象企業規模五十人以上への拡大など官民比較方法の見直しを行った結果、官民較差は微少であるとして月例給・一時金の改定を見送り、給与構造見直しに関わる給与勧告や育児のための短時間勤務制度等の意見の申出を行った。
(2) 二〇〇六人勧期の闘いでわれわれは、依然として公務員バッシングが継続し、政府が公務員の総人件費をスケープゴートに徹底した歳出削減を実施する方針を閣議決定する厳しい情勢のもとで、@公務員給与水準の引下げを狙った官民比較方法の基本的な枠組みに関わる企業規模等の拙速な見直しを行わないことA公務員の月例給・一時金を維持・改善することB育児などの短時間勤務制度等を実現すること、などを最重点課題にした人勧期要求を提出し、ブロック別上京行動や延べ一・五万人にのぼる三次の中央行動、百三十六万筆の要請署名、三次の全国統一行動などを実施し、公務員連絡会の組織の総力を挙げた取り組みを進めてきた。また、連合もわれわれの取り組みを全面的に支援し、人事院に申入れを行うなどの取り組みを進めた。
(3) 本日の人事院勧告・報告のうち、比較対象企業規模を見直した上で月例給・一時金の改定を見送った措置については、われわれは到底これを認められない。
 本年の勧告・報告で人事院は、一九六四年の政労トップ会談で歴史的・制度的に公務員給与水準決定の社会的枠組みとして確立されてきた現行の比較企業規模を、十分納得いく説明もなく、政府の「要請」を受け入れる形で一方的に見直した。このことにより、人事院自らが交渉の中で明らかにしたように、月例給で一・一二%、四千二百五十二円、一時金で〇・〇五月分にも及ぶ官民較差が圧縮され、本来行われるべき月例給・一時金の改善勧告が見送られ、公務員給与水準は大きく抑制される結果となった。
 本年の勧告・報告は、人事院が、公務における労使関係を否定した政治の圧力に屈して総人件費削減政策に荷担したものであり、本来、労働基本権制約の代償機関であり、中立・公正な第三者専門機関であるべき人事院の独立・中立性が大きく損なわれたものとして厳しく糾弾しなければならない。
 われわれは、本年の勧告により、公務員の賃金・労働条件決定制度としての人事院勧告制度は歴史的・制度的に限界を迎えていることが明らかとなり、人事院勧告制度のもとですすめてきたわれわれの賃金闘争が大きな転換点を迎えたことを確認しなければならない。われわれは、真の意味で「人勧体制」から脱却し、団体交渉による決定システムとそのもとでの新たな賃金闘争の構築に向けた闘いの決意を固めなければならない。
 以上のことからわれわれは、本年、人事院が行った企業規模を見直した上での月例給・一時金の改定見送り措置を決して受け入れることはできず、今回の措置を強行した人事院の姿勢を厳しく批判し、強く抗議するとともに、今後、政府に対して改めて公務員給与の改善を求め、取り組みを強めることとする。
(4) 比較企業規模の見直しは、次年度以降の公務員給与水準にも継続的な影響を及ぼすだけでなく、政府が地場賃金比較による水準引下げと地域格差の拡大を方針化している地方自治体の賃金確定により大きく影響し、ひいては疲弊している地域経済にも悪影響を及ぼすことは明らかである。
 二〇〇六勧告では、政府・与党が公務員給与水準の大幅な引下げを求めている中で、マイナス勧告を行わせず月例給・一時金の「維持」に止めたことは、われわれが終始基本姿勢を堅持し粘り強く闘った結果として確認できる。しかし、企業規模の見直しとその結果を認めることができないことはいうまでもない。
 給与構造見直しに関わる広域異動手当、扶養手当の第三子引上げ等の給与勧告などについては、話し合いの経過に基づくものであり、勧告通り実施することを求める。
 育児のための短時間勤務制度の意見の申出については、介護に係る措置が先送りされ、後補充者を非常勤とするなど内容上の不満はあるものの、公務におけるワークシェアリング実現に向けた五年間にわたる取り組みの成果であり、本格的な短時間勤務制度実現に向けた第一歩として受け止め、自己啓発等の休業制度も含め政府に早期の法改正と実施を求めることとする。
 本年の報告事項の一般の職員の勤務実績反映や退職時給付のあり方、俸給の調整額の見直しなどの課題については、今後、人事院と交渉・協議を行い、結論を得ることとする。また、所定内勤務時間短縮、厳格な勤務時間管理と超勤縮減等の課題についても引き続き重点課題として取り組みを継続することとする。
(5) 本年の秋季闘争を巡る情勢は、小泉首相の後継を決定する自民党総裁選などもあり極めて不透明であるが、政府の「基本方針二〇〇六」に基づく総人件費削減政策が具体化される極めて厳しい情勢のもとでの闘いとなることは避けられない。
 われわれは、秋季闘争において、改めて使用者としての政府に対して十分な交渉・協議と合意に基づく公務員給与改善を求め、取り組みを強める。さらに、これから本格化する地方自治体の確定闘争や独立行政法人、政府関係法人等の闘いにおいても、厳しい情勢を踏まえつつ、公務員連絡会の官民比較方法の見直しに対する基本方針を堅持し、統一闘争体制のもとで全力で取り組みを進めることとする。
 同時に、連合・公務労協に結集し、公務員給与の社会的合意再確立のための取り組みを強めるとともに、行政改革推進本部の下に設置された「専門調査会」への対応を強め、労働基本権の確立を含む公務の労使関係制度の抜本的な改革に向けた取り組みを総力を挙げて前進させていく。さらに、国民生活の安心と安全を犠牲にして進められる政府・与党の「構造改革路線」に対決し、良質な公共サービス確立キャンペーンを中心とした取り組みを全力で進めていくものである。
二〇〇六年八月八日
公務員労働組合連絡会


