機関紙「自治労府職」

 2007年8月8日号外

人事院勧告特集

声明

1、人事院は、本日、月例給を一三五二円、〇・三五%、一時金の月数を〇・〇五月引き上げることを中心とする本年の給与勧告や非常勤職員の処遇改善に向けた検討、所定勤務時間の短縮に向けた準備を開始することなどの報告を行った。
2、二〇〇七人勧期の取組みでわれわれは、公務を巡る厳しい情勢を踏まえながら、公務員給与の社会的合意の再構築や団体交渉による決定制度の確立を運動の基本目標として位置づけつつ、@給与水準の改善勧告の実現A非常勤職員の処遇改善B所定勤務時間の短縮、などを重点課題に設定し、二次の中央行動や三次の全国統一行動を実施して、公務員制度改革や参議院選挙闘争と一体の闘いを進めてきた。
3、本日の人事院勧告は、六年ぶりにベア勧告が行われ初任給・若年層の俸給表が改定されたこと、一時金についても最小単位ではあるものの月数増の勧告が行われたこと、などは本年の民間賃金の実勢や動向からして当然のことであるが、公務員給与を巡る厳しい情勢の中で、終始、給与改善を求めてきたわれわれの取組みの成果である。また、本年、所定勤務時間短縮の勧告に踏み込まなかったことは不満であるが、来年の実施を確約させたことも、ねばり強い交渉の到達点として確認できる。
 しかし、@一時金の配分において、人事評価制度が確立していない現状において十分な協議もなく勤勉手当の成績上位者に重点配分したことA専門スタッフ職俸給表について複線型人事制度との関わりを十分説明することなく、政府の要請に基づいて勧告したことは、納得がいかない。加えて、突如、自宅に係る住居手当の「廃止も含め見直しに着手する」ことを一方的に宣言したことについても極めて遺憾である。
 公務内の格差是正の課題として重視してきた非常勤職員の処遇改善や超過勤務縮減策については、従来に比べて一歩踏み出しているが、われわれの要求に照らして不十分といわざるを得ない。これを第一歩として、確実に次のステップに踏み出すよう強く求めておきたい。
 その他、@高齢雇用の促進A人事評価制度とその活用のあり方等についても検討を進めるとしているが、これらの課題はいずれも勤務条件の重要事項であり、今後、十分交渉・協議し、合意の上で施策のとりまとめを行うことを求めておきたい。
4、現在われわれは、昨年の比較対象企業規模の一方的な見直し等により、公務員の賃金・労働条件決定制度としての人事院勧告制度が歴史的・制度的に限界を迎えているとの認識に基づき、団体交渉による決定制度とそのもとでの新たな賃金闘争の構築を目指して全力で取組みを進めている。しかし、それらが実現するまでは、現行の人事院勧告制度のもとでの賃金・労働条件改善の取組みを着実に進めていくことが必要である。
 以上のことからわれわれは、政府に対して、公務員労働者や地域の民間労働者等の生活改善に結びつく本年の給与改善勧告を直ちに勧告通り実施する閣議決定を行い、早期に給与法改正法案を国会提出することを求め、秋季確定闘争を進めることとする。
5、参議院選挙で自民党が大敗し、与野党逆転がなったとはいえ、公務・公共部門については引続き厳しい情勢が継続するものと認識する必要がある。秋季確定闘争を巡っても、追いつめられた安倍政権が公務員給与を焦点に据え、ますますバッシングを強めることも十分に想定され、勧告の取扱いも予断を許さない情勢にある。
 われわれは秋季闘争において、こうした厳しい情勢を十分認識し、新賃金の確定闘争を強めるとともに、これから本格化する地方自治体、独立行政法人、政府関係法人等の闘いにおいても統一闘争体制を堅持し、全力で取組みを進めることとする。
 同時に、国公法の改正で公務員制度改革が新たな段階に入ったことを踏まえ、連合・公務労協に結集し、「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」や「専門調査会」への対応を強め、労働基本権の確立を含む公務の労使関係制度の抜本的な改革や透明で納得性のある人事評価制度確立に向け総力を挙げて取組みを前進させていく。さらに、政府・与党の「構造改革路線」に対決し、格差是正と良質な公共サービス確立キャンペーンを全力で進めていくものである。
二〇〇七年八月八日
公務員労働組合連絡会


初任給1・2%、勤勉手当0・05カ月引き上げ
勤務時間 民間準拠を基本に08勧告で時短の方針

 人事院は八月八日、内閣総理大臣および両院議長に対し、初任給の一・二%程度の引き上げを中心とする若年層の賃金改善、勤勉手当の〇・〇五カ月引き上げ、子等に係る扶養手当の五〇〇円引き上げなどを中心とする勧告を行った。焦点となっていた公務員の所定内勤務時間短縮については、来年を目途に、入念に準備を行った上で、民間準拠を基本として勧告を行うことを報告で言及した。給料表の改定については、初任給と若年層に限定した改定となり、一時金も勤勉手当の引き上げに止まった。また、公務員連絡会が求めていた非常勤職員の処遇改善や超勤縮減策が先送りになるなどの課題もあるが、給与勧告としては六年ぶり、平均年収ベースでは九年ぶりのプラス勧告となった。公務員連絡会は勧告の完全実施を求め、「新賃金の確定闘争を強める」との声明を出した。以下、勧告(別紙第3「報告」は八面の骨子を参照)の全文。

