選 球 眼
senkyugan  2001.7

2001.07.01

車に興味のない方ごめんなさい。通勤電車の車内吊り広告まで出して売り出した日産の新型スカイライン、あの形どう思います?

◆変わり果てた姿に「どこがスカイラインやねん」と思わずツッコミを入れた。スカイラインと言えば日産を代表する車。ハコスカ・ケンメリ・ジャパンなどと、愛称で親しまれた。レースなどでもその実力を遺憾なく発揮、GT―Rと呼ばれる車種は今も日本を代表するスポーツカーだ

◆経営改善に向けて日産は、3年前フランスの大手自動車メーカー、ルノー社と提携。経営にもルノーの経営陣が携わっている。経営方針、販売戦略、塗り替えられるのはあたりまえかもしれない。新型のあの形は、スカイラインと思わなければ斬新なデザインなのかも

◆旧型のハコスカからジャパンまで、後輪の上部ボディにトレードマーク的な筋が刻まれていた。ケンメリからついこの間の型までは丸目2灯のテールランプが一目見てスカイラインだとわかる象徴だった。新型には一切の面影がなくなった。それでいいのか日産は。スカイラインの伝統・風格が消えるのは、日産の歴史がルノーに吸収されましたよという象徴なのだろうか。(T)

2001.07.21

「火車」=火が燃えている車。生前に悪事をした亡者をのせて地獄に運ぶという。ひのくるま。かしゃと呼ぶ。先日読み終えた小説、宮部みゆきさん著作の題名が「火車」

◆1992年に書き下ろされたこの小説の主人公は、けがをして休職中の刑事。疎遠だった甥から突然、失踪した婚約者を探してほしいと言われて物語がはじまる。失踪した婚約者の勤め先や経歴を追ううちに、彼女が他人の戸籍で生きていたことがわかる。戸籍を使われた女性も、失踪した彼女もともに借金がキーワードのストーリー。カード破産などの実態が深く考察されている

◆小説の随所に失踪した彼女や、戸籍を使われた女性、彼女を追う過程で関わる女性たちの心情描写がきめ細かく描かれ、臨場感がひしひしと伝わる。主人公の一人息子が父親を思う気持ちも実に細かい。作者が女性だから、文章にさらに磨きがかかっているのではと思う

◆ところで「作者が女性だから」、この表現は青年部が学習会を開く「ジェンダー」の考え方として不適切な表現になっているのだろうか。どこか本能的に「男らしく、女らしく」と考えていることがある自分も、連続講座で学ぶことは多いようだ。(T)