給与勧告の骨子

○本年の給与勧告のポイント
 〜月例給、ボーナスともに本年は水準改定なし
 @ 官民給与の較差(0.00%)が極めて小さく、月例給の水準改定を見送り
 A 期末・勤勉手当(ボーナス)は民間の支給割合とおおむね均衡し、改定なし
 B 比較対象企業規模など官民給与の比較方法の見直し
 C 給与構造の改革の計画的な実施
  − 広域異動手当の新設、俸給の特別調整額の定額化等
T 給与勧告の基本的考え方
 (給与勧告の意義と役割)
    勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し適正な給与を確保する機能を有するもの。労使関係の安定を図り、能率的な行政運営を維持する上での基盤
 (民間準拠の考え方)
    国家公務員の給与は、市場原理による決定が困難であることから、労使交渉等によって経済・雇用情勢等を反映して決定される民間の給与に準拠して定めることが最も合理的
U 官民の給与較差に基づく給与改定
 1 官民給与の比較方法の見直し
   月例給における官民給与の比較方法の見直し
  @ 比較対象企業規模 従来の「100人以上」から「50人以上」に変更
             企業規模50人以上100人未満の企業の各役職段階との対応関係の設定
  A 比較対象従業員  ライン職の民間役職者の要件を変更
             要件変更後のライン職の役職者と同等と認められるライン職の役職者及びスタッフ職に拡大
  B 比較における対応関係の整理 給与構造の改革による俸給表の職務の級の新設・統合に伴う対応関係の整理