実質9年ぶりのプラス勧告

平成十九年八月八日
衆議院議長 河野 洋平殿
参議院議長 江田 五月殿
内閣総理大臣 安倍晋三殿
  人事院総裁 谷 公士

 人事院は、国家公務員法、一般職の職員の給与に関する法律等の規定に基づき、一般職の職員の給与等について別紙第1のとおり報告し、給与等の改定について別紙第2のとおり勧告する。あわせて、公務員人事管理について別紙第3のとおり報告する。

別紙第1
職員の給与等に関する報告

(はじめに)
 現在、公務及び公務員のあり方が国民から厳しく問われている。
 公務員制度改革については、先般、国家公務員法の改正が行われたほか、内閣において公務員制度全般の課題についての検討が始められている。
 本院としても、人事行政の専門機関として、別紙第3に示すとおり公務員制度改革に積極的に取り組むとともに、公務及び公務員に対する国民の信頼の回復に向けて最大限努力していく所存である。
 本院は、中立第三者機関として、国家公務員法に定める情勢適応の原則に基づき、職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する責務を有しており、昭和二十三年の第一回の給与勧告以来、常に必要な調査研究を行い、勧告を積み重ねてきている。給与勧告においては、民間給与との精確な比較を基に給与水準の適正化を図るとともに、民間賃金の動向をはじめとする公務をめぐる諸情勢の変化に対応できるよう、公務員給与の改革に取り組んでいる。
 最近においては、平成十七年の勧告時の報告において、国家公務員の給与制度の基本である職務給の原則、成績主義を推し進めるとともに、地域における公務員給与水準の適正化を図るため、給与制度の抜本的な改革を行うことを表明した。この給与構造改革は、新たな時代に向けての適正な給与制度を実現するため、平成十八年度から平成二十二年度までの五年間で、逐次改革を実施していくものである。
 また、給与水準に関しては、民間企業の給与水準をより適正に公務の給与水準に反映させるため、平成十八年勧告の基礎となる民間給与との比較方法について、比較対象企業規模をそれまでの百人以上から五十人以上に改めるとともに、月例給の比較対象となる民間企業の従業員の範囲を見直すなど抜本的な見直しを行った。これにより、公務と民間で同種・同等の者同士を比較するという民間準拠方式の下で、民間企業従業員の給与をより広く把握し、公務員給与に反映させることとなった。

1 給与構造改革の概要
(1) 地域間給与配分の見直し
 国家公務員の基本給(俸給)の水準は、民間の全国平均の水準を基礎に定められていたため、民間賃金が全国平均より低い地域では公務員の給与が地場企業の賃金より高くなっているとともに、民間賃金が高い地域においては公務員の給与が民間賃金を下回っていた。このため、全国共通に適用される俸給表の水準について、民間賃金水準が最も低い地域に合わせ、平均で四・八%の引下げを実施することとする一方、主に民間賃金が高い地域に勤務する職員を対象として、三%から最大一八%までの地域手当を新設することとした(平成十七年勧告)。あわせて、広域にわたる異動を行う職員を対象に広域異動手当を新設することとした(平成十八年勧告)。

(2) 職務・職責に応じた俸給構造への転換
 俸給は、職務・職責に応じて支給されるべきものであるが、給与構造改革前の俸給表は、上下の職務の給の間における水準の重なりが大きな構造となっているなど、年功的な給与上昇を許容するものとなっていた。このため、俸給表水準の平均四・八%の引下げの際に、中高齢層の引下げ幅を七%程度にすることなどにより、給与カーブのフラット化を進めることとした(平成十七年勧告)。さらに、課長、課長補佐、係長等のそれぞれの職務・職責の違いを重視した俸給表への転換を図るよう、職務の級と役職段階との関係を再整理し、職務の級の統合、新設を行うこととした(平成十七年勧告)。

(3) 勤務実績の給与への反映の推進
 給与構造改革前においては、普通昇給について一律的な運用が見られたことに加え、特別昇給について持ち回り的な運用がなされているとの指摘があるなど、昇給への勤務実績の反映が十分に行われているとは言い難い状況となっていた。このため、それまでの俸給表の号俸を四分割することにより、弾力的な昇給幅を確保した上で、普通昇給と特別昇給を勤務実績に基づくいわゆる査定昇給に一本化し、勤務実績を適切に反映できるよう整備を図ることとした(平成十八年実施)。
 また、ボーナス(勤勉手当)についても、支給額に勤務実績をより反映し得るよう、「優秀」以上の成績区分の人員分布を拡大することとした(平成十八年実施)。

(4) 複線型人事管理に向けた環境整備
 行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、公務において職員が培ってきた高度の専門的な知識や経験を活用するとともに、早期退職慣行を是正し、在職期間の長期化に対応する観点から、複線型人事管理を導入することが極めて重要となっている。
 このため、本院としても、これまでのライン職を中心とした人事管理から複線型人事管理に転換していくに当たっての環境整備の一環として、高度の専門能力を持つスペシャリストに対して適切な給与処遇が行えるよう、Vに示すとおり、平成二十年度から、専門スタッフ職俸給表を新設することとしている。

2 給与構造改革の進捗状況
 給与構造改革は、平成十八年度から、俸給表水準の引下げを実施しつつ、逐次、手当の新設等の措置を講ずることとしており、別表第1(略)のとおり、現在、段階的に進行している。
 以上のとおり、給与構造改革を含む公務員給与の改革は、着実に実施に移されており、適正な給与水準が確保されるとともに、新たな制度の下で、地域間配分の適正化、職務給の徹底、成績主義の推進が進められているほか、専門スタッフ職俸給表の活用を通じて複線型人事管理のための環境整備を図っていく過程にある。本院としては、引き続き、これらの改革を進めることにより、社会一般の情勢に適応し、国民の支持の得られる適正な公務員給与の確保に向けて全力で改革に取り組んでいく所存である。

