2001年1月30日
自治労府職第14回執行委員会
大阪府の財政危機の根本原因は、大型プロジェクトの実施などの政策選択の問題、景気に大きく左右される法人2税中心の府県の税収構造、大都市の実態を反映しない地方交付税制度など税財政制度にある。
ところで、ここで念のために確認しておくと、私たちは行財政改革そのものに反対してきたのではない。地方分権の時代にふさわしい勤労者、市民による自治を確立する自治体改革を求めてきた。太田知事は、職員向け提言メールボックス開設に当たってのメッセージで「府財政の危機、それは府庁の危機」と強い危機感を表明している。我々はこの危機感を共有し、知事提唱の「単なる『単なる縮小コピーの府政』ではなく『削るものは削るが、出すものは出す』といったシェイプアップの府政」が、真に府民のためになるよう議論を深めていかねばならない。ここに、近く骨子が作成・公表されるとされている新しい行財政計画に対する基本的考え方をまとめたので参考にされたい。
人件費
1998年9月に出された財政再建プログラム(案)は、財政危機を招いた行政責任は一切不明確のままに「定期昇給24月延伸・特別昇給停止」「10年間で7000人の定数削減」など、まず人件費抑制ありきの論であった。
大阪府に働く職・従業員の賃金水準の低下は、職・従業員の勤労意欲はもとより、大阪の民間労働者の賃金水準とも連動することによって、景気対策・内需拡大への影響も懸念されること、「行政サービスの根幹を支えるのは人」であり、一般行政部門・教育部門の一律・大幅人員削減は、行政水準・サービスの低下をきたすことを訴え、総人件費抑制に反対してきた。
結果として、H8からの5年間で約5500人の人員削減、10年間で約4823億円の人件費削減(出典「大阪府行財政改革レポート」)が強行されており、私たちは十分血も汗も流してきたといえる。
新行財政計画において、これ以上人件費にしわ寄せを行うことは、断じて容認できない。
政策評価システム
自治労府職は、「限られた財源、人材」を前提にするなら、その配分についての府民合意を得つつ施策の優先順位を決定できる行政評価制度を導入し、政策選択に活用することが不可欠であると主張し、当局との意見交換を重ねてきた。
その際「どのような大阪府、大阪府政を目指すのか」という行政目標・理念の議論を徹底し、明確に示すことが必要である。キーワードとして次のようなグループがあげられる。
「情報公開、府民参画」「分権、自治体民主主義」「人権、男女協働」「雇用」「環境、防災」「セイフティーネット機能、世代間公平」
財政再建プログラム(案)では、私たちの要請に応えて「行政評価システムの導入を行う」として、事務事業評価、建設事業再評価、主要事業再評価、経営評価が推進され、事務事業の見直しにより5年間で約1960億円の削減が行われてきた。
しかし、その検討は、大阪府の財政危機からくる政策選択の視点が加味されたとはいえず、必ずしも十分なものとは言えない。例えば建設事業再評価においては、事業採択時の目的以外の説明が行われ、対象事業のほとんどが事業継続の判断とされてきた。
行政評価の今後については、施策の優先順位について府民、NGOが検討、決定に参画できるような総合的なシステムに拡充していく必要がある。
主要プロジェクト
大阪府の主要事業(面的開発プロジェクト)や出資法人の各事業ごとに事業継続、凍結、縮小、廃止の4パターンの今日的試算数字を明らかにし、府民の議論を求め、公聴会などを積みかさね、府議会で判断を求めるべきである。少なくとも、水と緑の健康都市開発事業は中止すべきである。また、りんくうタウン事業、阪南スカイタウン事業などの社会経済状況を反映した見直しが必要である。
関空2期事業については、多額の累積損失を抱える株式会社方式見直しを促進し、追加負担を引き受けないことが前提である。また、国際ハブ空港としての整備が適当か、伊丹や神戸などとの役割分担、需要の問題など関空のあり方について、常に最新の状況に即して議論を進めるべきである。
また、今後は計画策定前の基本構想段階でアセスメントを行い、計画そのものの是非を判断する戦略的アセスメント(総合アセスメント)の導入を図っていくべきである。
税財源問題
景気の変動に対し脆弱な都道府県税制度の是正と地方税源の大幅な拡充なしには真の財政再建は不可能である。また、地方税源の大幅な拡充は財政再建のためだけに要請されているわけではなく分権確立の面からも不可欠である。
全国知事会も全国一律の制度としての法人事業税の外形課税化を求めており、政府税調でも不公平税制の是正、応益性の明確化、地方税の安定化、経済の活性化といった視点から、その導入を支持する意見が多数を占めていた。しかし、来年度の国家予算案においても導入は見送られている。引き続き、中央、地方において世論形成を含め取り組みを強めていかねばならない。
大阪府は、昨年9月11日「税制改革素案」を発表した。「課税自主権を行使した独自課税についての検討結果」としてまとめたにしては不十分なものといえる。「法定外(普通・目的)税」としての「政策税」については今後引き続き創設の可能性について検討とし、
「法人府民税の均等割」を資本金1千万円以上の企業について倍に引き上げることを提案している。今後、引き続き行われる検討に注目していくが、いずれにしても独自課税は財政危機を救うような増税にはなり得えない。消費税や所得税といった基幹的税目の地方移譲を要求するといった抜本的改正も視野に入れた議論が必要である。
病院事業
大阪府立5病院は、財政再建プログラム(案)を受けて、財政再建10ケ年計画を作成し、府民に知らしめてきた。また、大阪府病院事業経営評価委員会を開催し、「平成12年度公営企業の公営評価調書(病院事業)を策定してきた。また、これをもとに各病院は、地域の医療を担いつつ、それぞれ病院の特色を生かし、経営方針を決定してきている。
これらの経過を尊重し、公営企業の特性を生かしながら、府民の健康と命を守る視点で府立5病院問題を議論すべきである。
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