 2 官民給与の比較
   約10,200民間事業所の約43万人の個人別給与を実地調査(完了率89.1%)
  <月 例 給> 官民の4月分給与を調査し、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴、勤務地域の同じ者同士を比較
   ○ 官民較差 18円 0.00% 【行政職(一)…現行給与 381,212円 平均年齢40.4歳】
    ※ 官民較差が極めて小さく、適切な俸給表改定が困難であること、諸手当についても民間の支給状況とおおむね均衡していること等を勘案して、本年は月例給の水準改定を見送り
  <ボーナス> 比較対象企業規模の見直しを行った上で、昨年冬と本年夏の1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間支給月数を比較
   ○ 民間の支給割合  公務の支給月数(4.45月)とおおむね均衡
  <その他の課題>
   (1) 特殊勤務手当の見直し
     引き続き手当ごとの業務の実態等を精査して所要の見直しを検討
   (2) 独立行政法人等の給与水準
     専門機関として、独立行政法人等における給与水準の在り方等の検討において今後とも適切な協力
V 給与構造の改革
  昨年の勧告時において表明。地域間給与配分の見直し、職務・職責に応じた俸給構造への転換、勤務実績の給与への反映の推進などを柱とする俸給制度、諸手当制度全般にわたる改革を平成18年度以降平成22年度までに逐次実施
  平成19年度において実施する事項
 (1) 地域手当の支給割合の改定
   地域手当は、平成22年度までの間に計画的に改定することとしており、職員の地域別在職状況等を考慮し、平成19年4月1日から平成20年3月31日までの間の暫定的な支給割合を1〜3%引上げ
 (2) 広域異動手当の新設
   広域的に転勤のある民間企業の賃金水準が地域の平均的な民間企業の賃金水準よりも高いことを考慮し、広域異動を行った職員に対して手当を新設
  ・ 異動前後の官署間の距離及び異動前の住居から異動直後の官署までの距離のいずれもが60q以上となる職員(異動の態様からみて、広域異動手当を支給することが適当でないと認められる職員を除く。)に支給
  ・ 手当額は、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に、異動前後の官署間の距離が、60q以上300q未満の場合には3%(平成19年度は2%)、300q以上の場合には6%(平成19年度は4%)を乗じて得た額。異動の日から3年間支給
  ・ 地域手当、研究員調整手当、特地勤務手当に準ずる手当と所要の調整
  ・ 諸手当(超過勤務手当、期末・勤勉手当等)の算定基礎に
  ・ 平成19年4月1日から実施
 (3) 俸給の特別調整額の定額化
   年功的な給与処遇を改め、管理職員の職務・職責を端的に反映できるよう、定率制から俸給表別・職務の級別・特別調整額の区分別の定額制に移行。地方機関の管理職に適用される三種〜五種の手当額については、改善を行った上で定額化。平成19年4月1日から実施
 (4) 勤務実績の給与への反映
   新たな昇給制度及び勤勉手当制度における勤務成績の判定に係る改善措置等の活用について、管理職層以外の職員についても平成19年度からの実施に向けて準備
 (5) 専門スタッフ職俸給表の検討
   専門スタッフ職俸給表の新設は、各府省において検討が進められている複線型人事管理の具体的内容等を踏まえ、引き続きその具体化について検討
 <その他の改革>
   少子化対策が我が国全体で取り組まれている中で、扶養手当における3人目以降の子と2人目までの子の手当額の差を改める必要があることから、平成19年4月1日から3人目以降の子等の支給月額を1,000円引上げ(5,000円→6,000円)、給与構造の改革とあわせて実施