T 給与勧告の基本的考え方
1 給与勧告の意義と役割
 給与勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものであり、従来より、国家公務員の給与水準の適正化についてのみならず、給与制度の見直しについても勧告を行っている。
 公務員給与については、納税者である国民の理解を得る必要があることから、本院が労使当事者以外の第三者の立場に立ち、民間給与との精確な比較をもとに給与勧告を行うことにより、適正な公務員給与が確保されている。勧告が実施され、適正な処遇を確保することは、人材の確保や労使関係の安定に資するものであり、能率的な行政運営を維持する上での基盤となっている。

2 民間準拠の考え方
 本院は、国家公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行っている。
 民間給与との比較方法については、単純な給与の平均値によるのではなく、主な給与決定要素である役職段階、年齢、勤務地域などを同じくする者同士を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行っている。また、前記のとおり、昨年の勧告において、民間企業従業員の給与をより広く把握し、公務員の給与に反映させるため、比較対象企業規模をそれまでの百人以上から五十人以上に改めるなどの見直しを行った。
 民間準拠を基本に勧告を行う理由は、国家公務員も勤労者であり、勤務の対価として適正な給与を確保することが必要とされる中で、その給与は、民間企業と異なり、市場原理による決定が困難であることから、労使交渉等によってその時々の経済・雇用情勢等を反映して決定される民間の給与に準拠して定めることが最も合理的であり、職員の理解と納得とともに広く国民の理解を得られる方法であると考えられることによる。

3 公務員給与を取り巻く諸情勢
 公務員給与は、平成十四年、平成十五年及び平成十七年が月例給の引下げ、また、平成十一年から平成十五年までが五年連続で特別給の年間支給月数の引下げとなっており、一昨年まで年間給与の減少が続いていた。昨年は、月例給、特別給の双方について公務員給与と民間給与の水準がほぼ均衡していたことから、改定を行わなかった。

(1) 最近の賃金・雇用情勢等
ア 民間賃金指標の動向
 「毎月勤労統計調査」(厚生労働省、事業所規模三十人以上)によると、本年四月のパートタイム労働者を含む常用労働者の所定内給与は、昨年四月に比べ〇・一%増加している。また、所定外給与は二・二%増加しており、これらを合わせた「決まって支給する給与」は〇・三%の増加となっている。なお、パートタイム労働者を除く一般労働者についても、所定内給与は〇・一%の増加、決まって支給する給与は〇・三%の増加となっている。
イ 物価・生計費
 本年四月の消費者物価指数(総務省、全国)は、昨年四月と同水準となっており、勤労者世帯の消費支出(同省「家計調査」、全国)は、昨年四月に比べ名目〇・一%の減となっている。
 本院が家計調査を基礎に算定した本年四月における全国の二人世帯、三人世帯及び四人世帯の標準生計費は、それぞれ一九二、七八〇円、二一一、七七〇円及び二三〇、七六〇円となっている。また、「全国消費実態調査」(同省)を基礎に算定した同月における一人世帯の標準生計費は、九八、二七〇円となっている。
ウ 雇用情勢
 本年四月の完全失業率(総務省「労働力調査」)は、昨年四月の水準を〇・三ポイント下回り、三・八%(季節調整値)となっている。
 また、本年四月の有効求人倍率及び新規求人倍率(厚生労働省「一般職業紹介状況」)は、昨年四月に比べると、それぞれ〇・〇一ポイント、〇・〇五ポイント上昇して一・〇五倍(季節調整値)、一・五八倍(同)となっている。

(2) 各方面の意見等
 本院は、公務員給与の改定を検討するに当たって、東京のほか全国四十二都市において有識者との懇話会、中小企業経営者等との意見交換を行うこと等により、広く国民の意見の聴取に努めた。
 各界との意見交換においては、昨年四月から実施している給与構造改革について、その内容は妥当との意見が多かった。その上で、勤務実績の給与への反映における評価基準の設定等に当たっては、様々な工夫が必要である等の意見があったほか、専門スタッフ職俸給表については、早期退職慣行の是正につながることから導入する必要があるとの意見が多かった。また、昨年実施した民間給与との比較方法の見直しについては妥当との意見が多かった。
 本院が委嘱している「国家公務員に関するモニター」(五百人)においては、公務員の給与を決定するに当たって重視すべき要素として、「個々の職員の仕事の実績や成果」(五一・八%)、「就いている仕事の内容や専門性」(三六・五%)とする意見が高い割合となっている。

U 民間給与との較差に基づく給与改定
1 公務員給与と民間給与の実態
(1) 公務員給与の状況
 本院は、「平成十九年国家公務員給与等実態調査」を実施し、一般職の職員の給与に関する法律が適用される常勤職員の給与の支給状況等について全数調査を行った。その結果、本年の民間給与との比較対象である行政職俸給表(一)適用者(一六六、五六八人、平均年齢四〇・七歳)の本年四月における平均給与月額は三八三、五四一円となっており、税務署職員、刑務官等を含めた職員全体(二八六、六一七人、平均年齢四一・四歳)では四〇一、六五五円となっている。

