2004年11月26日


大阪府知事 太田房江 殿


          全港湾関西地方建設支部          
                          支部執行委員長 吉原 正明
                            
           全国一般労組大阪地方本部       
                          執行委員長   新村 賢二

             自治労大阪府職員関係労働組合
                          執行委員長   大橋 敏博

要    請    書


日ごろのご協力に感謝します。
さて、公共入札における総合評価方式の導入については、大阪府の施策を府民にアピールし、行政施策の推進に大きな一歩を踏み出すもので、その努力に改めて敬意を表するところです。とくに、知的障害者雇用、環境政策に大きく貢献するもので高く評価するものです。また、引き続き取り組みを進めておられる、清掃、警備等人的委託業務の改善について私たちも関係労働組合として検討を進めてきました。その結果に基づき以下のとおり要請します。

1 大阪府の総合評価方式について府内各自治体にも、導入するよう働きかけること。

2 委託請負業者が労働関係法令を守ることは当然のことであり、電算化による事業所の事前登録による審査で、「各種社会保険事業所として登録されているかどうか(事業所番号)の確認」「従業員の賃金台帳の有無」「就業規則の有無」「健康診断や特殊健康診断を行っているかどうか」「過去における府の賞罰の有無」などをチェックすること。また、労働者の労働条件が文書で交付されているか(労働基準法の明示義務)どうか、契約後
3ヶ月を目途としてチェックすること。

3 指名競争入札が結果的に、期限付き雇用という労働者の不安定雇用状態を助長している現実を改善するため、「仕事の、経験、認識度」を「技術評価」とする等、継続雇用に着目した評価を、指数化、プラスの評価点とすると共に、本人が継続を希望する場合、業者説明会の活用や、契約後に新旧事業者と行政の3者の引継ぎ協議、当該委託労働者の意見聴取を行うなど「継続雇用」「雇用継承」に努力すること。

4 2004年3月の大阪府議会で採択された、「公契約における政策入札を求める意見書」に基づき国に対し、「公契約の入札制度の改革を行い、入札の貴重な機会を活用して労働関係法令遵守をはじめとする公正労働基準づくり」を働きかけること。あわせて、府における「公正労働基準づくり」に着手すること。

5 大阪府は、毎年、大阪府に働く非常勤嘱託員の単価を日給で決定しているが、その最低金額は事務補助の6時間、5450円である。時間給に換算すると「900円あまり」となる。このため、大阪府における業種別最低賃金として900円を設定し、すべての非常勤嘱託員、非常勤作業員、出資法人等の非常勤職員、下請け労働者の最低賃金積算価格等に適用すること。

6 1973年の「労働関係法令に違反する企業は一定期間指名競争入札から排除する」との知事回答は、労使紛争における府の姿勢として評価されてきた。地労委や、地方裁判所で不当労働行為や関係法令違反の命令や判決が下された場合は、知事回答をふまえ、対応方策を検討する場を設置すること。


解  説

1  大阪府の総合評価方式は、予定価格3200万円以上の物件に絞って9件を実施している。この方式は事前の審査が担当部局としては手間や労力を必要とし、すべての物件でというわけには行かない。ただ市町村にもこの考え方を広げることにより、府民(市民)の税金が、より、府民(市民)の声に添った形で使われるという観点に立って行われることを考えると大いに広げていくよう求める。

2 労働条件の明示については、労働基準法で明確にうたわれているにもかかわらず、違反も多い。トラブルの原因にもなるので、発注部局である担当課が、いくつかの事前チェックとともに、契約後一定の時期に確認するよう求める。

3  期間満了で、当該労働者が雇い止め(解雇)される場合、解雇予告以降一ヶ月間、組合のあるところは、例外なくストライキに入り、労使紛争になる。労働者にとって、争う相手は会社だけでなく、現に働いていた委託先まで視野に入れて闘うということになる。  地労委命令や判例で「関係者としての委託先の努力」が問われたものも多い。そのため、「継続して働きたい」という本人希望がある場合は「仕事などの仕上がり像」の評価にたって、これを次の契約に引き継ぐ、契約後に新旧事業者と行政の3者の引継ぎ協議に、当該委託労働者の意見聴取を入れることで全体の合意形成に努力すべきである。

4 2004年3月の意見書は「ILO第94号条約の趣旨を生かし、公正労働基準、環境配慮、福祉配慮」を求めている。この実現を迫るためには、「1〜3で述べたきめ細かな対策を実施する中で、ILO第94号条約の趣旨」を生かしていくしかない。

5  最低賃金には最低賃金法に基づく最低賃金と、各産業・業種、企業が独自に決定する「産業別最低賃金」「企業内最低賃金」がある。労使関係、議会などが大阪府の雇用する労働者について決定した賃金がある以上、それを大阪府の「企業内最低賃金」として適用させることはきわめて自然で重要なことである。

6  悪質業者の排除については、知事回答にのっとり、どのように違法性をなくしていけるのか、また、労働団体に追及されるまで放置するのではなく、契約後の一定の時期に、労働者の実態をチェックし、違法違反があれば改善を求めるとともに、改善されない場合、審査会にかけて、次期入札から排除するなどの取り組みが必要である。