公務員人事管理に関する報告の骨子
1 本院の基本認識
 @ 今後の公務・公務員の役割
  ・ 公務は、国民生活を支える社会的基盤。高い質の維持・安定的運営が必要
  ・ 公務志望者層の変化が懸念される中、多様で有為な人材確保・育成が重要。行政の専門家集団として、高い倫理観と市民感覚の下、誇りと志をもって公務従事できる環境整備が課題
  ・ 定員削減・配置転換を円滑に実施する上でも、公正の確保・職員の利益保護への留意が重要
 A 公務員人事管理の向かうべき方向 ― ライフサイクル全体に即した検討
  ・ 外部人材の登用を進めると同時に、行政の中核を担う人材は、職業公務員として確保・育成・活用していくことが引き続き基本
  ・ キャリア・システムへの批判を受け止め、幹部要員を計画的に確保・育成する仕組みを幅広く検討。当面、節目節目の選抜強化と採用試験の種類にとらわれない人材登用を推進
  ・ 専らジェネラリスト重視から、特定分野の高度専門職など業務の必要性と職員の適性等に応じた人材の確保・育成へ
  ・ 仕事と家庭生活の調和を図るため、職員本人の意向にも配慮した多様な勤務形態を用意
  ・ 早期退職慣行の是正等のため、複線型人事管理の導入が肝要。生涯設計の在り方につき幅広い検討が必要
2 主な課題と具体的方向
 @ 能力・実績に基づく人事管理
  ア 体系的な人事評価制度の着実な実現に向けて、評価の試行の対象職位等を段階的に拡充
  イ T種職員の選抜の厳格化とU・V種等職員の登用の促進
  ウ 分限制度の適切な運用 ― 手続や留意点等の対応措置についての指針を早急に作成
 A 多様な有為の人材の確保
  ア 人材供給構造が変化し、公務志望者層の意識の変化が看過できない状況。人材確保の在り方について強い問題意識を持って検討
  イ 新たな経験者採用システム(募集や能力実証の一部を人事院が実施)を本年秋から導入
  ウ 官民人事交流の促進
 B 勤務環境の整備
  ア 育児のための短時間勤務制度、自己啓発等休業制度の導入について、勧告と併せ意見の申出
  イ 超過勤務の縮減に向け、政府全体としての業務量の削減、在庁時間等の適切な把握、命令要件等を指針に盛り込むこと等の取組を推進。週所定勤務時間については引き続き検討
  ウ 心の健康づくりの対策の推進、苦情相談の充実
 C 退職管理
  ア 営利企業への再就職規制制度を厳正に運用。職員の能力を活用した再就職は「公正な人材活用システム」により公正・透明に推進
    早期退職慣行是正のため、複線型人事管理の導入など能力・実績に応じた昇進管理を強化。
    専門スタッフ職俸給表は引き続き検討
  イ 内閣の要請を踏まえ、退職給付の官民比較、外国調査。まとまり次第、見解を表明

  人事院は、人事行政の中立第三者・専門機関として、引き続きその使命を適切に果たしていく考え


意見の申出及び関連制度の骨子
 育児のための短時間勤務の制度の導入等のための国家公務員の育児休業等に関する法律の改正及び自己啓発等休業制度に関する法律の制定について立法措置を行うよう、国家公務員法第23条に基づき、国会及び内閣に意見の申出

育児のための短時間勤務の制度の導入等についての意見の申出の概要
 少子化対策が求められる中、公務においても、職員の育児を支援するため、人件費や定員の増加を伴うことなく、@育児のための短時間勤務、A後補充としての任期付短時間勤務、B並立任用の仕組みを導入し、長期間にわたる育児と仕事の両立を可能とするとともに、男性職員の取得拡大にも資するよう育児休業法を改正