(2) 民間給与の状況
ア 職種別民間給与実態調査
 本院は、企業規模五十人以上、かつ、事業所規模五十人以上の全国の民間事業所約五万四千(母集団事業所)のうちから、層化無作為抽出法によって抽出した一〇、一五四の事業所を対象に、「平成十九年職種別民間給与実態調査」を実施した。調査では、公務の行政職俸給表(一)と類似すると認められる事務・技術関係二十二職種の約三十七万人及び研究員、医師等五十六職種の約六万人について、本年四月分として個々の従業員に実際に支払われた給与月額等を実地に詳細に調査した。また、各民間企業における給与改定の状況や、雇用調整の実施状況等についても、引き続き調査を実施した。
 職種別民間給与実態調査については、昨年から調査対象企業の範囲を拡大しているが、調査完了率は、調査の重要性に対する民間事業の理解を得て、昨年よりも上昇し、八九・四%と極めて高いものとなっており、調査結果は広く民間事業所の給与の状況を反映したものとなっている。

イ 調査の実施結果等
 本年の職種別民間給与実態調査の主な調査結果は次のとおりである。
(ア) 本年の給与改定の状況
(初任給の状況)
 新規学卒者の採用を行った事業所は、大学卒で四〇・〇%(昨年四一・二%)、高校卒で一八・五%(同二〇・七%)となっているが、特に大学卒では、企業規模が大きい事業所における採用割合が高くなっており、企業規模五百人以上の事業所では七〇・〇%(同七六・九%)となっている。
 これらのうち初任給が増額となっている事業所は、大学卒で二八・四%(昨年二一・五%)、高校卒(同一九・二%)となっており、昨年に比べて増加している。また、新卒事務員・技術者の初任給の平均額は、大学卒で一九五、〇四八円(同一九二、六八六円)、高校卒で一五六、四七二円(同一五四、八一〇円)となっており、昨年に比べて大幅な増額となっている。

(給与改定の状況)
 別表第2に示すとおり、民間事業所においては、一般の従業員について、ベースアップを実施した事業所の割合は二八・一%(昨年二五・七%)となっており、昨年に比べて増加している。一方、ベースアップを中止した事業所の割合は一三・五%(同一六・二%)、ベースダウンを実施した事業所の割合は〇・五%(同〇・七%)となっており、昨年に比べていずれも減少している。
 また、別表第3に示すとおり、一般の従業員について、定期的に行われる昇給を実施した事業所の割合は七四・一%(昨年六八・四%)となっており、昨年に比べて増加している。

(イ) 雇用調整の実施状況
 別表第4(略)に示すとおり、民間事業所における雇用調整の実施状況をみると、平成十九年一月以降に雇用調整を実施した事業所の割合は一六・四%となっており、昨年(一九・九%)に比べて減少している。雇用調整の措置内容をみると、部門の整理・部門間の配転(七・一%)、採用の停止・抑制(四・七%)、業務の外部委託・一部職種の派遣社員等への転換(三・五%)の順になっている。

2 民間給与との比較
(1) 月例給
(民間給与との較差)
 本院は、国家公務員給与等実態調査及び職種別民間給与実態調査の結果に基づき、公務においては行政職俸給表(一)、民間においては公務の行政職俸給表(一)と類似すると認められる職種の者について、給与決定要素を同じくすると認められる者同士の四月分の給与額を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行った。その結果、別表第5に示すとおり、公務員給与が民間給与を一、三五二円(〇・三五%)下回った。

(諸手当)
 民間における家族手当の支給状況を調査した結果は、別表第6に示すとおりであり、職員の扶養手当の現行支給額と比較すれば、配偶者と子二人に係る民間の家族手当の支給額が職員のこれらに係る扶養手当の支給額を上回っている。

(2) 特別給
 本院は、職種別民間給与実態調査により民間の特別給(ボーナス)の過去一年間の支給実績を精確に把握し、これに職員の特別給(期末手当・勤勉手当)の年間支給月数を合わせることを基本に勧告を行っている。
 本年の職種別民間給与実態調査の結果、昨年八月から本年七月までの一年間において、民間事業所で支払われた特別給は、別表第7に示すとおり、所定内給与月額の四・五一月分に相当しており、職員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(四・四五月)を上回っている。

3 本年の給与の改定
(1) 改定の基本方針
 前記のとおり、本年四月時点で、公務員の月例給与が民間給与を一、三五二円(〇・三五%)下回っていることが判明した。
 これは、ベースアップを実施した事業所の割合が昨年に比べて増加している一方、ベースアップを中止した事業所、ベースダウンを実施した事業所の割合はいずれも減少していることなどによるものと考えられる。
 給与勧告を通じて民間給与との精確な比較により適正な公務員給与を確保することは、人材の確保や労使関係の安定に資するものであり、能率的な行政運営を維持する上での基盤となっている。本院としては、月例給について、民間給与との格差を埋める形で均衡を図ることが適当であると判断した。
 月例給の改定においては、基本的な給与である俸給月額について、民間との間に相当の差が生じている初任給を中心に若年層に限定して改定を行い、中高齢層については改定を行わないこととした。また、扶養手当について、扶養親族である子等に係る支給月額を引き上げることとした。
 さらに、地域手当の本年度の支給割合について、地域手当の級地の支給割合と平成十八年三月三一日の調整手当の支給割合との差が一定以上の地域において、給与構造改革における今後の改定分の一部を繰り上げて、引上げを行うこととした。
 特別級については、職種別民間給与実態調査の結果に基づき、昨年冬と本年夏の一年間の民間の特別給の支給割合に見合うよう、〇・〇五月分引き上げる必要があると判断した。
 以上のように、本年は月例給及び特別給について所要の改定を行うこととした。月例給の改定については、本年四月の公務員給与と民間給与を均衡させるためのものであることから、同月に遡及して実施する必要がある。
 このほか、給与構造改革に関してVに示すとおり改定を行うこととした。

