【要請レポート】

地域労働ネットワークによる雇用施策

大阪府本部/自治労大阪府職員関係労働組合・労働支部

1. はじめに

 大阪は中小企業の町である。繊維、造船、機械、伸線など主要な地場産業が次々と産業再編成によって潰れ、あるいは東京などへの本社移転を余儀なくされた。関西家電もまた生産拠点を海外に求め、結果、地方交付税を交付されない富裕団体として時代を謳歌していた大阪も、一気に交付税団体に転落した。
 大阪万博前から活況を呈した開発(ディベロッパー)産業は、建設日雇い労働者を大量に雇用する必要に迫られ、戦後のドヤ街が残っていた西成区の釜ヶ崎地区(あいりん地区)に、建設日雇い労働者の町を形成、主要な労働力として活用してきたが、その後、建設産業の機械化によって日雇い労働者を切捨てていった。このため、釜ヶ崎地区(あいりん地区)はスラム化が進み、さらに、バブル景気崩壊後の不況が日雇い労働者にとって仕事のない状況を生み、全港湾建設支部西成分会は一時金闘争、釜ヶ崎日雇労働組合は仕事よこせ行動を展開した。また、西成区役所管内での生活保護者急増をもたらすこととなった。
 これまで、大阪の労働行政は、その時々の好不況によって、最も影響を受ける労働者の生活と雇用、権利を保護するための施策を展開してきた。
 しかし、現代では、「雇用不安とそれによって惹起される就職困難層の増加」「無権利状態に置かれる不安定雇用労働者の激増」「20%を下回った組織労働者」「5年連続で3万人を超えた自殺者」「職場における査定制度の進行、いじめやハラスメントによるメンタルヘルス患者の増加」「長時間労働、労災、職業病の増加」「JRなどの安全対策不備による大事故、アスベストや食の安全性など企業倫理や労使の安全衛生意識の欠如が招いた社会問題」など、現状の労働現場の状況を示すキーワードも、多く複雑になっている。

2. 大阪の労働行政の経過

(1) 労働行政地域総合システム

「雇用」「訓練」「労政」「労働福祉」の連携・国、市町村との連携

 

   連合誕生の年ともなった1989年(平成元年)、大阪府は「労働行政地域総合システム」として、市町村に労働担当窓口を設置勧奨するとともに、市町村と大阪府との共同事業を提起した。これは、労働衛生面、労働福祉面における企業間格差の拡大、労働団体が市町村へ行政要求を持ち込むようになったことを受け、大阪府産業労働政策推進会議の提言に基づき提起されたものである。
   また大阪府は、同時に、労働事務所を7ヶ所から5ヶ所に再編整備し、勤労青少年ホーム、勤労婦人ホームを市町村へ移管した。
   大阪府労働部と自治労府職労働支部は、この時、市町村への労働相談窓口の開設、労働相談マニュアルの作成、市町村研修事業、定期健康診断、特別健康診断など健康管理事業の実施、事業所共済事業、大企業の施設を中小企業に開放する施設開放事業、など11もの新規施策を進めることで合意、全国の都道府県とは異質の新たな施策を打ち出した。
   市町村からは全国に例がないこととして、すでに労働窓口を持っていた一部の自治体からは歓迎されたが、他の多くの自治体では「労働行政は都道府県行政」という認識が大勢を占めていたため抵抗がなされた。
   しかしながら、大阪府は、労働事務所の再編により、労働相談をはじめとする府民との窓口を縮小することが、府民の利便性を大きく阻害することにつながるとして、積極的に市町村に労働窓口の設置を推奨し、府と共有の「労働相談マニュアル」を作成するなど、市町村と共同して労働に関する課題に取り組むこととした。

(2) 地方分権一括法(1999年(平成11年))が成立。職安が国に、市町村でも労働行政を

全国でも最悪の失業率 → 雇用行政が府労働行政の主体に

 

   地方分権一括法が成立したことでハローワークが府から国に移管された。その結果、ハローワークは雇用対策を地域から国のナショナルミニマム、つまり全国共通の土台に載せ、地域特性をできるだけ取り除く方向に変化していった。

(3) 地域労働ネットワークの構築

これまでの協力関係に質的な変化がもたらされる

 

   2002年(平成14年)に、大阪府内に3か所あった労働事務所が、1所2分室という体制に組織変更されることとなり、それにあわせて、大阪府は労働事務所において雇用対策をも進めるという位置づけをし、従来の「労働事務所」を「総合労働事務所」と改称した。
   さらに、従来からの大阪府と市町村などとの関係を、「地域労働ネットワーク」(府内7ブロック)[資料参照]という枠組みをもって再構築した。
   この「地域労働ネットワーク」の構築に伴い、それまで国機関や大阪府、各市町村など、それぞれが独自に実施していた事業(「就職面接会などの雇用対策事業」や「労働相談会などの相談事業」、「労働法セミナーなどの啓発事業」)の多くを、前述した機関の協力はもちろん、使用者団体・労働団体・経済団体の協力も得て、労働関連共同事業として効果的・効率的に開催することが可能となり、これまでの各機関・団体間の関係が大きく変化することとなった。

資 料

地域労働ネットワーク説明資料

17年度 大阪府地域労働ネットワークによる労働関連事業一覧(ブロック別)

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