1 育児短時間勤務
 (1) 請求・承認  任命権者は、職員が小学校就学始期に達するまでの子を養育するため、期間の初日及び末日並びに希望する勤務時間帯を明らかにして請求したときは、公務の運営に支障がない限り、短時間勤務を承認するものとすること
 (2) 短時間勤務の型  1日当たり4時間(週20時間)、週3日(週24時間)等の型から決定
 (3) 期間の延長・再度の短時間勤務  子が小学校就学始期に達するまで期間の延長を請求可能。期間満了日の翌日以後原則1年は当初予測できなかった特別の事態が生じた場合等を除いて再度の育児短時間勤務は請求不可
 (4) 超過勤務等  公務の運営に著しい支障が生じる場合を除き、超過勤務等を命じることは不可
 (5) 並立任用   同一の常勤官職に2人の週20時間勤務の育児短時間勤務職員を任用(並立任用)し、空いた官職に常勤職員を採用可
 (6) 承認の失効、取消、不利益取扱いの禁止と過員による短時間勤務  育児休業の場合を準用。承認が失効又は取り消された場合に過員となるときは、任命権者は、やむを得ない期間に限り短時間勤務を命じることが可能
 (7) 給 与    俸給月額、職務関連手当は勤務時間に応じた額、生活関連手当は全額支給。昇給は短時間勤務を理由とする割り落としはせず。期末・勤勉手当等は基礎額、在職期間等の特例を措置
 (8) 関連制度
  ア 定  員  フルタイム勤務時と同様に定員は1。ただし、同一官職(定員1)に一定の条件の下で2人の育児短時間勤務職員を任用
  イ 兼業規制  フルタイム勤務時と同様に適用
  ウ 退職手当、共済、宿舎 常勤職員であり、適用の方向で総務省及び財務省において検討中
2 任期付短時間勤務職員
 (1) 任  用   任命権者は、育児短時間勤務職員の処理できない業務に従事させるため、育児短時間勤務の請求期間を上限として予算の範囲内で任期付短時間勤務職員(非常勤職員)を任用可。当該請求期間の範囲内で任期を更新可
 (2) 勤務時間   週10時間から20時間までの範囲内
 (3) 給  与   俸給表を適用。俸給月額及び職務関連手当は勤務時間に応じた額。扶養手当、住居手当、単身赴任手当及び寒冷地手当は非支給
 (4) 服務義務   非常勤職員ではあるが、その職責等から基本的に常勤職員と同様の取扱い
 (5) 関連制度
  ア 定  員  非常勤職員であり、定員外
  イ 兼業規制  兼業は原則禁止。国公法104条兼業の許可は勤務形態等が一般の常勤職員と異なることを考慮して運用
  ウ 退職手当、共済  非常勤職員であり、非適用
3 育児休業をした職員の給与の復職時調整
  部内の他の職員との権衡上必要と認められる範囲内で必要な調整が可能
4 部分休業の改正
  部分休業の名称を育児時間に変更。対象となる子の年齢を小学校就学始期に達するまで(現行3歳未満)に改正。勤務しないことを承認する時間を1日につき2時間までと規定
5 実施時期
  公布の日から起算して1年を超えない範囲内の日から実施

自己啓発等休業に関する法律の制定についての意見の申出の概要
 職員の自主的な幅広い能力開発や自発的な国際ボランティアへの参加を可能とするために、職員としての身分を保有しつつ、職務に従事しない(無給)制度を創設

1 自己啓発等休業制度の概要
 (1) 休業の事由
  @ 修学のための休業
    国内外の大学の大学院又は学部等の課程に在学
  A 国際貢献活動のための休業
    独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する国際貢献活動(国際協力機構の推薦及び経費負担による国連ボランティア計画(UNV)を含む。)に従事
 (2) 請求・承認  任命権者は、職員が(1)の事由による休業を請求したときは、公務の運営に支障がある場合を除き、勤務成績、修学又は国際貢献活動の内容等を考慮した上、承認できるものとすること
 (3) 休業の期間  1回につき3年(修学の場合であって、特段の必要性がない場合は原則2年)を超えない期間
 (4) 対象となる職員の要件  採用後2年以上在職していること等
 (5) 休業の効果  身分は保有するが職務に従事せず、給与は非支給
 (6) 給与の復職時調整  部内の他の職員との権衡上必要と認められる範囲内で必要な調整が可能
2 関連制度
 (1) 定  員   休業期間中は「身分は保有するが、職務に従事しない」ことから、定員外
 (2) 兼業規則
  @ 修学のための休業
    国公法104条の兼業は、公務員としての信用を傷つけるもの等を除き、基本的に認める運用
  A 国際貢献活動のための休業
    休業期間中の国際貢献活動への従事に関しては、国公法104条は適用せず
 (3) 退職手当、共済  自己啓発等休業中の職員に適用の方向で総務省及び財務省において検討中
 (4) 宿  舎   自己啓発等休業中の職員で宿舎が必要な場合に限り適用する方向で財務省において検討中
3 実施時期
  公布の日から起算して1年を超えない範囲内の日から実施