(2) 改定すべき事項
ア 俸給表
 公務の初任給を中心とした若年層の俸給水準については、平成十四年以降、俸給表の引下げ改定に伴って引き下げられているが、民間においては、前記のとおり、初任給の顕著な伸びがみられる。
 一方、中高齢層については、給与構造改革において、民間の給与水準を踏まえつつ、給与カーブをフラット化するため、俸給水準の引下げが段階的に実施されている。
 以上の点を踏まえ、民間との間に相当の差が生じている初任給を中心に若年層に限定して改定を行い、中高齢層については改定を行わないこととする。
 具体的には、民間との給与比較を行っている行政職俸給表(一)について、U種・V種採用職員の初任給を一・二%の改定とし、それに準じてT種採用職員の初任給及び若年層の俸給月額を改定する。その結果、若年層の多くが在職する一級の平均改定率は一・一%、二級は〇・六%の改善となり、行政職俸給表(一)全体の平均改定率は〇・一%となる。
 また、行政職俸給表(一)以外の俸給表についても、行政職俸給表(一)との均衡を基本に、所要の改定を行うこととする。
 なお、再任用職員の俸給月額並びに指定職俸給表、任期付研究員俸給表(招へい型)及び特定任期付職員俸給表については、本年の俸給表改定が若年層に限定したものであることから改定を行わない。
イ 扶養手当
 民間の支給状況等を考慮するとともに、子等を扶養する職員の家計負担の実情や我が国全体としての少子化対策が推進されていることにも配慮し、扶養親族である子等に係る支給月額(職員に扶養親族でない配偶者がある場合又は職員に配偶者がない場合の一人に係る支給月額を除く。)を五百円引き上げることとする。
ウ 地域手当の支給割合の改定
 給与構造改革において、地域間給与配分の見直しは着実に実施すべき重要な課題であり、その改定を円滑に進めるため、本年四月一日から平成二十年三月三十一日までの間の地域手当の支給割合について、地域手当の級地の支給割合と平成十八年三月三十一日の調整手当の支給割合との差が六%以上の地域において、既に本年四月に行った改定に加えて、別表第8(略)のとおり、〇・五%の引上げを行うこととした。
エ 期末手当・勤勉手当等
 期末手当・勤勉手当については、昨年八月から本年七月までの一年間における民間の特別給の支給割合との均衡を図るため、支給月数を〇・〇五月分引き上げ、四・五月分とすることとする。支給月数の引上げ分は、民間の特別給の支給状況等を参考に勤勉手当に割り振ることとし、本年度については、十二月期の勤勉手当を引き上げ、平成二十年度以降においては、六月期及び十二月期の勤勉手当が均等になるよう配分することとする。
 なお、勤務実績を支給額により反映し得るよう、本年の勤勉手当の支給月数の引上げ分の一部を用いて、「優秀」以上の成績区分を適用されるものの成績率と「良好(標準)」の成績区分を適用される者の成績率の差の拡大を図ることとする。
 また、指定職俸給表適用職員の期末特別手当並びに任期付研究員及び特定任期付職員の期末手当についても同様に支給月数を引き上げることとする。

(3) その他の課題
ア 住居手当
 住居手当については、民間における支給状況、職員の家賃負担の状況等を踏まえ、自宅に係る住居手当の廃止も含めて、その見直しに着手する。
イ 非常勤職員の給与
 委員、顧問、参与等以外の非常勤職員の給与については、一般職の職員の給与に関する法律第二十二条第二項の規定に基づき、各庁の長が、常勤の職員との権衡を考慮し、予算の範囲内で支給しているところであり、多様な勤務に応じた様々な処遇が行われているが、同様の職務に従事しながら、所属する府省によって必ずしも均衡がとれてない事例も見受けられる。本院としては、非常勤職員の給与の実態の把握に努めるとともに、それぞれの実態に合った適切な給与が支給されるよう、必要な方策について検討していくこととする。
 なお、非常勤職員の問題については、民間の状況もみつつ、その位置付け等も含めて検討を行う必要があるものと考える。
ウ 独立行政法人等への協力
 本院は、主務大臣、独立行政法人、国立大学法人及び特殊法人等が行っている給与水準の公表に当たって、各法人の給与水準の国家公務員との比較指標等を作成し、提供してきている。本院としては、今後とも、専門機関として、独立行政法人等における給与水準のあり方等の検討において、適切な協力を行うこととする。

V 給与構造改革
1 平成二十年度において実施する事項
 給与構造改革は、前記のとおり、平成十八年度以降平成二十二年度までの間に逐次実施を図ることとしている。
 平成二十年度においては、以下の施策について所要の措置を講じていくこととする。

