選 球 眼
senkyugan  2002.11

2002.11.1

サイバーテロが現実に起こると想像を絶する恐怖の世界が。コンピューター網に進入し情報を盗んだり、経済・社会的な混乱を引き起こすテロ行為。小説「クラッシュ」(著者・楡修平氏 宝島社文庫)を読み背筋が寒くなった

◆インターネットが発達したいま、全世界とを結ぶその情報網は人間の血管のごとく職場・家庭の端末につながっている。物語はそんなコンピューター社会の盲点をつき、「ウィルス」が全世界を大混乱に陥れる様子を書き上げている

◆実際、職場も1人1台端末の時代で、そこでの仕事が主になりつつある。膨大なデータがある日突然、すべての端末から消えたら。小説のような事態は実際には起こらないとしても、コンピューターに頼り切った現代社会に警鐘を鳴らしている

◆ネットによるメールのやりとりは便利だが、一方でその相手の顔色、しぐさ、呼吸は伝わらない。ちょっと振り返れば、手書きの便せんやはがきは温かい。便利な時代でもそういう心やコミュニケーションを忘れたくはない。(T)

2002.11.11

9日の親善野球、10日の日米野球と球界は華やかで豪快なプレーを繰り広げ、ファンを楽しませている。大リーガーのあの桁違いのパワーには、開いた口がふさがらない

◆ボンズ、ジアンビの2度のアベックホームランなどは、感心するよりあまりのすごさにあきれた。さすがスーパースターは魅せるところで強烈に自身をアピールできる。方や、打たれた巨人の高橋(尚)投手は、年俸差を強調して「抑えられるわけはない」と話した

◆実力に応じて支払われる報酬。日本球界とはまさしく桁違いの大リーグ。高橋投手のコメントも納得の一言。選手にとって大リーグはまさに自分を試し、夢をつかむ魅力の場所。大リーグへの移籍も増え巨人の松井選手も決意した

◆だが、何とか国内に残れないのか。日本プロ野球は今後どうなるの。相次ぐ選手の流出を球団は止められないのか。選手個人の夢はかなうかもしれないが、ファンにとっては何とも寂しい。日本の野球がおもしろいためにはスターが不可欠ですよ。ねえ皆さん。(T)
2002.11.21

日本の常識は世界の非常識。公務員制度改革に関する連合などの提訴が、ILOの場で認められた。「大綱」の再考を突きつけられた総務省の見解が報道されたが「純粋に国内問題であり再考を求めるのは不適切」とのたまった

◆グローバル社会をうたい文句に国際競争力をつけなければと、規制緩和などで市場を開放し、国内企業がそれこそ国際的な場で活動している時に、公務員の問題は「ほっといてくれ」と。都合のいいこと甚だしく、大人に向かって子どもが文句を吐いているよう

◆労働基本権をきっちりと付与し、賃金・定員の問題も労使で話し合う。それこそリストラも可能だ、としたある新聞の社説にはドキッとしたが、一利ある

◆人勧制度の根本が揺らいでいる時代。公務員にとっても国民にとっても、どうあるべきか真剣に考えなければならない時がきている。その主導役の国が、他の助言に聞く耳持たず。ご都合主義のままだとは情けないかぎり。(T)