(1) 専門スタッフ職俸給表の新設
 行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、公務において職員が培ってきた高度の専門的な知識や経験を活用するとともに、在職期間の長期化に対応する観点から、視線型人事管理の導入に向けての環境整備を図るため、専門スタッフ職俸給表を新設する。
 専門スタッフ職俸給表が適用される職員(以下「専門スタッフ職職員」という。)は、公務における長年の行政経験を通じて蓄積した高度の専門的な知識や経験を活かしつつ、ライン職では十分にカバーできないような調査、研究等を自律的に行うことにより、政策の企画、立案等の支援を行うこととなる。その際、専門スタッフ職職員が自らの調査、研究等の活動を充実させるため、比較的自由に外部の研究者等との交流を行うことも可能となる仕組みを整備することが適当である。
 これらの観点から、専門スタッフ職職員に適用される制度については、次のとおりとする。
ア 俸給表の適用範囲
 (略)
 なお、専門スタッフ職俸給表の適用に当たっては、上記の適用範囲に沿った職務を内容とする官職を整備することが必要となる。
イ 俸給表の構成
 (略)
ウ 専門スタッフ職俸給表への異動時における俸給月額の決定
 (略)
エ 昇給
 (略)
オ 諸手当
 (略)
カ 勤務時間の弾力化
 (略)
キ 実施時期
 平成二十年四月一日から実施する。

(2) 地域手当の支給割合の改定
 地域手当の支給割合は、平成二十二年三月三十一日までの間は、地域手当の級地の区分ごとに人事院規則で定める暫定的な支給割合とすることとされており、平成二十年四月一日から平成二十一年三月三十一日までの間の支給割合については、前記Uの改定内容、支給地域における職員の在職状況等を踏まえ、別表第十一のとおりとする。
 なお、広域異動手当は、昨年の勧告に基づき、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律(平成十八年法律第一〇一号)により平成十九年度及び平成二十年度の二段階に分けて導入することとされた。平成十九年度の支給割合は、異動前後の官署間の距離区分に応じ、暫定的に、六十q以上三百q未満は二%、三百q以上は四%とされているが、平成二十年度にそれぞれ三%、六%に引き上げられ、制度が完成する。

2 勤務実績の給与への反映の推進
 勤務実績の給与への反映について、より実効あるものとしていくためには、各府省における運用の在り方が極めて重要となる。すなわち、職員の勤務実績に基づき、昇給及び勤勉手当の人事分布率や勤勉手当の成績率の基準等に沿って適正な成績判定を行うとともに、成績不良者について判定基準に照らし厳格に下位の成績区分を適用することが求められる。
 平成十八年度における管理職層に係る昇給制度の運用状況及びその他の職員を含む勤勉手当制度の運用状況をみると、上位の成績区分に決定された者の割合が人事分布率におおむね合致しているなど、その趣旨に沿った取り組みが進められているものと認められた。
 今後においても、昇給制度や勤勉手当制度の運用状況について必要なフォローアップを行い、その結果も踏まえつつ、勤務実績の給与への反映について一層推進していくこととする。
 また、新たな人事評価制度の導入に当たっては、評価結果を給与決定の基礎資料として用いることにより勤務実績の給与への反映の一層の推進を図ることとし、その給与への活用方法について、引き続き検討を進めることとする。

W 給与勧告の実施の要請
 人事院の給与勧告制度は、労働基本権を制約されている公務員の適正な処遇を確保するため、情勢適応の原則に基づき公務員の給与水準を民間の給与水準に合わせるものとして、国民の理解と支持を得て、公務員給与の決定方式として定着している。
 公務員は、行政ニーズが増大し、複雑化する中でそれぞれの分野において、離島やへき地を含め全国津々浦々で、国民生活の維持・向上、生命・財産の安全確保等の職務に精励している。今日、効率的な業務遂行と行政サービスの一層の向上が求められる中で、個々の職員が高い士気をもって困難な仕事に立ち向かうことが強く求められており、公務員給与は、そのような職員の努力や実績に的確に報いていく必要がある。
 なお、一部に、不祥事や不適切な業務処理が見られることは極めて遺憾であり、そのような国民の信託に反する行為に対しては厳しく対処するとともに、関係者はもとよりすべての公務員が一丸となって国民の信頼の回復に努めなければならないことは言うまでもない。
 民間準拠により公務員給与を決定する仕組みは、公務員に対し国民から支持される納得性のある給与水準を保障し、前述のような職員の努力や実績に報いるとともに、人材の確保や労使関係の安定などを通じて、行政運営の安定に寄与するものである。
 国会及び内閣におかれては、このような人事院勧告制度の意義や役割に深い理解を示され、別紙第二の勧告どおり実施されるよう要請する。


別紙第2 勧  告

 次の事項を実現するため、一般職職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九五号)、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成六年法律第三三号)、一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律(平成九年法律第六五号)及び一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成十二年法律第一二五号)を改正することを勧告する。

T 平成十九年四月の民間給与との比較による給与改定のための関係法律の改正
1 一般職の職員の給与に関する法律の改正
(1) 俸給表
 現行の俸給表(指定職俸給表を除く。)を別記第1のとおり改定すること。
(2) 諸手当
ア 扶養手当について
 配偶者以外の扶養親族に係る手当の月額(職員に配偶者がない場合の一人に係る手当の月額を除く。)各一人につき六千五百円とすること。
イ 勤勉手当及び期末特別手当について
(ア) 勤勉手当の支給割合
a 平成十九年十二月に支給される勤勉手当の支給割合を〇・七七五月分(特定幹部職員にあっては、〇・九七五月分)とすること。
b 平成二十年度以降については、六月及び十二月に支給される勤勉手当の支給割合をそれぞれ〇・七五月分(特定幹部職員にあっては、それぞれ〇・九五月分)とすること。
(イ) 期末特別手当の支給割合
 十二月に支給される期末特別手当の支給割合を一・八月分とすること。

2 一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律の改正
(1) 俸給表
 現行の第2号任期付研究員に適用される俸給表を別記第2(略)のとおり改定すること。
(2) 期末手当について
 十二月に支給される期末手当の支給割合を一・八月分とすること。

3 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律の改正
 特定任期付職員について、十二月に支給される期末手当の支給割合を一・八月分とすること。

U 給与構造改革のための一般職の職員の給与に関する法律の改正
1 専門スタッフ職俸給表の新設
 別記第3(略)のとおり、専門スタッフ職俸給表を新設すること。

2 専門スタッフ職俸給表の適用を受ける支給の昇給に関する特例
 (略)

3 専門スタッフ職俸給表の適用を受ける職員の諸手当
 (略)

V 一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律の改正
 (略)

W 改定の実施時期
 この改定は、平成十九年四月一日から実施すること。ただし、Tの1の(2)のイの(ア)のa及び(イ)、2の(2)並びに3についてはこの勧告を実施するための法律の公布の日から、Tの1の(2)のイの(ア)のb並びにU及びVについては平成二十年四月一日から実施すること。


別表第二 民間における給与改定の状況(単位%)
(略)

別表第三 民間における定期昇給の実施状況(単位%)
(注)ベースアップと定期昇給を分離することができない事業所を除いて集計した。
(略)

別表第五 公務員給与と民間給与との較差
(注)民間、公務員ともに、本年度の新規学卒の採用者は含まれていない。
(略)

別表第六 民間における家族手当の支給状況
(略)
(注)1 家族手当の支給につき配偶者の収入に対する制限がある事業所を対象とした。
2 支給月額は、家族手当が平成十七年以降改定された事業所について算出した。
備考 公務員の場合、扶養手当の現行支給月額は、配偶者については一三〇〇〇円、配偶者以外については、一人につき六〇〇〇円である。なお、満十六歳の年度初めから満二十二歳の年度末までの子がいる場合は、当該子一人につき五〇〇〇円が加算される。

別表第七 民間における特別給の支給状況
(略)
(注1)下半期とは平成十八年八月から平成十九年一月まで、上半期とは同年二月から七月までの期間をいう。
(注2)年間の平均は、特別給の支給割合を公務員の人員構成に合わせて求めたものである。
備考 公務員の場合、現行の年間支給月数は、平均で四・四五月である。


給与勧告の骨子
本年の給与勧告のポイント
@ 民間給与との較差(0.35%)を埋めるため、初任給を中心に若年層に限定した俸給月額の引上げ(中高齢層は据置き)、子等に係る扶養手当の引上げ、19年度の地域手当支給割合のさかのぼり改定
A 期末・勤勉手当(ボーナス)の引上げ(0.05月分)
B 給与構造改革の一環としての専門スタッフ職俸給表の新設

公務員給与の改革への取組
  平成17年の勧告時の報告において、地域間配分の適正化、職務給の徹底、成績主義の推進を図るため、給与制度の抜本的な改革を行うことを表明。この給与構造改革は、平成18年度から俸給表水準の引下げ(4.8%)を実施しつつ、逐次手当の新設等を行い平成22年度までの5年間で実現
  また、民間企業の給与水準をより適正に公務の給与水準に反映させるため、平成18年勧告の基礎となる民間給与との比較方法について、比較対象企業規模をそれまでの100人以上から50人以上に改めるなど抜本的に見直し
  本院としては、公務員給与の改革を進めることにより、国民の支持の得られる適正な公務員給与の確保に向けて全力で取り組む所存

T 給与勧告の基本的考え方
 〈給与勧告の意義と役割〉勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し適正な給与を確保する機能を有するものであり、能率的な行政運営を維持する上での基盤
 〈民間準拠の考え方〉国家公務員の給与は、市場原理による決定が困難であることから、労使交渉等によって経済・雇用情勢等を反映して決定される民間の給与に準拠して定めることが最も合理的

U 民間給与との較差に基づく給与改定
 1 民間給与との比較
   約10,200民間事業所の約43万人の個人別給与を実地調査(完了率89.4%)
  〈月 例 給〉公務と民間の4月分給与を調査し、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴、勤務地域の同じ者同士を比較
   ○民間給与との較差 1,352円 0.35%〔行政職(一)…現行給与383,541円 平均年齢40.7歳〕
     俸 給  387円     扶養手当 350円
     地域手当 560円     はね返り  55円

  〈ボーナス〉昨年冬と本年夏の1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間支給月数を比較
   ○民間の支給割合 4.51月(公務の支給月数 4.45月)

 2 給与改定の内容と考え方
  〈月 例 給〉
  (1) 俸給表 初任給を中心に若年層に限定した改定(中高齢層は据置き)
   @行政職俸給表(一)
    改定率1級1.1%、2級0.6%、3級0.0%。4級以上は改定なし
    初任給T種181,200円(現行179,200円)、U種172,200円(現行170,200円)
       V種140,100円(現行138,400円)
   Aその他の俸給表 行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定(指定職俸給表等を除く)
  (2) 扶養手当 民間の支給状況等を考慮するとともに、少子化対策の推進にも配慮
    子等に係る支給月額を500円引上げ(6,000円→6,500円)
  (3) 地域手当 給与構造改革である地域間給与配分の見直しの着実な実施
    地域手当の級地の支給割合と平成18年3月31日における調整手当支給割合との差が6%以上の地域の地域手当支給割合について、今後の改定分の一部を繰り上げて改定(本年度分として0.5%の引上げを追加)
  [実施時期]平成19年4月1日

  〈期末・勤勉手当等(ボーナス)〉
   民間の支給割合に見合うよう引上げ 4.45月分→4.5月分
   (一般の職員の場合の支給月数)
           6月期          12月期
19年度 期末手当 1.4  月(支給済み) 1.6  月(改定なし)
     勤勉手当 0.725月(支給済み) 0.775月(現行0.725月)
20年度 期末手当 1.4  月       1.6  月
     勤勉手当 0.75 月       0.75 月
   [実施時期] 公布日

  〈その他の課題〉
  (1) 住居手当 自宅に係る住居手当の廃止も含め見直しに着手
  (2) 非常勤職員の給与 給与の実態把握に努めるとともに、職務の実態に合った適切な給与が支給されるよう、必要な方策について検討
             なお、非常勤職員の問題は、その位置付け等も含めた検討が必要

V 給与構造改革(平成20年度において実施する事項)
 1 専門スタッフ職俸給表の新設
   行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、公務において職員が培ってきた高度の専門的な知識や経験を活用するとともに、早期退職慣行を是正し在職期間の長期化に対応する観点から、複線型人事管理の導入に向けての環境整備を図るため、専門スタッフ職俸給表を新設(平成20年4月1日実施)
 (俸給)
  ・専門スタッフ職俸給表は、行政における特定の分野についての高度の専門的な知識経験が必要とされる調査、研究、情報の分析等により、政策の企画及び立案等を支援する業務に従事する職員で人事院規則で定めるものに適用し、3級構成。各職務の級の水準は、本府省の課長補佐級から課長級までの水準を基礎
 (諸手当)
  ・専門スタッフ職職員には、俸給の特別調整額を支給しないほか、2級、3級職員について、超過勤務手当等の適用を除外
  ・専門スタッフ職調整手当は、3級職員のうち、極めて高度の専門的な知識経験等を活用して遂行することが必要な特に重要で特に困難な業務に従事する職員に支給(俸給月額の100分の10)
 (勤務時間)
  ・専門スタッフ職職員の勤務時間について、職員の申告を経て、4週間ごとの期間につき各省各庁の長が割り振る弾力的な仕組みを導入

 2 地域手当の支給割合の改定等
  ・地域手当は、平成22年度までの間に段階的に改定することとしており、平成20年4月1日から平成21年3月31日までの間の暫定的な支給割合を設定(平成19年度の支給割合を1〜2.5%引上げ)
  ・広域異動手当は、平成20年度に支給割合が引き上げられ、制度が完成(異動前後の官署間の距離区分が60km以上300km未満の場合3%、300km以上の場合6%)
  ・今後とも、昇給・勤勉手当における勤務実績の給与への反映を一層推進


公務員人事管理に関する報告の骨子
 公務員に対する国民の批判を真摯に受け止め、国民からの信頼回復が必要

1 新たな人事評価制度の導入 〜能力・実績に基づく人事管理の推進〜
 ・人事評価の枠組みについて、フィードバック、苦情処理等を含め更に検討
 ・評価結果の任免、給与、育成への活用方法について基本的考え方を提示。識別力の向上など評価の客観性・安定性確保が重要

2 専門職大学院等に対応した人材確保 〜人材供給構造変化への対応〜
 ・有為の人材確保には、行政官の役割明確化、仕事の魅力の発信、人材供給源の開拓等が必要
 ・「霞が関インターンシップ」や講演会など募集活動強化と併せ、関係者の意見を把握しつつ、採用試験をはじめとする採用の在り方を早急に検討

3 新たな幹部要員の確保‐育成の在り方 〜キャリア・システムの見直し〜
 ・@「採用時1回限りの選抜」によらない公平で効果的な能力・実績に基づく選抜、A行政課題に機動的に対応できる幹部要員を訓練育成する仕組みの構築につき、広く合意の形成が必要
 ・幹部に求められる資質・適正、人材誘致に有効な訓練機会、幹部要員の選抜方法などにつき、検討が必要。−当面、T種における選抜強化、U・V種の登用促進が重要

4 官民交流の拡大
 ・交流拡大は、組織の活性化や閉鎖性を見直す上で重要。具体的推進策は、その意義・目的を明確にした上で、職業公務員との役割分担や公正性の確保に留意しつつ検討することが重要
 ・公募制には、部内育成との適切な組合せや公正な能力検証が重要

5 退職管理 〜高齢期の雇用問題〜
  平成25年度から無年金期間が生じることを踏まえ、民間同様、65歳までの雇用継続を前提に、定年延長、再任用の義務化等について、処遇の在り方等の問題も含め研究会を設けて総合的に検討

6 労働基本権問題の検討
  労働基本権問題の検討に際しては、公務員の職務の公共性や地位の特殊性、財政民主主義との関係、市場の抑止力との関係、国民生活に与える影響等について検討が必要

7 勤務時間の見直し
  来年の勧告を目途に、勤務体制等の準備を行った上で民間準拠を基本として勤務時間を見直し

8 超過勤務の縮減
  在庁の実態を踏まえ、府省ごとに在庁時間の縮減目標を設定するなど政府全体の計画的な取組が肝要。超過勤務手当予算の確保が必要。弾力的な勤務時間制度等の導入を検討

9 その他
 ・採用試験年齢要件を検討、女性の採用登用を推進、米国政府への実務体験型派遣研修を新設
 ・テレワーク(在宅勤務)の前提としての勤務時間制度の在り方等について研究会を設けて検討
 ・職場における心の疾病の早期発見のための方策の検討、「職場復帰相談室」等の拡充